たたかいの現場から

890号

川内原発に再稼働の口火は切らせない
    鹿児島県議会の初日に千人が反対行動

 何かにつけて独走するのが大好きな鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、昨年行われた知事リコール運動にもめげず、今度は原発再稼働のトップランナーを目指している。
 こうした、県民ばかりか世界中の人にとっても迷惑極まりない川内原発1・2号機の再稼働に反対する行動と集会が、鹿児島県議会の初日となる6月13日の9時より鹿児島県庁前で開催された。


 国や原子力規制委の方針に全面的に追随し、川内原発を巡る様々な問題に目をつむり再稼働に邁進する県知事の姿勢に対して、とりわけずさんな避難計画への見解を追求することで、人命を軽視する県政と九電の姿を浮き彫りにし、「こんな状態での再稼働はあり得ない」とする県民の声を、県議会に反映させることが目的とされた。
 この集会は、鹿児島県内を中心にした90団体で構成された「ストップ再稼働! 3.11鹿児島集会実行委員会」が主催し、全国各地の反原発団体・個人を含め、県内外より千名余が結集し、本会議の傍聴、県議会各派や知事への要請行動が行われ、併せて九州全県から寄せられた12万余の再稼働反対署名も提出した。


 県庁前に横付けされた街宣車には、主催者や各地の参加者たちが次々と登壇し、「知事は記者会見で『30キロ圏の要援護者計画を作らないと再稼働出来ないというなら、全部の原発は動かない』と暴言を吐いた。これは要援護者の切り捨て発言だ」との怒りの声や、「川内再稼働は最終処分場とセットで、鹿児島を死の灰で覆い尽くそうとしている」(広瀬隆氏)、「日本の原発全てを廃炉にするために、死ぬまで闘う」(鎌田慧氏)など、アピールが途切れることなく続けられた。
  集会後は九電鹿児島支社まで「川内原発再稼働反対!」のコールをしながらデモ行進を行い、共同代表らによって「甘い規制委の地震動・大規模火砕流評価、ずさんな避難計画の下での再稼働はすべきでない」との申し入れを行った。

 

溝口 松男(同実行委・本誌運営委員)

 

集団的自衛権容認を許さない
   署名175万筆を提出、集会・抗議行動に3千人

 安倍政権が進める「解釈改憲による集団的自衛権行使容認」に強く反対し、3月に結成された「戦争をさせない1000人委員会」は、6月12日、全国各地で取り組んで「戦争をさせない全国署名」の第一次分、175万6368名分を、政府と衆参両院に提出した。

 首相の私的諮問機関の「安保法制懇」が5月15日に、集団的自衛権を容認する報告を出し、安倍首相が閣議決定を強行しようとしている状況の中で、署名は短期間にもかかわらず多数を集約した。

 衆院では赤松広隆副議長、参院は輿石東副議長に直接、署名簿の手渡しをおこない、国会での論議を強く要請した。しかし、安倍首相宛の署名については直接の受け取りが拒否され、ルポライターの鎌田慧さんなどが官邸前で激しく抗議を行った。


 同日夜、日比谷野外音楽堂では「署名提出報告集会」が開かれ、市民など3千人が参加。1000人委員会事務局長の内田雅敏さん(弁護士)が経過を報告、さらに作家の大江健三郎さんが「安倍首相は戦争を推し進める戦前のレジーム(体制)に戻そうとしている」と批判し、危機感をあらわに訴えた。

 また、落合恵子さん(作家)、香山リカさん(精神科医)、菅原文太さん(俳優)、澤地久枝さん(作家)、樋口陽一さん(憲法学者)なども「安倍政権の暴走を許さない。全国でさらに大きな運動を作っていこう」などとアピールした。さらに、民主党、社民党、生活の党、共産党の代表からも、国会内でも追及する決意が表明された。


 集会後に、参加者は首相官邸や国会周辺に移動し、国会議事堂を取り巻いて、「集団的自衛権反対!」「安倍政権の暴走をとめよう!」「戦争はさせないぞ!」などと力強くシュプレヒコールをおこない抗議した。なお、署名は9月末に第二次分を集約し、再度提出する予定になっている。

 

市村 忠文(フォーラム平和・人権・環境)

 

のりこえねっとがシンポ
   「ヘイトスピーチってなに? レイシズムってどんなこと?」

 昨年10月に設立した「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク(のりこえねっと)」では、賛同者及び賛助会員のみなさんに設立後の活動報告を行い、表題にあるシンポジウムを開催した。当日は140名の会場に200名以上の参加者があり、多くの方が立っての参加となったが、最後まで熱気あふれる集中した会となった。
 なお、当日の映像は、公式サイトトップから視聴でき、またYoutubeでも配信している(のりこえねっと公式サイトトップ http://www.norikoenet.org/)。  
 Youtubeでの配信 http://youtu.be/2Y4ZVDrF-ZE)。


 まずは冒頭に活動報告を行い、その後シンポに入り、最初に挨拶に立った和田春樹共同代表は「対抗勢力が強くなり抑え込んでいるように見えるが、日本にヘイトスピーチが現れたことは深刻な事態にあることの表れ」と述べた。

 続いて辛淑玉共同代表が、2013年のヘイトデモは確認済みだけで360件、毎日どこかで起きている、これで済んでいるのはカウンター活動のお陰と述べ、のりこえねっとの先輩である4団体(C.R.A.C.、男組、女組、差別反対東京アクション)を紹介し活動報告を受けた。それぞれの組織の特徴を生かした、はっきりとした意思を持つ活動が報告された。

 会場からは差別排外主義に反対する連絡会、島根県から参加した紫の風の発言を受けた。内容については是非映像を見てもらいたい。各団体のヘイトスピーチや、レイシズムを根絶しなければならないとする意思が伝わると思う。


 報告の後、シンポ「ヘイトスピーチってなに? レイシズムってどんなこと?」に移った。パネラーは石坂啓(漫画家)さん、寺脇研(元文部官僚、現大学教授)さん、八木啓代(ラテン歌手、作家等々)さんの多彩な顔ぶれ、進行は辛淑玉共同代表。

 それぞれ違った分野からの切り口で幅広く情況を探るやりとりが進行した。つまりヘイトスピーチやヘイトクライムが出てくるのは情況の反映だからである。会場からは、鈴木邦雄共同代表、色平哲郎さん(佐久平病院医師)、朴慶南さん、前田朗共同代表、木内みどりさんからも発言を受けた。最後に川原副事務局長が「のりこえねっとは今後ともヘイトスピーチ、レイシズムと闘っていく」と力強く閉会の挨拶を行い、終了した。


 今回は反ヘイトを闘う勢力が初めてといっても良いほど多数が一堂に会した。今後、多様な闘いが合流していくきっかけとなり、大きな流れに成長することを願う会となった。


 最後に、この会において様々不手際があり、参加者のみなさんや、開催にご協力頂いた方々にご迷惑をおかけしたことをお詫びする。

 

若森 資朗(のりこえねっと共同代表)

雇用破壊の暴走STOP! 雨をついて国会前行動

 国会も終盤に入った6月5日、生涯ハケン・残業代ゼロ、労働法制の大改悪に反対する「国会包囲大行動」が行われた。
 主催は全労連、全労協、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)などでつくる、安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション。降りしきる雨のなか、100人が参加し、国会は怒りの声で包まれた。


 労働者派遣法改悪案は、衆議院厚生労働委員会で審議入りされるか、審議入りさせず廃案に追い込むか、せめぎ合いがつづく。
 安倍内閣はさらに、「新たな労働時間制度」と称する残業代ゼロ・過労死促進の制度を、6月末答申予定の「国家再興戦略」14年版に盛り込もうとしている。

 緊迫した状況下で開かれた国会行動は、日比野敏陽MIC議長の司会で始まった。全労連・大黒作治議長の開会あいさつの後、日本労働弁護団の高木太郎幹事長は「STOP THE格差社会!5.27中央総行動」にふれ大同団結を熱く呼びかけた。
 国会議員の小池晃(共産)、相原久美子(民主)、阿部知子(無所属)、吉田忠智(社民)各氏の連帯あいさつを受け、各組合・争議団などのアピールが続く。

 参加者の胸を打ったのは当事者たちの発言。なかまユニオンの多田弘一さんは「1日6千円でまともに生きられますか」。女性ユニオンの藤井豊味さんは派遣法改悪反対の歌を披露し、いすゞ争議の五戸豊弘さん(JMIU)は「切られた派遣に人権はなかった」と告発。日赤争議の廣瀬明美さんは、「これからの世代を同じ目に遭わせたくない」と声を振り絞った。
 日本航空整理解雇事件での6月3日の客室乗務員、この日の乗員(パイロット)に対する東京高裁の不当判決への怒りも次々に。判決は、「管財人による解雇に文句は言うな」と言わんばかりで、会社更生下の整理解雇への司法チェックを放棄したに等しい。(関連記事14ページ)
 乗員原告団長の山口宏弥さんは、「まるで裁判所が雇用破壊の機関車になったよう。踏みにじられても最後まで闘う」。客室原告団長の内田妙子さんは、「この判決が断罪され、安心して働けるようになるまであきらめない」と語り、大きな共感の拍手を受ける。
 最後に全労協の金澤壽議長の音頭で団結ガンバローを唱和し、安倍政権の暴走を止める奮闘を誓った。

 

北 健一(team rodojoho)

カルテがないC型肝炎で初の和解 救済広げる糸口に

 カルテ等の証拠がないだけで特別措置法による救済を受けられないのは不当だとして、全国の薬害C型肝炎患者に呼びかけ、国に救済を求めている『カルテがないC型肝炎訴訟原告団』の裁判で5月13日、東京地裁において初の和解(救済)が成立した。


 和解が成立したのは宮城県に住む60代の女性で、出産時に大量出血がありその処置として肝炎ウイルスに汚染された止血剤を投与されてC型肝炎に罹患した。しかし、30数年前のことで当然カルテは破棄されており、薬害であることの立証は困難だったが、当時の主治医を統括していた元医師のところへ証言などの協力を依頼し、元医師からも法廷の中で止血剤の使用を認める証言を得られたことが大きな決め手になった。


 当日は裁判終了後、司法記者クラブにおいて記者会見を開き、和解の報告を行うとともに原告団・弁護団双方の声明を発表し、一層の救済拡大を訴えた。
 和解に至った女性も「あきらめかけた時もあったが、周りからの励ましでここまでこれた。私たちの仲間はみんな苦しみ、悩み、どこかに糸口を探している。この和解を契機に、他の患者にも大きく和解が拡がってくれることを願う」と話した。


 今回の和解で、カルテがなくても蓋然性があれば国に認めさせることができるという一つの道筋ができたが、まだまだ国が求めてくる「証拠」の壁は厚い。
 現在、約700名が東京をはじめ札幌・名古屋・大阪・広島・熊本・鹿児島の各地裁で提訴している。訴訟への参加を希望している未提訴患者は500名おり、どれだけ提訴者を増やせるかが問題だ。
 原告団結成から今回の和解に至るまでに既に4年が経過し、その中で多くの患者が他界している。まだ提訴できていない患者も含め、一人でも多くの患者への救済が求められている。

 

諏訪 哲也(カルテがないC型肝炎訴訟原告団事務局)

 

6.1三里塚―横堀現地行動 3本目の滑走路建設策動ただちに撤回を

 6月1日、三里塚空港に反対する連絡会は、横堀研修センターで「横堀現闘本部裁判勝利!成田空港年間30万回飛行、飛行制限時間緩和を許さない!」を掲げて「三里塚―横堀現地行動」を行い、45人が参加した。


 国土交通省は、東京五輪(2020年)までに羽田空港と成田空港の発着数を年間75万回(14年度中)から約83万回(羽田3万9千回、成田4万回増)に拡大、30年代には両空港に新しい3千メートル級滑走路を建設し110万回を目指すという計画案を明らかにした。

 まさに営利主義優先、安全軽視の過密運航、空港公害まき散らしの生活・環境破壊案だ。
 柳川秀夫さん(三里塚反対同盟代表世話人)は、「成田空港会社は現闘本部に通ずる道路を突然封鎖し、空港内に組み込み、撤去しろと言ってきた。国交省は第3滑走路案を打ち出した。国は、『地元』から上がってきた要求とみせながら空港拡張をやろうとしている。『巧妙』なやり方に腹がたつ。だめなものはだめとはっきり言い、行動することが大事だ」と発言した。
 清井礼司弁護士は、横堀現闘本部破壊裁判について報告し、「会社の主張は、『ゴミ』(現闘本部)を持ち去れということだ。法律論を超えてとんでもない言いぐさだ」と糾弾した。

 加瀬勉さん(三里塚大地共有委員会〈U〉)の「談話」が読み上げられ、(第3滑走路案に対し)「断固抗議し撤回を要求する」と宣言した。


 集会後、デモに移り、横堀・辺田地区一帯にわたり「三里塚空港粉砕!横堀現闘本部裁判勝利!第三滑走路建設策動を許さない」とのシュプレヒコールを響かせた。

 

山下 一夫(三里塚空港に反対する連絡会)

日日刻刻  内閣人事局が発足 (5.27〜6.11)


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