アジア@世界
813号

●インド
『ノーモア・フクシマ』を掲げて反原発デモ

 3月25日、デリーで「反核闘争連帯フォーラム」の呼びかけで約100人が、日本の震災・津波と原発事故の被災者への連帯とインド政府の原発建設計画の中止要求を掲げて国会へデモを行った。参加者は「ノーモア・チェルノブイリ」、「ノーモア・フクシマ」、「政府は市民を原子力の危険にさらすな」などと唱和。また、マハラシュトラ州ジャイタプール、ハリアナ州ファテハバードの原発建設に反対している現地住民との連帯を表明した。
 デモは直前(3日前)の呼びかけにもかかわらず、広範な学生、NGO活動家、環境活動家、あらゆる宗派の宗教者、市民が参加した。
 福島原発の事故によって、原発の危険への関心が高まっており、ジャイタプールの原発建設反対のオンライン署名は7万3千人に達した。4月11日にも反核の集会が計画されている(「グリーンピース・インド」のウェブより)。

●英国
歳出削減政策に反対しロンドンで40万人がデモ

 3月26日、ロンドンで、労働組合会議(TUC)が呼びかけたキャメロン政権の歳出削減計画反対のデモに50万人が参加。03年のイラク戦争反対以来最大のデモとなった。
 教員、看護師、助産師、NHS(国民健康サービス)などの公共セクターの労働者と、学生、年金生活者、社会運動活動家など広範な人々が参加、都心の交通は完全にストップした。全国から800台のバスと10本の列車をチャーターしてロンドンに結集。労働党のエド・ミリバンド党首は「政府はこの国を『腐った』1980年代へ引き戻そうとしている」と述べ、同党はこの日のデモを「メインストリームの行進」と呼んでいる。
 「ガーディアン」紙とICM(民間調査会社)の世論調査によると、政府の歳出削減について、「やりすぎだ」が35%、「適当だ」が28%、「まだ不十分だ」が29%、「わからない」が8%となっている。YOUGOVがUNISON(公共サービス労組)の依頼で実施した調査では56%が「歳出削減は厳しすぎる」と答えており、他の調査では回答者の3分の2が「政府は削減計画を再検討するべきだ」と答えている。
 4月からの新年度予算の歳出削減によって、有所得者が1人、子どもが1人、年収2万3千ポンド以下(1ポンドは約135円)の世帯の収入は5.7%から6.4%減る。
 TUCのブレンダン・バーバー書記長はハイドパークでの集会で歳出削減計画を非難し、「政府はNHSは守られると言っているが、すでに看護師、医師、助産師、物理療法士など5万人が削減されようとしており、NHSは今や瀕死の状態である。キャメロンはそれを積極的なサービス・プロバイダーに売却すると言っている。何世代にもわたって築いてきたものを破壊させてはならない」と述べた。
 UNISONのデーブ・プレンティス書記長は、「毎月どこかで図書館が閉鎖され、ケア・ホームも若者支援サービスも廃止されている。政府は、ここに集まった人々の恐れや怒りを感じるべき」と述べた。
 一部のデモ参加者は銀行や商店を攻撃、警官隊との衝突で約200人が逮捕された。(「ガーディアン」3月26日付、「BBCニュース」等より)

●エジプト
「暫定政権のストライキ禁止に労働組合が抗議」

3月27日、新たに結成されたエジプト独立労働組合連合の呼びかけで、暫定政権が発表したスト禁止法撤回要求のデモに500人が参加した。デモには労働組合以外のグループも合流、「抗議行動は前政権の残存勢力と闘うための唯一の手段だ」、「ストは貧困と飢餓と闘うための正当な行為だ」と主張した。
 暫定政権は同23日に、非常事態法の発効中に業務を妨げたり暴力を伴う抗議行動の呼びかけ、それへの参加者に、最高1年の拘留または50万エジプトポンドの罰金(1エジプトポンドは約14円)に処すという法律を採択。現在、軍で検討されている(「アルマスリ・アルヨウム」紙・英語版、3月28日付)
 4月1日には「セーブ・ザ・レボリューション(革命を救え)」の呼びかけに応え、タハリール広場に数万人の労働者、市民が結集した。参加者たちは、ムバラクの訴追、大統領選挙委員会の設立、腐敗に関わったすべての者の訴追、国民民主党(旧与党)の資金に関する調査等を要求。この集会には、1月25日以来の運動グループがいくつか参加したが、最大野党のモスリム同胞団は不参加だった。(「アフラム・オンライン」4月1日付)
 青年を中心とする「4月6日運動」は、フェースブックを通じてデモ参加を呼びかけた。この呼びかけは、「エジプト人民は旧体制をロンダリング(洗浄)して、新しい装いでの復活を許さないだろう」と、ムバラク体制の残滓一掃を要求。1〜2月の革命により民主主義的要求のいくつかは実現。しかし依然としてムバラク体制とつながっていた勢力が政治・経済・地方行政機関・メディアの重要な位置を占めている。軍は3月9日にタハリール広場で行われたデモの参加者を逮捕・拘留し、拷問し、軍事裁判にかけ、実刑を言い渡した。
 ケファヤ運動(「変革のためのエジプト運動」)の創始者の1人であるアフメド・バハア・エルディン・シャアバンさんは「革命のハネムーンは終わった。革命を救うためには、精力的に活動しなければならない」と言う。
 人権活動家のアイダ・セイフ・エルダウラさんは「今起こっていることは反革命であり、それに対抗するために全国で委員会が組織されている」と述べた。  若手弁護士のアフメド・エザッドさんによると、これらの委員会は独自で週刊の新聞を発刊している。彼は「ムバラク打倒の後、しばらくは軍に時間を与えようという議論があったが、時間を与えると軍は再び結束して私たちへの弾圧を再開するだろう」と述べた。 (同3月31日付より)

●チュニジア
「労組代表が米国訪問、債務支払猶予への協力を要請」

 3月20日、サクラメントでサクラメント中央労働評議会とカリフォルニア労働評議会がチュニジアの労働組合とエジプトの民主運動への連帯ディナーを開催。AFL・CIOソリダリティー・ハウスの招待で訪米中のチュニジア労働総連合(UGTT)代表団が参加した。
 代表団は公共セクターおよび住宅労働組合、UGTT女性労働者委員会、大学教官および教員組合をそれぞれ代表して、独裁政権下の闘い、民主革命における労働組合の役割、若者の役割について報告した。また、現在エジプト、リビア、イエメン、バーレーンで進行中の革命への連帯を呼びかけた。
 労働組合の具体的な連帯について、代表団は債務支払い猶予への協力と、旧独裁者とその家族が米国内で保有している資産の凍結への協力を要請した。

●バーレーン
「外国人労働者に連帯を」

 国際労働組合総連合(ITUC)は、中東の民主化運動の中で、これまで中東各国で搾取され、困難な状況に直面している外国人労働者の生命と権利を守るために連帯を呼びかけている。以下はITUCのウェブに掲載されているレポート(4月1日付)の抄訳である。
 バーレーンでは、労働者の77%が外国人であり、主に南アジア出身で、低賃金の職についている。その大部分は短期契約であり、建設業と家事労働に集中している。  2月中旬に始まった強力な反政府運動とそれに対する弾圧、サウジアラビア軍の介入の中で、多数の死傷者が出ている。この数週間に5人のパキスタン人労働者(うち2人は警察官)が死亡し、40人のパキスタン人・バングラデシュ人労働者が負傷した。バーレーン政府は最近、治安部隊強化のために千人のパキスタン人を採用。採用にはパキスタンの軍も関与しており、賃金は通常の7倍である。
 また、弾圧への抗議ストに対抗するため、代替要員として外国人労働者雇用の動きも報告されている。外国人労働者に対する賃金の遅配も広がっている。バーレーン労働組合総連合(CFBTU)は民主化運動に積極的に参加し、また、出身地に関わりなくすべての低賃金労働者の権利を擁護している。
 リビアでは、カダフィー政権に反対する運動が2月17日に始まる前に350万人の外国人労働者がいた(エジプト人100万人を含む)。現在でも100万人が残っており、その労働者の大半はサハラ以南のアフリカ諸国からの労働者である。
 リビア政府は「汎アラブ主義」や「汎アフリカ主義」を掲げ多くの外国人労働者に門戸を開いてきた。その後、ヨーロッパの移民規制に同調して、アラブおよびアフリカ諸国出身の労働者にビザ携行を義務付け、その結果数千人の労働者が無資格とされるようになった。
 反政府運動拡大の中で、ビザなし労働者はどの大使館からも支援を得られず、またバングラデシュ、ベトナム、中国からの労働者は帰国準備が整うまでの数週間、保護もないまま放置された。現時点でも約2千人のフィリピン人労働者(看護師や教員)が、自国に帰って失業するよりは危険を覚悟でこの国にとどまることを選んでいる。
 サハラ以南のアフリカ諸国出身労働者とその家族は、治安部隊と間違われての報復に怯えている。毎日数千人の移住労働者がチュニジア国境地域の避難所にやってくる。砂漠を千キロも歩いて南の国境へ向かうという人たちもいる。
 ITUCのシャロン・バロー書記長は、ヨーロッパは、移住労働者の問題について、治安的な発想ではなく、連帯をベースにした政策によってこの危機に対処しなければならないことを強調している。

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