たたかいの現場から
844号

「生活できる最低賃金を!」 埼玉では3割の事業所が最賃違反

 中央最低賃金審議会で検討されている2012年の都道府県最低賃金で、生活保護の給付水準を下回る「逆転」地域が昨年の5県からさらに増え、北海道、青森、宮城、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、広島の計11都道府県になると、7月11日の朝刊が報じた。
 日本の最低賃金は先進国中最低クラスにある。東京の837円をトップに、最低は沖縄など3県の645円、加重平均でも737円でしかない。しかもこの地域格差は、年収換算すれば40万円近い。「早期の全国最低800円を確保し、千円をめざす」などの政労使合意によって、かつてより大きな引き上げが続いてきたが、昨年は震災の影響もあってわずか7円の引き上げにとどまった。
 あらためて、全労働者の力で法定最低賃金の大幅引き上げを求める運動を起こすことを強く訴えたい。1ヵ月懸命に働いて得る賃金が生活保護給付よりも低いなど、あってはならないはずだが、経営や政府は「生活保護給付の引き下げ」に世論を誘導している。
 かつてない事態だが日本中で、最賃違反が相次いでいる。埼玉労働局が初めて公表した集中監督によれば、地域最賃を下回った事業所が12%、産業別最賃では26%と3割近くに達した。違反の理由を聞いたところ「適用される最賃額を知らなかった」が4割と最も多く、「知っていたが改定していなかった」も1割強と目立ったという。
 神奈川では、時間給千円以上の最賃をめざして「最賃裁判」が闘われている。神奈川県労連の「最賃裁判ニュース」によれば、5月23日の第5回裁判で原告のIさん(57)は「毎月の給料は時給950円で約12万円。、妻が入院し、半分以上は医療費のためになくなってしまい、光熱費や電話代などを納め、毎月手元に残る現金は3万円を切り、そこから毎日の食事や日用品を賄っている。普通に働いて普通に生活できる社会にするためにも一刻も早い最賃の引き上げを」と訴えている。
 「最賃裁判」は昨年、50人の原告でスタート。追加提訴は3次に及び102人に膨らんでいる。原告の職種は正規採用の就職が難しく、「終身雇用」「年功賃金」などの日本型雇用慣行からはじかれた人々が集まっている。
 最賃闘争を、最賃審議会委員を独占する連合にまかすことなく、全労働者の手で「生活できる最低賃金」めざし訴えていくことが問われている。

水谷研次(編集部)

新採用教員の免職が仮処分で勝訴 一刻も早い復職を

 都の特別支援学校における新採教員が、1年目の人事評定(特別評価)をへて免職された事を838・839号で報告しました。この不当処分に対し3月30日付で、東京地方裁判所に、免職処分の取消を求める本訴と共に、仮処分申請も行いました。
 その仮処分についての判決が6月20日に下され、給与部分についての損失が生活に大きな影響を与えるとして都では初めて、本訴判決までの間、一時的な執行停止の判決を勝ち取ることができました。  本来、執行不停止が原則です。明らかに違法行為があったプリンスホテルでの教研集会の会場使用拒否事件で日教組が勝訴した事件では、ホテル側に執行停止命令がかかりました。それとは違い今回の場合は事実認定を争う裁判でした。
 この免職処分が一時的に停止された大きな原因は、都教委から出された意見書及びその意見書を補充する校長の意見書が、裁判官の疎明(信じるに足る)に至らなかったためです。意見書、並びに陳述書の内容は日常的に交わされる職場の噂話や悪口が述べられていただけです。さすがにこれで免職にする理由とは結び付けられないとしたのは常識的な判断だと思います。
 負けるはずのない闘いで負けた都教委はかなり混乱していました。本人の復帰は一週間後の6月28日からで、当初は現場での研修を命じていたのが、急きょ、研修センターでの研修に辞令を出し直しています。本訴判決までの長い時間をこのような状況に置くという非人道的な対処は許されるものではありません。

江副康嗣(東京都障害児学校労働組合副委員長)

米軍の「思いやり予算」は被災地へ 署名活動継続にご協力ください

 昨年4月から「米軍への思いやり予算を凍結し、被災地救援に充てる事を求める」日本政府への要請署名を行い、4月18日に、第一弾として4万2千700筆余を国会に提出しました。山内徳信・服部良一両議員のお世話で提出したのですが、相変わらず官僚達の返事は「日米同盟が大事」の一点張りで、ご協力いただいた多くの皆さんの声が届かず、被災者の方にも申し訳ない気がします。
 民主党政府は、被災地で明日の生活すら目途が立たずに、人々が大変な思いをしているのに、米軍駐留経費(思いやり予算)を、今後4年間にわたり総額約1兆円を支出しようとしています。国の基礎であり、納税者である自国民の救済こそが優先されるべきなのに、官僚達の頭には、そんな気持ちのかけらもありません。
 今、日本はあの大災害の復興と放射能拡散を収束させることに全力を注ぐ時です。そして原発を廃炉にするためにも気の遠くなるような時間とお金がかかります。毎日5億円という税金が、米軍に支払われ続ける事実を国民の皆さんに伝え、消費税増税なんかしなくても大丈夫だと訴えます。米軍に支払う法的根拠などない「思いやり予算」を終わらせる絶好の機会ですので、私たちはこの署名を継続して集め続けることを決意しました。米軍への「思いやり予算」を被災者の支援に回せば、50万人の方に毎月1人5万円を、3年間支給できるのです!
 『労働情報』の読者の皆さまの再度のお力添えをどうぞよろしくお願いします。署名用紙は「思いやり予算は被災地救援で!」で検索していただくか、下記のURLからダウンロードしてください。

山口洋子(「思いやり」は被災地へ有志一同)

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