たたかいの現場から

895号

ウソの脅しでスト投票妨害 JAL不当労 東京地裁が断罪

 8月28日14時、東京地裁民事19部の古久保裁判長は「主文、原告の請求を棄却する」と朗読した。原告はJALだ。法廷に拍手が響き、「勝った」の声があがった。

 CCU(キャビンクルーユニオン)古川委員長や内田客乗原告団長の顔がほころぶ。勝って当たり前の事件だが、整理解雇事件で4連敗後だけに、原告団、職場組合員、支援メンバーに「やっと勝った!」の思いがあふれた。傍聴に入れず裁判所前で待つ人に「勝訴」「管財人を断罪」の一報が届いた。


 更生手続き下にあった日本航空の法人管財人滑驪ニ再生支援機構および管財人らは2010年11月15日突然整理解雇方針を公表した。その翌日、解雇回避のための具体的な提案を行う一方でスト権確立の投票を実施中のCCUと乗員組合に対し、「企業再生支援機構の正式な見解」として「整理解雇を争点とする争議権が確立した場合、それが撤回されるまで再生計画案で予定されている3500億円の出資をすることができない」と発言。さらに職場内に流した情報により職場は混乱。乗員組合はスト投票を中止、CCUはスト権を確立したがストは回避。

 これが支配介入の不当労働行為として両組合は2010年12月8日の都労委へ救済を申し立て、11年8月3日に不当労働行為と認める命令が出された。本件は日本航空が都労委命令取消しを求め東京地裁に提訴したもの。


 判決は、JAL側の「発言は重要事項の情報提供義務の履行として適法である、都労委の審理手続きに違法がある」などの主張をことごとく否定した。スト権が確立したら出資しないなどと決定した事実はなく、検討すらしていないことも明確になった。まさに組合や職場をウソで脅し、不当労働行為意思の下で165名の解雇を実施したのだ。


 記者会見と並行して日比谷図書館地下ホールで報告集会がもたれた。両組合の委員長は、この判決を機にJALに安全の確立と使関係の正常化、解雇争議の自主解決を求める闘いを強化し、原告団を職場に戻すと決意を述べた。

 内田客乗原告団長はブルガリアのソフィアで開催された国際運輸労連(ITF)の世界大会に航空連近村議長(乗員原告)と共に参加。解雇撤回・職場復帰を支援する決議がなされ、来賓参加のILOガイ・ライダー事務局長にも面談し、JAL争議解決に向けてのフォローを約束されたと報告した。
 この判決で潮目を変え、原告団を職場に戻そう。支える会に是非参加を。


柚木 康子(JAL闘争を支える会事務局長)

 

連合、全労連、独立系の幅広い枠組みで
  「沖縄労働問題ネットワーク」が発足

 沖縄で非正規労働の問題に関わるすべての人が横につながろうと「沖縄労働問題ネットワーク」がこのほど発足し、8月31日に初めてのシンポジウム「人を大切にする社会に向けて」を那覇市の沖縄大学で開催した。

 首都圏大学非常勤講師組合書記長で自治労連本部専門委員の志田昇さんが基調講演を行い、4人が現場報告を行った。約90人が参加して、熱気あふれる質疑応答が行われた。


 志田さんは、労働契約法の改正に伴って昨年春、多くの大学で非常勤講師の一斉雇い止めや契約更新の上限設定が行われた問題の経過を説明。非常勤講師らが労組に結集して各大学と団交をした結果、大半の大学が「降参」したと述べ、「法律の問題ではなく、権利を実現するには組合を大きくする以外にない」と強調した。


 上里清美さん(沖縄県公務公共一般労働組合・宮古島ユニオン委員長)は、宮古島市の女性相談員としてその仕事ぶりを評価されていたのに、市長が交代したら雇い止めされたとして裁判闘争をしている。「16年働いて雇い止めに遭う人もいる。多くの職員が3月になると胃が痛む。役所が人を入れ替えて失業を生み出している」と理不尽さを訴え、「同じ机を並べている職員の無理解が悲しい」と述べた。


 「公務職場における非正規労働とジェンダー」と題して報告した那覇市非常勤・臨時労働組合の仲村宮子さんは、那覇市の4千人弱の従業員のうち非正規が4割に達していること、非正規の6割以上が女性であることを紹介。「女性は非正規で賃金が安くていいとして社会はほったらかしにしてきた」と指摘した。そして、非正規が増える現状を批判して「若者に社会を変えようという意思も希望もない。これは大人の責任だ」と訴えた。


 連合沖縄の個人加盟労組「連合おきなわユニオン」の恩納親之助書記長は、1年間で受けた労働相談205件の4割が使用者側の法令違反だったと報告。NPO官製ワーキングプア研究会の白石孝理事長は、「自分の職場の実態を把握することから取り組みは始まる」と強調。マスコミやソーシャルネットの有効活用などを提言した。


 同ネットワークは、困難な状況の中で闘っている当事者や関心を持つ人たちが情報や経験を共有し、社会問題としてアピールしていこうと、沖縄大学の成定(なりさだ)洋子教授、島袋隆志准教授らが呼び掛けて、連合、全労連、独立系から参加する幅広い枠組みが実現した。年内と来年2〜3月にそれぞれシンポジウムを計画している。

 

米倉 外昭(team rodojoho)

 

労契法20条裁判のただなかで組織拡大の前進  −郵政ユニオン垂水分会−

 垂水(たるみ)郵便局では個人宅から出される郵便物を集荷に行くといった窓口同様の高度な作業を全て非正規の期間社員に行わせています。
 集荷は配達とは違うとして、時給も安く設定され、売り上げに対して0.5%付加される手当で単価の安い分を補うように言われています。しかし、頑張って売り上げても手当の上限は3万円となっており、担当者たちは大きな不満を抱えていました。
 今回、垂水局から労契法20条裁判に立ち上がった3人のうち2人は集荷担当者です。吹田千里局の1人も集荷担当者です。話し合ううちに、評価内容が同じスキル「A有」なのに時給が300円以上違うことがわかりました。
 「集荷」とは純粋に郵便物を取り集めるだけですが、「配達」は混合勤務となり集荷より高い賃金を支払われる筈だとわかったのです。


 垂水郵便局にいる集荷担当者19人に聞くと、なんと全ての方が配達の指示も受けていました。中には配達専門の方までいて、軽四輪での配達の時給は最高1180円だと管理者から説明が繰り返されていた事がわかりました。
 郵便局では民営化後、管理者個々人に対してコスト削減を命じていた時期がありました。そのコスト削減が行われる中、評価制度を悪用して時給を下げる管理者もいたようですが、垂水では時給を上げないといった不当対応が行われていたといえます。
 配達もしている以上、混合の賃金が当たり前です。評価A有の場合の最高額1480円が支払われるべきと集荷担当者と繰り返し話し合いました。郵政ユニオンで交渉をし、必ず賃金を上げて見せると加入を呼び掛けました。


 垂水郵便局には集荷ができる正社員はいません。5人いる課長ですら郵便料金の仕組みや携帯端末の操作を知らないといった状況の中、騙されていたと知ってからのそれぞれの不満は爆発寸前となりました。


 郵政ユニオンへ加入したのは集荷担当者19名中、15名。65歳の定年間近と採用数ヵ月の方以外、組織化できています。皆の怒りを結集することができ、要求を勝ち取るためならストも辞さずの状態です。垂水区内の集荷作業を止めることもできる勢いです。


 各人の怒りを背景に、ひとまず評価の見直しを勝ち取り、4月に遡って差額を清算させることができました。今後は同じ労働、同じ指示で賃金が不当に低かった過去の清算をどう闘い取るかが課題です。
 垂水局の報告を聞いて他局でも同様の不当対応が見つかっています。均等待遇どころか非正規を食い物にする企業を許さない覚悟で過去に遡って清算させる闘いを継続して行きます。

 

大澤 靖志(郵政産業労働者ユニオン神戸東播支部垂水分会)

 

10.26団結まつりにご参加を

 昨年は、「いのちとくらしを守る10.27団結まつり」と名称を変更し、『なくそう原発!とめよう雇用破壊!ゆるすな改憲!』をメインスローガンに231団体・個人の賛同と50団体を越える出店・企画参加で成功させることができました。本年も10月26日(日)に亀戸中央公園を会場として実行委員会方式で開催を呼びかけます。


 今年のまつりは、安倍政権による憲法破壊の「集団的自衛権」行使や辺野古新基地建設強行といった戦争準備、有期・無期雇用を問わない雇用破壊(派遣法改悪・残業代ゼロ)、原発再稼働と輸出拡大など平和と民主主義に逆行する動きを押しとどめ、戦争と貧困のない社会をつくりだすつどいと交流の場としていきます。


 官邸前金曜行動は原発再稼働阻止の闘いから秘密保護法・集団的自衛権阻止の闘いへと広がり、安倍政権の暴走に立ちはだかっています。

 憲法の人格権を最優先とした大飯原発差止訴訟・福井地裁判決は原発廃止への大きな流れを励ましています。

 「生涯派遣」を可能にする派遣法改悪案は、法案の不備があったとはいえ、雇用共同アクションを中心に粘り強い闘いで廃案に追い込み、雇用総破壊を止める秋の闘いにつながっています。

 こうした取り組みをつなぐ団結まつりにぜひご参加ください。


【日時】
 10月26日(日) 10時〜15時
 (前夜祭 10月25日(土) 18時〜20時30分)
 【場 所】 江東区・亀戸中央公園A地区 (東武亀戸線亀戸水神駅下車3分)
 【連絡先】 03−3267−0156

 

伴 幸生(団結まつり事務局)

 

 

日日刻刻  経済指標の悪化 (8.1〜21)


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