たたかいの現場から

906号

◎ 法改悪で過労死は急増する 労働弁護団が緊急集会

 日本労働弁護団は、過労死対策弁護団全国連、ブラック企業被害対策弁護団との共催で、2月18日夜、東京・連合会館で「ホワイトカラーエグゼンプション反対緊急集会 STOP!過労死・過労うつ」を開催した。
 冷たい雨で冷え込む中、13名の発言者が約200名の参加者を前に、「労働時間規制撤廃の法改悪は、長時間労働をさらに拡大し、過労死を誘発する」と、「現場」の声を熱く訴えた。


 当日公表された労働弁護団の「意見書」では、「企画業務型裁量制の見直し」批判を冒頭に掲げた。経営側の狙いが、長時間労働の温床となっている諸制度を、さらに規制緩和し、営業や業務管理に携わる広範な労働者が、適用除外されることで長時間労働を強いられる「対象業務拡大」にある旨、強調した。


 集会では、法に定められた労働者保護規定を根こそぎ奪い取るのが今回の法改悪だと強調された。
 また、マタハラなどの女性差別、ブラック企業等による若者虐待・生活困窮、ワーク・ライフ・バランスの無視を引き起こしている根源が、長時間労働であると中野麻美弁護士などの各報告者から明らかにされた。
 また法改悪が過労死のさらなる拡大につながると、川人博弁護士や遺族の皆さんは強く訴えた。
 遺族の会の中原のり子さんは「夫(小児科医)のような有能でマジメ、高所得、責任感もあり思慮深い人が、高度プロフェッショナル制度のワナにはまり、病院に殺される」実態を告発し、川人弁護士は「岩盤規制ではなく、鋼鉄規制が必要だ」と述べた。


 連合会館で開催された集会にもかかわらず、連合代表の発言がなかったことは残念だが、労働弁護団や日弁連はさらに広範囲な共闘を提起している。
 棗一郎弁護士は「労働時間法制改悪の前段に派遣法改悪案も再提出されるし、解雇の金銭解決制度も準備されている」と述べた。国会審議に向け問われているのは労働組合だ。


水谷 研次(teamrodojoho)

 

 

◎ 「解決するまであきらめない」 JAL解雇 最高裁決定に怒り

 2010年12月31日に日本航空の経営破綻に乗じて組合潰しの為に行われた客室乗務員とパイロット165人の不当解雇撤回訴訟について、最高裁は客室乗務員裁判(2月4日)、パイロット裁判(2月5日)共に上告を棄却した。
 この決定は、これから更に補充書を提出することを通告していたにも拘わらず、最高裁に高裁から書面が到着してからたった3〜4カ月で出された不当な決定である。私たちは予想以上に決定が早く出されことが信じられず一瞬呆然としたが、十分に書面を審議したとは思えない三行半の決定書を見て司法に対する最後の期待も大きく裏切られた怒りで体中が一杯になった。


 私たちは12日18時から100名を超える支援の仲間と共に日本航空本社前に集合し宣伝・要請行動を行った。全国港湾、全労連、全労協、国労の各支援者は最高裁決定の不当さに怒り、原告に対して引き続きの支援を約束し、日本航空に対しては「早く解決を行え!それまでこの行動を続ける!」と決意を表明した。
 原告は安全よりも労働組合敵視政策を優先する日本航空への怒りと、勤務がきつく暗い職場に疲労しきって人員の流出が止まらない職場の悲痛な現状を訴え、「解決するまであきらめない!」と決意を表明した。
 要請行動ではいつものように職員は警備員を従えて中に入れず、抗議に対してだんまり作戦に終始した。


 客室乗務員は解雇以降2000名以上も新規採用されたが、一年に600人が自主退職し、新人多数となった職場は経験者を必要としている。パイロットは世界的に不足しており新規採用しても十分な人員を確保できない。日本航空は莫大な利益を上げ続け財力も体力もある。今、解雇者を戻せない理由はない。


 この裁判は終結したが、私たちの争議は終わっていない。更に大きな運動で日本航空を包囲し、165人の人生を踏みにじったこの解雇事件を解決させよう!と決意している。
 引き続きご支援をお願いしたい。

 

鈴木 圭子(JAL解雇撤回裁判原告団)

 

 

◎ 26人31件の処分を取り消し 「君が代」3次訴訟で東京地裁

 5年越しの東京「君が代」裁判・3次訴訟が、ようやく一審判決にこぎつけた。
 1月16日、東京地裁・佐々木宗啓裁判長は判決で、減給以上の重い累積加重処分は都教委の「裁量権の逸脱濫用」とし、原告50人中過半数を超える26人31件の処分を取消した。
 一方、「10.23通達」と「職務命令」は憲法19条・20条に違反しないとし、一番軽い戒告処分は容認した。先行訴訟の最高裁判決の枠組みに沿った、「結論先にありき」の判決だった。


 3次訴訟では、教員個人の「思想・良心の自由」以上に、生徒への「愛国心刷り込み教育の媒介」となることを拒否する教員の責務としての「思想・良心の自由」の侵害を訴えた。
 巻美矢紀千葉大教授は、「教員は民主主義の存続という大文字の公共性のために処分覚悟で職責を全うした。今度は裁判所が自らの役割を果たす番である」と鑑定意見書を結んだが、判決に反映されなかった。


 とは言え、これまでで最大数の処分を取り消した判決は、改めて都教委に機械的累積加重処分(起立斉唱の命令に従わないたびに処分をどんどん重くするシステム)の違法性を突きつけた。判決を無視して「再発防止研修」を強化したり、現職教員に再処分を強行するなどしてきた都教委のやり方はもはや許されない。


 原告団・弁護団は、直ちに控訴した。原告50人全員の処分取消しはもちろん、都立高校に自由闊達な教育が蘇るまで、闘いを止めるわけにはいかない。

 

花輪 紅一郎(日の丸君が代第三次訴訟原告)

 

 

日日刻刻  労働時間法制改悪の報告書 (1.29〜2.13)

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