たたかいの現場から
775号

シンポ「外国人研修・技能実習制度から見た労働契約法制」
中国、韓国、日本の弁護士、学者、NGOの連携に向けて開催

 08年8月22日、山梨県でひとつの事件が起こりました。中国人技能実習生に対する強制帰国事件です。労働条件の改善と適正な研修を求めた彼女たちに対して、会社と協同組合(第1次受入機関)、そして中国の送り出し機関が共謀して暴力的に強制帰国を図ったのでした。この事件は瞬く間に中国国内に知れわたり、昨年の中国海外メディアによる10大ニュースに入るほどでした。そして、中国国内の法律家、弁護士を動かすこととなり、本格的な日本と中国の支援の連携が実現しました。
 この山梨事件を契機に、支援に関わった私たちは、外国人研修・技能実習制度による労働基準破壊や人権侵害に対してそれぞれの国における労働法制は如何に働くのか、実効力があるのかが問われることを改めて認識しました。そして、その問題意識が日本と中国の支援者それぞれの共有するところでもありました。  今、この地球上では、国境を越えて働くあるいは移住する人々が様々な経済活動を行い、それぞれの国で社会づくりに参加しています。ところがもう一方で人の移動をビジネスとして利潤のみを追及する企業、団体が、労働基準の破壊や人権侵害をもたらし、人類が歴史の教訓からつくりだしてきた民主主義の規範をも壊しかねないこととなっています。
 私たちは、中国、韓国、日本の学者、弁護士、NGO活動家、そして労働者、市民が、民主主義の破壊に対して、労働契約法制を相互に検討しながら、普遍的国際規範も関係づけ、どのような草の根における連携をつくり出せるのかを、一緒に探っていきたいと思い、以下のようなシンポジウムを企画いたしました。ご参加、ご協力をお願いします。

◆外国人研修・技能実習制度から見た労働契約法制
 中国、韓国、日本の弁護士、学者、NGOの連携に向けて
10月10日(土)13時〜17時
明治大学リバティータワー8階(御茶ノ水駅)
常凱(中国人民大学)、段毅(弁護士)他
宮里邦雄(日本労働弁護団会長)他
民主労総他
主催:実行委=共同代表:
  大脇雅子(外国人研修生権利ネット共同代表・弁護士)、
  常凱(中国人民大学労働関係研究所所長・教授)
連絡先:(日本側):外国人研修生権利ネット
tel:03-3836-9061

賛同金  団体 1口5千円 個人 1口千円
振込先  郵便振替番号:00190−7−582688
       みずほ銀行上野支店 (普)2403882
      *名義はいずれも「外国人研修生権利ネットワーク」

署名協力のお願い 全石油昭和シェル労組より

 1989年2月、昭和シェル労組大阪支部が大阪府地方労働委員会に賃金・昇格差別の救済申し立てをしてから丸20年以上が経過した。大阪1次事件は16年に及ぶ地労委、中労委での入念な証拠調べを経て組合員の資格と賃金の是正を命じた。
 ところが07年5月、東京地裁民事36部難波裁判長は「不当労働行為意思の存否について検討するまでもない」として中労委命令を取り消すという、労働委員会制度を否定する不当判決を出したのである。
 会社の出した書証の中にも「組合員をよりマイナーな影響力のない職場に配転させたい」等という不当労働行為意思の明白な証拠もあるのにだ。
 組合は即座に東京高裁に控訴し、2年あまりの控訴審では大阪支部組合員全員の証人調べも行われ、会社の不当労働行為意思に基づく差別、初審の誤り等を完璧に立証した。兵庫事件(神戸支部日笠君への不当労働行為事件)とあわせ控訴審は去る7月14日結審し、判決日は追って連絡ということになった。
 組合は今、裁判所宛の団体署名、個人署名に取り組み始めた(署名用紙は組合HPよりダウンロードできます)。
 すでに昭和シェルにおける労使紛争は37年を経過している。現在中労委では大阪2次事件、都労委事件が係争中である。いずれの事件も争点は重なっており高裁判決の持つ意味は労使紛争解決にとって大変大きい。  今も不当労働行為や女性差別を続ける昭和シェル石油の労務政策を変えさせ37年労使紛争に勝利するためにも逆転勝利判決をかち取り、会社を追い込んでいきたい。
 読者の皆さんの署名への協力をお願いしたい。
署名のダウンロード ←クリックしてください。

(全石油昭和シェル労組 瀧秀樹)

阪急トラベルサポートとの闘い

 取材に応じてくれた人がそのことを理由に解雇など不利益扱いを受けた場合、メディアはどうするべきか――。企業などにとって表に出したくない実態を、勇気をもって実名で話してくれた人が仕事と生活を奪われているのに放っておけるか。取材・言論の自由をも脅かすこうした企業の行為は断じて許されない。あらゆる手段をもって闘うそれが『週刊金曜日』の出した答えだ。
 「誇りをもって働ける業界にしたい」との思いで、(株)阪急トラベルサポート東京支店(田中和男支店長)登録の旅行派遣添乗員・塩田卓嗣さん(46歳)は本誌の取材に応じた。記事が掲載(09年2月20日号)された約1ヵ月後の3月18日、塩田さんは田中支店長に突然呼ばれ、「記載の発言は虚偽だ」との一方的な理由で事実上の解雇処分(アサイン停止)を受けた。ところが同社から本誌には抗議はおろか事実確認すらなかった。狙いは明白だ。それにしてもメディアではなく取材される側を狙い撃ちにする行為は、いかにも姑息で卑劣ではないか。
 塩田さんの加入する全国一般東京東部労働組合と、塩田さんが支部委員長を務める阪急トラベルサポート支部は5月22日、東京都労働委員会に「アサイン停止の解除」を求めて不当労働行為救済を申し立てた。続いて、『週刊金曜日』と記事を執筆した野村昌二さんは7月1日、本誌および執筆者の名誉を毀損し言論の自由を萎縮させる行為だとして、(株)阪急トラベルサポート(大阪市北区、西尾隆代表取締役)を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起した。東京地裁での裁判は8月31日に始まったが、裁判長はなんと澤野芳夫氏であった。過去の判決を調べればすぐに分かるが、知る人ぞ知る、人だ。
 本誌HP(欄外に記載)には著名人もそうでない人からも多くの支援メッセージが寄せられている。この場を借りて心から感謝したい。ただ、闘いはまだ始まったばかりだ。塩田さんらの目前の敵は阪急トラベルサポートだが、背後には時間外労働に応じた残業代を支払おうとしない旅行業界全体の思惑がある。言論の自由をめぐる私たちの損害賠償請求訴訟の第2回口頭弁論は10月5日(月)午後1時10分から東京地裁712号法廷で開かれる。42ある傍聴席から強い怒りと憤りを、法廷の上段と右側(会社側)にぶつけたい。ご支援とご協力を!
『週刊 金曜日』の署名先ブログ ←クリックしてください。

(片岡伸行 『週刊金曜日』副編集長)

09平和の灯を!ヤスクニの闇へキャンドル行動

 8月7日〜8日に「09平和の灯を!ヤスクニの闇へキャンドル行動」を開催しました。06年、08年に続き今年は3回目の開催で、09年行動のテーマは「東アジアからヤスクニを見る」。1日目はシンポジウム、2日目は証言・コンサートを実施し、最後はキャンドル・デモで締めくくりました。今回の行動には、韓国、台湾、中国からも戦争被害者、市民らが参加、東アジア民衆の取り組みとして反ヤスクニ行動を展開しました。
 1日目のシンポジウムでは、南相九さん(韓国・東北アジア歴史財団研究委員)、チワス・アリさん(台湾・立法院委員)、シュテファン・ゼーベルさん(東京大学総合文化研究科博士課程)が報告(石原昌家沖縄国際大学教授は台風のため参加できず文書報告のみ)。
 南相九さんは、家族にも知らせず無断で、しかも創氏名(日本名)のままで韓国人戦死者を合祀した日本政府・靖国神社の植民地主義を批判しました。チワス・アリさんは、日本が台湾支配のために原住民多数を殺戮した歴史を指摘しつつ、その上で戦争に動員し、戦死した者を合祀し「魂を返さない」でいる靖国神社を強く批判しました。そして、ゼーベルさんは同じ「枢軸国」として戦争を戦った日独のそれぞれの戦死者の追悼のあり様、その差異について、ドイツの戦没者追悼の歴史・現状を報告しつつ明らかにされました。このシンポには300数十人の方が参加されました。
 翌8日は、上野公園水上音楽堂でコンサート・遺族証言。遺族として、韓国からイ・ヒジャさん(映画『あんにょん・サヨナラ』主人公)、台湾からタイヤル族の張嘉 ・張雅舜さん姉妹、日本の熊田郁子さんに証言していただきました。ヒジャさんは「父の"恨","■"を解くため合祀取消しの日まで闘う」と、張さん姉妹は「加害者と被害者の魂を同じところに合祀すべきではない」と訴えられました。  コンサートには、台湾から「飛魚雲豹音楽工団」、韓国から"権海孝","■"さんら3人のアーティスト、そして日本から寿、生田卍さん、月桃の花歌舞団らが参加。台湾原住民の戦死者を追悼する鎮魂歌、『イムジン河』『朝露』などの合唱で大いに盛り上がりました。
 キャンドル・デモに対しては例によって在特会などの右翼が罵声などを浴びせてきました。しかし、韓国・台湾・中国・日本の市民のデモ隊は「ノー!ヤスクニ」「合祀をやめろ」等のシュプレヒコールをあげ整然とデモを行い、2日間の行動を終えました。

(平和の灯を!ヤスクニの闇へキャンドル行動実行委員会 矢野秀喜)

8・15「靖国」デモに右翼の暴力

 総選挙公示を目前にした8月15日の「終戦記念日」。小泉内閣以後、首相の「靖国参拝」が控えられていることもあって、「靖国」は政治焦点にはなっていないように見える。
 この日も靖国に参拝した閣僚は野田聖子・消費者担当相ひとりだった。しかし「A級戦犯分祀」をめぐるさまざまな思惑や「国立追悼施設建設」問題など、「靖国」は侵略戦争と植民地支配についての日本の歴史認識に関して、ホットなテーマであり続けている。
 そのことは昨年来の映画「靖国」上映妨害や、田母神前航空幕僚長が右派論壇から「ヒーロー」としてもてはやされ、「主権回復をめざす会」や「在日特権に反対する市民の会」(在特会)などの排外主義言論に少なからぬ若者たちが同調し、街頭に登場している状況に、その一端が示されている。
 この日、反天皇制運動に持続的に取り組み、今年11月12日の「天皇即位20年奉祝」行事に異議を唱えるキャンペーンを展開している人びとは、「アキヒト天皇制20年 『戦争国家で安心安全』を問う8・15行動」を行った。
 全水道会館で行われた集会では小倉利丸さん(富山大教員)が報告。在特会などがネットを通じて差別的・排外主義的言論をまきちらし威圧的・暴力的な集会妨害や街頭行動を繰り返していることに注意を喚起した。
 小倉さんは、それと共にグローバル資本主義の危機の中で、新たな理念を欠いたまま「国民統合」を図らなければならない天皇制に対して、民衆の側からの自由な対抗メッセージをつくりだしていく作業の重要性を強調した。
 リレートーク後のデモには200人が参加。数多くの横断幕、のぼり、プラカード、パペット(人形)などを携えて猛暑の中をにぎやかに行進した。
 デモは最初から右翼につきまとわれ続けたが、とりわけ靖国通りに入ってからは歩道からデモ隊に突入して殴りかかり、マイクを奪い、パペットを破壊し、横断幕を引きちぎるなどの行為を繰り返した。
 九段下交差点でデモ隊を待ち受けていた右翼約300人は、デモ解散地点までデモに並走して妨害・突入を試みた。警察は形式だけの「規制」で、右翼を放置したままだ。
 さらにデモ終了後、駅に向かうデモ参加者にも右翼は執拗に襲いかかり、この過程で鼻骨骨折で全治3週間の仲間をふくめ少なくとも7人が負傷した。
 このような暴力に決して委縮することなく、のびやかな言論・行動の場を作り出そう。

(本誌編集委員 国富建治)

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