たたかいの現場から 766・767合併号

臨床心理士ユニオンが誕生
  「専門職ワーキングプア」状況の打開へ

全国一般東京東部労組・本誌編集委員 須田光照

 東京都が設置している児童養護施設で非常勤・臨時職員として働く臨床心理士たちが労働組合「臨床心理士ユニオン」を東部労組の支部として結成しました。正式名称は「全国一般東京東部労組臨床心理士ユニオン支部」です。4月6日、厚生労働省で記者会見をおこない、発表しました。
 現在、全国の児童相談所に持ち込まれる児童虐待の相談件数はうなぎ上りに増えています。彼ら彼女らの主な仕事は、児童虐待を受けた子どもの心の傷とその影響を子どもが乗り越えられるように「心理療法」をはじめとして心理学の知識を用いて子どもと職員を援助することです。虐待を受けた子どもの入所者に占める割合が増加する中で心理士の果たす役割は重くなる一方です。  ところが、その心理士たちの雇用は不安定で待遇も劣悪です。正職員との格差・差別も大きいものです。1年単位の雇用契約を10年繰り返している人もいます。非常勤は月16日で給与は額面で20万円に届かず、手取りでは13万円台です。臨時職員に至っては月6日の勤務で、雇用保険にも社会保険にも加入できていません。いずれも食べていくために、いくつもの仕事を掛け持ちせざるをえない状況です。
 公務職場が生み出す貧困=「官製ワーキングプア」であり、高い専門性をもった労働の貧困=「専門職ワーキングプア」です。  懸念しているのは、不安定で劣悪な雇用環境がサービスの低下をもたらし、心のケアを必要としている多くの子どもにしわ寄せがいくことです。心の傷を抱えた子どもへのケアは、心理士を含めた施設職員との長期にわたる信頼関係が必要です。ところが、あまりの低処遇に心理士が施設を去らざるをえないケースが後を絶ちません。
 こうした現状を打開するために心理士は自分たちの手で、初めて労働組合の結成に立ち上がりました。ユニオンは3月26日、施設を管理している社会福祉法人東京都社会福祉事業団との第1回団体交渉を開催し、心理職の「常勤化」や正職員との格差是正などを求めました。
 ユニオンは公務・民間の枠を超えて、すべての心理士の待遇改善と社会的な地位向上をめざします。行政には市民への心のケアに責任を果たすよう求めていきます。国には臨床心理士の国家資格化を要求します。

スィートガーデン中部工場閉鎖
  連続する抗議行動で対抗

自立労連 但馬けいこ

 4月6日、スィートガーデン社(SG)は、突然「中部工場を閉鎖する。正社員は転勤するか、転勤できない人は辞めてもらう。契約社員やパート・アルバイトの人は雇い止めか、場合によっては中途でも辞めてもらう」と通告しました。
 自立労連SG労組中部支部長は、「多くの人が辞めることになる閉鎖には、絶対反対だ!社長からきちんと説明せよ。謝罪して撤回せよ!」と追及しました。支部長の発言は、中部工場の全労働者の気持ちです。それを会社は「個人的意見」と切り捨て、謝罪も拒否しました。ほかの正社員からも、「納得がいかない、誠意が感じられない」と多くの意見が出ています。
 SG社は、工場を閉めるような経営危機にあるわけではありません。利益を上げるためだけに、労働者の生活や雇用を一切省みることなく、中部工場を売却しようとしているのです。そんな会社のやり方は、絶対に認められません。
 中部工場支部からの要請に応え、同じ自立労連SG労組の神戸支部・埼玉支部からの声があがっています。タカラブネ倒産後、ファンドによる新会社SG社となり、昨年、神奈川の菓子製造卸業プレシア(本社・神奈川)に買われて以降、営業や関連部門の統廃合が、労組・労働者を無視して行われてきました。倒産時に解雇された労組員たち中心の自立労連地域分会も、怒りの声をあげています。
 また自立労連の加盟する全国一般全国協をはじめ、地域共闘の仲間たちから、抗議ファックスが、プレシア会長やスイートガーデン社長・中部工場長に続々と送られています。連日、中部工場への激励行動も行われています。
 中部工場では社員達が、今後の生活を考え、不安でいっぱいになりながら、SG社や親会社プレシアの雇用責任を問う闘いが始まっています。パート・アルバイト・契約社員は、何度も契約更新を繰り返しており、簡単に期間満了で雇い止めはできません。当然、中途解約ならば契約期間満了までの賃金を支払わせなければなりません。自立労連は、これらを解決すべく、中部工場現地での団体交渉を要求しています。
 しかしSG社は、「リストラではないから決算書は出す必要がない」「就業規則に則って、埼玉か神戸に異動してもらう」と開き直っています。中部工場の闘いを支えるために、4月20日前後にはSG本社(京都)抗議申し入れ、4月23日には、親会社プレシア(新横浜)への抗議申し入れ行動を行う予定です。ゼニ儲けのためなら、なんでもありの経営、そして「貸し剥がし」など裏で糸を引く金融機関に対して、"ふざけるな!労働者は使い捨てのモノじゃない!"という怒りをたたきつけていきます。詳細は前頁欄外に紹介のブログをご覧下さい。

辺野古・アセス準備書への「意見書」提出を
  「グアム移転協定」の国会審議で明らかになった問題点

うちなんちゅの怒りとともに!三多摩市民の会 古荘斗糸子

◎辺野古・アセス準備書への「意見書」提出を
 4月19日に、沖縄・辺野古への基地建設を許さない実行委員会(辺野古実)は「アセス学習会」を持ちました。講師は花輪伸一さん(世界自然保護基金〈WWF〉ジャパン)。その後、辺野古実はできるだけ多くの人に「意見書」提出を呼びかけるため、簡単に書けるひな形やチラシを作ろうと話し合いました(辺野古実のブログ参照)。
 準備書(何と5千400頁!)は、一般の私たちから遠ざける煙幕です。準備書の「要約書」(314頁)を読んで、自分が関心のあるテーマから準備書を批判する「意見書」を書いても良いし、準備書(要約書)を読む余裕がなくても、準備書の問題点を沖縄タイムスや琉球新報が、連日、報道していることを参考にして書けるし、または自分の思いを、ほんの数行で書いても良いそうです。たとえば準備書にはジュゴンが嘉陽沖に1頭、古宇利島沖に2頭しかいないと推定したことに、違法な事前調査でジュゴンを追い散らしたという怒りが湧いてくるのですが、それは別として、3頭でもいるのだから絶対に彼らの生息域を壊さないで! と強く訴える「意見書」が書けます。「アセス学習会」では、花輪伸一さんの作成した「準備書の項目と問題点」の資料及び彼と桜井国俊さん(沖縄大学学長)の「意見書」が配られました。これらも参考になります。
 沖縄防衛局に提出する期限は5月15日ですが、直接、防衛局に出すと「意見書」の概要だけしか審査会委員に伝わらないので、現地のジュゴン環境アセスメント監視団が委員に直接読んでもらえるよう集約しているそうです。できれば4月中に、沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団に提出してくださいと呼びかけています。
【アセス意見書送付先】
〒905−2171 名護市字辺野古 座り込みテント村 意見書係 宛

◎グアム移転協定、衆議院通過、参議院に
 3月27日に衆議院外務委員会で趣旨説明をし、4月3日、8日、10日と終日、息もつかせず審議をして10日17時40分頃採決、14日には衆議院本会議を通過してしまいました。30日経てば自然成立してしまいます。
 15日には参議院本会議で趣旨説明、16日の外交防衛委員会で与党は、いずれ通過するだろうと高をくくっているというよりは、今度は少数である与党が、衆院で追及された問題点の巻き返しを狙っているように見えました。そして集中審議を組む様子です。
 私は全部、傍聴してきました。明らかになった数々の問題点を書く字数もないのですが、衆院外務委員会で野党が追及して、辺野古が頓挫しても協定違反ではないという政府見解を引き出しました。争点を世論にしていけば辺野古は止められる、と実感しました。


「海賊」対処法案成立許すな!
  質的に海外での武力行使を正当化する違憲立法

本誌編集委員 国富健治

 4月14日、衆院で「海賊」対処新法の審議が始まった。4月中にも衆院で採決が行われ5月の連休明け国会で参院でも審議に入る。
 すでに3月14日には、自衛隊法82条の「海上警備行動」を脱法的に拡大適用して、呉基地から護衛艦「さざなみ」と「さみだれ」が出航し、3月30日からソマリア沖・アデン湾での「護衛」任務についている。新たにP3C哨戒機の派遣も準備されている。
 今、審議されている「海賊」対処新法案が成立すれば、現在の「海上警備行動」派兵から「新法」を根拠とした派兵にそのまま変更されることになる。どこに違いがあるのか。「海上警備行動」派兵では警護対象が日本船、日本人が乗り組む外国船籍の船、あるいは日本向けの積み荷を運ぶ船など「日本関係」の船に定められているのに対し、「海賊」対処法では「すべての船」が対象となる。また武器使用基準も「正当防衛・緊急避難」の際に限定されていたものが、「海賊」対処新法では「任務遂行」のための「危害射撃」=「船体射撃」まで認められ、武器使用範囲が飛躍的に拡大する。実質的に海外での武力行使を正当化する違憲立法なのだ。
 しかし現在の「海上警備行動」派兵でも、4月3日、4月11日には護衛対象外のシンガポール船、マルタ船から「海賊らしき船に追われている」との無線連絡を受けて「さざなみ」「さみだれ」が現場に駆けつけ「不審船」と対峙し、「大音響装置」で追い払うという行動に出ている。この行動は、いまだ審議にも入っていない新法の先取り的適用にほかならない。
 民主党は政府・与党の「海上保安庁が対応できない際には、防衛相が自衛隊に命じて出動する」という案に対し「新設する海賊対処本部(本部長・首相)が自衛官を本部員と兼任させて対応」し対処行動には「国会での事前承認を義務づける」という修正案を出そうとしている。しかし、もともと「海賊」対処新法の引き金となったのは昨秋臨時国会での長島昭久・民主党衆院議員の質問なのであり、民主党はむしろ「早期成立」に前向きである。
 5・3憲法集会実行委は、3月5日の院内集会を皮切りに3月9日、4月7日、4月14日と国会前での「海賊」対処新法反対・ソマリア派兵反対の行動を積み重ねてきた。3月14日の呉基地から護衛艦出航には、ピースリンク広島・呉・岩国の「平和船団」による闘いも取り組まれた。派兵恒久法の水路となるソマリア沖派兵・「海賊」新法反対の運動と世論を広げよう。

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