アジア@世界 768号

●台湾
台湾と中国・広東省の液晶パネル工場で争議

 液晶パネル等の電子部品をアップル、ノキア等に納入しているグローバル企業WINTEKの台湾と中国・広東省の工場で、解雇や不当な搾取に抗議する闘いが続いている。以下は台湾の労働団体からの支援要請である。APWSL日本委員会のMLより要約。
(翻訳・稲垣豊)
勝華科学技術公司(WINTEK)の違法な搾取を糾弾する共同アピール(2009年4月20日)
 勝華科学技術(株)WINTEK。本社、台中県潭子郷台中輸出加工区)は、1990年に設立され、LDC、LCM、タッチパネルなどのモニターを生産しています。市場占有率は、台湾の携帯電話パネルやタッチ式画面では第1位、世界でも3番以内に入る企業です。台湾に12の工場があり、3千550人を雇用しています。中国広東省東莞と江蘇省蘇州の2つの工場では1万8千150人を雇用しています。インド・チェンナイの工場では1千450人を雇用しています。またアメリカ、韓国、ドイツなど世界各地に販売拠点を持っています。
 WINTEKはグローバルハイテク産業として、アップル(iPhone)、ノキア、HTCなどのメーカー向けの受注生産をしています。金融危機以降、各地でリストラや不当な搾取を行ってきましたが、台湾と中国の労働者が抵抗に立ち上がり、全世界の労働者の支援を求めています!
 われわれは、全世界の労働者・友人に対して、グローバル企業WINTEKによる不当な労働者からの搾取に対する抗議の共同署名への賛同を呼びかけます。
【背景】
(1)予告なしに台湾工場の600名の労働者を解雇!
 WINTEKは昨年11月に賃下げ、手当て廃止を行い、12月からレイオフを実施し、12月17〜18日には何の予告もなく台湾工場の600名以上の労働者を解雇しました。契約労働者、移住労働者を含めると1千人近くに上ると労働者は証言しています。解雇者のリストには妊婦や、あと2年で退職金申請の資格を得られる労働者などが含まれていました。今回の措置は、明らかに性別労働平等法に反し、退職金資格労働者を解雇する年齢差別の疑いがあります。闘争の結果、妊婦に対する解雇は撤回されましたが、それ以外の労働者は現在も争議中です。
 その一方で、WINTEKの決算書によると、過去数年の法定余剰金は40億元にも達し、「台湾アップルデイリー」紙によると「WINTEKの生産速度は40%上昇」しています。同社はまた、雇い入れを大幅に増やす準備をしています。これらのことから、解雇が労基法第11条のリストラ規定に反するという強い疑義が出ています。
 会社側は、復職を求めて争議を継続してきた労働者代表および自主工聯の執行長の朱維立を、名誉毀損で訴えました。
(2)東莞工場の労働者7千人がストライキ
 WINTEK傘下の中国広東省・東莞の万士達科学技術工場で、4月17日に7千人の労働者がストに入りました。その理由は、会社の提供する食事があまりに酷いこと、違法な減給や手当てカットなどでした。
 中国の「労働契約法」では、休日出勤は平均賃金の2倍を支払わなければなりません。しかし会社側は今年2月に、残業代は賃金の1.5倍とするという誓約書を労働者に強制し、過半数が署名し、東莞労働局も残業代の引下げを許可した、と一方的に通知しました。しかし多くの労働者が誓約書への署名を拒否していました。疑問を持った労働者が確かめたところ、労働局は許可を出していないということが発覚しました。
 金融危機にも関わらず、この2ヵ月間、生産能力はフル稼働する一方、残業代と手当てはカットされていました。従業員の食費手当ても8元から4.5元にカットされ、提供される食事もすえた臭いのするものでした。従業員は「台湾人管理職がこれを1週間食べ続けられるのだったら、こっちだって不平不満を言わないでおくよ!」と怒りをぶちまけました。それ以外にも、業績優秀手当てなども廃止されました。
 結局、会社側は、2倍の残業代についてはこれまで通り支払うことを告知しましたが、ストをすぐに終了して仕事に戻らなければ解雇するとも強制しました。食事や手当ての問題が解決していないとして、最終的に19名の労働者がストを続け、解雇されてしまいました。
私たちの要求
1 台湾工場で解雇された労働者の労働権を回復し、名誉毀損の訴えを取り下げること。
2 東莞工場の労働者との交渉に応じ、法にのっとった賃金と残業代を支払うこと。
3 中国、台湾、インド、韓国などの政府は、現地WINTEK工場に対してすぐに査察を行い、労働条件の改善を要求すること。改善の兆しが見られなければ、投資や土地、租税に対する補助金などの優遇措置を停止すること。
4 アップル、ノキア、HTCなどのブランドメーカーは、国際的な「サプライヤー行動規範」にもとづき、WINTEKに対して労働条件の即時改善および労働者と労働団体に対する攻撃を止めるよう要求すること。
5 ブランド・メーカーはWINTEKに、第三者の独立的労働団体による各工場(東莞工場、台湾工場、蘇州工場)への立ち入り検査を許可するよう求めること。
◎発起団体=(台湾)全国自主労工聯盟、勝華科技員工自救会、団結工聯、青年労働九五聯盟、工作傷害受害人協会、人民火大行動聯盟、台湾労工資訊教育協会/(香港)全球化監察、大学師生監察無良企業行動、香港職工會聯盟、中国労働透視、先駆社/(中国大陸)中国工人研究網
◎賛同団体=(台湾)国際労工協会、工人民主協会、新竹県産業総工会、台湾漂緑網/(韓国)民主労総ソウル本部、ソウル京畿仁川移住労働者組合、ALLTOGETHER/(香港)香港婦女勞工協会、香港街坊工友服務処/(中国)東莞万士達的労工団体/(日本)APWSL日本委員会

●フランス
5・1第3波の全国行動に120万人が参加

 CGT、CFDTをはじめとする8つの主要労組は1月29日、3月19日に続いて、5月1日に第3波の全国統一行動を呼びかけた。  この日、全国300ヵ所でデモが行われ、パリで16万人、全国で120万人が参加した。各種世論調査では、回答者の70%が労働組合のデモを支持している。
 「フランス24」ウェブ版5月1日付は次のように報じている。
 「今年のメーデーは歴史的な性格を持つだろう。8つの主要労組が初めて、政府の社会政策と金融危機への対応に抗議して、統一したデモに参加することを組合員に呼びかけた……  例年、メーデーには社会的な抗議行動が計画されるが、組合は今年はかつてない規模の動員を期待している。この半年間、レイオフが相次ぐ中で、社会的な緊張が高まっている。
 労働組合は、購買力の向上を基本とする経済回復策と、解雇への強い規制を要求している。商店の日曜日の営業を許可する新しい法律(7月に国会で審議される)も、デモ参加者の憤りを呼び起こしている」。
 「フランス24」によると、今後の行動について、左派組合が引き続き24時間ストを含む行動を発展させることを提案している一方、CFDTはストに反対している。しかし、「ボス・ナッピング」(解雇を発表した企業の社長を監禁する戦術)や破壊行為が広がる中で、ますます社会的な問題解決の必要が高まっている。
 「ガーディアン」紙5月1日付によると、国民の66%がこの数ヵ月のうちに「社会的爆発」の危険があると考えている。ドビルパン前首相は「革命の危険」について警告した。労働者や失業者の怒りだけでなく、大学改革、病院改革への怒りも拡大している。このような状況の中で、労働組合のリーダーたちは事態を鎮静化し、労働者の怒りを宥めようとしている。
 5月1日はヨーロッパ各地でも大規模なデモが行われた。ドイツ、ギリシャ、トルコでは部分的に警官隊との衝突が起こった。EUの統計では、2月にユーロ通貨圏での失業率は8.5%に達した(前年同期は7.2%)。

●インド
現代自動車で組合承認を要求して無期限スト

 インド現代自動車労働組合が4月20日からストに入っている。5月6日に約900人の労働者が逮捕された。韓国民主労総はインドの労働者を支援するために、同7日、金属労組および同労組現代自動車労組支部と協力して現代自動車本社前で記者会見を行う。以下はINRLF(インド全国農村労働者連盟)のバザパディ・R・カーナン委員長の5月6日付の支援要請である(抄訳)。
 5月6日、(南インド・タミルナドゥ州)チェンナイ近郊の現代自動車工場の約900人の労働者が逮捕された。
 労働者たちはこの工場の唯一の登録された労働組合であるインド現代自動車労働組合の承認を求めて4月20日から無期限ストに入っている。経営側はこれまでのところ、1千500人の労働者との交渉を拒否している。今日、500人の労働者が、経営側代表の欠席に抗議して、チェンナイの労働委員事務所前で無期限ハンストに入った。
 現代労組の委員長でCITU(インド労働組合センター)タミルナドゥ地区委員長のサウンデラジャン氏は、「経営側代表は4回の会合に出席した後、最近3回の会合に欠席した。だから私たちは今日、無期限ハンストに入った」と述べている。彼によると、ハンストは問題が解決するまで継続される。
その後の経過(国際金属労働組合連盟のウェブより)
 5月8日に経営側は労働者の要求を受け入れ、逮捕された労働者は釈放され、20人のストのリーダーへの処分が撤回され、労働組合はストとハンストを終結した。地区の労働委員会の立ち会いの下での労使交渉が、5月13日の総選挙が終了した後に速やかに開始される。非正規雇用の労働者の待遇については未解決である。経営側がチェンナイ工場の生産の一部のヨーロッパへの移転を計画しているという報道もある。

●タイ
ミシュラン・タイヤの労働者が解雇撤回を勝ち取る

 チョンブリ県レム・チャバンのミシュラン・タイ社(従業員数1千500人)の労働者は、会社側の13%賃下げ提案に抗議し、組合との事前協議を要求してきた。しかし、会社側は事前協議要求書に署名した労働者383人への懲戒処分(35%の賃金カット)を発表し、さらに、3月25日にはこの労働者たちをロックアウトした。
 PCFT(化学労働者連盟)は、ICEM(国際化学エネルギー・鉱山労組)とフランスFCE−CFDT、ヨーロッパ・ミシュラン労組評議会の支援を受けて、連日、門前での闘争等を続けた。4月28日に政労使の代表による三者会談で6項目合意が成立した。この合意によると、会社側は383人の懲戒処分を撤回し、ロックアウトを解除する。労働者は同日をもって門前での闘争を終結する。労働組合は13%の賃下げを受け入れ、ミシュラン社は08年に2ヵ月分のボーナスを支給する。職場復帰を希望しない労働者に対しては、労働者保護法の規定に従って退職金が支払われる。また、ミシュラン社は門前闘争に関連する訴訟を取り下げる。  レム・チャバンのゴム労働者はタイのブリジストン、グッドイヤーの労働者や、他の地区のミシュラン工場の労働者からの力強い支援を受けた。
 ICEMのマンフレッド・ワルダ書記長は次のように語っている。「これは労働者と経営者が政府の仲介者と協力して、社会的対話を通じて困難を解決できることを示す有望な兆候である。ICEMはこの紛争が世界金融危機の結果であると考えており、このタイヤ工場が新たな注文を獲得し販売を回復することを期待する」。(ICEMのウェブより)

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