たたかいの現場から

892号

ヘイト本氾濫 製造者責任は? 出版・書店の現実から討論

 売れるからといって、ヘイトスピーチを煽る本の氾濫を見過ごしていていいのか。
 7月4日、そんな問いかけをベースに、「『嫌中憎韓』本とヘイトスピーチ 出版物の製造者責任を考える」と題する会が開かれた。主催したのは、出版人有志でつくる「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」と出版労連・出版の自由委員会である。


 まず、東大震災時の朝鮮人虐殺を描いた『九月、東京の路上で』(ころから)を上梓したフリーライターの加藤直樹さんが講演。

 加藤さんは読者から「これは昔の話じゃない!」といった切迫した感想が多く寄せられたことを紹介し、「私たちは何かの出来事の8月31日(虐殺が始まる前日)に生きているかもしれない」と指摘。「反日」本などほとんど見当たらない韓国の大型書店の棚の写真や、夕刊フジの見出しの調査結果(1面トップの80%が韓国や中国を叩く内容)を紹介しながら、「表現の自由という形式論の前に、やることがあるのでは」と投げかけた。


 触発的な講演を受け、参加者が次々に意見を語る。
 若い書店員は、「韓国の書店の棚を見て恥ずかしい。売れることも大切だが、それだけではいけない」と発言。

 元週刊誌編集長は、「オウム事件で箍(たが)が外れ、怪文書が裏も取らず誌面になるなど『何を書いても許される』ようになった。メディアの責任は重い」と説く。

 「いまの状況は一過性のものではない。彼らは15年かけて着々と作ってきた」という警鐘や、ヘイト側に「K−POPの生の魅力にふれる機会を」との提案。

 弁護士からは「事実無根の流言は、表現の自由で保護すべきでない」との意見も。


 会で配布された書店アンケート(概要)も、少しだけ紹介したい。
 「気を抜けばそうした(ヘイト)本で棚が溢れかえります」「恐怖を感じます」「売れる本は、切らさず売らなければ」「バランスをとるほどの反対意見の書籍があるか、と(書店)現場から問題提起しておきたい」


 状況は厳しいが、113人が集まって「みんな同じことを思ってるなと確認できた」(出版関係者の会・岩下結さん)ことが一筋の光になった。

 共に生きるためのカウンターは、街頭だけでなく出版の仕事にも、きっと必要だ。

 

北 健一(出版労連書記次長)

 

学ぶ権利保障する制度に改善を 新聞奨学生問題でシンポ

 新聞労連は6日、都内でシンポジウム「負けるな!新聞奨学生〜発行本社の責任逃れを許さない〜」を開催した。

 組合員、新聞奨学生、元奨学生のほか一般市民ら約50人が参加し、新聞業界で最も弱い立場とも言われる新聞奨学生の実態に触れ、改善策を議論した。


 初めに「新聞奨学生SOSネットワーク」の村澤潤平さんが、自身の経験も踏まえて新聞奨学生の制度の実態や過去の国会での質疑などを紹介して制度の問題点を浮き彫りにした。

 続いてNPO法人POSSE代表の今野晴貴さんが、若い人を正社員として雇用し心身を破壊して利益を上げる「ブラック企業」問題の本質を解説し、「日本社会を破壊する問題だ」と訴えた。大学生たちが労働市場に出る前に使いつぶされる「ブラックバイト」にも触れ、「新聞奨学生問題を社会問題化するヒントがある」と指摘した。
 今野さんは、ブラックバイトや新聞奨学生問題について大学などがどのような対策を取っているかという質問に対し、「学費さえ払ってくれればよく、就職率を上げるだけだったが、ようやく行く先のことを考える大学が出て来た」などと説明した。


 続いて元新聞奨学生2人が登壇。事前の説明になかった業務をさせられたり、バイクから自転車へと変更となったりした話のほか、販売店主からのパワハラを受け未収金の立て替えを強要され、学費が払えず大学を除籍となり、心も病んで一時失踪した悲惨な体験が語られた。
 新聞労連に寄せられた相談事例も紹介されたほか、新聞労連が3月に発表し、新聞協会などに提出している制度改善のための「提言と要求」も説明した。


 議論では制度改善に向けてさまざまな提言、問題提起がなされた。

 ▽労基法で禁じられている前借金制の疑いが強い

 ▽給付制にさせるべきだ

 ▽配達労働者全体の労働条件を上げる

 ▽河北新報の仙台エリアの販売会社では労組の要求で学生に集金業務をさせないようにしている

 ▽販売店をすべて直営する、あるいは本社が雇用して派遣する形にするなどして根っこから変える

 ▽貧困がこの制度を作っていることを直視すべきだ

 ▽中長期的に学ぶ権利の保障問題として考えよう

 ▽高校教員の労組や学生支援機構の労組とともに取り組もう、等々。

 

 新聞労連としても、経営者団体である日本新聞協会への働き掛けを強めつつ、奨学生制度を持つ新聞社の加盟単組により積極的に取り組むよう呼び掛けることが表明された。

 

米倉 外昭(新聞労連副委員長)

 

川内原発の再稼働はさせない

 規制委は7月16日、川内原発1・2号機の「審査書案」を了承した。だが「合格ありきの審査」と酷評されるように、巨大噴火対策、避難計画の不備など、問題は山積みされたままだ。
 そうした不安を反映し、姶良(あいら)市議会では「再稼働に反対し廃炉を求める陳情」、「実効性ある避難計画を求める意見書」(いちき串木野市議会)採択など、再稼働反対の声も強まってきた。
 ストップ再稼働!3.11鹿児島集会実行委では、9.28全国集会を山場に対置させ、その前段行動「『辻説法』キャラバン」など、さまざまな活動を計画・展開している。

 再稼働阻止に向け、パブコメ運動や全国集会への結集を、全国の仲間に強く呼びかけたい。

 

溝口 松男(同実行委/本誌運営委員)

 

日日刻刻  景況感が悪化 (6.27〜7.10)


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