アジア@世界
814・5号

●ハンガリー
「EUの緊縮財政政策に反対、全欧から4万人がデモに参加」

 4月8〜9日、ブダペストでポルトガルへの緊急支援のためのEU非公式財務相会合が開催され、支援条件としてポルトガルに一層の歳出削減を迫った。
 これに対し同9日、ヨーロッパ22ヵ国の45の労働組合の活動家4万人が、EUの緊縮財政政策に反対するデモを行った。デモを呼びかけた欧州労連(ETUC)のジョン・モンクス書記長は「私たちは雇用と、成長と、福祉国家を守ることを望んでいる。銀行家が犯した間違いを埋め合わせるための支払いの拒否を」と訴えた。彼は金融取引への課税と、若者の雇用創出のためのユーロ債の発行を要求した。

●米国
「「われわれは一つ」を掲げ100万人が集会・デモ」

 4月4日、マルチン・ルーサー・キング牧師暗殺45周年にあたり、AFL・CIOや地域団体、宗教グループ、学生団体等の呼びかけで「ウィ・アー・ワン(われわれは一つだ)」を掲げて、全米千ヵ所以上で集会、デモが行われ、100万人以上が参加した。これらの集会・デモでは州政府の公務員攻撃と闘うウィスコンシン、オハイオ、インディアナ等の労働者・市民との連帯が大きな焦点となった。
 ワシントンDCでの集会で全米黒人地位向上運動(NAACP)代表のベンジャミン・ジェラス氏は、企業のCEO(最高経営者)に支持された政治家たちは、キング牧師が命を捧げて勝ち取ろうとした権利を奪おうとしていると非難した。
 西海岸の港湾労働者はオークランド港での作業を止めて、公共セクターの労働者への連帯を表明。オークランド教員労働者連盟は、「メイク・ザ・バンク・ペイ(銀行に支払わせよう)」キャンペーンの一環として、オークランド・ウェルズ・ファーゴの支店前で座り込みを行った。このキャンペーンは公的資金を浪費する一方で住宅の立ち退きを迫り、財政危機のツケを労働者に払わせようとしている銀行に抗議するために、教員組合やSEIUなどの労働組合が呼びかけ、同支店前に70人余が集まった。同支店には「本日はデモが予定されているため閉店します」というお知らせが貼られていた。
 オークランド・ウェルズ・ファーゴはオークランド学校地区の負債(現在1億ドル余に達している)の証券化と売買によって利益を上げており、このキャンペーンは同銀行に債権放棄の交渉に応じるよう要求している。同銀行のCEOが1年間の報酬の1億8千800万ドルを寄付するだけで、オークランドは教員を削減せずにすむ。  ワシントンDCのデモでは、石油関連複合企業、コーク・インダストリーズのチャールズ・コークとデービッド・コークのオフィスの前で、「恥を知れ」、「私たちは人間だ、私たちは労働者だ」と書かれたプラカードを掲げた。コーク兄弟はティーパーティーに資金を提供し、州政府に公務員の団体交渉権はく奪を要求してきた。デモのプラカードは、1968年にキング牧師が支援したメンフィスの清掃労働者が掲げたスローガンである。

 ペンシルベニアでは、ペンシルベニア州立大学の学生約300人が、チームスター労組第8支部(同大学のサービス、技術労働者)と共に、大学への予算削減に反対した集会を開いた。(「レイバーノーツ」より抄訳)

●エジプト
「スト禁止法に抗して、闘いが継続」

3月27日、新たに結成されたエジプト独立労働組合連合の呼びかけで、暫定政権が発表したスト禁止法撤回要求のデモに500人が参加した。デモには労働組合以外のグループも合流、「抗議行動は前政権の残存勢力と闘うための唯一の手段だ」、「ストは貧困と飢餓と闘うための正当な行為だ」と主張した。
 暫定政権は同23日に、非常事態法の発効中に業務を妨げたり暴力を伴う抗議行動の呼びかけ、それへの参加者に、最高1年の拘留または50万エジプトポンドの罰金(1エジプトポンドは約14円)に処すという法律を採択。現在、軍で検討されている(「アルマスリ・アルヨウム」紙・英語版、3月28日付)
 4月1日には「セーブ・ザ・レボリューション(革命を救え)」の呼びかけに応え、タハリール広場に数万人の労働者、市民が結集した。参加者たちは、ムバラクの訴追、大統領選挙委員会の設立、腐敗に関わったすべての者の訴追、国民民主党(旧与党)の資金に関する調査等を要求。この集会には、1月25日以来の運動グループがいくつか参加したが、最大野党のモスリム同胞団は不参加だった。(「アフラム・オンライン」4月1日付)
 青年を中心とする「4月6日運動」は、フェースブックを通じてデモ参加を呼びかけた。この呼びかけは、「エジプト人民は旧体制をロンダリング(洗浄)して、新しい装いでの復活を許さないだろう」と、ムバラク体制の残滓一掃を要求。1〜2月の革命により民主主義的要求のいくつかは実現。しかし依然としてムバラク体制とつながっていた勢力が政治・経済・地方行政機関・メディアの重要な位置を占めている。軍は3月9日にタハリール広場で行われたデモの参加者を逮捕・拘留し、拷問し、軍事裁判にかけ、実刑を言い渡した。
 ケファヤ運動(「変革のためのエジプト運動」)の創始者の1人であるアフメド・バハア・エルディン・シャアバンさんは「革命のハネムーンは終わった。革命を救うためには、精力的に活動しなければならない」と言う。
 人権活動家のアイダ・セイフ・エルダウラさんは「今起こっていることは反革命であり、それに対抗するために全国で委員会が組織されている」と述べた。  若手弁護士のアフメド・エザッドさんによると、これらの委員会は独自で週刊の新聞を発刊している。彼は「ムバラク打倒の後、しばらくは軍に時間を与えようという議論があったが、時間を与えると軍は再び結束して私たちへの弾圧を再開するだろう」と述べた。 (同3月31日付より)

●中国
「民主的に選出された労働者代表を通じた団体交渉のシステムを」

 以下は中国の民主的労働運動を支援している「チャイナ・レイバー・ブレティン」(香港)の韓東方(ハン・ドンファン)氏の「ニューヨーク・タイムズ」(4月6日付)への寄稿の抄訳である。韓東方氏(1963年生)は、89年に北京で独立労組を組織して逮捕され22ヵ月の拘留後、91年4月に釈放され、病気治療のため出国、現在は香港で活動。
 中国でのストは法的権利はないが毎日起きており、しばしば成功するし、最近ではリーダーが投獄されることもほとんどない。
 名目上は共産主義国である中国の労働者にストの権利がないのは皮肉に思えるかもしれないが、労働者たちはスト敢行により、共産党に反抗している。しかし、中国は何年も前に実質的には共産主義を放棄し、資本主義を取り入れたのであり、資本主義の国ではストはあたりまえのことである。
 中国の学者や政府当局者、さらには一部の実業家でさえこの事実を認めており、スト権復活を提案している。中国では1982年にスト権が憲法から削除された。「改革・開放」が労働争議の激化をもたらすことを恐れたためである。
 「改革・開放」の当初は労働争議やストは抑制されたが、最近ではスト拡大の趨勢は明らかである。  ビジネス・リーダーで、広州自動車の社長であるゾン・チンホン氏によると、昨年の夏の2ヵ月間に珠江デルタ地域の自動車産業だけで20件のストが起こっており、常に新しいストが始まっている。彼は今年の全人代への提言の中で、スト権の復活を訴えた。彼によると、これは市場経済の下の労働者の基本的権利であり、労働の権利に付随するものである。
 私はこの点においてはゾン氏に同意するし、彼の発言を大きな一歩前進だと評価したい。スト権が重要であることは明らかである。しかし、労働者の最も重要で基本的な権利は団体交渉権である。それは、労働者が何のために行うストかという問題と関わっている。
 労働者は賃金引き上げと労働条件改善を求めストに入る。ストが目的ではなく、交渉プロセスの一部である。そのプロセスがもっと効果的であれば、多くの場合、労働者はストに入る必要がない。
 中国の労働者たちは、賃金の引き上げ要求を掲げて、その要求を経営者との平和的で、対等かつ建設的な交渉の中で話し合えるシステムを求めている。労働者が平和な団体交渉で目的を達成できるなら、長期的に見ればスト数は減るだろうし、労働者の賃金は上がり、労使関係も改善されるだろう。
 一方、他の条件と切り離されてスト権だけが復活した場合、つまり団体交渉権が伴わない場合、労働者が実際にストに入る権利が掘り崩される危険があることに注意すべきである。もし労働者がストに入る前に当局に許可を申請することを要求されるのなら、スト権は無意味なものになるだろう。
 もしスト権が労働者を解放し、彼ら・彼女らの団体交渉を奨励する方法で確立されるなら、彼ら・彼女らは必要な場合には強力な権利を行使できることを確信でき、その結果、労使関係が改善され、ストの件数が減るかも知れない。
 もし政府が中国におけるストの件数を減らしたいのなら、総合的なアプローチを採用し、問題の根本原因を取り上げる必要がある。それは民主的に選出された労働者代表が賃金や労働条件について経営者と交渉できる効果的な団体交渉のシステムがないことである。
 もしそのようなシステムが導入されるなら、それは労働者にとってだけでなく、ゾン氏のような、労働者の離職率の高さやストによる損失を憂慮している経営者にとっても利益となるだろう。
 団体交渉のシステムを導入することは中国の政府にとっても利益となるだろう。当局者は労働者に力を与えることを心配しているかも知れないが、それがより調和的な労使関係の発展を促し、共産党が目標としている繁栄・安定・調和の社会につながるかも知れないことを心に留めておくべきだろう。

●ベネズエラ
「職場での民主主義の拡大を要求してデモ」

 3月31日、カラカスで数千人の労働者が職場での民主主義の拡大と新労働法の採択(03年以来、国会で棚上げになっている)を要求してデモを行った。デモを呼びかけたベネズエラ全国労働組合連合(UNETE)の活動家によると、このデモはUNETEのチャベス政権への「批判的支持」を再確認し、チャベスが提唱する「21世紀の社会主義」を全国の職場において打ち固めることを目的としていた。
 新労働法には、請負労働を廃止しすべての労働者を正規雇用とすること、労働時間の短縮(現行の1日8時間から6時間へ)、労働者の評議会のための活動と政治教育を有給休暇扱いとすること、雇用の安定のための全国的基金の創設(革命前に旧経営者によって不当解雇された労働者への賃金の支払いを含む)などの進歩的な条文が含まれている。03年にこの法案が上程されて以降、労働者によって数千件の追加提案が議会に提出されている。しかし、政府当局者は、全体的な合意が必要であるという理由で、労働者の要求や提案に対して消極的な姿勢を示してきた。
 UNETEの全国コーディネーターのマルセラ・マスペロ氏は、「私たちは本当の労働者管理を深化し、公有企業の効率を改善することを望んでおり、それらは明らかに革命的プロジェクトの一部である」と語っている。
 UNETEは昨年11月9日にも同様のデモを行ったが、今回は国会に向かうデモの途中で警官隊によって阻止され、約1時間の交渉の後に目的地までの更新を許可された。要求書が与党、ベネズエラ統一社会党(PSUV)の議員で国会副議長のアリストブロ・イストゥリス氏に手渡された。彼は、新労働法はまず国会の社会開発常設委員会で採択されなければならないと説明した。(「ベネズエラ・アナリシス」のウェブより)。

●米国
「イケアが組合結成を妨害」

 スウェーデンの家具メーカー、イケアは製品だけでなく、企業イメージも高く評価されており、3年前にバージニア州ダンビルに米国初の工場を設立したとき、地元の人々は歓迎した。しかし、現在ではこの工場における人種差別、組合結成の妨害、高い離職率が非難の的となっている。残業の強制、高いノルマ、賃金の据え置きなどに対して不満が高まっている。
 この工場の335人の労働者は組合結成を試み、有資格者の過半数の署名を集めたが、スウェドウッド(イケアの製造部門の子会社)は組合つぶしで悪名を馳せているジャクソン・ルイス法律事務所をコンサルタントに雇用し、労働者に反組合集会への参加を強制した。
 スウェドウッドのスウェーデンの工場の労働組合によると、同社のCOC(企業行動基準)には組合結成の権利を尊重することが明記されている。
 スウェーデンの工場では、最低賃金が1時間19ドルで、法律で定められた5週間の有給休暇を取得できる。米国の工場では賃金が同8ドルで、有給休暇は12日(うち8日は会社側が日程決定)である。しかも労働者の3分の1は派遣会社に雇用されているため、賃金はさらに低い。
 バージニア州ダンビルはかつては衣料とタバコの町だったが、今では多くの企業が移転または倒産し、失業が増大している。機械工労組のオルグのビル・ストリートさんは、「皮肉なことに、このスウェーデン企業は米国の労働者を、米国企業がメキシコの労働者を扱っているのと同じ方法で扱っている」と述べている。(「LAタイムズ」4月10日付より)

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