たたかいの現場から
796号

全国一般全国協活動者養成合宿
 活動家の世代交代を実感させる活発な合宿を開催

 労使関係の力の格差がもたらした職場の劣悪極まりない労働条件の解消に向け、最も重要と思われる丈夫で長持ちする労働組合を作る目的で、全労協全国一般全国協議会が7月17日から18日にかけ初めての試みとして「活動家養成合宿」を東京会員会館で開催した。
 全国から延べ56名が参加した合宿の今回の売りは、『合同労組こそ出番の時』を自らの出身母体である全国一般東京南部における分会の闘いを事例として取り上げ、地域へのこだわりと信頼関係作りがポイントと強調された平賀副委員長と、『正義はいつか必ず勝つ』との信念を貫いた大鵬薬品労組闘争をビデオで披露し、これぞ少数組合が多数派に転じるためのバイブルとも言うべき北野議長(徳島ユニオン)との二大講演に加え、今回初挑戦となる「模擬労働相談」にあった。
 その「模擬労働相談」のやり方は全体を5つの班に分け、相談のテーマを(1)解雇、(2)いじめ、(3)残業代、(4)ワンマン経営の4つのパターンに分類したうえで、それぞれの班で相談者と相談員に扮して模擬の労働相談が行われた。結果としては相談される側の視点からしか見ていなかった熟練オルグが、逆の立場に立つことで新たな発見をしたり、会社は異なっても相手のやり口は同一であることなどを見抜いたりと、ベテランから新人までが緊張しあったり笑いをこらえたりしながら、あっという間に初の試みはタイムオーバーとなってしまった。
 また、この合宿には6月4日に結成したばかりの東横イン労組の三田圭子委員長も参加し、ホテルのフロント業務という仕事が大好きなのに過酷かつオカルトまがいの、「気づき」のトレーニングという内観研修や、人権侵害のペナルティまで行う会社のやり方が許せない。一人勤務で150名のお客様に対応することは仮眠が出来ないという以上に、万が一火災が起きた場合には宿泊客の生命の危険に直結することから、利益のために安全すら犠牲にする経営方針は改めさせなければならない。人を大切にすれば社員は会社を愛するはずであり、辞めるのではなく社会に胸を張って誇れる会社にするために労働組合を立ち上げたと、参加者たちの目をウルウルさせるアピールを行った。
 また、司会者の須田執行委員より8月4日には、東横インなどの全国ビジネスホテルチェーン店で働く労働者を対象とした全国一斉労働相談を22カ所で計画していることが提案され、全国協の団結した強力なネットワークのパワーを見せつける時だと檄を飛ばした。
 これまでの労組の集まりでは珍しい、20代と30代が3割を占めた今回の活動家養成合宿は、早くも来年には模擬団交だとか学習会の交流をカリキュラムに入れようなどの話で盛り上がった。

……(本誌副編集長 岩崎松男)

はじめから工場閉鎖ありきか、不可解な会社の対応

 東京と埼玉の境を流れる中川に寄り添うようにして国道67号線が走り、その上を大きな芋虫のような首都高6号三郷線が横切っている。そんな埼玉県三郷市の花和田地区にある大小様々な工場や倉庫が立ち並ぶ一角で、腕章に鉢巻き姿、組合旗にのぼりを手にした70名ほどの集団が静寂を破って気勢を上げた。
 梅雨明け間近独特の蒸し暑さの続く7月14日の午後、建物の上部にセブンズ・クリーナーと表示されたクリーニング工場前では、会社の一方的な工場閉鎖に反対する全国一般東京東部労組デイベンロイ労組支部セブンズクリーナー分会のストライキが決行された。
 小野分会長の経過報告によれば、このパート組合員11名がストライキに突入した理由は「会社は内緒で工場を閉鎖して茨城の石下工場へ集約するつもりだったが、組合を結成して団交で工場閉鎖の理由を質したところ、経営赤字と大家が契約更新を認めないからとの回答がなされた。しかし『三郷工場を存続させるのであれば分会も赤字解消に協力する』との要求に会社は『存続に向けて努力する』と答えながら約束を破り大家と9月打ち切りで合意し、一方的に説明会を実施した。最初から工場閉鎖ありきの会社の姿勢に抗議して本日のストライキとなった」とのことだった。
 会社からは笠間常務がビデオカメラを手に登場し「敷地内には立ち入らないように」と集会を妨害しつつ、答弁を求められると一転して「コメントはしません」と、本社役員から「ビデオ撮影はやれ、だが言質はとられるな」との業務命令に馬鹿正直に従っている様子がバレバレだった。
 組合員や支援者達が取り囲み「工場の経営は改善されているし、大家も今までの条件なら契約更新して良いと言っている。工場移転の理由はなくなったのではないか」、「石下工場の通勤には片道1時間半かかり、高速代もかかるし事故も心配だ」、「この仕事が好きで13年も働いてきた。今後の生活を考えると不安でたまらない」などの率直な意見と怒りを笠間常務にぶつけたが、一片の同情の余地すら見せない態度に参加者達の怒りは外気温度以上にヒートアップした。
 生まれて初めてのストライキを体験したパート労働者達の「一生懸命働いてきたのに、こんな会社の仕打ちは絶対許せない」との言葉に集約されるように、会社に経営責任をキチンととらせ工場閉鎖を撤回させるまで闘うことを全体で確認し合った。

……(本誌副編集長 岩崎松男)

双龍自動車争議を闘い抜いた労働者と交流

 6月13日に名古屋で、ついで6月15日に東京で、韓国の中堅自動車メーカーである双龍自動車において行われた争議を闘い抜いた労働者を招き、交流とその争議について作成された映画の上映会が行われた。名古屋では残念ながら映画の上映ができなかったが、その分、当該労働者との交流が熱心に行われた。  昨年の双龍自動車争議についてはレイバーネットなどでも詳細に報じられたため、ご存知の方も多いと思う。経営危機を端緒として行われた整理解雇に対する労働者の反撃は熾烈を極め、77日間にも及ぶ工場占拠、そして権力、資本との全面的な衝突へと発展した。
 今回は争議の際の中心的な活動を担い、現在は双龍自動車「整理解雇者特別委員会」議長であるイ・ヨンホさんを招いての交流であった。話を聞き、そして映画を見て感じさせられたのは、自分自身の認識の狭さであった。実のところ自分はこの争議について経営危機が顕在化した結果、労働者が半ばやけくそになって決起したもので、残念ながら勝利への展望が存在していなかった、と考えていた。結果として整理解雇をなんら阻止することが出来なかったのは事実であるし、その意味で、敗北だ、とすることが間違いだというわけではない。しかしそれはあくまでも一企業という枠組でのみ物事を判断した結果である。
 ところで今回の争議に当たっては、上部団体である金属労組、民主労総は工場内に立てこもる労働者に対してなんらの支援を行うこともしなかった。彼らが行ったことといえば、政治家を訪問することによる争議解決の訴えと、闘い続ける労働者に対して妥協を受け入れるよう指導することだけであったという。つまり双龍自動車の労働者は民主労総からも金属労組からも見捨てられ、孤独な闘いを続けることを強いられた、といっても過言ではないのである。この背景にあるのは現在の韓国労働運動の後退、低迷という現実である。
 このような孤立化を強いられた絶対的困難の中で不屈の意思を持って闘争が継続されたのは、将来への展望を失い自暴自棄になった、というようなものではなく、後退、低迷の中にある韓国労働運動に対し今一度闘うことの意味を問い、そしてその再起を呼びかけるものであった。もちろんそれが闘争に参加したすべての労働者の共通意志であった、ということではないのだが、争議の中心的な活動家はそう自覚していたという。
 双龍自動車争議について、今回の交流では「玉砕ストライキ」と表現されている。日本語での玉砕という表現が持つイメージと韓国語の元の意味とが完全に一致するわけではないのだろうが、まったくの異訳ではないという。それだけ強い意志を持って貫徹された争議である、ということなのである。それは整理解雇を必ず撤回させる、というだけではなく、わが身を粉砕してでも韓国労働運動の決起を促したいという意志の表れに他ならないだろう。とするならば、今回の争議は整理解雇を阻止できなかったから敗北である、というのは一面的な判断でしかない。この決死の訴えに応じて韓国の労働者が再び立ち上がることが出来るのか、その点で判断されなければならないのである。もちろんこれは日本の労働者、労働運動にとっても共有しなければならない信念であることは間違いないだろう。
 この争議についての映画「あなたと私の戦争」は字幕付で日本国内でも上映される。ぜひとも皆さんにも見ることをお勧めしたい。我々にとっても今後運動を展開するにあたり大きな示唆を与えてくれるはずであり、そして決意新たに闘いを進めようとする意欲がわいてくるはずである。

……(大学院生 山口達夫)

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