たたかいの現場から
880号

「信義則違反の連鎖」追及 JAL解雇争議で裁判所包囲へ

 ウソと騙(だま)しで強行した信義則違反の解雇は認められるのか。昨年末結審した日本航空(JAL)整理解雇事件の控訴審で重大な問題が浮上した。東京高裁は客室乗務員の裁判で5月15日、パイロットの裁判で6月5日に判決を言い渡す。


  JALのパイロット、客室乗務員165人に対する整理解雇は、会社更生手続き中に行われた。解雇撤回を求める裁判の一審は、整理解雇4要件(要素)への適合をおもな争点に行われ、原告(労働者)が敗訴。控訴審では上条貞夫弁護士が弁護団長に就き方針を転換、一審判決が無視した決定的事実の解明に力を注いだ。
 最大の成果は、「背信」の立証だ。
 会社更生が始まった時、管財人は「整理解雇は考えていない。ワークシェアも含め解雇回避に努める」と約束する。ところが8ヵ月後、整理解雇の基準(年齢と病欠)を提示。同日付の内部文書(団交想定問答集)で、ワークシェアなどの解雇回避策には一切応じないと記していた。
 人員削減目標も恣意的に上積み。「スト権を立てたら出資を引き揚げる」とのウソの脅しで、スト権投票に介入した。
 上条弁護団長は「信義則違反の連鎖の末に、不当労働行為の解雇があった。これは安倍・雇用破壊の先取りだ」と語る。


 1月19日に開かれたJAL不当解雇撤回国民共闘第4回総会では、「3〜4月を山場に裁判所を包囲、政府や会社も攻めよう」との方針を確立。

 JALキャビンクルーユニオンの前田環(たまき)副委員長は「職場は変化を求めている」。乗員組合の三星宗弘副委員長は「全力を尽くし、桜の花を咲かせたい」と語った。

 

北 健一(ジャーナリスト)

 

年末の宮下公園で野宿者排除 「貧困の再可視化」は待ったなし

 私たちは何のために税金を納めるのかそれは自分が生活に困ったら支えてもらうためであり、自分が元気なうちは、担い手とも支え手ともなり、社会を構成していくためだ。


 では、野宿者は社会の、あるいは地域の構成員ではないのだろうか? むき出しの暴力と排除を12月29日に渋谷の宮下公園で体感した。何も持たない野宿者を公園から問答無用で叩き出す社会に恐怖を感じた。
 たまたまその日は、新宿での夜回りを終えてフェイスブックをチェックしたところ、悲鳴のような書き込みが渋谷の支援者から発信されていた。びっくりしてすぐさま渋谷に駆けつけたところ、既に宮下公園は封鎖されていたが、公園の中には越年のテントがあり、ケガをしている人も含めて数人が残されているという。とにかく責任者と話をさせて欲しいと皆で代わる代わるフェンスの中にいる渋谷区役所職員に呼びかけた。
 この寒風のもとに叩き出す法的論拠は何か。また、もし論拠があるのだとしても、人道上適切なことなのかを直接確認したかった。


 この年末年始はいつもより役所の閉庁期間が長く、全国的にも閉庁期間中の対応については行政機関との事前の打ち合わせをする団体もあり、厳しい状況が懸念されていた。渋谷区でも12月9日の段階で、生活福祉課と公園課と話し合いをしており、閉庁期間中の生活保護などの行政対応が殆どない中で、行政に代わって担う越年期の取り組みについて妨害しないよう申し入れをしていたのだ。
 仲間の命を仲間で守り抜く以外に守ってくれる存在は残念ながら皆無だ。
 貧困は「年越し派遣村」で可視化されたと言われた。しかし、今また貧困の不可視化が進んでいる。野宿者ならば追い出しても誰も文句を言わないだろうとたかをくくったから出来た強制排除に違いない。


 私たちは、貧困の再可視化に向けて声をあげ続ける。まずは路上から人を排除するな、人間として対話しろ、この当たり前の要求に耳を傾けてくれる仲間をもっと増やしていきたい。

 なお、渋谷区による宮下公園野宿者排除・越年つぶしに対する抗議声明は、1月21日現在、合計1,141筆集った。

 

池田 幸代(新宿野宿者女性の会「心を開く輪」)

 

 

日日刻刻  推定組織率17.7% (12.13〜1.7)


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