たたかいの現場から
789号

【資料】日弁連会長声明
 「真に労働者保護に値する労働者派遣法抜本改正を求める会長声明」

 労働者派遣法改正法案(以下「改正法案」という。)が本年4月6日、衆議院に提出された。当連合会は、「労働者派遣法の今国会での抜本改正を求める意見書」(2010年2月19日)を発表し、この意見書の趣旨に沿った抜本改正を強く求めてきたところである。  今般、改正法案では、法案要綱段階で盛り込まれていた派遣先による事前面接の解禁については、引き続きこれを禁止とする修正を行ってはいるが、改正法案のままでは、労働者保護に値する抜本改正にはなおほど遠く、法案策定の過程において、法改正を切実に望む派遣労働者の声が十分に反映されていたのか疑問が残る。  よって、当連合会は、以下のとおりの修正を要請するものである。  第1に、改正法案では、登録型派遣について原則禁止としながら、政令指定26業務を例外としている。登録型派遣は全面的に禁止すべきである。仮に例外的に専門業務について許容するというのであれば、真に専門的な業務に限定されなければならないにもかかわらず、現行の政令指定26業務の中にはもはや専門業務とは言えない事務用機器操作やファイリング等が含まれており、専門業務を偽装した脱法がなされるなど弊害が大きい。また、これらの業種は女性労働者の占める割合が高く、女性労働者の非正規化、男女賃金格差の温床となっていることからも、厳格な見直しが必要である。  第2に、改正法案では、本来全面禁止されるべき製造業務への派遣を含めて「常用型」派遣は認められている。ところが、改正法案では「常用型」についての定義規定が定められておらず、期間の定めのない雇用契約のみならず、有期雇用契約も含まれる運用がなされる危険性がある。また、行政解釈では、有期契約であっても更新によって1年以上雇用されている場合や雇入れ時点で1年を超える雇用見込みがあれば、常時雇用として取り扱うとされており、登録型派遣を禁止する意味がない。「常用」については「期間の定めのない雇用契約」であることを法律に明記すべきである。  第3に、団体交渉応諾義務等派遣先責任を明確にする規定が今回の法案には定められていない点も問題である。派遣労働者は、派遣先の指揮命令下に日々労務の提供を行っているのであり、派遣先が自ら使用する労働者の労働条件改善について一定の範囲で責任を負うべきである。  法改正は、労働者保護のための規制強化への転換点となるものである。当連合会は、真の派遣労働者の保護ひいてはわが国の労働者全体の雇用の改善に資するよう、派遣労働者の実態を踏まえた修正を求める。

2010年(平成22年)4月14日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮健児

【資料】JR不採用問題解決に向けた
 「政府の解決案」に対する4者・4団体の見解

 4月9日、国鉄改革に伴う1047名のJR不採用問題について政府から正式に解決案が示された。  本解決案は、4者・4団体が政治解決にあたって求めていた「路頭に迷わない解決」という要請の主旨に沿った内容であり、4者・4団体は政府の解決案を受け入れることをここに表明する。  この度の解決案は、これまで与党三党と公明党の努力により、積み上げられた解決案に基づいて政府内で調整がなされた結果、まとめられたものである。  本問題の解決にご尽力をいただいた各政党及び関係国会議員の皆さんに、衷心より厚く御礼を申し上げるものである。  JR不採用問題は戦後最大の労働事件として争われ、実に24年に及ぶ、長期の紛争である。政治解決を求め、一致結束してきた4者・4団体の団結と人道問題を放置しないとする政治の力によって解決への扉が開かれた。それだけに原告らが待ち望んだ解決を迎えることは感慨無量のものがある。  私たちにとって何よりも忍びないのは、解決を見ることなく、無念にも家族を残してこの世を去った国労、全動労の被解雇者60名の原告らと今日の日を迎えることが出来なかったことである。失った日々をもはや取り戻すことはできないが、本件の解決を契機としながら、原告らは勿論のこと、遺族らにとっても、人生の再出発がはかられるものと固く信じてやまない。  4者・4団体は、これまでご尽力いただいたすべての関係者・関係団体に重ねて御礼申し上げるとともに、雇用問題を含む全面的な解決にいたるまで引き続きご支援・ご協力をお願いする次第である。さらに、かかる不幸な紛争が将来にわたって二度と起きることのないよう心から切望するものである。

2010年4月12日
4者・4団体

【4者】
国労闘争団全国連絡会議/鉄建公団訴訟原告団/鉄道運輸機構訴訟原告団/
全動労争議団鉄道運輸機構訴訟原告団
【4団体】
国鉄労働組合/全日本建設交運一般労働組合/国鉄闘争支援中央共闘会議/
国鉄闘争に勝利する共闘会議

国鉄闘争の解決と今後の東京総行動

 1972年6月20日に東京地評の主催で「反合理化東京総行動」として開始されてきた東京総行動は、資本の蓄積形態の段階毎に変化してきた労使紛争に対応しながら、これまで200件以上の争議解決に貢献してきた。
 その142回目となる東京総行動が2010年4月13日に開催されたが、今回の総行動の目玉はなんと言っても戦後最大の、1千名を越える解雇者を抱えた大型争議である国鉄闘争が、24年目にして解決を迎えたことにあった。
 総行動のスタート地点として定着したみずほ銀行本店前では、鉄建公団訴訟原告団の酒井直昭団長が以下のような報告を含めたお礼を述べた。「23年間闘い続けてきたJR不採用問題がようやく政治解決の遡上に上り、政府から最終的・公式な解決案が提示された。私たちはこれまで雇用、年金、解決金を満たし、解決後に再び路頭に迷うことのない要求を掲げてきた。解決内容は決して十分な内容とはいえないが、4者4団体として今この時期における内容として受け入れられる解決水準だと判断し、昨日政府に対して解決受け入れの意思表示を行った。まだいくつかの課題が残っている。とりわけ闘争団・原告団のなかでも1番若い47歳くらいの仲間たちの雇用問題について政府・JRと協議しながら職場に戻していきたい。だが、当事者の鉄道運輸機構は政治が動いているにもかかわらず、なんら意思表示をしていない。政府は運輸機構を指導すると公言しているが、ようやくトンネルの出口が見えるところまできた。最後の最後まで手を緩めずに頑張りたいと思うし、全国で不当解雇や差別と闘っている仲間たちと、これからも連帯して闘っていきたい。まだ道半ばではあるが、ひとまずお世話になった皆さんに心からお礼を心から申し上げたい。」

*東京総行動への参加争議団
 現在、けんり総行動実行委員会に参加して東京総行動で闘っている争議は16団体・個人となっているが、東京都学校ユニオン、反リストラ産経労、NTT木下争議、東京労組文京七中分会、松下PDP、キヤノン非正規労働者組合、日本基礎技術、教育情報研究所、フィリピントヨタ労組など解雇争議が圧倒的に多い。
 次に労災事件というか健康被害をもたらした、東京労組日本エタニット分会、ニチアス・住重(全造船)、それにNTT木下さんや文京七中の早川さんの争議が続いている。これらの争議の傾向として、昭和シェル、トヨタ、キヤノン、松下など大企業の社会的責任を放棄したひどい対応は目に余るものがある。
 大企業経営者がこうし体たらくだけに、全統一・光輪モータース分会や教育情報研究所(丹羽良子さん)の中小企業の経営者は、不当労働行為を散々やったあげく都合が悪くなると財産隠しのために平然と偽装倒産を行ってきた。なかでも東京総行動の遺産ともいえる「法人格否認の法理」で勝訴した丹羽さんは、その会社が再び偽装倒産するという憂き目にあっている。
 また、グローバル化した多国籍企業に対する争議は、外資企業の優遇策や国内法の未整備などの理由から相手を追い詰めることが難しい状況にある。

東京総行動の今後を考える
 東京総行動を共に闘ってきた争議団・個人にとって、これまで目玉争議となってきた国鉄闘争が終結することは、喜びと同時に今後の総行動への不安も投げかけている。
 年間の総行動のうち、2月16日、4月1日など国鉄闘争にまつわる日程を中心に計画を組み立ててきた経緯から、必然的に総行動の軸足を別に移さなければならない。さらに、闘争団がいなくなると人数の減少もあるが、それより社会的・象徴的にインパクトの強かった国鉄闘争が存在しなくなることが与える影響力の方が大きい。
 現在までの総行動の動員数は、平均100名前後で最大180名(神奈川シティユニオン参加の場合)のオーダーでこの間定着してきたが、今後は100名を割り込む恐れも出てくる。
 以前は合宿などを通じて各争議団の争議内容を検討する機会もあったが、06年以降は取り組むことが出来ず争議団・個人任せとなっていた。
 この間争議の形態も「100年に一度の危機」を口実に社会的責任を投げ捨ててリストラや賃下げを当然のように行う大企業や、偽装倒産で逃れる中小企業主などが増加してきた。さらに、そうした経営者を擁護するような司法の傾向も顕著になっている。
 こうした争議を取り巻く環境の変化に対応して、国際競争での生き残りを図ることが精一杯となり、労働者の生活や健康すら担保することのできなくなった企業に対する対抗戦略や、倒産企業における自主生産運動、政府を動かしての雇用対策など、争議戦術を早期抜本的に検討する時期に来ている。また、そうした意見・要望を受け、けんり総行動実行委員会としても今年の夏にでも合宿を取り組んでいきたい。

(けんり総行動実行委員会事務局 岩崎松男)

沖縄差別政策に抗議の72時間ハンスト
 下地厚さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)の決意表明

 私は、東京に住む一人の沖縄の人間として、普天間基地問題での鳩山政権の約束反故の態度に抗議し、4月19日正午からの72時間連続ハンガーストライキを決行することで、抗議の意思を明らかにします。
 鳩山政権は、普天間基地問題でキャンプシュワブ陸上案とうるま市沖案にすりかえ、これまで以上に軍事基地の負担を沖縄へ押し付けようと画策しています。これは明確な沖縄差別であり、絶対に許すことはできません。
 1945年の米軍占領以降65年間、沖縄に住む人々の人権は蹂躙されてきました。常に「平和世」を願う沖縄の人々の願いとは真逆の方向で、軍事基地はますます強化され、米軍による事件・事故、軍事基地が存在する為の被害は後を絶ちません。普天間基地問題が大きな問題となって以降今日まで、沖縄の民意は特にはっきりとし、それは「普天間基地の即時閉鎖・返還」であり、「新たな軍事基地は、県内に作らせない」なのです。
 昨年8月の総選挙時に公約した「最低でも県外へ」の発言や、「沖縄県民の負担軽減の観点から米軍再編や在日米軍基地の在り方について見直しの方向で進む」とした3党の連立合意はどこへいったのですか? 「復帰」38年目にして、沖縄に強大な軍事基地を造ろうというのですか? 鳩山政権は沖縄の人々に、これまで以上の負担を強いるのですか?
 私は高校卒業後、東京に出てきてから30年余り、故郷としての沖縄をこの地から見続けてきました。もう今回ばかりは我慢なりません。
 以上の理由から、私は、72時間のハンガーストライキを決行し、私の抗議の意思を明らかにします。

樋口篤三さんと高橋晃さんを追悼する会開催

 4月3日、日本教育会館「喜山倶楽部」で「樋口篤三さんと高橋晃さんを追悼する会」が前田裕晤さん(協同センター・労働情報代表)と坪井俊長さん(東北全労協議長)の呼びかけで開催され、岩手そして東北から多数が上京、60名ほどの参加であった。
 はじめに黙祷が行われ、呼びかけ人である前田さんが開会の挨拶で「共産党、共労党そしてオルグ時代、つまり戦後の一時代を生きたのが樋口さんの人生。高橋さんは詩(北上詩の会)と地域活動の中での急逝であり残念」と二人の功績を讃えると共にその死を惜しんだ。
 献杯の音頭に立ったのは福富節男さん(市民の意見30の会・東京)と遠藤一郎さん(全国一般全国協)。福富さんは「樋口さんとはピースボートでご一緒しました。沖縄のこと労働運動のこと『ゾルゲ事件』についても大変勉強になりました。わたしよりも10歳も若いのに」と、遠藤さんは「郵便局退職後、パブ『白雪姫』の開業そして北上合同労組、共生ユニオンいわての結成。地元町会での活躍で新しい地域労働運動をつくって行った」と、二人の活躍の一端を紹介された。
 懇親会に入り、はじめに東京東部労組の足立実さんから樋口さんへの弔辞が読み上げられた。共生ユニオンいわての岩見委員長からは追悼の言葉と高橋さんの16歳の時の詩「立ち上がった労働者」が朗読され、全労協議長の藤崎さんは「ヨーロッパの労働運動は共同行動により大きく立ち上がっている。樋口さんも共同行動の必要性を訴えられた」と。山田聡子さん(故・山川暁夫夫人)の「ここにおいでの皆さんも多くの家族、女性に支えられていることを忘れてはいけない」の発言には会場もシーン。多くの発言の最後に坪井さんからの閉会の挨拶で終了となりました。

(平田豊)

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