たたかいの現場から

891号

「集団的自衛権」行使容認閣議決定  首相官邸前に響く「安倍はヤメロ」の声

 7月1日、前日の与党合意を受けて、ついに「集団的自衛権」行使容認・合憲化の閣議決定を行った。歴代の自民党政権が確認してきた「集団的自衛権の行使は憲法9条に違反する」という当たり前の原則を放棄してしまった。この日は「憲法が壊された日」として歴史に残るだろう。


 閣議決定は「従来の政府見解における憲法9条の解釈の基本的な論理の枠内」とか、「平和的生存権」「幸福追求権」とか、「『武力の行使』には、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするものが含まれるが、憲法上はあくまでもわが国の存立を全うし、国民を守るためのやむを得ない措置」などという詭弁をはずかしげもなくもてあそんで、改正手続きによることなく憲法を葬り去ってしまった。これは一種のクーデターであるといっても過言ではない。


 この暴挙に対しては改憲派・保守派の学者や自民党の長老たちからも「立憲主義の破壊」「平和主義の放棄」として批判する声が高まっており、世論調査でも反対が上回っている。

 昨年の「秘密保護法」反対運動の高揚を受けて、今年になってから「解釈で憲法九条を壊すな」実行委員会や「戦争をさせない1000人委員会」が結成され、幾度かの国会や銀座などに向かう大集会やデモも行われ、節目節目には官邸前・国会前の行動も行われてきた。しかし昨年末の秘密保護法反対運動のような熱気には「今一つ」という感があった。


 しかし自公の与党協議で「合意」が確認された6月30日、閣議決定がなされた7月1日には、事態は明らかに変わっていた。

 朝から官邸前の歩道は立錐の余地なく埋め尽くされる。1万人を超える結集となった。「7.1官邸前」と題した7月3日の朝日新聞社説は、大学生から高校生・中学生にまでいたる「若い世代が目立つ」と書いた。同社説が書いたように「安倍は辞めろ」のコールが目立った。60年安保闘争の最高揚時に叫ばれたコールは「安保反対、岸ヤメロ」だったという。


 「集団的自衛権」容認閣議決定に伴って、秋の臨時国会ではいくつもの法改悪案が上程されることになるだろう。

 「安倍はヤメロ」のスローガンを現実のものとするために、今どういう努力が必要か。その現実性を実感できる2日間の闘いだった。

 

国富 建治(運営委員)

 

「フリーランスが根絶やしにされる!」  秘密保護法違憲訴訟 第一回口頭弁論

 「フリーランス差別が公然とおこなわれるなか、秘密保護法が施行されれば、フリーランスの取材活動、表現活動は壊滅的な打撃を受ける」。

 6月25日、東京地裁において、フリーランス表現者43名によって提起された「秘密保護法違憲訴訟」の第1回口頭弁論がおこなわれた。

 

 「昨年成立した秘密保護法は、憲法で定められている国民の諸権利を侵害し、憲法の原理に反する」などとした国賠訴訟で、違憲・無効確認と施行差し止め、精神的苦痛に対する慰謝料計430万円を求めている。冒頭はジャーナリスト・寺澤有さんの、意見陳述の一部だ。同様の裁判は全国で展開されつつあり、今回はその先駆けとなる。多くの支援者・関係者が集まり、傍聴は抽選となった。


 4名の原告による意見陳述があり、ライターの於保清見さんは「秘密保護法が施行されれば、内部告発、取材・報道がためらわれて不正が表面化しにくくなる。『テロ防止』や『防衛』を理由に原発に関する情報も今以上に公開されなくなり、フリーランスは取り締まり対象となる可能性が高くなる」と訴えた。
 また、ライターの丸田潔さんも「言論・表現の自由が失われれば、為政者が暴走し、平和が壊れて国家存亡の危機にも陥る可能性がある。治安維持法が日本を破滅に追い込んだことと同様の過ちを繰り返してはならない」と強調。
 さらに、ジャーナリストの安田浩一さんも、「秘密保護法によって、プライバシーや個人情報を国家が一方的に収集、侵害することになり、警察・公安当局の権限肥大化も危惧される」と、同様に施行差し止めを求めた。


 冒頭の寺澤さんは、「岡田広内閣府副大臣によって『出版又は報道の業務に従事する物』にフリーランスも含まれるとの見解が示されても、長年の差別からとうてい信用できない。フリーランスが根絶やしにされてしまう」と危機感を示し、「裁判所の記者席からの排除も、新聞社やテレビ局に対してのみ判決要旨を提供したり開廷前に撮影を許可したりするのも差別」と釘を刺し、「目先の利益にとらわれることなく、未来永劫の評価にたえる判断を期待する」と締めくくった。


 終了後、弁護士会館において、100名超の参加による報告集会が催された。原告の集会参加者30数名のうちの多くより、活発な意見交換がなされた。

 次回は9月17日11時より、東京地裁第803号法廷を予定。「監視・傍聴が、裁判所の横暴を許さないというメッセージになる」と原告代理人の山下幸夫弁護士。
 7月30日18時30分より、文京区民センター3A会議室において、緊急シンポジウムの開催も予定している。フリーランス関連の記事として6頁もご参照を。

 

小林 蓮実(フリーライター)

 

日日刻刻  深刻な働き手問題・日本再興戦略 (6.13〜27)


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