希望の島・沖縄 アリは象に挑むU
▼あとがき──編集を終えて▼

 由井晶子さんが『労働情報』に14年半にわたり連載した記事から辺野古・高江の新基地建設問題を中心に抽出した『沖縄──アリは象に挑む』(1998年12月15日?2011年5月15日号に掲載)を出版したのが2011年6月でした。そして、この本に続くものとして、この度『希望の島・沖縄──アリは象に挑むU』(2011年8月1日?2016年7月15日号)をまとめることになりました。
 2016年春、国と県の「和解」で現場が少し落ち着いている今こそ、この5年間を客観的に顧みるものが必要だからと周りから背中を押され、編集を始めました。


 執筆の中心である由井晶子さんは、2015年春に軽い脳挫傷を患い、日々回復されているものの外での取材・執筆ができるまでには至っていません。その間、『労働情報』の連載はプロのジャーナリストや辺野古の現場に立つ市民などで「team okinawa」を編成し、執筆や企画を行ってきました。
 『労働情報』は、戦後労働運動の基盤を創った高野実・元総評事務局長の流れを受け継ぐ労働運動の情報誌で、1977年に創刊されました。現在は、「労働を 生活を 社会を変える」をキャッチフレーズに、現場からの視点を大切にしながら非正規労働者の問題をはじめ様々な社会的課題を先駆的にとりあげています。ここ数年は、プロのジャーナリスト集団「team rodojoho」が執筆・企画を行い、連載「沖縄から」については「team okinawa」が担っています。


 本書の編集を始めた矢先、元海兵隊員による20歳の女性に対する残虐な事件が起きました。私が沖縄について何も知らなかった21年前の少女暴行事件の時の怒りとは違い、肌感覚として事件の衝撃から抜け切れない日々が続きました。

 そんな私に、「僕たちは泣いているヒマはないんだよ」という言葉。その一言に自分の甘さを気づかされ、編集に集中するにつれ見えてきたのが、沖縄の人々が様々な局面で力を合わせ、辺野古新基地建設を強行する日本政府に正しく立ち向かう姿でした。


 とりわけこの5年の間には、「埋め立てても環境への影響は軽微」とする日本政府の非科学性を指摘しつつ、辺野古の米軍基地「キャンプ・シュワブ」ゲート前で工事車両を非暴力で止めようと大勢の人が座り込み、海上では工事のためのボーリング調査に抗議する行動が行われてきました。それを支持する動きが全国に、世界に拡がっています。
 政治の面でも保守、革新の枠を取り払って「オール沖縄」のうねりを作り出して翁長雄志県知事を誕生させました。翁長知事は、前知事が出した埋立承認を取り消し、県民からの深い信頼を得ていると伝え聞いています。
 それらは、希望への道そのものです。

 

 本書は、由井さんの連載を引き継いだ「team okinawa」、とりわけ米倉外昭さんの協力なしには出版に至らなかったと思います。しかし、局面局面での女性たちの重要な活動や八重山における教科書問題などについて掲載しきれなかったことは、深くお詫びします。諸般の事情で編集が遅れ、七つ森書館のみなさまにはご迷惑をおかけしました。校閲をお願いしている岡本由希子さん、文章・写真を提供して下さった渡瀬夏彦さんはじめ大勢の方々のお力添えに、この場を借りてお礼を申し上げます。

 

2016年7月1日  浅井 真由美(『労働情報』前編集長) 


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