たたかいの現場から
851号

除染危険手当の「中抜き」、全額を獲得!!
 被ばく労働に従事する全労働者に成果の拡大を

 福島第一原発周辺の警戒区域など(除染特別地域)では、除染作業を行う労働者に国の指導で、基本賃金とは別に特殊勤務手当(除染危険手当)が支給されることとなっている。これは被ばくの危険性や精神的労苦に対し国税で支払うものである。しかしゼネコンを頂点とする多重請負構造の中で、個々の労働者には正当に支給されていないのが実態だ。(朝日新聞11月5日朝刊1面、2面)
 除染特別区域である楢葉町で先行除染に従事していた労働者たちが、この特殊勤務手当のことを知ったのは8月下旬であった。二次下請や三次下請会社の採用時にそんな説明は一切なかった。その挙句、約束した日当額を最低賃金にまで減額し更に会社持ちだった宿泊費を天引きすると言ってきた。特殊勤務手当を支給していると後付けで説明し、環境省に報告するためだ。A社の除染作業員たち(7月〜9月の有期契約)は、これに怒り、会社側に説明を求め集団交渉を行ったが埒(らち)が明かない。「そんな金は上からもらっていない」二次下請会社はこう言って開き直った。
 4人の労働者は全国一般いわき自由労働組合に加入し、納得いくまで闘うことを決意した。
 そして、@特殊勤務手当の全額支払いを求め、必要があれば上部資本と闘う、A特殊勤務手当を全ての除染作業労働者が必ず受け取れるようにする、B危険な被ばく労働にもかかわらず交付されていない放射線管理手帳が交付されておらず、手帳の交付を求める、などの方針を確認した。
 二次下請A社(福島)との団体交渉を3回にわたり行うが進展はない。会社いわく「上に言ってくれ」。全国一般全国協本部から一次下請会社には団交申し入れ、元請ゼネコンには指導申し入れを行う。一次下請I社(東京)との団交では、全ての責任を下に押し付ける姿勢だ。「請負契約時に手当の説明はしている」「危険手当は支払っている。日当は最賃で問題はない」と。労働者たちは一歩も引き下がらない。「ゼネコンとも闘う。国とも交渉する」と。この断固たる姿勢によって特殊勤務手当の「中抜き」を許さず全額獲得を実現した。被ばく労働ネットに結集する仲間たちの力強い連帯の成果でもある。
 この成果を、福島第一原発廃炉に向けた労働も含めて被ばく労働を強いられる労働者全体に拡げていかなければならない。そして山積する被ばく労働問題への取り組みを強化しなければならない。

佐藤隆(全国一般全国協中執)

「労働運動基金」と「女性運動基金」を発足 − 全石油昭和シェル労組

 私たち全石油昭和シェル労組が一昨年末に、40年来の労使紛争を解決できた報告は、昨年初めにさせていただきました。紛争解決に当たり会社から慰謝料として解決金を受け取り、それをどう使うか検討しました。暴力弾圧・賃金昇格差別を受けてきた組合員への分配はもちろんですが、お世話になった全労協など上部団体等、弁護士、裁判で意見書を書いてくれた先生方、共闘組合、友誼組合、団体などにカンパをさせてもらいました。本誌労働情報にも些少ながらカンパしました。大阪全労協や中小労組政策ネットで宣伝カーが新しくなった姿も嬉しいです。
 でもやはり私たちの大きな課題である労働運動の前進や、日本の緊急課題である女性差別をなくすための運動に役立ててほしいという思いがあり、「労働運動基金」、「女性運動基金」を作ることを紛争解決後の大会で決めました。
 「労働運動基金」は法的に訴えたくても弁護士着手金を払えない、労働委員会への申し立てのためのお金が工面できない等のケースに役立てたいと考えました。「女性運動基金」は均等待遇の実現に向けた運動を担う運動体の拠点としてのスペースの確保、並びに女性差別を撤回させていくための研究、運動などに資金援助していくことを目的としました。
 具体的内容を決めるために時間を要したため、発足はこの秋になりましたが「労働運動基金」は基本的に全労協傘下組合あるいは友誼組合等の裁判、労働審判、労働委員会に訴える際の資金援助に、「女性運動基金」は女性差別撤廃に向けた運動の拠点としてのスペース確保、研究等への資金援助などに活用していくこととしました。
 労働運動基金では既に1件の援助をしました。女性運動基金によるスペースは本郷3丁目に開設しました。今後とも多くの運動体に活用していただくことを期待しています。

瀧秀樹(石油昭和シェル労働組合中央執行委員長)

URリンケージ争議 天下り役人に一矢酬いたぞ

 私たち分会員はURリンケージ(UR都市機構=独立行政法人都市再生機構の関連会社)の社員でした。02年に55歳以上は、新たに設立された都市開発エキスパートに転籍(リストラ)されることになり、仕事は今まで在籍していたURリンケージに出向し、作業内容も福利厚生も今まで通りという約束でした。しかし、間もなく出向から請負契約となり、更に、派遣契約になりました(当然、仕事はきつく、待遇も悪くなりました)。私たちは、会社に一方的に派遣にしたことへの説明を何度も求めましたが、組合に説明する義務はないと、話し合いに応じませんでした。  その為、組合は東京都労働委員会に救済申入れを申請し、「会社は組合に対して、誠意ある対応を示しなさい」という命令をとりましたが、会社はこれを不服として中央労働委員会に上告しました。中労委もやはり「都労委の命令に従いなさい」という結論を出しましたが、またもや会社はその結果に従わず東京地方裁判所に提訴しました  裁判所での調停期間中には、東京総行動を通じて再三の社前行動を展開、会社に乗込みシュプレヒコールなど実力行使を行いました。  会社は、今年の1月末で最後の現役組合員が定年退職になったので組合活動は自然消滅するだろうと考えていたようですが、変わらず続く社前行動や組合の強い意志に屈し、遂に和解で争議を終焉したいと申し入れてきました。  私たち組合員は、以前はURリンケージの前身の都市開発技術サービスという会社に在籍していたので、私たちプロパーがこの会社を安定した企業にしたという自負があります。それにも拘らず、私たちに非道な対応をしてきた役員たちは全てUR都市機構の天下りで、在任中は問題なく過ごしたいという役人根性に、一矢酬いたいという気持ちで闘ってきましたが、最後まで闘えたのは、みなさんのお陰だと深く感謝しております。

梶川進(全統一都市開発分会書記長)

止めるぞ!オスプレイの沖縄配備 許すな!低空飛行訓練11・4全国集会

 11月4日、東京・芝公園で「止めるぞ!オスプレイの沖縄配備 許すな!低空飛行訓練全国集会」が開かれ、4千人が参加。全国の労働組合の旗が芝公園全体を埋めつくした。
 藤本泰成さん(平和フォーラム事務局長)は「全国への訓練開始は沖縄の負担軽減にならない。アジア諸国との信頼・友好のためにも配備反対の声を上げよう。事故が起きてからでは遅い」と野平晋作さん(ピースボート共同代表)は「11月から全国各地で訓練飛行が行われるが、それに反対する共通のスローガンは、沖縄の配備反対が第一であり、それと連帯して自分の所でも配備に反対しよう」と主催者あいさつ。
 山城博治さん(沖縄平和運動センター事務局長)は「12月中旬、普天間基地ゲート前に大結集し、基地封鎖をやろう」と訴えた。桃原功さん(普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団事務局次長・宜野湾市議会議員)は「やまとのマスコミが報道するようにあらゆる工夫をしてほしい。米軍への思いやり予算は毎年1千880億円だ。これに反対する署名に協力してほしい。そして何よりも沖縄に来てほしい」と訴えた。
 次に、新倉裕史さん(非核市民宣言運動・ヨコスカ)は「7月オスプレイが低空飛行をしてもよいと閣議決定した。これは日本の航空法を適用しないということであり、安保の特例法だ。今回地位協定上の根拠を示していないので、オスプレイの低空飛行は違法だ」と指摘した。
 本山央子さん(アジア女性資料センター事務局長)は「軍隊がある限り性暴力はなくならない。加害者を放置させている法制度を変えさせなければならない」と訴えた。  岩国の愛宕山を守る会の連帯アピールが読み上げられた。キャンプ富士を拠点にオスプレイが訓練飛行を行おうとしている静岡での闘い、沖縄の闘いと連帯する東京東部集会実行委が連帯行動の発言をした。
 その後、「OSPREY OUT !!」のプラカードを掲げ、配備撤回のシュプレヒコールを行い、デモに出発した。

松下知(読者)

岩国基地拡張プランは1970年に検討 
「オスプレイ配備撤回!10・21ヒロシマ集会」で真喜志好一さん講演

 国際反戦デーの10月21日、広島市西区民文化センターで、「オスプレイ配備撤回!10・21ヒロシマ集会」が開催された。主催は、「ピースリンク広島・呉・岩国」、「岩国基地の拡張強化に反対する広島県西部住民の会」、「憲法と平和を守る広島共同センター」の三団体。
 講演は、建築家であり、沖縄平和市民連絡会で活動している真喜志好一さん。講演テーマは「安保の下で暮らす沖縄、9・9県民大会で何を訴えたのか 米国公文書から見るオスプレイと普天間基地の危険性」で、沖縄の運動が大きなうねりに入っていることを告げ知らせるものであった。
 「海兵隊は殴りこみ部隊ではない。現代の米政府の戦争は戦争準備に数ヵ月、開戦から数週間後に上陸している。海兵隊は、米本国でも東京に居ても何の不都合はない。抑止力でもない」と切り込み、自作の模型を手にオスプレイの構造的欠陥をわかりやすく説明。辺野古新基地建設を米政府は1966年から計画していた事実を米国公文書の分析を基に紐解いた。
 さらに、1996年の米国公文書には岩国基地拡張のプランも20年前から検討していることが記載されている。ゆえに、それを暴露することが岩国で今闘っている人の確信を強化すると訴えた。「沖縄はもうだまされない」という確信に「岩国はもうだまされない」という確信をどう結びつけていくのかと考えさせられた。
 その岩国から大川清さん(住民投票の成果を活かす岩国市民の会)が発言し、集会呼びかけ人の柴田もゆるさん(日本基督教団廿日市教会牧師、西部住民の会共同代表)が連帯の発言をした。
 大学生の大川祈(いのり)さんは、「私たちが望んでいるのは基地のない沖縄、岩国、世界。基地は人を殺す訓練をするところ。オスプレイは戦争をするもの。命を奪うのは嫌です。武力による安全保障はまやかしです」と発言した。最後に、日本政府あての集会アピールを坂本千尋さん(西部住民の会)が読み上げ、拍手で採択して集会を終えた。

久野成章(広島支局)

朝鮮学校の授業料無償化を 田中文科大臣に強く要請

 民主党マニフェストの目玉であった「高校授業料無償化」から朝鮮高校だけが排除されて2年半が経過する。日本の公私立校生や他の外国人学校生は、年12万円弱という恩恵を受けているが、朝鮮高校生だけは明確な理由が明示されないまま除外され、文部科学省の「厳正な審査」が継続されたままだ。教育の世界にこのような歴然たる「差別」を持ち込んだことには、国内だけではなく世界からも厳しい批判があるが、歴代の民主党出身の総理大臣や文科大臣は、逃げ続けている。
 少しでも除外解除の動きを見せれば、産経新聞を中心に凄まじいバッシングが起き、国会でも追及される。それが嫌なようだが、今回の田中真紀子大臣は、解除に前向きの姿勢を見せている。平和フォーラムをはじめ、署名活動やデモ・集会を続けてきた「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」等は行動を強めている。11月1日には参議院議員会館で院内集会が行われ、民主党・近藤昭一、社民党・又市征治、照屋寛徳各議員、田中宏・一橋大名誉教授などが、決意を述べられた。
 9名の東京・神奈川・茨城の朝鮮高校生たちの発言も感動的だった。
「なぜ私たちだけが適用されないのか、朝鮮人だからなのか、そんな差別が悔しい。何人もの友人が朝鮮学校にゆけず、日本の高校に進まざるをえなかった。私たちは朝鮮高校に通うことで、歴史も知り、言葉も覚え、自分という人間を取り戻すことができた。しかし、私たちは未だに日本の植民地の中にあり、学校もつぶされようとしている。もうこんな辛い思いを後輩にはさせたくない」
 最後のチャンスかもしれない。田中文科大臣への要請を強めよう。

水谷研次(本誌編集部)

焦りの横堀団結小屋撤去 抗議行動へ結集を

 千葉地裁は、10月29日、横堀団結小屋住人に「11月28日(水)午前7時に小屋を撤去する。それまでに住人は小屋撤去、退去せよ」と通告してきた。この通告は成田空港会社と一体となった三里塚闘争破壊であり、一坪共有化運動への敵対だ。三里塚芝山連合空港反対同盟(世話人・柳川秀夫)、大地共有委員会(U)〔代表・加瀬勉〕、三里塚空港に反対する連絡会は、この暴挙を許さない。  4月25日、東京高裁第9民事部(下田文男裁判長)は、横堀・団結小屋破壊裁判(建物収去土地明渡請求事件)で空港会社の指示のもとに原告となった地主の主張を追認。三里塚反対同盟に対し「工作物を収去して本件土地を明け渡せ」と通告、「仮に執行することができる」いう不当判決を言い渡した。反対同盟と弁護団は、ただちに上告した。だが裁判所は、8月12日、いつでも撤去できる「決定文」を出し、今回、「11月28日小屋撤去」を通告してきた。
 空港会社の狙いは、反対同盟と大地共有委員会(U)、連絡会の連絡先でもある横堀・団結小屋を破壊することによって空港拡張工事など空港「完成」化を加速させていくことにある。しかし、一坪共有地運動をはじめ闘う拠点がますます空港会社に打撃を与え、その焦りとして横堀団結小屋破壊を画策してきたのだ。抗議行動への参加と支援連帯を訴える。

山下一夫(三里塚空港に反対する連絡会)

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