たたかいの現場から
835号

震災後のメンタルヘルス
 「辛淑玉さん講演会」(主催は福島県教組郡山支部)を聞いて

「お願いがあります。死なないでください」
 ただでさえ、教員という仕事は大変なのに、今回の震災で、さらに大変な状況に追いこまれている、ということを辛淑玉さんは理解してくれていました。
「福島は厳しいです」
 そうです。福島は厳しいのです。福島出身でも、福島に住んでいるわけでもない辛淑玉さんがそれを分かってくれていました。
 しかし、忙しい人を、疲れている人を休ませてくれないのが、日本の教育現場なのです。 「我慢しないでください」
 我慢することが美徳であり、我慢することを強いるのが日本なのです。
「先生である前に、人間としての感覚を取り戻してください」
 先生も同じ人間であることを忘れられ、何でも完璧にできることを求められ、何を言っても構わないと不満をぶつけられることがあります。
 日本の学校は、教師は、子どもの学力・子どもの行動に関して、あまりにも大きな責任を背負わされていると思います。子どもを育てているのは、学校だけなのでしょうか、教師だけなのでしょうか。
 親や祖父母、兄弟姉妹をはじめとした家族、親戚。隣近所の地域の人々。多くの人が子どもの成長に関わるべきです。
 学校や教師だけに子どもの責任を押し付ける人は、自分がその子どもの成長に関わってこなかった罪、学校や教師にだけ責任を押し付けてきた罪を問われなければならないと思います。
「今、日本は病んでいます。こんな状態の中できちんとして生きていこうとしても、無理があります」
「騙されないでください。何が大事なのか。自分の命を守ることが一番大事です」
 教職員をはじめ、市民の生活の復興に関わる行政職員の抑うつ傾向が報告されました。  「鬱はなぜよくないのか、鬱は、『死にたくなる病気』『死と直結している』からです。鬱は、誰でもなります。みんななります。人間であればなります」
 震災後の普通ではない状況で、多かれ少なかれ誰もが傷ついていて、疲れていて、病んでいるのです。
 特に、福島は、地震・津波・放射能の三重苦を抱えていると言われています。そして、将来に渡り『健康不安』、『貧困』、『差別』がつきまとっています。
 ここ日本では、これまで広島・長崎で起きたことが福島で繰り返されているのです。それは、沖縄の人々に対して、北海道のアイヌの人々に対して、水俣の人々に対して行われたこととつながるものがあります。私たちは手を取り合い、立ち向かっていかなければならないことを教えられました。
 とにかく、辛淑玉さんは、私たちに厳しい現実を突きつけたと同時に、明快な話し口調で私たちに元気を与えてくれました。

吉成優子(福島県教組郡山支部)

沖縄・那覇港にインド海軍駆逐艦入港
 「港湾の軍事利用を許さない」と全港湾などが抗議行動

 2月28日に那覇港(那覇新港埠頭)へ、インド海軍の駆逐艦「ランジット」(4974トン)が海上自衛隊の護衛艦「じんつう」(2000トン)に随行されて入港してきました。入港の情報をキャッチした私たちは、那覇港管理組合に対して2月24日、「民間港の軍事利用は絶対許されない。入港させるな」と抗議しました。しかし、管理組合の返答は「港湾法に対して何ら瑕疵がなければ入港を認めなければならないという見解です」でした。
 基本的に軍艦でありますから、どんな火器弾薬が積まれているかもわからない状態であるので、「そういうところで組合員を働かせる訳にはいかないので、不就労の行動も含めて抗議行動をやるぞ」と通告し、管理者として入港回避の努力をするよう要請しましたが、残念ながら入港してくるという事態になりました。
 当日2月28日は、早朝7時半から軍艦が入港するバース近くのゲート前で、沖縄平和運動センターの仲間と共に、全港湾の組合員を含めた約250名が抗議集会を開きました。その中で那覇港管理組合に対し抗議文を、沖縄平和運動センター議長とともに手渡しました。当初予定の抗議行動の体制を変更せざるを得ませんでしたが、夕方5時半まで監視行動を50名ほどの組合員で行いました。
 その中で確認されたのが一つありまして、実は船首甲板で兵員が一人銃を携帯して監視をしているのが確認されました。入港の目的が「親善交流」ということからすると、我々港湾に働く者をテロリストとして観ているのかと疑わざるを得ません。これまでも自衛隊の艦船がたびたび入港するという事態が起きており、その都度抗議をしてきましたが、今後も港湾の軍事利用を絶対許さない立場から断固反対をしていかなければならないと思っております。

大城盛雄(全日本港湾労働組合沖縄地方本部執行委員長)

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