たたかいの現場から

914号

◎派遣法改悪 参院でつぶそう 労働側同意なき強行は無効だ

  企業が派遣労働者を期間制限なく受け入れられ、派遣労働者には不安定雇用を強い、あらゆる職種に派遣形態が拡散するであろう労働者派遣法改悪案が、6月19日、衆院本会議で与党の賛成多数により可決された。まだ参議院審議が残されているが、労働関連立法では異例の事態がいくつも起きた。


 ひとつは派遣労働者当事者を含め労働側がここまで強行に反対姿勢を示しながらも、政府が無視・圧殺したことだ。本来は、労働者の権利擁護に立つべき厚労省が、労働側の賛成や同意が何一つないままに、企業側の意のままに動いた。12年に制定された派遣労働者の「労働契約申込みみなし制度」(いわゆる「10.1問題」)という保護策をつぶすために、厚労省は「大量の派遣切りが起きる」などのデマ宣伝さえ行った。
 世界標準でもある労働の三者構成原則を、完全に踏みにじった厚労省の財界・業界寄り姿勢は異様とも言える。


 「同一賃金法」の同時可決も、憲政史上ありえない。何も審議しないで採決する緊急上程は、全会派の賛同が前提とされるが、そのルールを踏みにじった。事後に自民党の国対委員長が「野党と合意せずに進めたことは遺憾であった」と謝罪したというが、民主・生活との3会派共同提案を、維新だけで「均等待遇」を「均衡」にするなど全面的に骨抜き修正したことなども、まさに暴挙だ。


 もちろん、日本の派遣法自体が世界標準である「派遣は臨時的・一時的業務に限る」「均等待遇」ではなく、低賃金・低処遇・常態的・差別的・間接雇用を固定化させていることに加え、従来は派遣期間制限対象外の専門26業務の派遣労働者が、この改悪で雇用打ち切りの使い捨てリスクにさらされることも許し難い。
 政府は、正社員化が進むと主張するが、誰一人信じない。それどころか、従来は3年限定だった派遣業務が、無制限化されることによって公務職場など多くの業種で置き換えが進み、正社員ゼロ社会が到来しかねない。労働基本権もなく、使用者責任からも逃れられ、いつでも首切り可能な職場が無数に生まれる。


 それゆえに、連合結成以来初めて労働組合は潮流を越え、反対の声を大きくあげた。弁護団や諸団体の集会では、初めて3団体そろって反対の決意を述べ、デモも行い、政党もそれを受け入れた。当事者である派遣労働者や労働弁護団の奮闘も大きく、マスコミ等もやっとこの法案の危険性を指摘し始めた。
 派遣労働者は、派遣先では「モノ扱い」され、名前も呼ばれない。働く者の尊厳を奪い世界標準から逸脱する天下の悪法を、参議院段階で絶対につぶさなければならない。


水谷 研次(team rodojoho)

 

◎「かもめーる販売で局長が脅迫」 内部通報うけ郵政ユニオン動く

 「K局集配の社員です。今日、かもめーるの売り上げが低い者4人が局長室に呼ばれ、局長から、『おれは一人殺したことがある。おまえらわかっているだろうな。今日ゼロだったら帰さないからな』と言われました。だから自分で買いました。脅迫だし、あまりにひどいので電話しました」
 6月11日夜、郵政ユニオン本部に届いた通報である。


 K郵便局(茨城県)の現局長は、立ち作業、見せしめの「お立ち台」、営業ノルマ、怒鳴りあげる管理者……と苦痛のオンパレードのようだったさいたま新都心郵便局で2010年12月8日に起こった過労自死事件の際の、同局・第一集配課長だ。
 遺族が日本郵便を訴えた裁判(さいたま地裁係争中)において、原告書面にその名と所業が記されている管理者2人のうちの1人だ。
 その本人が事件を自ら「殺人」と言い、いまそれをもって恫喝行為をはたらいているのである。


 われわれの怒りを表現する言葉はない。そのような者を要職に就けている日本郵便の責任は重大である。

 6月17日、当会も参加し郵政本社前で行われた「郵政全争議の解決を!共同キャンペーン」において、各争議原告による本社への申し入れが行われた。あわせて本件について、さいたま新都心局事件遺族が断固たる姿勢で申入書を読み上げた。
 「日本郵政・日本郵便はK局長を即刻、解職せよ。K郵便局において今後、局長以下管理者等による通報者探しや脅迫、配置転換など一切の不利益な扱い、その他社員に対する脅しなど不当な扱いが行われた場合には、即刻広く社会的に訴え、厳重な対応を行う」。 本社広報の顔色が変わった。
 続いて衆議院総務委員会委員である梅村さえ子議員(共産党)に責任追及の協力要請を行った。
 明けて18日早朝には、郵政ユニオンがK局前で「局長の蛮行を許しません!」との情宣を行った。即座に反応があった。絶対に許さない。

 

倉林 浩(さいたま新都心郵便局過労自死事件の責任を追及する会事務局)

 

◎参加者送迎 「白バス」とこじつけ 反基地弾圧 逮捕の3人釈放

 6月4日、大阪府警は米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会/近畿連絡会の仲間3人を不当逮捕し、翌日にかけて20カ所前後の強制捜索を行った。

 この大弾圧は昨年9月28日の米軍Xバンドレーダー基地建設に反対する京丹後現地闘争に、参加者がバスを借りて参加したことを「道路運送法違反」(いわゆる「白バス」)だとして打ちおろされたものであった。許し難いでっち上げである。

 そもそも、「道路運送法違反」というものは、不当な利益を得たり、合法的に営業している者に不利益を及ぼすような常習的な不法行為を対象とするものであり、しかも通常は警告ですむ事象にすぎない。

 この大弾圧の目的はまず、米軍Xバンドレーダー基地反対運動とこれを推進してきた京都連絡会・近畿連絡会をおしつぶすことにある。

 このXバンドレーダー基地は、近畿地方唯一の米軍基地として昨年12月に本格運用された。しかし、地元住民は決して納得しておらず、多くの住民が基地のない平和な京丹後を子どもたち、孫たちに受け継いでいきたいと願っている。連絡会は、このような住民の願いに寄り添いつつ、これまで4回にわたる現地総決起集会を開催してきた。


 弾圧の対象となった昨年9月28日の現地闘争にも、沖縄・岩国・神奈川など全国各地の反基地運動、また韓国の反基地運動の代表を含めて約400人が結集した。このような反対運動は、近畿5府県の闘う労働組合・市民運動・青年学生運動が総結集する闘いとして組織されてきたものである。
 近畿では、6月4日以降、この大弾圧に対する反撃が全力で組織されてきた。6月18日には、京丹後市抗議行動・京丹後市議会要請行動、基地ゲート前抗議闘争を中心とした京丹後現地闘争が貫徹された。そして、戦争法案の廃案をめざす闘いも大きく拡大していこうとしている。
 逮捕されていた三人は、勾留延長に対する準抗告が認められ、16日〜17日に釈放された。

 

山本 純(米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会)

 

◎「再雇用拒否は裁量権の濫用」 君が代処分 東京地裁で勝訴

 5月25日の法廷は歓喜に包まれた。勝訴は予見されたものであったが、予想以上の内容の判決であった。私たち原告団の22人は、誰もが「日の丸・君が代」の強制によって都教委から処分され、それを理由に定年等、退職後に本来保障されていた再雇用を拒否されていたのだ。


 5年8カ月の長い一審の闘いだった。提訴した2009年頃は、「日の丸・君が代」関連の訴訟が軒並みに控訴審で敗訴していた。とても勝てるような状況ではなかったのである。
そのため一審を長引かせる訴訟方針をとることにした。この長い時間に、2人の仲間が病に倒れ、帰らぬ人となってしまった。残念である。

 その後、再雇用に関する勝訴判例が続き、状況が大きく変わることになったのである。政府が「雇用と年金との接続」を方針化したのがその変化であった。しかし、民間では適用されても公務労働では除外されてきたのがこの間の状況であった。さらに、11年から一連の「日の丸・君が代」に関する最高裁判決が出され、強制に対する憲法判断が出されていたのである。


 東京地裁判決は、憲法判断を避け、裁量権で都教委の逸脱・濫用を認め「違法である」と断じ、1年分の賃金賠償を判示した。そして、注目すべきいくつかの説示を行っている。
 第一は、再雇用の期待権を認め、「法的」保護に値するとしたこと。第二は、再雇用は、退職前の地位と関連性、継続性のあることを認めたこと。第三は、「日の丸・君が代」の職務命令違反だけでは不採用の理由にはならないこと。第四は、再雇用拒否も懲戒処分に値するものであり「別異」とすることはできないとした点だ。
 判決後、都教委は控訴したために法廷の闘いはこれからも続く。

 

東海林 智(team rodojoho)

 

 

日日刻刻  「福祉施設で労災激増 (5.27〜6.11)」

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