たたかいの現場から
813号

住友重機アスベスト裁判で勝利和解
下請労働者への補償の道筋を開く

 横須賀にある住友重機械工業の造船所で、長年下請労働者として働き、アスベストのため中皮腫(4名)、石綿じん肺(1名)のため亡くなった労働者の遺族が、住友を相手に闘った裁判が、3月29日横浜地裁横須賀支部で勝利和解した。謝罪と正社員との差別のない補償等を求めてきたこの闘いは、ほぼその目的を達することができたと言える。
 住友では、1988年、全造船住友重機追浜浦賀分会の元社員8名が、石綿じん肺裁判を開始、9年かかって勝利和解をしたが、この時の解決条件のひとつが、退職後のアスベスト被害についての補償制度の創設だった。
 これに刺激をうけ、米海軍横須賀基地で働きアスベスト被害をうけた退職者・遺族らが、1999年、国と米軍を相手に裁判を開始。三次にわたる裁判で勝利し実質的な補償制度を確立した。2003年、今度は全員第二組合員だった住友退職者が裁判提訴、2006年地裁で完全勝利し確定。その前年の尼ヶ崎のいわゆるクボタショックもあり、造船大手では、退職後の補償制度が一定の改善をみた。しかし依然として下請は対象外だった。
 2006年12月、
全造船アスベストユニオンが結成され、住友に対し、下請も含む退職組合員への差別のない補償を求めて団体交渉を開始。この中から決裂した下請ら遺族が提訴したのが、今回解決した第三次住友(下請労働者)アスベスト訴訟だ。実はこの三次訴訟のあと交渉で解決した第4次請求、さらに加えて第5次の請求団が現在交渉中である。それらを通じて現時点でも下請労働者への補償の道筋はできつつあり、今回の第三次の勝利和解はそのステージを更に上げるものと理解している。
 ご支援をいただいた多くの皆さんにあらためて感謝するとともに、これからもアスベスト被害の発生防止と加害の責任追及、公正な補償を求めていく決意です。

早川寛(全造船関東地協事務局長)

卒業式不起立で今年も6名に処分
 3・10高裁判決で追い詰められた都教委

 3月30日、今年もまた2010年度卒業式に伴う「君が代」斉唱時の不起立などを理由に、都教委より6名の教職員に対する処分が発令された。これで悪名高い「10・23通達」が出されて8年目で処分者は通算436名になる。
 翌3月31日午後には、都内・全水道会館において「卒業式処分発令抗議・該当者支援総決集会が約100名の参加で開催された。
 今回処分されたのは、都立高校・特別支援学校の教職員6名で、処分の内訳も停職6ヵ月(不起立6回目)減給10分の1、6ヵ月(同3回目)減給10分の1、1ヵ月(同2回目)戒告(同1回目)と、見せしめのように回数を重ねる事に重い処分となっている。
 今年の卒業式の特徴としては、これまで認めてきた卒業式当日の年休取得に制限を加える攻撃をかけてきたことであり、今回の処分者に関しては、身体に障がいを持つ教職員の不起立すら認めず、全員再任用の道を閉ざしたばかりか、修学旅行へのボランティア参加まで認めないという徹底ぶりである。
 にもかかわらず、当該をはじめ集会に参加した多くの参加者達には怒りこそあれ、沈鬱な雰囲気は全く伝わってこない。その背景には「どんなに処分されようと、おかしいことには声を上げ抵抗し続けていく」信念に加えて、3月10日の東京高裁における「日の丸・君が代」処分取り消し訴訟の、逆転勝利判決がある。
 この判決では、10・23通達を合憲としつつも「処分は社会観念上著しく妥当性を欠き重すぎる」として懲戒権の逸脱・乱用を認めたことで、都教委が進めてきた「処分」による恫喝で、起立・国歌斉唱を教職員に強制する事が不可能となってしまう。
 今後の最高裁の動向を含め、まだまだ楽観は出来ないものの、一人一人の自立した抵抗が着実に都教委を追い込んでいる事は間違いない。

岩崎松男(編集部)

チェルノブイリ原発事故から25年の日に集会開催

 チェルノブイリ原発事故から25年を迎える年に福島原発事故が起きました。この事故がどのようになるか、予断を許さない状況が続いています。東北関東大震災におそわれた後だけに、事態をいっそう悲惨なものにしています。
 当日、演じられる講談は、チェルノブイリ原発事故の消火活動にいった消防士夫婦にもたらされる運命を「未来の物語」として語ります。しかし、それが福島では現実のものとなりつつあります。そうさせないために、出来ることを語り合いましょう。
◎集会タイトル「チェルノブイリ原発事故から25年 いまこそ、脱原発へ!(仮)」
 絶対安全と主張してきた原発は、なぜ倒壊してしまったのか? チェルノブイリやスリーマイルの先例にも学ばず、東京電力や政府は遮二無二、危険な原発をつくりつづけてきた。メディアまで買い切って、その神話を押しつけてきた彼らに、いま改めて糾弾の刃を突きつける。(佐高信)
◎講談「チェルノブイリの祈り」神田香織
◎講演「原発文化人と東京電力」佐高信
◎トーク「護憲こそ脱原発への道」神田香織・佐高信・福島みずほ
4月26日(火)18時半〜20時半/
星陵会館(地下鉄永田町駅他、tel:03−3581−5650)/
千円
主催「憲法行脚の会」他/
連絡先tel:03−5804−3210

憲法行脚の会

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