アジア@世界
788号

●ニュージーランド
「最賃適用除外が若者の雇用対策?ACT党案に怒り」

 ユナイトによると、1999年に労働党が政権に就いたとき、20歳未満の最低 賃金は時給4・20ドル(現在のレートで1NZドルは約63円)、成人の最低賃金 は7ドルだった。労働党政権の時期に、成人の最低賃金は12ドルに引き上げられ た。05年3月に、18〜19歳の最低賃金が9.5ドル、16〜17 歳の最低賃金が7.6ド ルに引き上げられた。08年には16〜17歳を対象とする最低賃金は実質的に廃止さ れた。
 この期間に、若者の失業率は減少し続け、05年12月には11・8%まで下がっ た。これは1987年以来の最低水準である。労働党が選挙で敗北した時点で も、若者の失業率は17・9%で、9年前に同党が政権に就いた時より低い水準 だった。このことが示しているように、最低賃金の引き上げが雇用に悪影響を及 ぼすという主張は根拠がない。
 現在、世界的不況の中で青年の失業率は25%に上がっており、地域社会に深刻 な影響を及ぼしているが、1990年代前半にも同水準が記録されている。
 労働組合は最低賃金を平均賃金の3分の2まで引き上げることを要求してお り、ユナイトはこの目標に向けて当面15ドルに引き上げることを要求している。 これは1950年代〜60年代の水準であり、ニュージーランドがほぼ完全雇用を 実現していた当時の水準だ。
 CTUのヘレン・ケリー委員長は「それでなくてもニュージーランドの最低賃 金は非常に低いのに特定の人々をさらに安い賃金で働かせるというのは全く不当 だ。また、同じ仕事をしているのに年齢が違うだけで賃金が違うというのは不合 理だ。……労働組合は07年に若者の賃金差別をなくすためのキャンペーンを組織 し、この制度を廃止させた。われわれはそれを再導入しようとするあらゆる動き を阻止する」と述べている。

●中国「労働裁判が急増、年間31万件に」

 中国の最高人民法院(最高裁)が3月11日に発表した労働裁判に関する統計に よると、09年に中国の裁判所が扱った労働争議は31万7千件で、08年を 10・ 8%上回った(08年に前年の2倍に急増している)。06年は12万6千件だった。
 その内訳は示されていないが、多くの証言から考えて、大部分が賃金の遅配、 超勤手当や諸手当、社会保険の不払い関係と推測される。王勝俊(ワンション ジュン)最高裁長官は、世界経済危機が労働裁判件数の増加の主な原因であり、 多くの地方裁判所は人員が不足していると指摘している。たとえば、東莞塔(ト ンコワン)市の塘厦の町の裁判所は、3人の裁判官で年間1千件近い裁判を処理 しなければならない(全国平均では、1人の裁判官につき45件)。
 裁判官不足に対応するために地方政府や司法機関は、争議を仲裁や調停によっ て解決して、裁判を減らそうとしてきた。最近では多くの工業地域で仲裁・調停 の件数も急増しており、労働裁判の増加率は争議の増加率を完全には反映してい ない。
 しかも、裁判所が集団的な労働争議を取り上げるのに熱心でないため、集団的 な不満を持つ労働者たちはストやその他の集団的争議行為によって問題を解決し ようとする傾向を強めている。「国際労働権フォーラム」の新しい報告書の中 で、インタビューを受けたある移住労働者は次のように話している。「移住労働 者の立場は弱いので、多くの場合、会社側と争うのが難しい。しかし、集団の中 にいれば、もっと影響力を強めることができる」(「チャイナ・レイバー・ブレ ティン」より)

●ポルトガル
「公務員が歳出削減に抗議してスト」

 3月4日、公務員が賃金カットに反対してストに入り、学校、裁判所、病院、ゴミ収集などの業務が止まった。
 ギリシャ、ポルトガル、スペインの各政府は深刻な財政危機の中で、EUからの圧力を受けて大幅な歳出削減を進めようとしており、特に公務員の人件費を大幅に削減しようとしている。
 ポルトガル労働者総連合(GCPW、72万5千人)のリーダーのマニュエル・カルバロ・ダ・シバさんは「労働者の行動には巨大な不満が表れており、ストには多くの労働者が参加するだろう」と語った。ポルトガルではこの数年間、政府によって年金や諸手当の切り下げが進められ、今年は賃金が凍結された。財政赤字削減の努力への投資家の信頼を得るためである。
 政府は2013年までに財政赤字をGDPの3%以下へ削減する(現在、9%)ことを目標とした長期予算計画を準備しており、今回のストはこの動きに対抗するものである。
 政府は最近のメディアへの介入で批判を浴びており、ホセ・ソクラテス首相(社会党)の支持率は1月の40・3%から2月には29・4%へ急落している。
 「BBC」によると、政府はすでに2010年の予算に公務員の賃金カットを組み込んでおり、退職する公務員の半数は補充しないことをEUに対して約束している。銀行経営者の賞与に対する50%の課税も計画されている。
 GCPWは3月4日に続き、5月に全国的行動を計画している。
 (「ロイター」3月4日付等より)

●スペイン
「歳出削減策に反対して6万人がデモ」

 2月23日、政府の歳出削減と定年延長(67歳定年)の計画に反対して全国でデモが行われた。このデモはサパテロ首相(社会党)の政権の6年間で初めての大規模なデモとなった。
 同首相は1月に500億ユーロの歳出削減(1ユーロは約124円)と公共サービス部門の新規雇用凍結を発表。またスペインの厳格な労働法を改定して、労働者の雇用をより容易で、低コストにしようとしている。
 この日、マドリードでは6万人がデモに参加した(警察発表は9千人)。CO(労働者委員会)のリーダーのイグナシオ・フェルナンデス・トクソ氏は、「サパテロ首相は年金と何百万人もの人々の将来ををもてあそぶのをやめるべきだ」と訴えた。バルセロナとバレンシアでも同規模のデモが行われた。
 高校教師のカルロスさん(47歳)は、「労働者が金融危機を引き起こしたのではないのに、労働者が犠牲にされる」と憤っている。
 しかし、危機の中で失業率が20%に達しているにもかかわらず、これまで政府への抗議行動を呼びかけて来なかった組合に対する不信を表す労働者もいる。公務員のローザさん(64歳)は、「デモはいいことだが、組合は何かやっていることを示すためにやっているだけだ。彼らはこれまで何もやってこなかった」。ある世論調査では、約半数が、組合が定年引き上げ反対のゼネストをするなら支持すると回答しているが、2大労組はそのような可能性を否定している(「BBC」、「ロイター」より)。

●米国
「AFL・CIOが金融機関に対する波状デモ」

 AFL・CIOは3月15〜26日に「いますぐまともな仕事を! ウォールストリートに金を出させろ!」をスローガンに、ウォールストリートの6つの大銀行の全国の支店に対してデモを行う。
 宣伝用資料には、その目的を次のように説明している。
 「短期的には、経済の回復のために雇用創出基金が必要であり、少なくともその一部を、経済を本当に活性化するような支出のために借りなければならない。しかし中・長期的には今日使う金をいつかは返さなければならず、長期的な負債を処理するための税基盤を確立する必要がある。
 ウォールストリートに経済の修理のための金を出すよう求めるのは全く正当なことだ。……
 第1に、われわれは銀行救済のために使った金をウォールストリートの銀行に支払わせるというオバマ大統領の提案を支持する。  第2に、われわれはウォールストリートのボーナスに特別税を課すことを支持する  第3に、われわれはヘッジファンドや未公開株式の管理者たち、つまりこの国でもっとも富裕な人たちの所得に対して、抜け穴をふさぎ、通常の税率で課税することを支持する。  第4に、AFL・CIOは、ITUC(国際労連)の金融投機への課税を求めるキャンペーンに参加し、オバマ大統領に、主要な金融市場を擁する国で一斉にそのような税を導入するという提案を支持することを要求する」。

●英国
「欧州ロビンフット税」で年1兆ユーロの税収」

 英国TUC(労働組合会議)のブレンダン・バーバー書記長と、ドイツDGB(労働総同盟)のミカエル・ゾンマー委員長はそれぞれ、ブラウン首相とメルケル首相に対して、3月末にブリュッセルで開催される欧州評議会において欧州金融取引税の導入を提案することを求める書簡を送った。
 両労組によると、この税の導入(「ロビンフット税」と呼ばれる)は、経済危機による傷みを修復し、公共サービスを守り、世界の貧困と闘い、気候変動対策のための費用を捻出するために活用できる。EU全体で金融取引に課税することによって年間1兆ユーロの税収が得られる。
 バーバー書記長は次のように述べている。「ブラウン首相とメルケル首相はグローバル金融取引税の提案によって世界をリードしてきたが、ヨーロッパ・レベルでの行動も必要だ。……銀行が従来通りの活動をして、公共サービスを大幅にカットするのか、それとも銀行への税を少し変えることによって、他のすべての人々にはっきりとした変化を実感できるようにするのかだ」。
 欧州議会は3月11日に、欧州委員会に金融取引税の導入について詳細に検討することを求める決議を536対80で可決した。TUCおよびDGBが加盟する欧州労連もヨーロッパ・レベルの金融取引税の提案を支持している。

●コロンビア
「41人の組合リーダーが殺害される」

 カナダ公務員労組(CUPE、60万人)のポール・モイスト委員長は3月10日、「コロンビアの国立労働学校の新しいレポートで、09年に同国の45人の組合リーダーが暗殺されたことが明らかにされている。私は深い悲しみをおぼえる」と語った。犠牲者は、コロンビアの労働者の生活水準を引き上げ、基本的な権利を保護しようとしたために、政府と結びついた右翼の殺人部隊によって殺害された。
 また、国連とアムネスティ・インターナショナルの最近の報告は、先住民やアフリカ系住民に対する殺害や強制退去をはじめとする暴力がエスカレートしていることに深刻な憂慮を表明している。現在も続いている半軍事組織の暴力のために、400万人以上の人々が国内難民となっている。
 CUPEは、ハーパー政権がこのような状態にあるコロンビアとのFTA(自由貿易協定)を議会の承認なしで進めようとしていることを非難している。モイスト委員長は、「われわれはカナダ政府が、コロンビア政府との交渉を進める前に、同国の状態について、独立的な人権影響調査を実施することを再度要求する」と述べた。

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