たたかいの現場から
882号

豪雪の中の激務 努力を惜しめない 郵便屋の“性(さが)”

 郵政事業の民営化と並行して全国的、かつ大々的に断行された集配局の統廃合。東京では多摩西部に位置する檜原郵便局が、局間距離15キロを超える隣町の「あきる野局」に統合された。配達区によっては、1日の走行距離が100キロを超えるところもある。この統廃合によって、今回の記録的豪雪が山梨・関東などを襲った際、この集配業務がほぼマヒ状態に陥った。そうしたなかでも公共サービスを旨としてきた職員は最大限の努力を惜しまなかった。


 そもそも危機管理ができていない日本郵便だが、15日、まず出勤は「最大限努力して出勤するように…」。

 電車が止まっても車が通行不能でも、3時間以上かけて7キロを超す距離を徒歩で出勤する「つわもの」も生まれる。もちろん自宅待機の社員も。支社から特段の指示もなく、情報を収集して判断すべき管理者も出勤できず、日没前にようやく到着する。幹線も積雪・渋滞で5〜6時間遅れ、配達すべき郵便物も届かない。速達などの重要通信をかかえ四輪車に複数人乗車で出かけるも、帰り着けない。


 翌日、翌々日も状況はそう変わらない。局からは、「とにかく安全に配慮しながら可能な限り配達してください」とのこと。そう言われると、努力を惜しまないのが郵便屋さんの性(さが)。
 “陸の孤島”になった檜原地域の場合、四輪車に分乗し、あきる野局から檜原局へ向かう。その檜原では、バイクにチェーンを巻きつけ幹線をよたよた走るため、普段の2〜3倍の時間がかかる。自衛隊は幹線道路のみを除雪。生活道路や特に高齢者が多い限界集落は全く手つかずだった。
 そんな所へは、カバンに郵便物を詰め、徒歩で配達する。腰まで埋もれるほどの雪をかき分け、郵便物を配達しながら声をかけると、一人暮らしのおばあちゃんが顔を出す。そして、ついつい玄関付近の除雪をお手伝い…。感謝されると疲れも吹っ飛ぶ。が、配達業務は遅々として進まず。汗だくになり、疲労も重なると冷気が襲う。暗くなりかけた頃、やっと留め置いたバイクに戻る。

 檜原局に戻り石油ストーブに手をかざし、あきる野局から迎えに来た四輪車でたっぷり時間をかけて辿り着く…ほとんど災害ボランティア。

 

 地域に役立つ公共サービスを組織的業務として機能できる体制こそ急務と痛感する。効率化優先の体制こそ変革が必要だ。

棣棠 浄(郵政産業労働者ユニオン多摩地方支部)

 

ワタミ過労死裁判に渡辺議員は出廷せず
   「一生かけて償う」発言は何だったのか!?

 大手居酒屋チェーン「和民」で2008年に正社員だった森美菜さん(当時26歳)が入社約2ヵ月後に過労自殺した問題で、遺族がワタミと、当時社長だった渡辺美樹参議院議員らを相手取って起こした裁判の第1回口頭弁論が2月17日、東京地裁で開かれ、森さんの父母である豪さんと祐子さんが意見陳述を行った。


 法廷には遺族を支援する全国一般東京東部労組の組合員をはじめ友好労組やメディア関係者、一般市民ら約70人が駆けつけ、傍聴席は満席になり廊下にあふれた。他方、被告側は代理人弁護士のみで、2月4日の自民党の会合で過労死について「一生の悔いであり、一生かけて償っていきたい」と発言したと報道された被告の渡辺議員は最後まで現れなかった。
 裁判後の報告集会では、支援者から「悔いや償いが真実の思いであれば、なぜ渡辺議員は法廷に来ないのか。口先での謝罪ではなく、遺族の声に向き合うべきだ」との批判の声が相次いだ。


 裁判で意見陳述に立った豪さんは「営業時間が勤務時間だと言い、店舗勤務の最初から連日の長時間労働・時間外労働を強制し、休憩も休日も十分に与えず、勤務時間外に強制的に購入させた渡辺氏の著書や課題図書のレポート提出、理念集の暗記テストなどを強制し、研修会やボランティア活動も、任意でなく強制しました」とワタミでの過重労働を指摘した。
 祐子さんは「娘をだまして就職させて、肉体的にも精神的にも追い詰めて、死に追いやったワタミを許すことはできません。ワタミ側から損害賠償額確定のための民事調停を申し立ててきましたが、安全配慮義務違反はない、当方に責任はないが、金は払ってもいいという内容でした。そんな考え方では、これから先もまた同じ事を繰り返すでしょう」と述べた。


 ワタミ側は、裁判所に出した答弁書で「原告らの請求を棄却する」と記し、過労死の責任を全面的に否定し争う構えだ。
 裁判の第2回期日は3月27日(木)13時30分から東京地裁705号法廷で開かれる。

 

須田 光照(全国一般東京東部労組書記長)

 

全統一関交協分会で一時金要求ストライキを貫徹!

 2月17日、全統一関交協分会は全事業所でストライキを決行した。
 関東交通共済協同組合(本部西新宿、さいたま市に事業所)は、トラック運送業者のための損害賠償保険を扱う共済組織。会社設立当初から職場に労働組合が組織され、長年にわたり健全な労使関係を築いてきた。
 ところが、昨年から会社は夏冬の一時金を支給しようとせず、何度かの交渉を経て年間1ヵ月との回答を引き出したものの、不誠実な交渉態度に終始してきた。

 問題は一時金だけではない。3年前に就任した大高理事長以下の現経営陣は、一昨年、収支悪化を理由に最大30%減となる賃下げを強行した。組合は職場闘争と裁判で闘い、賃金減額幅を縮小させ一定の終結を見たが、一時金不支給となれば組合員、とくに若年層の生活が困窮を極める。分会は組合員の生活防衛のため、また健全な職場と労使関係を回復させるため、大衆討議を重ね、ストライキ敢行を決定した。


 組合のストライキ通告に対し、会社はロックアウト(組合員の施設内立ち入りを禁止)で対抗すると強弁。実質的なストライキつぶしを狙った組合攻撃を前に、当日は早朝から緊張が走った。

 会社は管理職社員を動員して業務強行をはかったが、早朝から結集した分会員と支援の労働組合、全統一各支部分会の仲間は、本部前の説得行動によりストライキ防衛を貫徹した。
 こうして会社はロックアウトを断念せざるをえず、併行して断続的に行われた折衝で上積み回答を引き出すこととなり、組合は闘いの前進を確認し、ストライキは昼をもって解除された。

 分会として久々となるストライキは、あらためて職場の団結、労働組合の力を確信させ、春闘へと引き継ぐ大きな財産を獲得した闘いとなった。


佐々木 史朗(全統一労働組合書記長)

労働者の使い捨ては許さない フジビ闘争支援共闘を結成

 荒川区西日暮里にあったフジ製版は一昨年9月に破産、社員全員を即日解雇した。この倒産は、負債額の9割が労働債権(主に退職金)という異常な倒産だった。経営者の田中健は、個人資産を守るために不採算化した会社を抜き打ち的につぶし、労働債権を踏み倒して逃亡した。
 一方、親会社の富士美術印刷(フジビ)は、09年に就任した田中正武社長が、自らのワンマン体制にとって邪魔な労働組合を排除するため、フジビグループの労組拠点であったフジ製版を徐々に本社の経営体制から外し遂に一昨年、フジ製版の経営悪化に乗じて子会社諸共の組合つぶしを図ったのだ。

 私たちは富士美術印刷に対し、解雇された組合員の雇用保障を要求し、1年半近く闘い続けている。しかしフジビの対応は「フジ製版は単なる下請外注会社」「フジビには何の関係も責任もない」の一点張りで、団交にも応じない。


 これまで私たちは、労働委員会に不当労働行為救済を申し立て、荒川区議や行政の協力を仰ぎ、現場では集会やデモ、座り込み等を闘ってきた。しかし、フジビ創業家田中一族の対応はかたくななうえ、雇用保険が半年前に切れて収入の道は途絶えている。

 こうした困難を乗り越え、争議勝利を目指すために、「フジビ闘争支援共闘会議」が結成された。資本家が資産確保のため、労働組合をつぶすため、不採算部門を切り捨てるために、分社化し、裁判所に駆け込んで破産させればよいなどという方法論を絶対に許さないために勝利しなくてはならないと思っている。


 読者の皆さんには、この闘いをより深く理解していただき、支援共闘会議への参加と協力をお願いしたい。


【フジビ闘争支援共闘会議】
 〒102−0073
 東京都千代田区九段北1−2−1 九段北1丁目ビル3F
 全労協全国一般東京労組合内
 tel:03−5215−8788  fax:03−3234−2410
 会費 団体 1口千円(半年6千円 年1万2千円)
     個人 1口500円(半年3千円 年6千円)

 

全国一般東京労組フジビグループ分会分会長 小金井 俊弥

 

日日刻刻  経営側「ベア実施なし」が多数 (1.23〜2.6日)


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