たたかいの現場から
845・6号

奪われたものは奪い返す
 JAL控訴審勝利に向け、励ます集いを開催

 稲盛和夫JAL会長(当時)自身が「解雇の必要はなかった」と公言したJALの整理解雇事件は、今年の3月30日、東京地裁でよもやの不当判決となった。9月以降に開始される控訴審に向けた意思統一として、「大きなうねりではね返そう不当判決!勝ちとろう職場復帰!」をスローガンにした集会が、7月26日の夜、都内日比谷公会堂で開催された。  集会は、共闘会議の共同代表の一人である全国港湾・糸谷委員長の、「東京地裁の裁判官や稲盛会長には志がない」という怒りの開会挨拶にはじまり、「控訴審を財政的・運動的に支えよう」と、支える会・柚木事務局長や女性のアピール呼びかけ団体・堀江日本婦人団体連合会会長の応援が続いた。  控訴審必勝に向けたポイントは、弁護団の山口弁護士から提起され、6月15日に理事会で採択されたILO結社の自由委員会の是正勧告の意義は、牛久保弁護士より報告された。   また、かつてJALの組合つぶしが、連続して重大な航空機事故をもたらした歴史と、今の職場が同様の状況にあることを、原告団自身が朗読劇で表現した。励ます会呼びかけ人の醍醐東京大学名誉教授からは、安全を無視して金儲けにまい進するJALの実態が週刊誌で問題視されていることなどが紹介された。   共闘会議・津恵事務局長の行動提起の後に、内田・山口両原告団長より、闘いの支援の輪が着実に拡がっている具体例が報告され、「必ず職場に戻る」との固い決意が表明された。

岩崎松男(本誌副編集長)

労働契約法改定案が可決
 これでは有期契約労働者の改善にならない

 有期労働に関する労働契約法改定案が参院厚生労働委員会で7月31日、可決し、成立が確実となった。派遣法改正同様、多くの批判が労働法学者、弁護士、労働組合から、(1)無期転換権付与の3年への短縮、(2)クーリング期間の削除、(3)雇い止め判例法理の明文化、(4)不更新条項の無効化、などの改正要求まで含めて提示されたが、ほぼ黙殺された。しかも審議時間は、衆・参あわせてわずか6時間だけであり、参議院議員面会所では、審議終了後、今回の法案に反対する超党派の労働組合などが集まり抗議集会を行った。
 審議では、当然ながら、この労契法改正をもって、今や全労働者の三分の一を占めるに至った有期雇用労働者の劣悪で不安定な処遇が改善されるのか、実効性に関して厳しい意見が相次いだ。共産党・社民党からは、契約締結時の「入り口規制」を見送ったこと、有期雇用が正規雇用の代替として使われ、無期雇用への転換も実効性ある規定になっていないこと、6カ月のクーリング(契約中断)期間を置けば雇用期間を通算しないとする条項の問題などが、次々に指摘されたが、ほぼ無視されたに等しい。
 また契約の際にあらかじめ5年未満で更新しないとの契約を強制される「不更新条項」についても、従来の判例法理に即して期待権は尊重する程度の回答にとどまった。既に、これまで3年だった雇用期間が、次々に不更新条項入りの4年に切り替えられており、有期労働者を巡る状況は何ら改善されていない。
「雇用の原則は期間の定めのない直接雇用である」とは「連合」の基本方針でもある。拡大・劣悪化の一途をたどる現状に対し、有効な反撃は非正規労働者自らが立ち上がることであり、運動と結合し、きちんとした法規制をあらためてめざしたい。

水谷研次(本誌編集部)

龍基金 過労死をなくそう

今年の「過労死をなくそう!龍基金 第6回中島富雄賞」は、8月5日、東京葛飾区のかつしかシンフォニーヒルズで開催され、ワタミ過労自殺遺族の森豪さん・祐子さんに贈られた。森夫妻は、居酒屋チェーン「和民」で正社員として働いていた森美菜さん(当時26歳)が入社2カ月で2008年6月に過労自殺した問題で、今年2月に労災認定を実現させ、現在はワタミ(渡辺美樹会長)に対し謝罪や再発防止策などを求めている。また当日はNPO法人もやいの稲葉剛さんから「生きる権利が守られる社会へ」と題する記念講演が行われた。

(編集部)

紹介 『アメリカの労働社会を読む事典』(明石書店)
 不思議社会・米国がよくわかる

 『労働情報』誌ではおなじみの小畑精武さんと山崎精一さんによる『アメリカの労働社会を読む事典』という翻訳書が明石書店から出版された。ジャーナリスト兼組合活動家のR・エメット・マレーという人が書いた労働用語事典が原書だが、「アメリカ労働運動に関心を寄せる人、アメリカ社会を理解した人に薦めたいと思う」との推薦文以上に、実に楽しい本といえる。  ブラックジョークと思えるほどに、辛らつな労働運動に対する評価が続く。例えば、「メーデー」について「アメリカ労働運動によって祝日として最初に定められた日が現在は合衆国を除くあらゆる国で祝われているということは歴史の大きな皮肉の一つである」と記述されている。また組織化の項では「労働運動にとって組織化とは、軍隊にとっての新兵徴募、志願と徴兵に当たるものである」と。  もうひとつ、英語と日本語の表記の違いも面白い、争議行為はjob action 団体交渉はcollective bargaining しかし超勤未払いoff the clockはあるが、サービス残業unpaid overtimeはない。  アメリカの労働組合や運動を知るだけではなく、米国社会が実によくわかる。

 定価は4290円(送料込)だが、ご購入を希望される方は、相談可能とのこと。
下記メールアドレスにご連絡を。apjpyama@blue.ocn.ne.jp

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