アジア@世界
772号

●ホンジュラス
クーデター抗議のストライキ、デモが拡大

 「クーデターに反対する国民戦線」による抵抗闘争が拡大している。キューバの「エスカンブライ」紙7月14日付のテグシガルパからの報告では、3週間目に入った闘争のリーダーの1人、ホンジュラス統一労働者連合(CUTH)のフアン・バラオナ委員長は「暫定政権が簒奪した権力を放棄するまで続ける」と語っている。
 国民戦線は、同10日、道路封鎖を拡大。首都と第2の都市ペドロ・スラや北部の主要都市を結ぶ幹線道路、グアテマラやエルサルバドルとの国境に近いオランチョ県プログレソ市や、米国企業がバナナの積み出しに使っているカリブ海沿岸地域の道路や橋を封鎖。バラオナ氏は、この数時間の間にもテグシガルパやオランチョで平和的デモを軍が弾圧、少なくとも若者5人を逮捕したと非難している。
 6つの学校の教員がクーデターの24時間後からストに突入、セラヤ大統領が復帰するまでスト継続を確認している。同13日には、さまざまな学生組織が政治的立場の違いを超えて、クーデターに反対する平和的行動への参加に合意。
 「NACLA」(北米・ラテンアメリカ会議)のレポートによると、セラヤ大統領の帰国をめぐり緊張が高まっている中で、7月11日に左派の民主統一党のリーダーのロヘル・イバン・バドス氏とラモン・ガルシア氏が何者かに殺害された。

●メキシコ
国際労組代表団が争議組合を訪問、政府の組合への干渉に抗議

 7月上旬に米国、カナダ、ヨーロッパ、南アフリカ、オーストラリア、南米の数十の労働組合代表が5日間にわたりメキシコを訪問、争議組合への連帯を表明した。この訪問団は全米鉄鋼労組、国際鉄鋼労連、国際化学・エネルギー・鉱山・一般労連などの組合が、メキシコ鉱山・金属労組の結成75周年のイベントの一環として計画した。
 訪問団の主要な目的の1つは、グルポ・メヒコにおける2年にわたるストの支援である。労働者たちは、06年2月19日にグルポ・メヒコ社のパスタ・デ・コンチョス銅山で起こったガス爆発(労働者65人が死亡。本誌06年3月15日号を参照)の犠牲者の遺族への補償、投獄されている労働者のリーダーの釈放、鉱山労組リーダーでカナダに亡命しているナポレオン・ゴメス・ウルティア氏(「横領」の容疑で逮捕状が出ている)の安全な帰国を要求している。
 訪問団の一員のジャック・レイトン氏(国会議員、新民主党のリーダー)はメキシコのハビエル・ロサノ労働相と会見して、政府の組合への干渉、組合リーダーの逮捕、組合の銀行口座の凍結、ストの非合法化、組合リーダー殺害の犯人の未摘発、基本的人権の侵害等の問題を指摘し、改善を求めた。
 鉱山労組のゴメス氏に反対するグループは、訪問団の記者会見の会場の外でデモを行い、ゴメス氏を非難する広告をメディアに掲載した。ゴメス氏を支持する組合員たちは、反ゴメス派は会社側に利用されていると非難している。
 訪問団に同行したメキシコの人権活動家で上院議員のロサリオ・イバラさんは、06年にカルデノン大統領が就任して以降、石油産業の労働者約100人が労働争議に関連して「行方不明」になっていると指摘した(「フロンテラ・ノルテスール」のオンライン・ニュースより)。

●イラク
石油労働組合が外国企業への石油採掘権の売却に抗議

 イラク石油省は、同国最大のルマイラ油田の開発について、英国のブリティッシュ・ペトロリアム(BP)および中国石油天然ガス集団(CNPC)と契約を締結することを決定した。イラク石油労働組合連盟と労働者評議会連盟はこの決定に抗議している。石油労組のリーダーのファレー・アボウド・アマラ氏は、「われわれはBPとバスラの英国領事館に対して、バスラに立ち入ることは違法であると警告する書簡を送った。彼らがやってくるなら、われわれは抗議し、ストライキで闘う」と語っている。
 石油省は石油増産計画の一環として6月に8つの油田・ガス田の開発について入札の実施を計画していた。実際には6月30日に1つの油田の開発に関する入札だけが実施された。入札の結果、イラク側の期待と外国企業側の提示額に大きな開きがあったが、フセイン・アル・シャフリスタニ石油相は計画を進めようとしている。
 バスラの労働者評議会と石油労組バスラ支部の代表のアリ・アッバス・ハフィフ氏によると、新エネルギー法がまだ成立していないときに外国企業に採掘権を売却することはイラクの法律に違反しており、契約条件は外国企業側に法外の利益を与えるものであり、また、この契約に伴って石油産業における失業の増加が懸念される。
 アボウド氏によると、バスラの約4万6千人の石油労働者のうち約1万人が石油労組に加盟している。 国会の中でも、国会が承認していない契約は無効であるという声が強く、国有石油会社も油田開発に関する入札に反対している(「ロイター」7月13日付」より)。

●パキスタン
ユニリーバが臨時雇用労働者の解雇を撤回、正規雇用化

 ユニリーバ社のラヒム・ヤー・カーン工場で07年10月に292人の臨時雇用労働者が解雇された。この労働者たちは雇用上の差別に抗議して「行動委員会」を組織し(正規雇用労働者以外は組合への加盟を認められていないため)、全国食品労連の支援を受けてデモや裁判闘争等の行動を展開していた。
 IUF(国際食品労連)は、解雇がOECDの多国籍企業ガイドラインに違反しているとして、OECDに提訴し、OECDの英国連絡事務所の仲介の下で交渉を続けてきた。交渉の結果、ユニリーバは6月24日付でこの工場で120人を正規雇用し、行動委員会のメンバーにこの雇用を提供することに同意した。会社側はこの労働者たちを差別しないこと、組合の活動に干渉しないことを約束した。学歴要件を満たしていない労働者に対しては、最大2年間、賃金に相当する額の奨学金が支給され、医療保険も提供される。新しい条件での再雇用を希望しない労働者には、約3年分の賃金に相当する退職金が支給される。
 IUFの7月1日付の声明によると、「ラヒム・ヤー・カーンにおける妥結は、使い捨て雇用と、正規雇用を減らすことによって労働組合の交渉力を弱めようとするユニリーバの戦略に対する重要な勝利である」。
 同社のリプトン・ブルックボンド紅茶工場における使い捨て雇用との闘いはまだ続いている。この工場では500人余の労働者のうち22人の正規雇用労働者だけが直接雇用で、それ以外の労働者は労働力供給会社から派遣されている。この工場でも行動委員会が組織され、直接雇用と組合加盟・団体交渉への参加を要求している。

●インドネシア
東芝の家電工場でストライキ、IMFが支援基金

 7月13日、西ジャワ州チカランの東芝家電製造インドネシア社の労働者約200人が、バンドン地裁前で、同社における労働争議の解決を要求してデモを行った(「テンポ・インタラクティブ」7月13日付より)。
 IMF(国際金属連盟)傘下のFSPMI(インドネシア金属労組連盟)の労働者たちは、労使で合意した労働協約を登録することを要求しているが会社側は拒否、4月15日に組合員15人を解雇した。
 約700人の労働者たちは4月16日からストライキに入っており、会社側は同24日に全従業員に手紙を送り、ストライキに参加している労働者を解雇すると警告した。この日以降、会社側は生産ラインを止め、労働者に対する健康保険の適用を停止した。
 IMFは4月22日に会社とインドネシア政府に対して、労働組合の権利を守るよう求める書簡を送った。また、FSPMIを支援するための基金を設立した。
 5月5日には、警察官と約30人の雇われ暴徒が、工場の門前に集まっていた労働者を襲撃した。
 会社側はストライキに参加している労働者を告訴し、解雇しようとしている。

●中国
陜西省の新しい労働団体を当局が「反動組織」と攻撃

 中国の陜西(シャンシー)省で約20企業の労働者380人余が「陜西企業工会維権代表大会」(工維会)設立を省の党委員会と総工会に届け出た。
 この団体は、現行の「従業員代表大会」制度に基づいて、既存の組合を監督して、企業の改革や倒産、組合幹部の違法な活動等の重要問題について労働者に報告することを目的としている。
 設立者たちによると、この団体を設立した動機は、労働者の権利が裁判や嘆願を通じては守ることができず、問題を解決するためには嘆願や道路封鎖などの行動ではなく、効果的な労働組合を作る必要があるということである。
 設立届が送付されてから2ヵ月が経過するが、党組織からも総工会からも何の連絡もない。総工会幹部はこの団体を「外国の敵対勢力と結びつく反動組織」であり、設立者たちは「社会の調和を乱している」と非難している(「チャイナ・レイバー・アップデート」のウェブより抄訳)。

●フランス領ポリネシア
核実験の被災者が政府代表団との会見を拒否

 フランスの原子力安全特使は7月14日、核実験被害者補償法に基づく補償についての交渉のためにフランス領ポリネシアを訪問したが、被災者団体は保障法の内容が不十分であるとして特使との会見を拒否した。
 ムルロアでは36年間に152回の核実験が行われ、核実験に関係した労働者など多数の人々に重大な健康被害を及ぼしている。4千700の被災者を代表する「ムルロアと私たち」協会のローランド・オルダム会長によると、「多くのことが隠されており、フランス政府はいまだにフランスのクリーンな核実験について語っている。しかし、核実験がクリーンではなかったことを示す多くの証拠がある。また、私たちは透明性を要求しているが、彼らは軍の記録保管庫を永久的に閉ざそうとしてきた」(「ラジオ・オーストラリア・ニュース」より)。

●マレーシア
外国人労働者への鞭打ちの禁止を

 マレーシアでは02年に外国人労働者に対する処罰として鞭打ちを容認する法律が制定された。
 マレーシア国会は、02年以降3万5千人の移住労働者が鞭打ちを受けているという調査結果を発表した。その多くはインドネシア人労働者である。アムネスティ・インターナショナルをはじめとする人権団体は、02年の法律の撤回と鞭打ちの禁止を要求して国連や近隣諸国に働きかけている。
 アムネスティ・インターナショナル・アジア太平洋地域代表のサム・ザリフ氏は次のように語っている。
 「マレーシアの経済は外国人労働力に大きく依存しており、移住労働者・移住者の数は200万人を超えていると思われます。02年に、外国人の流入に対する国民の危機感に対応することを1つの目的として、外国人への処罰として鞭打ちを容認する法律が制定されました。この規定が犯罪行為だけでなく、ごく小さな法律違反にも適用されています。それ以降警察はこの処罰を定期的に実施しています。これが世界中で禁止されている拷問、非人道的処罰にあたることは明らかです。マレーシア政府に求められているのは、この人たちを保護するための措置を導入することであって、中世的な処罰を加えることではありません」(「ABCラジオ・オーストラリア」7月6日付より)。
 インドネシア政府は6月下旬にマレーシアへの労働者派遣を禁止した。7月中旬にこの問題について両国間の協議が行われる予定である。

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