アジア@世界
喜多幡 佳秀・訳(APWSL日本)
854・5号

インドネシア「メダンで賃上げ要求のデモと道路封鎖

 12月5日、北スマトラ州の州都メダンで労働者数千人が地域最低賃金引き上げ要求のデモを行い、午前9時から数時間、主要道路や官庁を封鎖した。労働者たちは地域最賃を現行の月135万ルピーから220万ルピーへの引き上げを要求している。(約120ルピー=1円)
 ジャカルタでは11月20日にジョコ・ウィドド知事が、最賃の月220万ルピーに同意(44%の引き上げ)。リアウ諸島州のバタム島でも月204万ルピーへの引き上げ(31%の引き上げ)が決定されている。
 APINDO(インドネシア経営者連盟)は一連の最低賃金引き上げに反対し、実施を遅らせるように州政府に圧力をかけている。
 メダンのデモは同6日も続き、APINDOによると25の企業が両日、休業を余儀なくされた。同10〜11日には、労働者たちは工業地区に集まり、デモ参加を呼びかけ、高速道路を封鎖、港湾と工業団地を完全に機能停止させた。
 北スマトラ労働者評議会のパハラ・ナピトゥプル委員長は、州と市の政府が要求を受け入れなければ、数日中に大規模なストを行うと警告。同委員長によると、要求額月220万ルピーはボゴール農業大学の地域の基本生活費(KHL)調査を基にしたもので、州の最賃はKHLに基づくものではなく、企業に配慮した政治的な観点から設定されている。  メダン工業団地の責任者は、ストのために一部の日本企業が投資計画を中止したと述べているが、そのような事実は確認されていない。
 インドネシアではこの数年、スト闘争の拡大によって、最低賃金が大幅に引き上げられてきたが、多国籍企業をはじめとして多くの企業は正規雇用を減らし、人材派遣会社へのアウトソーシング(外注化)を通じて労働力コストの削減をはかってきた。有期雇用が1年以内と制限され、それを超えると正規雇用化しなければならないことから、非正規労働者の雇用契約を11ヵ月で打ち切るケースが増えている。経営団体は雇用・解雇の規制緩和を要求している。(本誌12年11月1日号に関連記事)  労働者の闘いは外資系企業にも向けられている。12月5日にはMPBI(インドネシア労働者評議会)に参加する主要組合の労働者数千人が、政府に対しアウトソーシングの禁止と、労働組合への加入を認めない外国企業への取り締まりを要求してジャカルタの官庁街とビジネス街でデモを行った。韓国、日本、イタリアの各大使館の前では、労働組合の権利を主張するスローガンが唱和された。(「ジャカルタポスト」12月6日付および同12日付、「ジャカルタ・グローブ」同6日付等より)

インド「マルチ・スズキ労組の闘いは続く」

 7月にデリー近郊のマルチ・スズキ社(日本のスズキの子会社)の工場で起こった暴力的な衝突をめぐって、マルチ・スズキ労働組合(MSWU)の役員と組合員149人が逮捕され、正規雇用の労働者546人と非正規雇用の労働者1千800人が解雇された。(本誌12年8月15日、9月1日合併号を参照)
 MSWUは7人の委員から成る臨時委員会を選出し、闘いを継続してきた。MSWUは12月9日に大会を開催し、@被解雇者の復職、A拘留中の役員および組合員へのでっち上げの罪状取り消しを要求することを再確認した。
 労働者たちによると、7月18日に起こった暴力事件は経営側の計画的な挑発によるものである。
 MSWUを支援しているNTUI(新しい労働組合のためのイニシアチブ)のリーダーのラキ・セフガルさんによると、解雇された労働者たちの経済状態は深刻化しており、経営側は労働者の士気を挫くために躍起になっている。
 拘留中の役員たちは、「君たちがゼネラル・マネージャーの殺害の責任を取るなら、無実の組合員は釈放してもいい」という説得を受けたが、「全員が無実だ」と主張してそれを拒否した。
 MSWUは州政府の首相に対して、自動車産業ベルト地帯において2013年までに違法な契約労働制を廃止すること、労働組合を手続きに従って迅速に承認すること等の要求を提出した。(「ザ・ヒンドゥー」12月10日付より)

アイルランド「労働組合が債務の見直しを要求」

 ギリシャ政府はEUとIMFが緊急融資の条件として要求している歳出削減策の一環として、2万7千人の公務員削減計画を決定。
 この決定に抗議して11月18日から、全国の市役所(330)の三分の二以上と、いくつかの中央官庁で労働者が座り込みに入った。アテネのいくつかの地区では、ごみの収集が停止している。同22日、アテネ中心部で3千人が、「歳出削減策は公共セクターの葬送だ」と訴え、棺と花輪を掲げ、黒い風船を手にしてデモ。
 アテネ市職員で、勤続12年のマリア・カバディアさんはテレビのインタビューで、「彼らは私たちのことを人としてではなく、単なる数として見ている。私は5歳の子どもに母親としてするべきことをできなくなると心配している」と語っている。  全国の自治体で、事務、幼稚園の教員、公園管理、ゴミ収集、警察官、埋葬などの仕事に4万人以上が雇用されている。
 繰り返される緊縮政策と賃金・年金の削減に対してギリシャの人々の間で怒りが高まっている。
 同22日に発表されたデータによると、前年同期との比較で、賃金が15%下がり、税が37%増えた結果、家計の可処分所得は14%減っている。
 中央省庁の職員も同様の行動を行っている。前週から農業省の入口が封鎖されている。保健省では同26日に、職員たちが68人の解雇に反対して庁舎を占拠した。
 多くの自治体や省庁は、解雇対象者リストを政府に提出するのを拒否している。(「ロイター」11月22日付)

カタール「労働者の権利を要求する初めてのデモ」

 12月1日、ドーハで移住労働者が初めてデモを行った。カタールで働く120万人の移住労働者は労働組合の結成や加盟の権利を奪われている。22年のサッカーのワールドカップに向けた建設ブームがすで始まっている。しかし、労働者たちは劣悪な住居、賃金の遅配が常態化、職場での不満を扱う独立した監査機関も存在しない。
 ITUC(国際労働組合総連合)のシャラン・バロウ書記長は「カタールでは移住労働者は無権利で、全く発言権がない。このままでは命を落とす労働者の数が、ワールドカップ競技選手より多くなるか知れない」と警告している。
 12月1日のデモは、ITUCがカタール政府に団結権等に関するILO条約の批准と実施を要求する3日間行動の中心だった。
 初の「ユニオン・ピクニック」は、金融地区内の公園で行われ、約60人の組合員と労働者が参加した。(ITUCのウェブより)

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