アジア@世界
801号

●ヨーロッパ
「9・29行動デー、各地でデモ、スペインでゼネスト」

 9月29日、各国政府の緊縮財政政策に反対するために欧州労連が呼びかけた統一行動デーに、スペインで8年ぶりのゼネストが行われ、ベルギー、ギリシャ、イタリア、アイルランド、ラトビアをはじめ多くの国でデモが行われた。
 ベルギー・ブリュッセルでは、デモに先立って警官隊がEU本部を重警備し、金融機関や商店にバリケードを築いた。全国、およびヨーロッパ各地から結集した10万人(警察発表は5万6千人)の労働者は赤と緑の大きな風船や旗を掲げ、「緊縮政策にノー、雇用と成長を優先せよ」というスローガンを掲げてEU本部に向け行進した。
 欧州労連のジョン・モンクス書記長は、次のように発言した。
「今日はヨーロッパにとって非常に重要な日だ。これは闘いの始まりであって、終わりではない。……金融市場で起こった無謀な投機のツケを労働者が支払わされるという重大な危険がある。債務が今後数年間に巨大な負担としてのしかかり、ヨーロッパを不況にたたき込むのを避けるために、債務のリスケジュール(返済猶予)が本当に必要になっている」  フランスのFO(「労働者の力」)代表のジャン・クロード・マイイ氏は、「まだ緊縮財政政策を考え直す時間はある。緊縮財政政策は現在立案中であり、今からでも遅すぎることはない。私たちは、これからの数週間、数ヵ月の間にさまざまな社会運動が大きな価値を示す時期にいる。強い社会的緊張が存在している」と語った。

 ポーランドからバスでやってきたビエルスコ・ビアラさん(鉱山労働者、57歳)は、「なぜ労働者が危機の犠牲にならなければならないのか。彼らは銀行にカネを配り、労働者に支払わせるつもりだ」と憤慨している。  パリのCFDTの活動家のマリアノ・フォンデスさんは、「全ヨーロッパで行われている緊縮財政政策を転換させなければならない。雇用と成長のための政策が必要であり、研究やインフラストラクチャー、交通への投資が必要であり、ヨーロッパ規模の産業政策が必要だ」と主張する。
 ポルトガルでは、リスボンで5万人、ポルトで2万人がデモに参加した。アイルランドでは、ダブリンの国会前に、銀行救済のための財政支出に反対するスローガンを大書きしたセメント・ミキサー車が登場した。  欧州労連によると、金融危機によって全ヨーロッパで2千300万人の雇用が失われており、各国が緊縮財政政策を進めれば失業者の数はさらに増加する。ギリシャとアイスランドでは失業率はこの10年間の最高水準に達しており、スペインではこの3年間に失業率が2倍になっている。
 スペインではこの日、2大労組がゼネストに入った。UGT(労働総同盟)のホセ・ハビエル・クビロ書記長によると、ストライキの参加率は70%以上である。
 特に、鉄鋼、エネルギー等の産業では、ほぼ完全に生産が停止した。マドリードのバラハス空港とバルセロナのエル・プラット空港では多くの便が運休となった。都市間を結ぶ高速鉄道や中距離の鉄道はほぼ運休で、地方鉄道は、「ミニマムサービス協定」に従って約4分の1だけが運行した。バスの車庫にはピケットが張られ、スーパーマーケットへ商品を納入するトラックも止まった。
 地域のテレビ局でも、午前0時直後から放送が中止され、一部の新聞は減ページで発行された。
 マドリード郊外では、警察官がある工場の周りに集まっていた労働者を解散させるために空に向けて発砲した。バルセロナでは学生たちが警察車両に放火し、道路にバリケードを築いた。警官隊との衝突で、全国で100人余が逮捕された。
 ギリシャでも。公共交通が正午から午後4時までストライキに入り、GSEEとADEDYの両労組はアテネのEUオフィスに向けてデモを行った。(BBC、「ガーディアン」等より)

●ブラジル
「自動車労働者が10%の賃上げを勝ち取る」

 サンパウロ地区のフォード、スカニア、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツの工場で働く約4万人の金属労働者が史上最大の賃上げを勝ち取り、他の地区のルノー、ボルボ、フォードの労働者も大幅賃上げを勝ち取った。
 9月19日に、サンパウロ州サンベルナルド・ド・カンポ市のCNM・CUTは、10・28%の賃上げとボーナス2千200レアル(1レアルは約50円)を勝ち取った。4・29%のインフレの下で、これは実質6・26%の賃上げとなる。
 CNM・CUT傘下のABC金属労組のセルヒオ・ノブレ委員長は、次のように語っている。
「この成果は、ABC金属労組の労働者たちが、働き方だけでなく、交渉や闘争のやり方をよく知っていることを証明するものだ。これは画期的な基準となるものであり、自動車メーカーや国の経済の良好な状況に適合している」
 パラナ州クリティバ市では、ルノーとボルボの労働者がストライキによって10%の賃上げと4千200レアルのボーナスを勝ち取った。これは実質5・55%の賃上げとなる。
 サンホセ・ドス・ピネスのフォルクスワーゲンの工場では、9月19日から千人の請負労働者を含む5千人の労働者が交替でストに入っている。(国際金属労連のウェブより)

●米国
「デルモンテの反組合行為に抗議、港湾労働者が自主的スト」

 港湾労組(ILA)第1291支部に結集するフィラデルフィアの港湾労働者たちは、デルモンテが10月1日からバナナとパイナップルの輸入のための荷役作業を、ILA傘下の組合が組織されていない埠頭へ移転すると発表したことに抗議して自主的ストライキに入った。
 デルモンテのこの計画によって第1291支部の労働者200〜300人の雇用が失われる。
 移転先となるホルト・ロジスティクスが管理する埠頭は、低コストを売り物にしており、労働者の時給は8.5ドルである(ILAが組織されている埠頭では、時給は17〜24・5ドル)。ILAはデルモンテにこの計画を断念させるために、自主的賃下げを提案したが、デルモンテは、ホルトへの移転は処理能力の拡大のために必要だと主張した。
 9月28日に第1291支部は、デルモンテとの闘争を強化するため、東海岸最大のニューヨーク・ニュージャージー港湾施設でピケットを張った。ニューヨークのILA組合員3千600人が、このピケットに連帯し、連邦裁判所の禁止命令をはねのけて28日と29日朝の就労を拒否した。東海岸の港湾での「山猫スト」は1977年以来である。
 バルチモアの組合員千人も29日午後、就労を拒否した。ILA第333支部(バルチモア)の組合員のジョン・ブロムさんは「みんな良心にもとづいて行動している。支え合わなければ、みんな倒れてしまう」と語っている。
 ILAはストライキを承認しておらず、地区の役員は組合員に職場に戻るよう呼びかけた。
 29日午後に主要な海運会社が、フィラデルフィアでのデルモンテの計画についての交渉に応じることに同意し、組合員たちは職場に戻った。
 ILA第1291支部のロイス・アダムスさんによると、今回の闘いは、2011〜12年にかけての基本協約交渉の前哨戦であり、東海岸の港湾におけるオートメーション化と2階層賃金構造(若年労働者と古参の労働者を分断する)に対するフラストレーションの拡大が背景にある。
 海運会社は2014年のパナマ運河拡張工事の完成を見越して荷役地の移転を検討しており、ILAにとっては闘争の姿勢を使用者に、また、若年の組合員に示すことが重要である。(「レイバーノーツ」ウェブ版より)

●韓国
「民主労総がG20対抗アクションを呼びかけ」

 11月11〜12日、ソウルでG20サミットが開催される。李明博政権は、G20サミットを口実として、民主的権利や人権への抑圧を強化している。
 特に、出入国管理局は他の政府機関と連携して、在留許可証のない移住者の逮捕、拘留、国外追放を進めている。
 ソウル警察庁は「外国人犯罪への予防的対策」と称して、人種差別主義的な「不審尋問」を強化している。  また、「街頭浄化」作戦として、街頭での物売りを取り締まり、ホームレスの人たちが集まる場所へのパトロールを強化している。
 さらに、5月には「G20警備のための特別法」を制定し、政府に指定区域内での集会や言論を禁止する権限を与えた(軍の動員を含む)。この法律は10月1日に発効する。民主労総は、10月1日に「サミット前の人権・民主的権利抑圧に反対する国際行動デー」を呼びかけている。
 10月30日から11月12日までは、「G20に抗議する2週間」として、11月7日のチョン・テ・イルさんの決起40周年のイベントを含む一連の行動が計画されている。11月8〜10日には「ピープルズ・サミット」が開催される。11月11日(サミットの開催日)は行動デー。
 11月9日には、南アフリカCOSATU、ブラジルCUT、民主労総の共催で「グローバル経済・社会危機への南の労働組合の主張」をテーマとした労働者集会が計画されている。

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