アジア@世界
773・4号

●韓国
双竜自動車のストライキへの警察の弾圧を中止せよ

 双竜自動車は、経営破綻を理由に約2千400人の労働者の解雇を発表。これに反対する労働者約600人が工場占拠を続けている。経営側は警察官を動員。工場を包囲し、労働者たちへの食糧・水の搬入を阻止している。韓国民主労総は、双竜自動車および韓国自動車産業の危機が政府や経営者の責任であり解雇の不当性と、政府が救済策と韓国自動車産業の再生のための政策を実施すべきと主張している。以下は、民主労総の7月20日付の声明である。(抄訳)
 民主労総は、民主労総からの再三にわたる警告にもかかわらず7月20日に再開された双竜自動車のスト中の労働者に対する警察の弾圧を強く非難し、警察がただちに双竜自動車工場から撤退することを要求する。民主労総はまた双竜自動車の経営者に対して、一組合員の妻(幼い2児の母親)を死に追いやったレイオフを全面撤回することを要求する。
 7月20日午前10時、戦闘警察が、強制執行(立ち退き)命令を手渡そうとする裁判所職員および債権者と同時に工場敷地内に侵入。警察は、60日にわたりストを続けている800人の労働者が座り込んでいる塗装工場を取り囲み、その動きを厳重に監視した。この作戦のために3千人以上の戦闘警察、放水車・照明用車両、はしご車、ヘリコプターを含む約30台の車両を動員した。警察の行動に先立って、経営者はすべての(ストに参加していない)労働者に対して仕事に戻るよう命令し、塗装工場の電気・ガス・水を止めた。経営者は、7月16日から工場への食糧の搬入を阻止し、19日には医師・看護師の立ち入りも禁止した。警察の行動の前日には、会社側が工場占拠を終結させるために「催眠ガス」の使用を検討していたことを示す社内メールが暴露された。
 警察が工場への侵入を開始したことが知らされた直後に、金属労組双竜自動車支部の政策部長の妻(28歳)が自死したという知らせが届いた。彼女は生後8ヵ月の赤ん坊と4歳の子の母親で、夫への召喚状と逮捕状を見せられてストレスと不安に陥っていた。
 最近、会社側の管理者が組合員の自宅を訪問し、居合わせた家族に対して、配偶者が投獄される、あるいはストの損害賠償のために家や資産が没収されると脅して回っている。組合が再三にわたって警告し、そして事実が示したように、「解雇は殺人である」。組合員の妻の自死は、実際、経営者と政府による殺人である。
 民主労総は、人間の生命や危機の解決について考えることなくストを破壊しようとする経営者の行為を強く非難する。われわれはまた、会社側からの要請に従い動員され、行動した警察の責任を追及する。民主労総は、警察による弾圧が危機の解決ではなく、一層の破局をもたらすと考えている。われわれはすでに、警察による弾圧が災禍をもたらすだけであることを繰り返し警告してきた。しかし、今、警察による弾圧が始まったことは、経営者にも政府にも、組合との誠意のある対話を通じて問題を解決するいかなる意志もないことを示している。
 双竜自動車における危機を解決不能にした主な責任は経営側にあることはすでに明らかになっている。一方、政府は行き詰まりを打開するための権限と責任があるにもかかわらず、暴力的な弾圧にのみ関心を示してきた。
 政府は、経営者からの圧力の下で警察を動員するのではなく、救済基金の投入や、組合と政府の話し合いなどのさまざまな手段を通じて、双竜自動車を再生し、事態の正常化に努力するべきだった。
 民主労総は、60日以上にわたってストを続けている双竜自動車の労働者に対する緊急の連帯を呼びかける。
 双竜自動車平澤工場のスト中の労働者への警察による弾圧を中止せよ
 警察は双竜自動車から即時撤退せよ
 理性的な解決のために、組合との誠意ある対話を進めよ
 一方的な大量解雇を中止せよ。解雇は殺人だ!

●タイ
トリンプ(下着メーカー)の子会社が2千人を解雇

 ドイツの女性用下着メーカー、トリンプ社は6月末に、フィリピンとタイで大幅な人員削減を計画していることを発表した。計画によると同社は、世界的な需要と受注の減少に対応するため、フィリピンにおける製造および流通センター業務を中止し(1千686人を削減)、タイにおける生産を削減(1千930人を削減)する。フィリピンの販売・営業センターとタイの工場は業務を継続する。
 6月30日付の「バンコクポスト」紙は、「トリンプ・インターナショナル社が1千930人の労働者(多くの妊娠中の労働者を含む)の解雇を決定したことによって、同社と従業員との間でくすぶっていた紛争が再燃した」と報じている。
 同社の子会社トリンプ・ボディ・ファッション(タイ)社は、サムットプラカーン県のバンフリ縫製工場の生産能力を37%削減し、ナコンサワン県の工場(従業員数2千人)での生産は現状を維持すると発表し、8月28日付でバンフリ工場の1930人を解雇すると通知した(被解雇者は8月28日までの給与が支払われるが、即時解雇される)。
 同紙によると、「従業員たちは会社側の説明に納得していない。会社側は彼ら、彼女らの労働組合をどうにかしようとしているのではないかと疑っている」。同社は昨年7月に組合委員長のジトラ・コチャデジュさんを解雇した(「映画館で国歌が演奏されるときに起立しない権利」を支持するTシャツを着用したことが理由。(本誌9月15日号を参照)これに対して同8月にバンフリ工場の1千人以上の労働者がストに入った。
 組合執行委員のブーンロッド・サイウォンさんは「解雇が経済的理由だけとは考えられない。解雇を通知された労働者の多くはジトラさんを守るために組合に入った組合員だ」と指摘している。
 組合リーダーのウォンペン・ウォンソンバットさんによると、解雇された労働者の半分近くが妊娠中であり、会社側もそのことを知っているはずである。
 組合は解雇理由を明確にすることを要求。法律に基づく補償(扶養家族がいる場合や妊娠中の労働者に対する割増を含む)の完全実施を求めて座り込みを開始した。
 7月9日付の「ネーション」紙によると、タイ衣料労連(TWFT)は同8日に、トリンプ社の解雇に関連し政府とBOI(投資委員会)の責任を追及する声明を発表。トリンプ労組顧問のジトラ・コチャデジュさんによると、同社には経営上の問題はなく、利益を上げており、しかもナコンサワン工場の拡張のためにBOIからの資金援助を受けており、新規に1千人の労働者を募集している。
「会社は生産拠点をナコンサワン工場へ移転しようとしている。バンフリ工場には労働組合があり、ナコンサワン工場にはないからだ。BOIの資金援助がバンフリ工場での解雇を引き起こしたと考えられる」。
 バンフリ工場では、6月29日以降、解雇された500人が抗議行動を続けており、BOIや首相官邸への抗議行動も計画されている。
 アビジット首相は失業対策として職業訓練等のプロジェクトを発表しているが、TWFTの声明では、トリンプ社のような解雇が容認されるのなら、職業訓練を提供しても、雇用にはつながらないと指摘している。
 7月13日付「MCOTニュース」によると、同日、トリンプ社の労働者600人がバンコクでデモを行い、COIに対してトリンプ社の解雇撤回を求める要望書を手渡した。COIは、労働省とも連携して同社に対して解雇する人数を減らすよう折衝すると回答した。
 会社側はすでにタイの労働法に基づく補償を行ったと説明しているが、トリンプ労組の顧問のジトラ・コチャデジュさんによると、労働者の多くは高齢で、再就職は難しい。会社側は解雇を避けるための努力を何もしてこなかった。組合はBOIがトリンプ社に解雇を中止するか、少なくとも解雇者をもっと少なくするよう求めることを要求している。

●米国
クッキー工場の11ヵ月間のストが勝利、会社側は工場閉鎖を発表

 ニューヨーク市ブロンクス区のステラ・ドロ(クッキー製造)の労働者は、11ヵ月間のストで勝利し、7月7日、職場に戻った。
 ステラ・ドロは1932年にイタリアからの移民者によって設立され、甘味を抑えた製品で人気を集めた。同社は92年にナビスコに、その後、クラフトに買収され、06年1月にブリンウッド・パートナーズ(投資会社)が買収した。
 同社は昨年、経営危機を理由に大幅賃下げ(従来の時給18〜22ドルから13ドルへ)、休暇や健康保険の拠出の削減を提案し、組合が要求した帳簿の開示や組合との交渉を拒否してきた。
 製パン労働組合第50支部の134人の労働者は昨年8月以降ストに入り、地域の住民や労働組合の支援を受けて闘い続けた。今年6月30日に連邦裁判所が、会社側の対応を違法とし、会社側に労働者を元の労働条件で職場復帰させ労働者の損失を補償し、07年の決算報告を開示することを求める決定を下した。この決定を受けて労働者は7月7日に職場復帰した。
 しかし、会社側は同6日、90日後の同工場閉鎖を発表した。
 「レイバーノーツ」誌7月号によると、134人の労働者たちは週100ドルのスト手当と失業手当でやりくりしながら、1人も脱落することなくピケット闘争を続けた。今年5月に行われたNLRB(全米労働関係委員会)の審理の際には、3日間にわたって、最大100人の労働者・家族・支援者が駆けつけた。地域ではスト支援委員会が組織され、ピケットへの支援や支援集会の開催(開催毎に参加者が増加)、スト基金のカンパなどの活動を行った。会社側はスキャブ(スト破り)を雇用して生産を維持しようとしたが、最初の製品ができるまでに2ヵ月かかり、ひどい品質だった。ボイコットの呼びかけは地域の住民の支持を得た。
 第50支部の委員長のジョイス・アルストンさんによると、組合は弁護士と工場閉鎖の法律上の問題について検討と同時に、工場を操業する意志のある企業への売却等の代替策を検討している。
 「ニューヨーク・タイムズ」7月8日付によると、組合リーダーの1人、マイク・フィリップさん(43歳、勤続15年)は「会社側は彼らの条件を飲ませるために、工場を閉鎖すると言ってきた。しかしわれわれは11ヵ月間、無駄に闘ってきたのではない。われわれは闘いつづける」と語っている。

●英国
ジョニーウォーカー工場の閉鎖に抗議し2万人がデモ

7月26日、スコットランドのキルマーノックで、ディアジオ社の工場閉鎖計画に反対して2万人以上がデモに参加した。スコットランド自治政府のサルモンド首相、前スコットランド相のデス・ブラウンも参加した。
 ディアジオはスミルノフ、ジョニーウォーカー、ギネス、J&Bなどで知られる酒造企業で、キルマーノックは1820年以来ジョニーウォーカーの町として知られてきた。
 ディアジオは7月1日、2年以内のグラスゴーとキルマーノックの工場閉鎖を発表。キルマーノックでは700人が失職する。同社は、ファイフ地方のレベン工場の拡張によって新規に400人の雇用が生まれると説明している。
 ユナイト労組は、ディアジオの工場閉鎖・解雇反対キャンペーンを組織。7月26日の集会・デモはその一環である。ユナイトの書記次長のレン・マクラスキー氏はこの集会で「この雇用削減の動機は、たった1つ、強欲だ。会社は強欲に酔っている。昨年、20億という莫大な利益を上げた(1は約150円)。それでも足りないというのである。この会社のCEO(最高経営責任者)は昨年、500万の報酬を受け取っている。この強欲な経営者が、スコットランドの労働者を犠牲にして来年度以降のボーナスの足しにしようとしているのだ」。
 この工場閉鎖の発表は、スコットランド自治政府や労働組合との事前協議なしに行われた。地域経済への影響も大きいため、政府も同社に計画の見直しを求めている。ユナイトは、他の労働組合と連携し、スコットランド自治政府に働きかけディアジオの雇用を守るための代替事業計画を検討。ユナイトのキャンペーンは多くの市民に支持されている。

●ウルグアイ
衣料工場の労働者が工場占拠・自主生産

ウルグアイ南西部コロニア州のロサリオ(人口9千500人)で、シルフィル・イ・ドリマール衣料工場の経営者が07年に工場を閉鎖し、労働者を解雇した。労働者たちは未払い賃金の支払いを求めて工場を占拠し、経営者による設備・原材料の持ち出しを阻止してきた。一部の労働者(40〜60代の女性)は今年1月に「ロサリオ女性協同組合」を設立し、この町の実業家から作業場を借り生産を開始。労働者たちは占拠中の工場について、労働者管理の下での操業の許可を申請。現時点では、裁判中のため、元の工場や機械を使えない。
 協同組合代表のクリスティナ・ペルドモさん(57歳)は、「企業が作業服を注文する時期を考えると少し遅いかもしれませんが、とにかく私たちは働いています。それが私たちにとって大事なことです。今の機械では作業服とシャツぐらいしか作れないが、いずれは新しい機械を購入したい」と語る。
 シルフィル・イ・ドリマールはかつて、ジーンズやフェルト製品、ジャケットなどを全国で販売し、アルゼンチン、チリ、米国へも輸出していた。注文に間に合わせるために労働者は過酷な労働条件を強いられてきた。同社は03年に首都モンテビデオからロサリオへ移転した。ロサリオは20世紀にはアルミニウムやスズ、自動車用バッテリーなどの工場で栄えたが、最近では多くの工場・倉庫が閉鎖されている。
 闘いは地域の労働組合やナショナルセンターのPIT・CNTから支持されており、とくに、同様の経過で工場を占拠し、自主生産を行っている労働組合が積極的に協力している。政府も自主生産に協力的な姿勢を示している。
(「インタープレス・サービス」7月5日付より)

アジア@世界 バックナンバー
協同センター・労働情報 東京都千代田区三崎町2-13-5 影山ビル501号 Tel.03-6675-9095 Fax.03-6675-9097