たたかいの現場から
792号

「偽装見なし労働」残業代請求裁判で勝利判決!
 「みなし労働時間制は適用できない」との歴史的判決

 全国一般東京東部労組HTS(阪急トラベルサポート)支部の旅行添乗員たちが、添乗員派遣会社である「阪急トラベルサポート」(本社・大阪市。阪急交通社の100%子会社)を相手取って未払い残業代の支払いを求め、集団提訴した計3本の裁判のうち、08年10月に提訴した第3陣(原告・豊田組合員。対象は国内宿泊旅行)の判決公判が5月11日、東京地裁で行われ、組合が完全勝利の判決を勝ち取りました。
 全国に1万人以上いる派遣添乗員は、1日15時間、16時間という超長時間労働を定額・低額の日当(9千円〜)以外に1円の残業代もなく強いられています。旅行業界の調査によると、平均年収は約230万円にしかならず、その要因は法律を拡大解釈した「偽装事業場外みなし労働」です。
 事業場外みなし労働(労基法38条の2)には法的に厳格な要件が定められています。単に事業場外(会社の外)で働いていればいいのではなく、会社の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な仕事が対象です。しかし、添乗員は指示書やマニュアルを通して一挙手一投足まで時間管理され、添乗日報などで報告も義務づけられています。添乗先で何かトラブルがあれば、携帯電話で会社と連絡を取って指示を受けています。  添乗員の仕事が事業場外みなし労働に当てはまらないのは明々白々であるにもかかわらず、添乗員を長時間労働・低賃金に置いておきたい阪急トラベルサポートも含めた旅行業界は、労基署の指導にも従わず、違法な「偽装みなし労働」を続けているのです。
 しかし、今回の判決において、会社の主張は全面的に否定されました。裁判所は、派遣添乗員への「みなし労働時間」の適用は認めないと明確に指摘し、請求額全額の56万2千930円の支払いを命じると共に、ペナルティとして請求額と同額という最高額の付加金支払いも命じました。
 判決文の中で裁判所は、「会社は……就労場所が事業場外であっても、原則として……労働時間を把握する義務がある。客観的にみて労働時間を把握・算定することが可能であれば、事業場外でも労働基準法38条の2第1項(みなし労働時間制)の適用はない」と明確に判断しています。
 また、「行程表ないし指示書」、「添乗報告書ないし添乗日報」などで、労働時間は客観的に把握できると言い切りました。そして、二度に渡る労働基準監督署の指導にも従わず、過去の残業代を支払わない会社を厳しく糾弾するために最高額の付加金の支払いを命じたのです。
 阪急トラベルサポートをはじめすべての会社は、この判決に従い、添乗員への「みなし労働時間制」適用をただちに中止し、残業代を支払うべきです。

菅野 存(全国一般東京東部労組委員長)

東京高裁で賃金・昇格差別大阪事件が勝利判決
 昭和シェル石油は高裁判決を機に労使紛争を全面解決しろ!

 昭和シェル労組大阪支部(組合員6名)が1989年に救済申し立てを行い、04年に中労委で完全勝利の救済命令がだされ、07年5月28日、東京地裁難波裁判長の思いもよらぬ組合敗訴の判決を受けて争っていた控訴審の東京高裁判決が(第8民事部原田裁判長)5月13日に出された。
 地裁判決を破棄するという組合側の逆転完全勝利判決である。
 これにより
(1) 同期、同性、同学歴者と比較して、その平均まで資格・賃金と一時金の是正をする(差別されている組合員を除いて算出した額)、
(2) バックペイの支払い
(3) 謝罪文の手交、を命じた中労委命令が維持された。
 差別是正総額は組合員6名で金利分を含んで約2億2千550万円にものぼる。
 会社は、16年に及ぶ大阪地労委、中労委で主張をし尽くし、証拠も提出し尽くしたはずであるが、行政訴訟において提出を拒否していた考課表などの証拠を出した。東京地裁難波裁判長はわずか1回の証人調べで、不当労働行為の立証責任を組合側に押し付け、なおかつ会社の考課表を鵜呑みにし、中労委命令を取り消したのである。
 しかし今回、東京高裁は
「裁判所は、労働委員会の救済命令の内容の適法性が争われている場合には、労働委員会の裁量権を尊重し、その行使が不当労働行為の趣旨、目的にてらして是認される範囲を超え、また著しく不合理であって濫用にあたると認められるものでない限り、当該命令を違法とすべきではない」とし、中労委命令の判断枠組みについて検討をしたうえで中労委命令は「濫用にあたるとは認めることができないから、本件命令を違法とすることはできない」と結論付け、原判決を取り消したのである。
 同日に出された兵庫事件(組合員1名)の控訴審は残念ながら控訴棄却となったが昭和シェル石油は04年8月大阪二次事件地労委命令、同年9月都労委命令でも厳しく断罪されており、兵庫事件に関して組合主張が採用されず控訴棄却となったからと言って、いささかも昭和シェルの違法行為が許されることにはならない。
 また今回判決においても、[職能資格滞留年数]により年功的昇格管理が行なわれていたことが認められた。これは現在裁判・労働委員会にかかっている現役女性差別事件、大阪二次事件、東京都労委事件など全てに共通して争われている。もはや昭和シェル石油は女性差別事件を含めた全ての係争事件を一括解決するしか道はない。
 私たちは昭和シェル石油が今回の高裁判決を真摯に受け止め、全ての組合間差別・女性差別を速やかに且つ自主的に是正し、38年に及ぶ労使紛争を一日も速く解決するよう強く要求し闘いを強化していく。

……瀧 秀樹(全石油昭和シェル労組中央執行委員長)

郵政初の団交応諾命令勝ち取る
 「協約で団交事項の制約はできない」

 2010年4月15日、協約を盾に「団交を拒んできた」郵政事業に対し、大阪府労働委員会は、「団交に応じなければならない」と命令を発しました。郵政ユニオン河内長野支部の不屈の闘いの勝利であり、郵政労働者として初めて、義務的団交事項・団体交渉権を認めさせた画期的な勝利命令を勝ち取った報告です。
 08年7月7日当時、組織拡大を積極的に展開していた組合の中心的存在である、松谷書記長(現在副支部長)に対し会社は、組合嫌悪をあからさまにした不当な「戒告処分」を発令して来ました。支部は、すぐさま処分撤回の「団体交渉」の申し入れを何回も行いましたが、会社は「労使協約」を盾に全く応じてきませんでした。そこで支部は、08年11月に大阪府労働委員会に救済申し立てを行い、10年4月15日大阪府労動委員会命令が交付されました。命令内容は、「憲法及び労組法が労働者に団交権を保障していることに鑑み、会社は団交に応じなければならない。」という画期的なものでした。にも関わらず、会社は依然として協約を盾に憲法・労組法を遵守しない極めて不誠実な対応です。そこで、大阪府労働委員会命令を履行し団体交渉に応じよ!憲法・労組法を遵守せよ!と抗議行動になりました。
 私たちは、郵政グループ各社の職場内で今一番問題視されている「経営専決事項(個別事案を含む)は団交の対象としない」という会社側にとって都合のいい「労使協約」に真正面からぶつかってきました。個人のことは交渉議題から排除していますから、解雇しても会社は団交に応じなくてもいいのです。こんなでたらめなことは許されません。支部は大阪全労協の指導のもと労働委員会闘争を闘い抜いてきました。協約より憲法が優位にあるのは当たり前ですが、そのことがこの命令により改めて確認されたのです。
 5月14日、日本郵便・河内長野支店前に大阪全労協・地域共闘労組である「さかいユニオンネット」傘下の組合員多数が郵政ユニオン河内長野支部主催の抗議集会に結集、抗議申し入れに。しかし会社側は、「団体交渉メンバーは組合役員に限る」(上部や全労協からも参加できない)という協約を盾に、外部からの申し入れは拒否するという極めて不誠実な姿勢でした。組合側の猛烈な抗議により、最終的に総務担当の勝瑞室長が受け取り1週間以内に返事をすると言う事で約1時間の抗議行動は元気に終了しました。
 会社は4月1日付で一方的な異動を強行しました。府労委に陳述書を提出してくれた協力者を他支店に、松谷副支部長を支店内の別の班に配転をする報復人事を行ってきました。このため、組合は即座に団交の申し入れを行いましたが、会社はこれも拒否。現在ではこれまで団交に応じていた問題などもすべて『労使委員会』なら応ずるが『団交』はやらないと開き直っています。私たち郵政ユニオン河内長野支部は今後も「不当労働行為」「不当処分」「団交拒否」「不当配転」の撤回!完全勝利に向けて地域共闘の労働者と連帯して最後まで勝利するまで闘って行きます。ご支援・ご協力よろしくお願いします。(郵政労働者ユニオン河内長野支部支部長 南部政治)

……南部政治(郵政労働者ユニオン河内長野支部支部長)

教員解雇、二つの勝利にも関わらず控訴
 夕陽丘学園、府労委命令に続き大阪地裁も解雇無効判決

 本誌781号(09年12月15日)既報のとおり、大阪夕陽丘学園高校の教員解雇に対し、昨年11月大阪府労委は、解雇は不当労働行為であり無効との命令を下した。これに対し、学園は中労委に再審査申立を行った。中労委の初審命令履行勧告にもかかわらず、学園は「不当な命令には従えない」として、出勤する教員を、管理職らが両手を広げて固く門を塞ぐ頑なな姿勢を続けてきた。
 こうした中、5月14日、大阪地裁は教員に対する「解雇は、懲戒権ないし解雇権の濫用である」として、解雇無効の判決を下した。
 判決の内容は、(1)書道部合宿で宿舎の広間代請求を詐取としているが、実際に大広間は使用されていた (2)原告が、会計担当顧問に対して施設費受給について具体的に指示したことは無く、積極的に騙し取ろうとする意思も有していない (3)原告が個人的に利得を得ていたと認めるに足りるものがない (4)学校は、会計処理やPTAからの支出の運用を確認する体制がとられていない (5)本事件よりも悪質であると想定される事象が懲戒解雇とはならず「依願退職」としている事などから、本事件が、懲戒処分上最も重い解雇とすることについては、社会通念上相当であるとは言えないというものである。
 府労委と裁判所で解雇無効の判断が出た。
 そこで判決の翌日には、組合や支援者で勝訴を知らせるビラ配布を行った。登校する生徒たちからは拍手が寄せられ、書道部員はこれから技術指導が受けられることが本当に嬉しいとの声をあげた。
 ところが、翌週5月18日に開かれた中労委調査の場で、学園は中労委の和解打診を拒むとともに、裁判でも控訴して争うことを明らかにした。組合員が原職復帰すれば、自らの地位が危うくなると考えた校長らの保身でしかない。
 組合は、二つの勝利を武器に、背景資本たる大丸デパート攻めも視野に入れた攻勢を開始していくこととした。

……山下恒生(大阪教育合同労組副執行委員長)

デイベンロイによる工場閉鎖を許さない!

 全国一般東京東部労組はメーデーの5月1日、ユニフォームやテーブルクロスなどをレンタルして洗濯・配送しているデイベンロイリネンサプライ(東京都大田区)の本社である大森工場で、100人を超える部隊が参加して工場の閉鎖に反対する行動を展開した。
 現在、大森工場では「老朽化による耐震性の問題」が焦点化している。同工場をめぐっては前を走る都道の拡幅計画も進んでいる。会社は工場敷地内での建て替えや近隣地での移設は「困難だ」として、商品を外注化したうえでの工場閉鎖を狙っている。働く者の雇用と生活を守る立場から、東部労組のデイベンロイ労組支部は「絶対反対」を表明している。
 また、子会社のセブンズクリーナー三郷工場(埼玉県三郷市)では会社が「三郷工場の存続に向けて努力する」と同支部セブンズクリーナー分会との団交で約束しておきながら、組合に黙って「9月末での操業停止」を工場の大家と合意したことが4月の団交で明らかになった。
 2つの工場閉鎖に反対するために大森工場に乗り込んだ東部労組組合員に対して、会社は門前にガードマンを並ばせて入場を妨害。工場前には警察車両が並び、制服・私服警官が多数配置されるという異様な光景が広がっていた。工場に入ろうとした組合員に会社の役員は体当たりしたり両手で突き飛ばしたりする暴力行為に及んだ。
 デイベンロイ労組は1978年4月に結成し、直後のピケストをはじめ数々の闘いを通して労働者の権利と生活を職場で守ってきた。東部労組の主要な支部の1つであるとともに、地域労働運動の拠点として確立してきた。こうした組合をつぶすのが、会社の工場閉鎖攻撃の本質である。
 この日の行動では、組合が昼食と経過報告の場を持つために会社4階の食堂に上がろうとしたところ、会社職制とガードマンらはピケを張って阻止。さらには私服警官を工場内に招き入れた。これに対し、組合は工場内で抗議集会を貫徹。仕事を終えた工場の労働者が次々と合流した。デイベンロイとセブンズクリーナーの組合員は「労働者を路頭に迷わす工場閉鎖を許さない」と力強くアピールした。
 抗議文を提出しようと組合が役員室に上がろうとしたところ、またもや会社側が阻止したが、パート社員を含めたデイベンロイ労組支部の参加者約40人が敢然と職制の壁を打ち破って階段を駆け上がった。集会の最後にデイベンロイ労組支部の小野委員長は「今日のような会社の不当なやり方と工場閉鎖に反対するため支部はストライキを背景に闘っていく」と宣言。参加した組合員から大きな拍手がわき起こり、団結ガンバローとこぶしを天に突き立てた。

……須田 光照(全国一般東京東部労組書記長)

ハワイのパシフィック・ビーチホテル争議が完全勝利

 2007年12月、ハワイ・ワイキキの「パシフィック・ビーチ・ホテル」は、ILWU(全米港湾労組)の中心活動家らを不当解雇し、組合承認を取り消し、団体交渉を拒否した。組合は全国労働関係局(NLRB=日本の労働委員会に相当)に不当労働行為救済申し立てを行い、闘いを続けてきたが、09年9月30日、NLRBサンフランシスコ支局は組合の主張を全面的に認める救済命令を交付した。しかし、ホテル側は命令の履行を拒否して上訴、ワシントンのNLRB本部で審理が続いている。
 他方、NLRB支局は、命令の実効性を確保するために、連邦ホノルル地裁に、救済履行命令の申し立てを行った。3月29日、連邦地裁は救済履行命令を決定した。
 救済履行命令は、組合を承認し、誠意をもって団体交渉を行うこと、解雇された組合の交渉委員らを復職させること、一方的な労働条件の不利益変更を無効とすること、命令書の写しを掲示すること、その内容を従業員の前で読み上げることなどである。これはNLRB支局の決定に続く、完全勝利命令である。
 救済履行命令は、救済命令が確定するまでの間、暫定的に命令の履行を強制する決定である。命令に従わないと法廷侮辱罪となり、過料が科せられる。現在ホテル側は、解雇された交渉委員らの復職を受け入れ、命令を履行する一方、NLRB本部で争いを続けており、争議が解決した訳ではない。ILWUは引き続き、パシフィック・ビーチ・ホテルに対するボイコットの継続を呼びかけている。
 宿泊客の8割近くは日本人客なので、AFL・CIOやILWUの支援要請を受けて、連合や交運労協、国際運輸労連、国際食品労連、サービス連合、全港湾労組などを中心に支援運動を進めている。みなさまのご理解とご支援を。

……高須 裕彦

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