アジア@世界
喜多幡 佳秀&稲垣 豊 ・訳(APWSL日本)
893+4号

★パレスチナ:ガザ攻撃に抗議し、今すぐ行動を!
    ガザの市民社会からの呼びかけ

 以下はパレスチナ・ガザ地区の労働組合や市民団体の共同声明(7月12日付)である。

 

 世界がまたもや私たちに背を向ける中、私たちはこの4日間、ガザで殺戮につぐ殺戮にさらされてきました。この声明を発表している時点で、すでに120人以上のパレスチナ人が殺されています。この中には25人の子どもも含まれます。1000人以上が負傷し、その多くは生涯にわたって重大な影響が残るでしょう。負傷者の3分の2は女性と子どもです。(中略)


 私たちは問います。何人の命が「処分」されたら世界は行動を起こしてくれるのか?

 私たちがどれだけの血を流したらいいのか?

 イスラエルが爆撃を始める前に、イスラエル国会の極右政党「ユダヤの家」のアイェレット・シャケド議員はパレスチナ人の皆殺しを呼びかけました。
 彼女は次のように言いました。

 「彼らは消えてなくならねばならない。蛇が育つ家を壊してしまわなければならないのと同じことだ。そうでなければ、そこからもっと多くの小さな蛇が育つからだ」。

 今、イスラエル以上の殺人者はどこにもいません。イスラエルにとって、パレスチナ人―その多くは子どもです―は蛇以上のものではないのです。(中略)


 この間のイスラエルの蛮行は、イスラエルの7年間に及ぶ非人道的な封鎖という文脈の中にはっきりと位置付けられています。この封鎖は物資や人の行き来のための基本的なライフラインを寸断し、その結果、現在ではガザのすべての病院と診療所が深刻な医薬品および食料の不足を訴えています。
 イスラエルの攻撃によって破壊された何千戸もの住居を再建するためのセメントの持ち込みが禁止されており、また、多くの負傷者や病人が海外で緊急の治療を受けるためにガザ地区から出ることも許されていません。そのために死亡した人の数は600人を超えています。


 新たに入ってきたニュースによると、イスラエルのリーダーたちは蛮行を次の段階へ進めることを公言しています。これからも、もっとひどい恐怖が続くことを私たちは知っています。

 だから、私たちはあなた方に、私たちに背を向けないでほしいと訴えます。私たちはあなた方が公正と人道性のために立ち上がり、声を上げ、これから最も暗い日に立ち向かおうとしているガザ地区の勇気ある男たち、女たち、子どもたちを支持するよう訴えます。


 イスラエルとの外交関係を断絶せよ!
 戦争犯罪者を訴追せよ!
 直ちにガザ市民のための国際的な保護を!(中略)
 私たちが自由に移動できるようになり、封鎖が解除された時、占領は終わり、パレスチナ難民は最終的に公正を手にすることができるでしょう。
 今すぐ行動を! まだ間に合ううちに!

 

パレスチナ労働組合総連合
パレスチナ大学教員連盟
パレスチナNGOネットワーク(133団体が参加)
パレスチナ女性総連合
民主的医療連合
パレスチナ労働者総連合
医療労働者総連合
公共サービス労働者総連合
石油ガス労働者総連合
農業労働者労働者総連合
女性就労委員会連合
パルシネマ(パレスチナ・シネマ・フォーラム)
ユース・ヘラク運動
女性闘争委員会連合
シナージー連合−−女性部
パレスチナ女性委員会連合
女性学会
女性労働者協会
プレスハウス
イスラエルとの学術交流ボイコットを求めるパレスチナ学生キャンペーン
ガザBDS作業グループ
単一民主的国家を求めるグループ

 

 

★イスラエル:51人の元兵士が兵役拒否を宣言

 イスラエルの元兵士51人が7月23日付の「ワシントンポスト」紙に兵役拒否を支持する声明を発表した。この元兵士の中には、招集対象となる予備兵が含まれる。
 この声明は今回のガザ攻撃の開始以前から起草作業が始まっていたが、現在のガザ攻撃に反対するために、この時点で発表された。
 同日付の「ハーレツ」紙によると、この声明が従来の兵役拒否宣言と異なる点は、イスラエル軍のパレスチナでの直接の戦闘行為だけに焦点を当てるのではなく、軍がイスラエル社会に重大な影響を及ぼしていることを指摘している点である。
 今回の署名者の多くは女性で、直接の戦闘ではなく兵站(たん)や事務に従事していた。
 以下は、この声明の抄訳である。

 

 私たちはかつて兵士であり、今は予備役として招集されることを拒否すると宣言している50余人のイスラエル人である。

 私たちはイスラエル軍と徴兵法に反対する。

 私たちが招集を拒否する理由の1つは、私たちが現在の軍事作戦に反対していることである。しかし、署名者の大部分は女性であり、戦闘に参加することはないだろう。私たちにとって軍隊は「境界防衛作戦」(今回の軍事作戦の呼称)や占領が不当であるという理由だけでなく、もっと広範な理由で不当な存在なのである。


 私たちはイスラエルの軍国主義化と軍の差別的政策を嘆いている。差別の1つの例は、女性が階級の低い事務職に押し込められていることである。もう1つはミズラヒィ(アラブ諸国出身のユダヤ人)を差別する選抜システムである。これは軍の精鋭部隊の中でミズラヒィが正当な割合を占めるのを避けるためである。

 イスラエル社会においては、軍隊での所属と地位は、その後の市民生活の中での職業上の進路に大きな影響を及ぼす。


 私たちにとって、現在の軍事作戦と、軍国主義化がイスラエル社会に及ぼす影響とは不可分である。

 イスラエルでは戦争は単に他の手段による政治であるのではなく、政治そのものに置き換わってしまっている。イスラエルはもはや、物理力による以外に政治的紛争の解決について考えられなくなっている。果てることのない殺人的暴力のサイクルに陥りやすくなっているのも当然である。そして大砲が火を噴いた時には、いかなる批判も聞こえなくなる。


 この声明は、長文であるが、特別の緊急性がある。なぜなら、今、残忍な軍事作戦が私たちの名において進められているからである。

 そして、一般的には戦闘部隊の兵士が現在の戦争を遂行しているのだが、この兵士たちの仕事は、私たちの大部分が従事してきた管理的業務なしには遂行不可能である。

 だからガザにおける軍事作戦に反対することに道理があるとすれば、イスラエルの軍隊の機構全体に反対することにも道理がある。それがこの声明が伝えたいメッセージである。


 私たちはイスラエル軍の中でさまざまな部隊のさまざまな職務に従事した兵士だった。この事実を私たちは悔やんでいる。なぜなら、私たちは軍隊での経験を通じて、占領地で作戦を展開している部隊だけがパレスチナ人の生活を支配するメカニズムを強制しているのではないということに気づいたからである。

 実際には、軍全体が関与しているのである。だから私たちは今、予備兵としての職務に参加することを拒否し、また、軍の招集に抵抗するすべての人々を支持する。(中略)


 人々は多くの理由でイスラエル軍の業務に就くのを拒否する。

 われわれの中に、この声明を起草するに至った背景や動機についての違いはある。しかし徴兵に抵抗する人たちへの攻撃に対しては、われわれは抵抗する人たちを支持する。

 徴兵を拒否する宣言文を書いた高校生たち、新しい徴兵法に反対している超正統派ユダヤ教徒たち、ドルーズ派の兵役拒否者たち、そして自らの良心と個人的事情と経済的状態から兵役に就くことができないすべての人たちを私たちは支持する。

 平等が語られている一方で、この人たちが対価を支払わされるのだ。もうたくさんだ。

 

 

★フィリピン:NXPセミコンダクターズの不当解雇撤回闘争に国際的支援

 ラグナ州カブヤヨのNXPセミコンダクターズ社の工場で、組合員24人が不当解雇された。同社はオランダに本社を置く世界的な半導体メーカーで、アップルのiPhone6に技術を提供していると言われている。


 NXP社は5月5日にフィリピン金属労働者連盟(MWAP)の24人のリーダーを解雇した。理由は一連の公休日に出勤しなかったことである。同社によると、これは「違法スト」にあたり、会社に重大な損害を与えた。
 解雇の通知は、新しい団体協約をめぐる交渉が、賃上げをめぐってこう着状態に入っていたタイミングで行われた。


 この不当解雇以降、組合は会社側による監視の強化によって会合の開催も困難になる中で、交渉継続の努力を続けてきた。
 会社側は労働雇用省を介して、解決金の支払いを提案した。それによって工場から労働組合を実質的に排除することが狙いだった。MWAPはこの提案を拒否した。


 製造業の国際産別組織、インダストリオール(140ヵ国、5千万人。MWAPも加盟している)は、NXPの労働者を支援する国際的なキャンペーンを呼びかけている。
 インダストリオールの呼びかけは次のように述べている。

 「交渉を引き延ばして24人の誠実な労働者と組合リーダー―勤続20年の労働者も含まれている―の決意を打ち砕こうとするNXPのシニカルな戦略は、あからさまな組合破壊の事例であり、あらゆる国際的な労働法制の基準に反している」。


 交渉の引き延ばしは、仕事と収入を奪われた24人の労働者に一層の苦難を強いている。また、会社側の金銭解決の提案は、人権を金で買う悪例になる危険がある。

 NXPの労働者に対する国際的支援は広がっており、フィリピン国内でもインダストリオール加盟の15の組合が連帯を表明している。

 

(ウェブ紙「ブラトラット」、7月18日付より)

 

 

★コロンビア:米国ドランモンド社が暴力的な組合破壊への資金提供で告発される

 米国の有力石炭企業、ドランモンド(本社、アラバマ州)のコロンビアの子会社の労働組合リーダーだったセサール・フロレスさんは、たびたび殺人予告の電話やメールを受け取っていた。昨年7月には、賃上げをめぐるストライキの渦中で、殺人未遂行為に遭遇し、その後も脅迫が続いている。多くの脅迫状には麻薬取引にも関与している準軍事組織の印が入っていた。


 コロンビアは労働組合活動家への暴力的襲撃が多発していることで知られているが、その中にはドランモンド社が関与しているケースも少なくない。
 ドランモンド社は準軍事組織への関与を否定しているが、同社は1990年代半ば以降、準軍事組織への資金提供についての告発を受けている。
 01年3月に、ドランモンドの労働者を乗せたバスが近づいてきた2台のトラックによって進路を遮られ、乗っていた2人の組合リーダーが誘拐され、殺害された。当時、組合の協約交渉が進行中だった。コロンビア自警軍連合(AUC)と称する準軍事組織のメンバーの犯行である。その7ヵ月後には、後任の組合リーダーも殺害された。


 現在、米国の裁判所で、人権弁護士のテリー・コリンズワースによって、ドランモンドに対して4件の訴訟が提起され、審理中である。

 3人の組合リーダーの殺害に関連してドランモンドがAUCに資金提供していたという告発については、一審で却下されたが、昨年8月に控訴が受理され、審理が始まっている。

 

 05年の法律によって、準軍事組織の成員は、組織を離脱することと自らの犯罪について告白することを条件に罪が軽減されることになっている。この法律に基づき、「コロンビア平和と公正プログラム」の下でAUCの元メンバーが証言を行っている。コリンズワース弁護士によると、控訴審ではドランモンドの関与が認定される可能性が高い。
 AUCは06年に解散しているが、多くの残党たちは名前を変えてギャングを再組織している。

 

 労働組合リーダーに対する脅迫は現在でも続いている。ナショナル・レイバー・スクールの調査によると、10〜13年の間だけでも組合労働者に対する脅迫が1634件、殺害が139件報告されている。

 このような暴力は労働組合の結成を妨げ、労働者に低賃金と無権利を受け入れさせる上で大きな効果を上げている。

 コロンビアでは労働者の組織率はわずか4%である。

 

(米国の「公共倫理のためのセンター」のウェブ、7月22日付より)

 

 

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