たたかいの現場から

888号

「秘密法は21世紀最悪レベル」 来日した米政府元高官が指摘

 昨年12月に特定秘密保護法が成立した時に「21世紀に民主国家で検討された法律として最悪レベル」と指摘した米国の安全保障専門家、モートン・ハルペリン氏(75)を招いての一連のシンポジウムが、東京都内で8、9、10日と連続して開催された。特定秘密保護法の廃止を目指して活動している市民運動団体と日弁連が共同で招聘(しょうへい)した。


 ハルペリン氏は米国の歴代政権で国務省、国防総省、NSCの高官として核戦略の策定にあたり、1960年代にはキッシンジャー大統領補佐官の腹心として沖縄返還交渉にかかわった。現在はオープン・ソサエティー財団の上級研究員として活動しており、昨年6月に公表された、「知る権利」の国家の秘密保護に関する国際的ガイドラインである「ツワネ原則」の起草メンバーを務めた。


 一連の講演で、政府が「米国などとの情報共有のために法律が必要」と国会などで説明してきたことを自らの体験を踏まえて否定。この法律の問題点として、秘密の範囲や指定解除の手続きのあいまいさ、市民やジャーナリストに刑事罰を科すこと、内部告発者の保護の不十分さ、市民社会や海外の識者らとの協議が不十分なことなどを列挙し、厳しく批判した。
 10日の日弁連主催のシンポジウムでは、元毎日新聞記者で外務省機密漏洩事件の被告となった西山太吉氏と対談し、沖縄返還に伴う米軍用地の原状回復補償費を日本政府が肩代わりした密約について「日本政府が国内の反発を恐れた。安全保障に関係なく、秘密にする必要はなかった」と断言した。
 9日には外国特派員協会、日本記者クラブで相次いで記者会見を行い、11日には名古屋市でも講演した。その間、日本のメディアの単独インタビューにも精力的に応じ、核戦略や日本外交などに関する質問にも自在に応じた。


 沖縄基地問題に関しても興味深い発言が多かった。主な発言は次の通り。
 「有事に沖縄に核を持ち込む密約について、他策はなかった。しかし私は、米国が再び核を戻す権利を主張することはないだろうと確信を持っていた。沖縄返還後に基地のプレゼンスが見直され、沖縄の負担が軽減されると予想していた。ところが今、逆に(名護市辺野古に)新しい基地建設の提案がなされていることに驚いている」(8日、国会議員会館内集会)
 (沖縄に新基地は必要か、との問いに)「戦略的必要性はないと考えている」「沖縄の市民が欲していないのだから、日本政府は米軍にきちんと言うべきだ。新しい基地でやろうと考えている基地機能が他の基地でできないということはあり得ない」(9日、日本記者クラブ)
 (1972年の西山記者の逮捕を当時知っていたか、との問いに)「知っていた。すごく心配したし、嘆かわしいことだと思った」
 (有事に核を沖縄に持ち込むという密約について)「米政府の立場は、核はあるが、抑止力のためにどこにあるかをひっくるめて秘密だ。私はこの立場に同意していなかった。個人としては公表してよかったと思っているが、単純ではない」

 (10日、日弁連主催シンポ=関連記事本体14ページ)

 

米倉 外昭(新聞労連副委員長)

 

たちかぜ裁判・完全勝利判決 自衛官の内部告発が決め手

 4月23日、午前11時10分。東京高裁から飛び出してきた阪田弁護士の手には「完全勝利」の文字。歓声が上がる。「よかった!」思わず、そうつぶやく。


 横須賀配備の護衛艦「たちかぜ」に配属された1等海士Tさんは、先輩隊員から執拗な暴行・恐喝の被害を受けたことを苦にして、2004年10月27日に21歳で自殺した。Tさんのご遺族が、国及び加害者の先輩隊員を被告として損害賠償を求めていた「たちかぜ」いじめ自殺訴訟において、東京高等裁判所第23民事部は、国と暴行を繰り返した先輩隊員に対し、自殺による損害を含め、合計約7330万円の損害賠償を命じる判決を下した。

 判決は自殺について、予見可能性を認めただけではなく、国による「艦内生活実態アンケート」及び聴き取り文書の隠匿(いんとく)についても違法性を認め、国に対してさらに20万円の損害賠償を命じた。


 「あなたのおかげです」。原告であるお母さんは、内部告発をしたS3等海佐に声をかけた。支援者も同じ思いだ。判決は、Sさんの内部告発によって明るみに出た「艦内生活実態アンケート」他の文書は、「国側が自殺を予測できたかどうか、という判断に影響を及ぼす重要な証拠だった」と評価した。
 「国民のため、うそをつく自衛隊であってほしくなかった」(神奈川新聞2014年4月23日付)と語るSさんの思いと、私たち平和運動の思いが、「たちかぜ」裁判で出会い、「勝利判決」は生まれた。


 国側は上告を断念。判決は確定した。Sさんの処分が見送られたことも特筆すべきことだ。
 自衛隊をめぐって「政治の暴走」が加速される今日、自衛官や家族の中にある「思い」が、暴走を食い止める力を発揮する。そういう時代が来たのだと思う。
 私たちこそが自衛官に助けられている。その事実を直視したい。

 

新倉 裕史(「たちかぜ」裁判を支える会/ヨコスカ平和船団)

 

集団的自衛権の行使は認めない!

 他国のために自衛隊の武力を使う集団的自衛権の行使を検討すると、安倍首相は5月15日、表明した。確立した憲法解釈を内閣が勝手に変えようとする暴挙に、怒りが渦巻いている。(写真は抗議の2500人ヒューマンチェーン 5月15日国会前 写真提供:レイバーネット日本)

 

 

日日刻刻  製造業海外生産比率20.3% (4.11〜5.4)


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