たたかいの現場から
876号

「放射能に時効はない!」
  11.12原発事故被害者の救済を求める国会請願行動

 前段集会では、全国運動実行委共同代表代理で福島県弁護士会の頼金弁護士があいさつした後、福島の子どもたちを守る法律家ネットワークの河崎弁護士が「子ども・被災者支援法の現状」について、同じく水上弁護士が「原発事故被害損害賠償の時効問題」について、分析を行った。
 続いて、1.子ども被災者支援法の幅広い適用と具体策の実施 2.賠償の時効問題の抜本解決を求める主旨の国会請願署名の第1次集約7万9856筆が積まれた演壇で、福島から札幌に避難中の中手聖一さん、郡山市の野口時子さんらが厳しい現状と希望を語り、関東ネットの増田さんやコープみやぎの鈴木さんも支援法の適用を訴えた。


 千葉県東葛地区の4市長(野田市、白井市、安孫子市、鎌ヶ谷市)からのメッセージ紹介、会場参加者からの訴えがあった。最後に、佐藤和良共同代表は、臨時国会・年明けの通常国会をにらんで、第2次署名活動を継続すること、請願の採択、原発被害者の生きる権利の確立にむけて前進しようと権利宣言と行動を提起した。


 続いて、国会を目指してデモ行進。「支援法を守れー!」「基本方針を見直せー!」「1ミリシーベルトを守れー!」「20ミリシーベルトを撤回しろー!」「時効をのばせー!」「子どもを守れー!」「被災者の声を聴けー!」と叫びながらたどり着いた衆議院・参議院の面会所には、みんな・民主・共産・社民の政党名の大きな看板と、タスキがけをした議員たちが勢揃いし、待ち受けていた。署名の箱を渡し、各政党代表のあいさつを受けて行動は終了。強い手応えを感じたアクションだった。


 放射能に時効はない。どの地域のどの被害者・子どもも平等に救済されるために、被ばくから守られるために、つないだ手を離さずに、諦めず、しぶとく闘い続けることが必要だ。

 

中路 良一(福島支局)

 

法制定実現に向け大詰めを迎える「過労死防止基本法」

 過労死・過労自死の被害者家族や弁護士などが中心となり、被害の根絶を求めて進めてきた「過労死防止基本法」制定を求める運動が大詰めを迎えている。
 11月19日に衆院第一議員会館で開かれた制定を求める院内集会では、約52万人の署名がうず高く積まれ、同法制定を目指す超党派議員連盟からは、与野党を問わず多くの国会議員が連帯のあいさつを述べるなど、法制定実現への盛り上がりを見せた。


 集会の冒頭、過労死防止法制定実行委員会の実行委員長、森岡孝二関西大教授は「家族の会のエネルギッシュな活動で(法制定は)9合目まで来た。後は山頂に登り、実効ある防止法制定に尽力したい」とあいさつ、法制定実現に手応えを示した。

 同会事務局長の岩城穣弁護士は、約52万の署名、ネット署名4千筆が集まり、議員連盟の入会者が122人となったこと、兵庫県や堺市など38自治体で制定を求める意見書が採択されたことなど運動の成果を報告した。


 運動の広がりの背景には、今年に入り若者を使い潰すブラック企業が社会問題化したことがある。過重労働やいじめによる精神疾患が若年層に急増、居酒屋チェーン「ワタミ」での過労自死労災などが問題となり、政党も過労死防止基本法を求める動きを無視できなくなった。遺族や弁護士の熱心な働きかけもあり、議連が本格的に動き出した。


 集会では、遺族らが実態を報告。長時間労働やパワハラのひどさ、企業の無責任を浮き彫りにした。議連代表の自民党・馳浩衆院議員は「ILO(国際労働機関)の友人に『カラオケ、スシ、カローシは国際語。過労死を放置しているのは恥ずかしい』と言われた」と立法に前向きな姿勢を示した。

 一方、臨時国会での法制化には「議論を積み重ねる必要がある」と慎重な姿勢を見せた。遺族の寺西笑子代表は「法を制定し、国が考えを変えるまで、私たちの歩みは止まらない」と決意を述べた。

東海林 智(ジャーナリスト)

 

関西学院大学障害学生支援コーディネーター  雇い止め解雇事件報告会

 11月9日(土)、大阪・山西福祉記念会館ホールにて、大椿裕子さんの「関西学院大学 障害学生支援コーディネーター雇い止め解雇事件 報告会」が行われた。
 会場入り口には、“have No Expiry Date!(私に有効期限はありません)”, “Love & Solidarity(愛と連帯)”と書かれたTシャツが並ぶ。子どもたちのスペースも準備され、ノートテイクの用意もなされていた。


 大阪教育合同労働組合執行委員の山下恒生さんによる関学事件の概要説明から報告会がスタートした。

 06年4月に期限付き契約職員として、関西学院大学の障害学生支援コーディネーターに大椿裕子さんが採用された。関学労組は正規職員しか入れないため、その後の雇用継続について教育合同労組に相談、団体交渉を行ったものの関学は聞き入れず、2010年に解雇。その後大阪府の労働委員会、中央労働委員会に申し立てをしたが棄却、という流れが説明された。


 続いて「女にとって働くこと、たたかうこと」と題して大椿さんと私(栗田)のトークセッションが行われた。「外部」の人間の視点から、大椿さんの話を引き出す「質問係」として一緒に登壇したのである。
 「(最初から有期雇用契約を選んだのだから)自己責任だ」と彼女は言われたというが、障害学生支援のコーディネーターは他大学に行ったところで有期雇用しかない。大変な仕事でも女がやれば軽いものとみなされる。そんな構図に彼女は「NO!」と言ったのだ。

 そもそも有期雇用は、不変の法則ではなく変更可能なものだ。徳島大学教職員労働組合・山口裕之書記長の特別講演「非正規職員千人無期雇用は、どうやって実現できたのか!?」では、有期雇用から無期雇用に変わった実例が紹介された。


 最後の大椿さんからの「非正規労働者が本気で立ち上がれば、変わる。一人で立ち上がれとはいわない。そのために組合があるのだから、一緒にたたかいましょう」という呼びかけにに私たちがいかに答えるか。それこそが今後の運動の要となるだろう。

 

栗田 隆子(ライター/働く女性の全国センター副代表)

 

経済成長の犠牲者を救済せよ!  自動車業界に埋もれるアスベスト被害

 2010年、三菱自動車工業水島製作所(倉敷市)に4人目のアスベスト(石綿)犠牲者が出た。各自動車メーカーに被害者は存在し、関連メーカーや整備工場、販売会社でも被害者数は増加している。この水島製作所4人目の犠牲者で悪性胸膜中皮腫によって死亡した元社員・河西(かわにし)斎(ひとし)さん(享年81歳)の遺族・河西保夫(やすお)さんは、三菱自に補償金・慰謝料、事実の公表と発病予防のための告知などを求め、東京地裁に提訴。11月13日、記者会見を開いた。


 自動車部門独立前に斎さんが勤務していた三菱重工業では造船業の関係から労災認定に上積みする制度がすでに整っていたこともあり、在籍期間に応じた補償がスムーズになされた。

 一方、70年に独立した三菱自は、11年に政府より労災認定が出されたものの、企業責任を認めぬまま。そこで、保夫さんは今年7〜10月、東京簡易裁判所で調停を重ねたが、三菱自は「作業に従事中、石綿に曝露(ばくろ)し、悪性胸膜中皮腫を発症したことは証明されていない」、守秘義務条項を詳細に記した「合意書を前提とする調停であれば応じる用意がある」と答弁。これを受け東京地裁への提訴に踏み切った。


 メーカー側の責任も認める業界初の司法判断は10年12月。本田技研工業は東京地裁で、「石綿の危険性に関する知見は(最初の法規制である)じん肺法制定の1960年までには確立し、大企業では十分に認識できた」「粉じん飛散を防止、抑制する、措置を採るべき義務を負っていた」として約5400万円の支払いを命じられた(東京高裁にて解決金2500万円で和解が成立するも、作業と中皮腫発症との因果関係を認めず)。


 1997年の国際専門家会議で石綿に関する診断と原因特定の基準をまとめた「ヘルシンキクライテリア」によれば、中皮腫患者の80%は仕事上石綿に暴露した履歴があることがわかっている。

 厚生労働省の統計では、中皮腫による死亡数は95年500名、2006年1050名、11年1258名と増加傾向にある。さらに石綿を原因とする肺がんは、中皮腫より多いというのが専門家の見方だが、労災認定は中皮腫よりも少ない。いずれも、「セカンド・オピニオンを求めるべき」と保夫さんが語るように、石綿暴露の可能性について確認してほしい。


 石綿の潜伏期間は15〜50年。保夫さんは、「三菱自と自動車業界は、100名以上にのぼる石綿労災死亡事件の詳細を公表し、発症が迫る社員・OBに予防のための告知を行うべき。また、熟年ドライバーや幹線道路住民にも、健康被害について警告すべき」と強調する。対応が遅れる自動車業界に、経済発展の犠牲者を埋もれさせてはならない。


小林 蓮実(ライター)

 

日日刻刻  非正規の占める率36.7%(10.30〜11.12)


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