たたかいの現場から

889号

大飯原発の運転差し止め判決を 全国の訴訟に水平展開

 福井の大飯原発差止訴訟弁護団から勝訴の感触の一報が入ったのは、今年1月。被告関電は適切な反論も出さず、裁判所の求釈明に対しても何ら回答できず、3月には結審するという。この勝訴予測に対して過去に原発差止訴訟を闘ってきた弁護士らには慎重な意見もあった。従来、原発訴訟は原発安全神話のもとにあり、過去に勝訴した例はわずか2例に過ぎない。


 3.11を経験し裁判所も変わったはずだ、改めて各地で原発差止訴訟を起こそう、各地の弁護団の情報を共有すべく「脱原発弁護団全国連絡会」が設立された。現在、ほぼすべての原発に裁判が起こされ、全国で30件近くが係争中であり福井もその一つだ。しかし、その審理の多くは規制委員会の審査を横目で眺めながら、被告事業者も時間稼ぎをしている。その中で、福井地裁の状況は心強く、希望であった。
 脱原発弁護団全国連絡会の全体会議での検討のもと勝訴を確信し、共同代表の河合弘之・海渡雄一は当日福井地裁に行くこと、東京でも院内集会を開催、金曜日の官邸前行動に参加等が決まった。もっとも、直前の最高裁の不当な介入を避けるため、事前に勝訴予測について広めなかった。


 主文「大飯発電所3号機4号機の原子炉を運転してはならない」に、瞼が熱くなった。判決全文は是非読んでほしいが、福島原発事故を前提に原発過酷事故の深刻さを丁寧に認定し、大飯原発で過酷事故を招く「具体的危険性が万が一にでもあるか」につき、難解な科学論争に入り込むことなく、10年以内に5回にわたる基準地震動を超える地震の到来、使用済み核燃料の危険性を認めている。また、安全性については「本件原発に係る安全技術及び設備は万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない」と判断し差し止めの必要性を認めている。

 この勝利判決はやや疲れのみえていた脱原発運動にとって大きな希望となった。即日控訴の意思を示した関電だが、判決期日の被告席は空席だったという。
 脱原発弁護団全国連絡会ではこの判決を係争中の訴訟に水平展開し、すべての原発訴訟に勝利するつもりである。

 

松田 奈津子(脱原発弁護団全国連絡会事務局)

 

全駐労年休賃金カット 原告全面勝訴、国に制裁金命令

 2012年7月13日、沖縄で全駐労の名前が久々に大きく報道された。基地内の食堂などで働く従業員の定年後再雇用で、米軍が一方的にパート制にしたことに抗議して24時間ストを行ったからである。

 このストに対して米軍は、この日に年休を取得すると無給にすると脅した。賃金カットされた全駐労沖縄地区本部の従業員176人は、賃金の支払いと、制裁の性質を持つ「付加金」の支払いを求めて国を提訴。この裁判の判決がこの5月21日、那覇地裁(鈴木博裁判長)で言い渡され、原告が全面勝訴した。日本の労働法が適用されない「無法地帯」に風穴を開ける画期的な判決だ。


 昨年10月、未払い賃金は支払うが付加金は出さないとする和解案が出されたが、全駐労は基地労働者に国内法を適用させる突破口にしたいとして拒否し、判決を求めた。焦点の付加金について那覇地裁は、未払い賃金と同額の約205万円の支払いを命じた。判決では、国と在日米軍は雇用主として権利義務を分掌しており両者が制裁の対象だと指摘、国は米軍に求償することができると判示した。
 日本政府は30日の衆院外務委員会で控訴しないことを表明した。「琉球新報」によると、付加金は米軍に支払いを求めず日本政府が負担するという。


 日米安保条約と在日米軍、そして米軍駐留に伴う日米地位協定は、そもそも憲法の番外地にある。日米の労務提供契約に基づいて、米軍が業務を指示し、賃金は防衛省が支払うという関係に基地労働者は置かれている。労働基準法の36協定をはじめ、高齢者雇用安定法、労働安全衛生法などの法律がほとんど適用されず、基地内での組合活動も認められていない。日本政府はこうした「無法」状態を本気で改善しようとしないどころか、12年のストでは米軍の違法性をただすこともせず米軍の意のままに賃金カットを実行し、今回の全面敗訴を突き付けられるに至った。
 判決後の対応を見ても、米軍にものを言えない「占領下」政府に抜本的な改善は期待できそうにない。全国的な報道がほとんどない中、地道に闘い続ける労働者に対する幅広い関心・支持が必要だ。

 

米倉 外昭(新聞労連副委員長/琉球新報記者)

 

前田裕晤さんの傘寿と出版祝い

 大阪電通合同初代委員長前田裕晤さんの出版記念と傘寿を祝う会が、4月26日の東京に続き、5月20日には大阪で開催された。
 当日は懐かしい友人や知人総勢120名が集いお祝いの言葉や昔話に花を咲かせた。
 本人曰く、昔は「紅顔の美少年」だったらしいが、今はその証人が少なくなり真実は定かでない。
 しかし、80歳になってもはにかんだ笑顔がとても素敵で愛おしく思ったのは私一人だけだろうか?
 16才で大阪中央電報局に配属、半世紀以上に渡って労働運動に携わってこられた私たちの大先輩。『80歳になり、従来の立場からすこし運動行動を変えながら頑張っていきたい』と想いを語られた前田さん。
 今後も私たちの良き先輩として、労働運動に限らずいろんな運動の第一線で御活躍下さい。

 

平出 正人(大阪電通合同労働組合)

日日刻刻  過労死等防止対策推進法成立へ (5.13〜27)


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