たたかいの現場から

898号

泉南アスベスト国賠最高裁で勝訴  国は判決受け止め被害救済を

 10月9日午後3時過ぎ、最高裁西門で待ち構える支援者の前に2人の弁護士が駆けこんだ。手には「勝訴」「最高裁国を断罪」の旗。一斉に歓声と拍手がわき上がった。
 泉南アスベスト国賠訴訟の原告団・弁護団は、第1陣の大阪高裁判決における「産業の発展のためには労働者の健康被害もやむを得ない」という不当判決を乗り越え、第2陣は同高裁で勝訴判決を勝ち取っていた。第1陣と第2陣が正反対の判決となった上告審。原告は祈るような気持ちでこの日を迎えたに違いない。


 最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は、第1陣(原告34人、被害者26人)、第2陣(原告55人、被害者33人)の上告審において、石綿健康被害の国の責任を認め、原告勝訴の判決を言い渡した。
 原告団・弁護団は、「司法の頂点にある最高裁が、憲法と法令に則(のっと)り、国民の生命・健康こそが至高の価値であることを確認し、国にはこれを最大限尊重して規制権限を行使する義務があることを明確に認めた意義は極めて大きい」(声明)と評価しつつも、判決の限界も指摘している。


 国は石綿粉じん対策の規制権限を行使せず、1.局所排気装置(局排)の設置、2.石綿粉じんの濃度の規制、3.防じんマスク等の使用を早期に義務化しなかった結果、石綿被害を拡大させた。
 だが最高裁判決は、1.1968(昭和33)年から旧特定化学物質等障害予防規則を制定した1971(昭和46)年まで局排設置を義務化しなかったのは違法と認定したが、2.、3.は国の責任を認めなかった。そのため1971年以降に石綿ばく露した被害者の訴えは棄却され、工場労働者の家族、近隣住民の被害者の救済もされなかった。


 1陣訴訟提訴後8年半が経過し、すでに14名の被害者が亡くなっている。国は、最高裁判決を厳しく受けとめ、原告被害者に謝罪し一括して賠償するとともに、すべての泉南アスベスト被害者の全面救済を図るべきである。


飯田 勝泰(東京労働安全衛生センター)

 

除染業者のピンハネ 健康診断書偽造  政府、元請の鹿島に調査 改善指示

 Tさんは2012年8月、日給1万1千円、宿泊、朝晩食事無料提供などの条件で(有)松榮ワークスと契約し、田村市内の森林除染作業(元請・鹿島・三井住友・日立プラントテクノロジー)に従事した。特殊勤務手当(危険手当)に関する言及はなかった。二次下請迄が公式の施工体系で、松榮ワークスは違法な六次下請だった。


 Tさんは契約翌日に放射線講習と入域ホールボディーカウンター(WBC)測定は受けたが、健康診断はなかった。その翌日から田村市の除染に従事し、10月に現場で蜂に刺されて入院した後、10月末日付で退社した。

 退域WBCは測定したが健康診断はなく、放射線管理手帳も渡されなかった。健康診断はTさんだけでなく同僚の多くも受診していなかったが、事務所には偽造された一般健康診断書と電離健康診断個人票が積まれていた。記載内容は身長等の基本情報も含めてデタラメで、労働者はそれぞれ「受診日は○月○日ということにしておいて」と担当者に言われた。偽造を懸念する労働者には「分からないから大丈夫」と返答していた。


 退職2ヵ月後、二次下請の担当者より危険手当を支払うと連絡があり、四次下請の担当者が、危険手当分として1日3千円相当の支払い明細書と雇用日に遡った労働条件通知書を持ってきた。特殊勤務手当は本来1日1万円の筈であるし、日給の減額や無料だった筈の宿泊費の天引きなど、一方的な雇用条件の変更が行われていた。


 これらを承服できなかったTさんは、今年5月に被ばく労働を考えるネットワークに相談、全国一般いわき自由労働組合に加盟して争議を開始した。

 松榮ワークスは一度の団交の後、自己破産手続きに入ったとして、その後の団交を拒否している。公式施工体系に入っている元請・鹿島建設、一次下請・かたばみ興業、二次下請・小田原緑化開発は、直接の雇用関係がないとして団交に応じていない。しかし、Tさんの申告を受けて鶴見労基署は、労基法および労安法違反の是正勧告を松榮ワークスに出した。同様の問題で、郡山労基署は元請・鹿島JVにも是正を指導している。


 10月9日、Tさんと私たちは環境省、厚労省、国交省との交渉を行い、健康診断書偽造が労安法66条および100条違反であることを言明させるとともに、不払いを含めた一連の問題について国が元請・鹿島に調査を指示していることを確認した。また同日、鹿島本社に団交要求・争議解決の申し入れを行った。これらの中で、鹿島以下は対応せざるを得ない状況に追い込まれてきている。


 除染事業は、莫大な国費をゼネコンを筆頭とした建設業界に流し込む一方で、蔓延した違法派遣・偽装請負でピンハネと劣悪労働条件を労働者に強要し、いい加減な安全対策と現場管理で労災死亡事故を起こしている。当該労働者の利益を最優先しつつも、個別争議が示す構造的問題を的確に捉えて撃つ闘いを、これからも進めていきたい。
 広範なご支援をお願いします。

なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)

 

【速報】 鹿児島県 薩摩川内市議会 特別委で再稼働推進陳情を採択!

 その日の夜にはいちき串木野市での住民説明会の開催を控えた10月20日、薩摩川内市議会・川内原子力発電所対策調査特別委員会は、傍聴にかけつけた反対派の「再稼働反対」の声のなか、再稼働推進陳情1件を賛成6、反対2、棄権1の賛成多数で採択した。

 同市議会は28日に臨時議会を予定しているが、市議26人のうち再稼働推進派が多数を占めており、本会議でも推進陳情は採択される見通しだ。


 また、本会議での採択後、岩切秀雄市長は直ちに再稼働「同意」を表明するとみられ、一方、鹿児島県議会は、11月の初旬頃には臨時議会を招集して36件の原発関連陳情を処理するものと思われる。
 こうした経緯をへて、伊藤祐一郎県知事は再稼働への「同意」を判断する運びとなる。

 この間の住民説明会における参加者への規制や、推進派のヤラセ発言など、県や九電の焦りが住民の怒りや反発を加速させている。

 再稼働阻止に向けた戦いはいよいよ大詰めを迎える。

溝口 松男(反原発・かごしまネット・本誌運営委員)

竹中会長に届けとパソナ前のアクション 労働者派遣めぐり対話もはずむ

 潟pソナの会長は竹中平蔵氏だ。竹中氏は小泉政権時代の夢よ再びとばかり、産業競争力会議や国家戦略特区諮問会議などの一員として労働分野の規制改革にまっしぐら。これらの会議では慶応大教授の肩書でものを言い、その結果は人材派遣企業のトップとして「頂き!」の構図だ。

 こんなやりたい放題を許せないと「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション」は8日昼、東京駅近く呉服橋にある潟pソナ本社前で宣伝行動に取組んだ。


 横断幕、各組合ののぼり旗がはためくなか、リレートークや派遣の替え歌などで派遣法大改悪の問題をアピール。

 私は、安倍が世界に喧伝する「女性の活躍推進」と派遣法改悪や今審議中の「時間ではなく成果による評価制度」=残業代ゼロ法案は真っ向対立すること、さらに派遣は僕には関係ないという顔で通り過ぎる男性陣に、派遣の拡大は必ず男性にも及ぶと訴えた。ビラのユニークさもあってか、ビラくださいと言う女性もいたり、結構受けとりがよかった。


 宣伝行動も終盤に若い男性が2人、私に「派遣じゃダメなんですか」と声をかけてきた。「派遣がダメと言うよりも、派遣で一生になれば不安定だし、健康保険も厚生年金にも入れないし」と話すと、「もう年金なんてもらえると思っていないですよ、これからはずっと働くんですよ」と。「元気なうちはいいけど、70、80歳になってみんなが働けるわけじゃないでしょ。それに時給が安すぎる、1800時間働いても時給千円で180万円、これじゃ東京で暮らしていけないし、倍の2千円になっても年間360万円だもの。税金や保険料が払える位の賃金がないと」と私。彼らは「暮らしていけない」と言いつつ、「ビラください」と受け取って去っていった。


 この行動は、10月7日のディーセント・ワーク世界行動デーの一環でもある。連合は7日、田町と新宿で宣伝行動に取組み、労働者保護ルール改悪阻止で全国縦断アピールリレーの行動中だ。

 数の力で労働法制の改悪をSTOPさせよう。

 

柚木 康子(昭和シェル労組)

再稼働反対の広がりに苛立ち? 経産省前テント壊される

  10月12日(日)午後5時半頃、女1名を含む4名が突然テントにやってきて、そのうち2名の男が第2テントを壊し始めた。そのうち1人は、テント内の棚をなぎ倒したり備品を放り投げだりして、足の踏み場もないほどに荒らした。もう1人は第2テントの屋根に登り、天幕を破ったり横断幕のポールを引っ張るなど相当壊した。
 今までもテントは、右翼や在特会などの度重なる襲撃により壊され、その度に修復してきたが、今回のような規模は初めてだ。
 この事件が起きる一週間前(10月5日(日))の昼頃、右翼の街宣車15台がテントをとり囲み、第1テント入り口の一部を壊した。私はこの時も現場に居合わせた。


 これまでの1年数ヵ月ほどは平穏だったので、最初の騒ぎの時に、次の週も来るようであれば、原発推進、何が何でも再稼働という勢力が、“新しい判断”をしたと考えるべきではないかと考えた。案の定、敵は続けて襲ってきた。
 しかし、この事態は敵の弱さ、まともな論陣すら展開できない原発帝国のレベルを如実に晒(さら)け出していると思う。
 私たちは、より一層多くの人々と共に人民の海でテントを包み、天下の公論に訴え、テントをさらに継続、発展させる決意である。より一層の支援をお願いします。

 

 暴漢が テントの評価 また高め

 

乱鬼龍(テントひろば運営委員/川柳作家)

 

 

日日刻刻  アスベスト最高裁「国の責任」判決 (9.30〜10.9)


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