たたかいの現場から
828号

独裁政治に反対し7労働団体が共同アピール

 大阪府知事・大阪市長のW選挙の投票日は11月27日である。橋下・大阪維新の会が大阪都構想と教育基本条例で住民の支持を得られるかが焦点である。
 橋下・維新の会の構想と手法については、それがファシズムを彷彿とさせることからハシズムと批判されてきた。橋下前知事が立候補する大阪市長選では自民党から共産党まで反ハシズム・反独裁で平松候補を応援することになった。
 11月16日、大阪労連、大阪全労協、無所属組合など7労働団体が、独裁政治に反対する共同アピールを出した。労働戦線が分裂して22年、このような形で共同アピールが出るのは初めてである。大阪連合は連名はしなかったが、同じ思いであるとのコメントを返してきた。
 教育基本条例の対象となる教育現場では、吹田市・堺市で日教組・全教・教育合同など教育関係労組が共同アピールを発表して職場に配布した。労働団体・市民団体が共催した11・2講演学習集会では、知事選・市長選候補者を応援する諸勢力が合流した。橋下政治(ハシズム)に対抗するために、各団体がメンツを捨てて合流したのである。
 しかし、ファシズムは手強い。それが選挙と地方から始まることを私たちは学習している。ハシズムが勝利すると、それは全国に向かうであろう。また敗北しても、失業と失望と閉塞感は、第2第3の橋下を生み出す。労働戦線の共同アピールを、職場・地域の共同行動へ発展させる時がきた。

(大阪全労協副議長 山下恒生)

【資料】
共同アピール「庶民の街、大阪に独裁政治はふさわしくない」
「維新の会」の独裁政治を許さない行動をおこしましょう
 大阪府も、大阪市も大きな政治戦がたたかわれています。橋下徹氏が代表を務める「大阪維新の会」による独裁政治は、庶民の街大阪にはふさわしくありません。独裁政治が、庶民のくらしを守ったためしはありません。
 私たちは、労働者のくらしと民主主義を守るために、「独裁政治は断固許さない」ことで一致しました。そして、それぞれの立場で「独裁政治ノー」の行動をおこすことを確認しました。
 大阪に働く労働者・労働組合のみなさん。立場の違いを超えて、「独裁政治」反対の声をあげ、くらしと民主主義を守りましょう。

2011年11月16日
全大阪労働組合総連合
 議長 川辺和宏
全国労働組合連絡協議会大阪府協議会
 議長 石田俊幸
全日本港湾労働組合関西地方本部
 執行委員長 佐野祥和
国鉄労働組合近畿地方本部
 執行委員長 園秀樹
全日本建設運輸連帯労働組合近畿地方本部
 執行委員長 垣沼陽輔
関西マスコミ文化情報労組会議
 議長 小本淳
おおさかユニオンネットワーク
 代表 垣沼陽輔

【資料】大阪教育基本条例反対アピール運動
【よびかけ人】
池田香代子(翻訳家)/市川昭午(国立大学財務・経営センター名誉教授)/尾木直樹(教育評論家)/小野田正利(大阪大学教授)/小森陽一(東京大学教授)/佐藤学(東京大学教授、日本学術会議会員)/高橋哲哉(東京大学教授)/竹下景子(女優)/野田正彰(関西学院大学教授)/藤田英典(共栄大学教授、日本教育学会会長)
【賛同者】
浅田次郎(作家)/あさのあつこ(作家)/阿刀田高/安斎育郎(安斎科学・平和事務所所長)/池内了(総合研究大学院大学理事)/池田知隆(前大阪市教育委員長)/石坂啓(漫画家)/内田樹(神戸女学院大学名誉教授)/梅原猛(哲学者)/永六輔/大内裕和(中京大学教授)/大原穣子(方言指導)/小川正人(放送大学教授)/奥平康弘/小山内美江子(脚本家)/尾山宏(弁護士)/門脇厚司(筑波大学名誉教授)/窪島誠一郎(作家「無言館」館主)/栗山民也(舞台演出家)/小中陽太郎(日本ペンクラブ理事、星槎大学教授)/斎藤貴男(ジャーナリスト)/崔洋一(映画監督)/坂本義和(東京大学名誉教授)/佐貫浩(法政大学教授)/品川正治(経済同友会終身幹事・一般法人国際開発センター会長)/下重暁子(作家)/杉原泰雄(一橋大学名誉教授)/杉良太郎/妹尾河童(舞台美術家・エッセイスト)/高畑勲(映画監督)/高村薫(作家)/田島征彦/田中孝彦(武庫川女子大学教授)/田中恒子(大阪教育大学名誉教授)/田中康夫(前梅花女子大学教授)/谷村志穂(作家)/寺崎昌男(東京大学名誉教授)/暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)/鳥飼玖美子(立教大学特任教授)/永井憲一(法政大学名誉教授)/中嶋哲彦(名古屋大学大学院教授)/西村章次(埼玉大学名誉教授)/野末悦子(産婦人科医師)/長谷川千秋(元新聞記者)/原田智子(漫画家)/広田照幸(日本大学教授)/広原盛明(元京都府立大学学長)/冨士谷あつ子(評論家)/古田足日(児童文学者)/辺見庸(作家)/本田由紀(東京大学大学院教育学研究科教授)/前田佐和子(前京都女子大学教授)/松本猛(絵本・美術評論家、ちひろ美術館常任顧問)/茂木俊彦(民主教育研究所代表)/森南海子(服飾デザイナー)/山口二郎(北海道大学教授)/山崎朋子(女性史・ノンフィクション作家)/山田洋次(映画監督)/山中恒(作家)/山家悠紀夫(くらしと経済研究室)/渡辺一枝(作家)/渡辺武(元大阪城天守閣館長)

(賛同62名11月19日16:00時点)

JAL不当解雇撤回に向けて支える会を結成

 昨年大晦日の165名整理解雇に端を発したJAL闘争は、8月3日の都労委勝利命令に続き9月30日には稲盛会長の証人尋問が行われた。会長自身が「解雇が必要なかった」ことを認めるなど、原告側の優勢のもと、東京地裁で争われてきた乗員・乗客裁判が12月19日と21日に、結審となり、来年3月頃には判決が出される見通しとなった。
 こうした情勢を受け11月7日、財政的支援を目的とした「不当解雇とたたかう日本航空労働者を支える会」の結成集会が381名を集め東京都内で開催された。
 同会は、浅倉むつこ(早稲田大学教授)、宮里邦雄(日本労働弁護団会長)、脇田滋(龍谷大学教授)の3氏が代表世話人となり、年内3万人、最終的には5万人の会員獲得を目標にしていることが事務局長の柚木康子(全石油昭和シェル労組)さんより報告された。裁判を担当してきた山口弁護士や、記念講演をされた代表世話人の宮里弁護士、連帯挨拶を行った4氏からは、不当な解雇を撤回し、雇用と団結、安全・公共性をとり戻す事が強調され、当該の山口・内田両原告団長も「必ず職場に戻る」固い決意を表明した。

岩崎松男(本誌副編集長)

労働弁護士の活動を支えようと中野弁護士らを支える会が結成される

 10月20日、「中野麻美弁護士・秦雅子弁護士への妨害活動と闘い両弁護士を支える連絡会」の結成集会がユニオン運動センター大会議室(渋谷区代々木)で開催された。  この連絡会は、@インターネットを中心に中野麻美弁護士と秦雅子弁護士に対して行われている誹謗中傷や業務妨害行動をやめさせ、労働弁護士への業務妨害をゆるさない運動をつくる、A労働者や労働組合、労働団体の権利を守る弁護士活動を行う弁護士(労働弁護士)の活動を支え、労働弁護士を不当な人権侵害から守る活動を推進することを目的に呼びかけられたもの。
 会場には新聞記者、弁護士など各界から支援者59人が集まり両弁護士を激励した。この日の司会は、派遣ユニオン書記長の関根秀一郎氏。
 最初にあいさつに立った全国ユニオン会長の鴨桃代氏は「Mという女性の起こした両弁護士へのいわれなき損害賠償裁判と、それを支えると称して『中野麻美弁護士ら2名の人権派弁護士を訴えた原告を支援する会』なるものを立ち上げた吉岡力氏(松下PDP事件当事者・なかまユニオン執行委員)のインターネット上などでの虚偽の中傷攻撃、妨害行動に対して大いに憤っている、みんなの力でやめさせよう」と発言。
 続いて、本件弁護団を代表して木村晋介氏から「不当な攻撃を排除し、中野・秦弁護士を守ろう」と挨拶があった。その後、本件に取り組む弁護団の紹介があり、戸田綾美氏、齊田紀子氏、高木理恵子氏、寺井一弘氏からそれぞれ挨拶があった。このうち寺井氏は「今回の攻撃は表現の自由などという類のものではまったくなく、悪質な人権侵害行為である」と指摘した。
 さらに、柚木康子全労協女性委員会委員長、設楽清嗣管理職ユニオン委員長、「石原差別発言」と闘ってきた「公人の会」の方からも応援発言が相次いだ。この日は、呼びかけ世話人代表に鴨桃代氏を選出、最後に東京ユニオン執行委員長の渡辺秀雄氏が闘う決意を表明した。
 「中野麻美弁護士・秦雅子弁護士への妨害活動と闘い両弁護士を支える連絡会」は、中野氏が理事長を務めるNPO法人派遣労働ネットワークに事務局をおき、誹謗中傷に晒される中野・秦両弁護士を支援するため、@広く情報を提供し、社会の正しい判断を形成する、A資料作成活動を行う、Bホームページなどを立ち上げ、正しい情報提供活動を行う、C中野・秦両弁護士に対する損害賠償裁判を傍聴支援する、D妨害をやめさせるためのあらゆる活動を支援する、などの活動を行うという。
 呼びかけ世話人は以下のとおり。鴨桃代(全国ユニオン会長)/柚木康子(全労協女性委員会委員長)/寺間誠治(全労連政策総合局長)/小谷野毅(全日建運輸連帯労組中央書記長)/見留洋子(派遣ユニオン委員長)/設楽清嗣(東京管理職ユニオン委員長)渡辺秀雄(東京ユニオン委員長)

       ○
 結成された連絡会によると、中野氏が代理人を務めたM氏から、「和解を強要された」「担当弁護士からハラスメントを受けた」などとして、懲戒請求を申し立てられたのは2009年。東京弁護士会、日弁連、そして弁護士が関与しない綱紀懲戒委員会のいずれも懲戒申立には理由がないとして懲戒には付さないことを決定。
 すると、M氏は今度は秦弁護士に対して懲戒請求を行い、ほぼ同じ主張内容で中野・秦両弁護士に5千万円の支払い求める訴訟を提起した。そして、これを支援するとして「中野麻美弁護士(NPO派遣労働ネットワーク理事長)ら2名の人権派弁護士を訴えた原告Mを支援する会」(会長は吉岡氏)のブログが立ち上げられた。
 当日参加者に配布された報告書は、中野氏は、昨年12月に吉岡氏から京品ホテル争議を闘った労働組合東京ユニオンの代理人になったこと自体を揶揄する誹謗中傷の書き込みを受け始めていることを指摘。
 東京ユニオンは、紛争の解決にあたり職場再建資金を得て、労働者のための職場再建に踏み出そうとしていた(「ダイニングバー フォーエバー707」を開店。注@)が、解雇無効を訴えた訴訟で支払われた解決金以外に、組合に支払われた職場再建基金や損害賠償金(ホテルの明渡請求や支配介入=不当労働行為事件の解決金)も個人の従業員らに支払うべきだとして、訴訟が提起された。
 こうした誹謗中傷がインターネット上で拡散することは、「人権活動や弁護士活動の不当な制約になる」「言論の自由は侵してはならない人権だが、これを許せば人権の死滅さえ招きかねない」「労働弁護士になりたいと思う人はいなくなるかも」「インターネットによる人権侵害を許してはならない」と呼びかけている。

(労働ジャーナリスト 東直矢)

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