たたかいの現場から
842号

野田政権の「大飯再稼働」決定と「さようなら原発1千万人署名第一次提出」
7・16代々木公園10万人集会の成功へ

句」を並べ立て、大飯原発の再稼働を「決断」したという野田首相の6・8記者会見の後、事態は急速に動いた。6月16日午前、ついに野田政権は関係閣僚会合で大飯3、4号炉の再稼働を最終決定し、早くもその日の午後から大飯原発では運転再開に向けた作業が始まっている。  こうした中で首相官邸前では連日の抗議がひきもきらず続いている。6月15日、首都圏反原発連合有志が呼びかけた毎週の「金曜日行動」には1万1千人が参加し、首相官邸前は抗議の人波で埋め尽くされた。6月16日には午前9時から「再稼働反対!全国アクション」が呼びかけた緊急行動にも600人が参加、首相官邸を一周する「官邸ウォーク」が行われた。翌6月17日、福井市で開催された「再稼働反対 福井でつながろう集会」には2千200人が集まった。首都圏からもバス6台で250人の市民がかけつけた。  「さようなら原発」1千万人署名は6月12日に約750万筆が集約され、その一部がこの日、横路孝弘衆院議長に提出された。6月15日にはさらに首相官邸で第一次集約の残りの部分が藤村官房長官に提出された。6月12日に衆院第1議員会館で開かれた「署名第一次提出報告集会」には、鎌田慧、内橋克人、澤地久枝、落合恵子の署名呼びかけ人各氏とともに、与野党国会議員40人以上が参加し、一人ひとりが野田政権の「原発再稼働」政策に対する鋭い批判を行った。参加した40人の国会議員の多くは民主党所属であり、その中には菅直人前首相も含まれている。菅前首相は「孫や子どもに原発のない社会を」と明確に脱原発の立場を訴えていた。  言うまでもなく大飯再稼働強行は、あくまで原発にしがみつこうとする勢力の焦りと危機感の深さを物語っている。このあがきを跳ね返す民衆的運動の力量も着実に積み重ねられてきた。7・16代々木公園10万人集会の成功は、そのための跳躍台である。

(本誌編集企画委員 国富建治)

東京地裁の誤りを高裁段階で立証する運動が必要JAL地裁判決を問うシンポジウム

「日本航空の不当解雇撤回をめざす国民支援共闘会議」主催による「解雇自由社会NO! JAL地裁判決を問うシンポジウム」が、6月18日、新宿文化センターで開かれた。3月29、30日に東京地裁で相次いで出された整理解雇有効の不当判決に対しては、すでに本誌837号で詳報、批判した。このシンポでも、宮里邦男・労働弁護団会長を進行役として、今野久子弁護士、醍醐聰・東大教授(経営学)、萬井隆令・龍谷大教授(労働法)の3人の論客が、地裁判決の問題性を鋭く指摘した。  やはり注目されたのは、会社更生手続き下における「整理解雇四要件」への初判断であった。地裁判決は「更生計画中であっても整理解雇法理は適用される」と口先では言いつつも、実際には会社主張を全面的に採用し、机上の「再建策」のもとに、闘う労働組合員を職場から排除した。  3人のパネラーは、それぞれ地裁判決を的確に批判し、控訴審での逆転勝利を提言した。しかし、当日配布された伊藤眞・早大教授(倒産法)らの地裁における会社側意見書は、裁判長が不採用にしたにもかかわらず、判決はその内容に沿って裁判所が「自らが認可した更生計画」を最重視し、人員削減したことを正当としたと示している。裁判所が自らの過ちを簡単に認めるはずはなく、新たな主張や立証も必要とされる。  例えば、東京都労委が、裁判所の選任した管財人が「ストライキを準備すれば3千500億円の出資はない」と恫喝したことを不当労働行為としてすでに認定しているなどの更生計画自体の不当労働行為性などの立証も有効と思える。ILOの日本政府への勧告を含め、東京地裁の誤りを高裁段階で正す運動や世論形成も必要とされている。

(本誌編集部 水谷研次)

年末までが勝負 カルテのないC型肝炎訴訟

に罹病した薬害C型肝炎被害者は、全国に約1万人存在すると言われています。そのうち08年に成立した特措法(薬害肝炎救済法)によって救済されたC型肝炎患者は、現在まで約1千900名に止まっています。その理由として感染原因を限定していることに加え、これまでの訴訟で裁判所による確定判決を持つ患者を救済対象としており、明確な診療記録や医療関係者からの証言など、物的証拠のない患者は救済されないという矛盾をはらんでいます。
 現実問題として、この特措法では5年間の保存期間を過ぎたカルテのない患者は、カルテの残っていた患者より長期間苦しんできたにも関わらず救われないということから「カルテがないC型肝炎訴訟」の提訴は始まりました。
 昨年11月29日の東京地裁をスタートに、現在までに大阪・鹿児島・札幌・広島・熊本の6地裁482人の原告となりました。しかし、来年1月15日の5年目で効力を失う時限立法の特措法を目前に控え、6月19日、第3回の総会を東京都内で開催しました。
 総会当日は、東京地裁で10時半から5時過ぎまで第8回口頭弁論が開催され、全国から参加した原告団や支援者が交替で傍聴を行いました。裁判終了後に日比谷図書館の集会室に移動し、弁護団による裁判報告を行った後に総会を開催するという、かなりハードなスケジュールでした。
 総会では、特措法の失効前に「カルテのないC型肝炎訴訟原告団」全体の一括解決を求める方針が提案され、そのためには(1)年末までに1千名の原告を達成、(2)原告団・弁護団・サポーターが一体となった法廷闘争を展開、(3)政治家との連繋を強めることなどを全体で確認しあいました。

(本誌副編集長 岩崎松男)

JP労組全国大会代議員に立候補
 千人の仲間から支持

 JP労組定期全国大会(6月13日〜15日、於東京)の大会代議員選挙開票結果が出て2日後の朝、深夜勤がもうじき終わろうというとき、発着ホームにトラックを着けて降りてきた日本逓送(郵便車部門)の人に声をかけられた。振り向くと、30年近く前、当時の全逓労組で地区青年部の役員をやっていた頃の役員仲間だ。「今の組合はひどい。票を入れましたよ」。旧全逓と全郵政が統合して4年前に発足したJP労組はたしかにひどい。今度の大会議案にしろ「事業の発展を通じて」という言葉がまず踊る。雇用を守るためと称して生産性向上運動に駆り立てようというのだ。
 しかし私が立候補を思い立った直接のきっかけは自分が働く支店で4月に起きたパレット転倒事故。重さ100キロを超す鉄製パレットの下敷きになって非正規雇用社員が背骨を圧迫骨折した。この事故のことは各課のミーティングで周知されたが、「扱いに気をつけてください」と繰り返されるだけ。会社の責任には頬被りだ。各課の経理の前には「労働災害絶滅宣言」なるものが、それも支店長とJP労組支部長が握手している写真付きで掲出されている。なんと空々しいことか。黙っていられなくなった。そんな思いが募っていたとき全国大会の代議員選挙の公示を目にしたのである。当落は度外視。一週間ある氏名公示期間中に選管承認ビラを通じて声を上げることができるではないか。
 改めて大会議案に目を通すと、東日本大震災について復興支援の取り組みを自賛しながら原発にも被曝労働にも触れない。事故現場で作業にあたる労働者の置かれた過酷な状況はもとより、福島の郵便労働者たちは今も高放射線量の下で被曝しながら配達業務を行っているというのに。非正規雇用の問題も知らん顔。賃金制度の一層の能力給化は賃下げと労働強化になるのがミエミエなのに会社と一緒になって進めようとしている。会社がそうであるだけでなく労組もまた働く者をないがしろにしているのだ。私は思うところを公示期間中に3種類のビラに書いて発行した。そのウラオモテ合わせて6本の記事は自分のブログ『酔流亭日乗』もアップ。郵政には『伝送便』という交流誌がある。そのウェブサイトが公示期間のあいだブログをリンクしてくれたから、全国の仲間に声を伝えることもできた。さて開票結果は定数12に13名が立候補して、13位で落選であった。しかし、有効投票数5千364票のうち963票を獲得した。声を大きくしていく上での足がかりはつかんだと思っている。

土田宏樹(JP労組新東京支部)

三里塚一坪共有地運動への敵対を許さない!

 成田国際空港会社は、アジア国際空港競争の劣勢、羽田空港の国際化による成田空港の独占的地位の崩れを空港の拡張、年間発着枠30万回に増大(2014年度)で競争力をつけ、挽回をねらっている。この暴挙によって東峰地区の人々は、B滑走路南端に着陸するジェット機が頭上40メートルで通過して轟音と排気ガスの撒き散らし、航空機事故の危険性など深刻な人権・環境破壊に追い込まれている。
 さらに三里塚闘争破壊のために横風用滑走路の完成を阻む横堀地区の柳川秀夫さん(反対同盟世話人)持分土地裁判、現闘本部一坪共有地裁判、横堀くぼ地一坪共有地裁判を提訴した(10年10月)。いずれも全面的価格賠償方式(地権者との合意もなく一方的な金銭補償をもって土地強奪ができる)の適用を求めてきた。併せて三里塚大地共有委員会U(加瀬勉代表)の連絡先である横堀団結小屋(労活評現闘)の撤去・土地明け渡しを求める裁判も起こした。これらの暴挙は、シンポ・円卓会議での運輸省と公団の「強権的な手段を用いない」という「約束」(95年)、黒野空港会社社長(05年)による東峰住民への「謝罪文」の投げ出しであり、司法権力を動員した強制収用だ。
 千葉地裁は、現闘本部裁判、柳川裁判、横堀裁判で空港会社の単独所有を認める不当判決を出した(11年9月)。横堀・団結小屋破壊裁判も一審不当判決に続いて東京高裁も団結小屋の「撤去・土地明け渡し」を追認した(12年4月25日)。しかも上告中であり判決が確定していないのに住民の追い出し、小屋取り壊しができる「仮執行」も認めた。
 反対同盟はただちに抗議声明を公表。大地共有委員会(U)と三里塚空港に反対する連絡会は、5・20横堀集会とデモを行った。

山下一夫(三里塚空港に反対する連絡会)

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