たたかいの現場から

901号

★ローマ歌劇場解雇事件 海超えた反撃で撤回実現

 今年10月初旬“イタリアのローマ歌劇場管弦楽団と合唱団全員(182名)が解雇を言い渡された”という一報が流れてきました。

 これを聞いたわれわれも大変驚きましたが、何せ場所がローマですから、さらに心穏やかでないのは、現地のヨーロッパの人々だったでしょう。各国のユニオンは蜂の巣を突いたような騒ぎの中、いち早くFIM(国際音楽家連盟/本部パリ)は、支援体制に入ったのです。


 FIMは、FIA(国際俳優連盟)、UNI−MEIと共同で、劇場運営当局やローマ市、イタリア政府などにあてた公開質問状を作成・公表するとともに、FIM−Callとして一般への呼びかけを開始しました。

 日本音楽家ユニオンとしてもFIMの一員として、このFIM−Callを日本語訳し、解雇決定取り消しの嘆願署名(ネット署名)のキャンペーンに取り組んだのです。


 私は当初、署名は簡単に集まってこのキャンペーンは直ぐに成功を納めるだろうと思っていました。しかし数週間が過ぎてもなかなか伸びない現状に愕然とし、また、不思議に思い続けていたのです。その答えは今、此処ハンガリーのブダペストで開かれたFIMヨーロッパグループの会議にオブザーバー参加してやっとわかったような気がします。

 この会議での各国のユニオンからの報告は、昨今の経済状況を反映してか、とても暗いものばかりです。ユーロの失敗?と、それをもろに受けた南欧諸国はもちろんのこと、勝ち組といわれるドイツまでもが、かなり落ち込んでいるのです。ローマの件に似た話は随所で聞かれ、惨憺たる有様でした。


 その後、幸いにもローマ歌劇場の件は、労使双方が合意し、解雇は撤回されましたが、われわれはこの件で大きな教訓を得ました。それは、歌劇場に関係する組合が複数あり、正に“divide et impera”(分割統治)の状態だったのです。古代ローマの為政者の手法が、現代のローマで起きたのは、皮肉な話ですが、ユニオンがUNI(単一)でなくなれば、何時でもこうしたことが起こり得るという典型の事件でした。


篠原 猛(日本音楽家ユニオン代表運営委員)

 

★「危ない時、退避はあたりまえ」 被ばく労働ネット2年で集会

 11月29日、「被ばく労働を考えるネットワーク結成2年報告集会」が、東京・文京区民センターで開かれた。
 原子力資料情報室の渡辺美紀子さんによる呼びかけ人あいさつに続いて、西野方庸さん(関西労働者安全センター)の講演。吉田調書などをめぐって原発事故時の職員・労働者が「逃亡」したことを非難する議論もあるが、危ない時に退避するのはあたりまえ、と西野さんは語る。


 労働安全衛生法は労働災害発生の緊急時に労働者を作業場から退避させるよう定めており、労働者が自主的判断によって現場から退避する権利も認められている。そもそも、原発事故のような緊急作業を、労働契約に基づく作業にあてはめることが不可能である。被ばく線量管理やその責任所在の明確化も含めた特別な体制作りが、労働者の権利と安全のためにも、緊急の課題だと語った。


 続いて運営委員会から、この間のネットワークの取り組みについて報告がなされた。一連の争議や現地相談会、現地ツアー、東電や元請業者に対する行動など、これまでさまざまに取り組んできた内容が、課題とともに整理された。
 ネットワークに参加している、いわき自由労組からは、主に現在進行形で取り組んでいる争議の経過が、福島連帯ユニオンからは、建設が進んでいる仮設焼却炉における除染廃棄物焼却問題などが報告された。


 討論は、現地住民や元原発内労働者などの発言もあり、多岐にわたった。労働者被ばくの実態をもっと知りたい、無駄な除染に金を使うくらいなら、避難や生活再建に回してほしいというのが現地の声だという声もあった。

 今回の集会のスローガンとして掲げた「労働者の安全と権利なくして収束・廃炉はない」「被ばく労働者・被災者・避難者とつながろう」ということを、内実を伴うものとして運動化していかなくてはいけないとあらためて感じた。

新 孝一(被ばく労働を考えるネットワーク)

 

★「労働法守れ」とタスキつないで 連合アピールリレーがゴール

 全国縦断アピールリレーの最後の走者、連合東京の女性と連合静岡の男性が入ってくると、会場から歓声があがった。二人の手にタッチしたり、ねぎらいの声をかける人もいる。


 連合は「労働者保護ルールの改悪阻止」を訴えるアピールリレーに取り組んだ。
 東コースは北海道旭川市で市長の激励を受け、西コースは沖縄県石垣島で指笛が鳴らされるなか9月25日にスタートしたリレーは、47都道府県を駆け抜け、12月5日、東京都内で開かれた集会でゴールした。
 1462人が参加した集会では、古賀伸明連合会長が「運動で世論を喚起し国会内の努力と相まって派遣法改悪を廃案に追い込んだ」。民主党議員のあいさつの後、連合東京の杉浦賢次事務局長と連合静岡の池冨彰会長が、雨の日も風の日もタスキをつないだリレーの経過を報告する。
 神津里季生連合事務局長は、総選挙予測に危機感をにじませ、「安倍首相は『この道しかない』というが、この道は格差を拡げ戦争をする、いつかきた道。私たちの世代の責任が問われている」と厳しい表情で語り、「新たなリレーはこれから」と呼びかけた。

 

北 健一(team rodojoho)

 

 

日日刻刻  物価上昇と勤労世帯支出減少 (11.13〜28)


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