アジア@世界
喜多幡 佳秀 ・訳(APWSL日本)
905号

★ギリシャ:「ギリシャに学ばねば」欧州の労組がシリザ政権に連帯

 1月25日の総選挙で勝利した左派政党シリザのチプラス代表は「今日、ギリシャの人々は歴史を書き込んだ」と語った。
 トロイカ(EU、欧州中央銀行、IMF)とドイツをはじめとする各国政府は、新政権に対して債務返済の圧力を強化しようとしているが、ヨーロッパ各国で緊縮政策からの転換を訴える新政権に対する共感が広がっている。
 「これはギリシャ社会を破壊した6年に及ぶ緊縮政策の末に、トロイカとヨーロッパの諸機関に対する強いメッセージだ」。PSI(国際公務労連)のローザ・パバネリ書記長は左派政党シリザの勝利についてこのように語った。


 「貧困や極端な貧困がギリシャの人々の日常生活の一部となった。失業者、不当な低賃金で働く人々、医療や社会サービスを受けられない人々、水道や電気の料金が払えない人々。彼ら・彼女らは緊縮政策は機能しないし、経済を悪化させるだけだとの生き証人である」
 「歴史の中で、ギリシャは民主主義の揺籠だった。民主主義は、ギリシャの人々が現在のEUの政治的リーダーたちに反対することを恐れないとはっきりと告げた。民主主義を生き続けさせること、それが民主主義的機関と人民の権力を貶めようとする人々に対する最も正しい回答である」 
 「ヨーロッパはギリシャの教訓に学ばなければならない。人々が民主主義と社会的公正を要求する時、彼ら・彼女らは公正で平和な社会、安定した持続可能な経済を要求しているのである。その声に耳を傾けなければならない」 (PSIのウェブ、1月17日付より)


 UNIグローバル・ユニオンのフィリップ・ジェニングス書記長は、ダボス会議(世界経済フォーラム)からの帰途、次のように述べた。
 「ギリシャの新政権は明確な委任を受けている。先週ダボスに集まった政治およびビジネス・リーダーたちはこのことに留意しなければならない。トロイカはこれまで進んできた道を再考し、雇用と成長についてのアプローチに新しい考え方を取り入れなければならない。今こそトロイカが緊縮政策と不平等を助長するのをやめる時だ。EU委員会はユーロ圏に1兆ユーロの資金を注入しようとしている。結局のところ、ギリシャにとっても他のEU諸国にとっても、単に金の問題ではない。それは人間の問題なのだ」


 イタリアのサンドロ・ゴジEU問題相は「この選挙の結果、われわれはヨーロッパの進路を変え、成長と投資を生み出し、失業と闘う新しい機会を得た」と述べている。このほかスペイン、ポルトガルなどの国にとっても、ギリシャの選挙結果は緊縮政策に抗するための分岐点となる。 (UNIのウェブページ、同日付)


 ドイツ政府や財界、大手メディアが新政権への敵意を露骨に示している中で、Verdi(サービス労働組合)のフランク・ブシルスケ代表は、次のように述べている。
 「ギリシャは破滅的な緊縮政策から立ち直るための公正な機会を与えられるべきだ。(選挙結果は)ヨーロッパの政策転換に向けた起床の合図だ。ギリシャは息継ぎと、社会的・民主主義的な再建の機会を必要としている」 (AFP、1月26日付)


 国際労働組合総連合(ITUC)のシャラン・バロー書記長は次のように指摘している。
 「トロイカのレシピは経済学のテストに落ち、民主主義的な責任のテストにも落ちた。国際金融機関とヨーロッパの諸機関はギリシャの人々の声を聞き、新政権との間であらゆるオプションを検討するべきだ。実際には緊縮政策の下でギリシャの債務は増えている。2014年に前政権が銀行やヘッジファンドやその他の債権者に支払った金額は労働者に支払った金額よりも多い。経済は25%縮小し、ギリシャの青年の半数以上が失業している。新政権は債務の軽減と、この数年間に大幅に引き下げられてきた賃金・給付の引き上げのための措置を検討するだろう。新政権はまた、トロイカの圧力の下で奪われてきた労働者の基本的権利を復活させなければならない。……スーパーリッチの寡頭階級への初めの課税は、深刻な経済危機に取り組むのに役立つだろう」 (ITUCのウェブ、同日付より)

 

 

 

★インド:炭鉱非国有化に反対して50万人がスト

 1月6日、モディ首相が進める民営化政策に反対して炭鉱労働者50万人がストライキに入った。
 インドでは世界最大の石炭採掘企業であるコール・インディア(国営)が国内生産の80%を占めてきたが、モディ首相は42年ぶりに民間企業による採掘と販売の許可を発表。政府は競争促進により電力不足解消をはかるとしている。
 労働者は、賃金引き下げと人員削減をもたらすと懸念している。


 インド全国鉱山労働者組合のザマ書記長は、民間企業への商業用採掘の許可を半年以上猶予することと、石炭産業の民間開放前に組合との話し合いを政府が確約するまでストライキを続けると語っている。ザマによる5つの炭鉱労働者組合代表がデリーに集まり、「政治的協議」に臨んでいる。


 スト1日目(6日)には同社の生産量が64万5千トンと、通常の半分になった(主に臨時労働者により生産を継続)。同社は管理職を除いて約29万人の正規雇用労働者と6万5千人の臨時労働者を雇用している。(「ロイター」1月7日付)
 ストは5日間の予定だったが、2日目(7日)に政府と組合の交渉で合意が成立し、終結した。
 1月16日付の「ザ・ヒンズー」紙によると、国民会議派、人民党、および左翼政党の系列を含む10の全国労働組合組織が共同で、2月26日をモディ首相の下での労働法改定をはじめとする一連の規制緩和に反対する「市民的不服従の日」として広範な行動を起こすと合意。

 以下は共同声明。


 「1月6〜7日の炭鉱ストは労働者の全体的な士気を高めた。政府は石炭産業や土地取得に関する規制緩和、保険業の外国資本への一層の開放などを進めており、鉄道、防衛や他の重要産業への外国資本導入の意図も明らかにしている。石炭、銀行、保険、国有鉄道、電力などの産業規模の闘いが展開されている。鉄道や防衛産業を含む国営企業の労働者は4月に国会に向けたデモを計画し、それ以降ストライキを計画している。これは積極的な兆候である。労働組合は昨年、政府に対して10項目の要求を提出したが、残念なことに政府は何の行動も起こしていない」。

 

 

★インドネシア:水道再公有化求める訴訟、2月10日に判決

 ジャカルタ特別州の水道サービスの民営化は1998年に始まり、2つの民間企業、パリジャとアエトラが事業を請け負った。その目的は水道サービスの向上だった。両社は水道サービスの供給の独占的権利を与えられた。それから15年を経て、ジャカルタの水道サービスは依然、問題が多い。


 市民団体や水道労働組合は民営化に強く反対し、水道サービスの再公有化について無数の集会や公開討論会を開催。12年には民営化反対の訴訟が提起された。
 PSI(国際公務労連)やオランダのTNI(トランスナショナル・インスティテュート)、国内の市民団体が再公有化を支持する運動を展開してきた。
 13年に当時のジャカルタ知事のジョコ・ウィドド(現在は大統領)が民営化の中止を約束した。
 ジャカルタ中部地裁は1月13日に、判決を2月10日に延期すると発表。以下は1月14日付の「ジャカルタポスト」紙の抄訳である。

 

 水道民営化をめぐるジャカルタ中部地裁の判決は、裁判官の合議で、審理が不十分という判断に至り、また被告側が和解を求めたため延期された。
 イイム・ヌロキム主任裁判官は13日に、判決は1ヵ月延期され2月10日に行われると発表した。
 水道民営化に反対するジャカルタ住民連合(KMMSAJ)は12年11月に、ジャカルタ州営水道会社PAMジャヤと民間の2社、パリジャ社およびアエトラ社の間の契約の打ち切りを求める訴訟を提起した。KMMSAJはこの提携がジャカルタに十分な飲料水の供給を保証することができなかったと主張している。
 KMMSAJによると、この提携はまた、PAMジャヤが両社に支払った委託料を通じて、特別州に1兆7千万ルピー(約106億円)の損害を与えた。
 両社は16年間にわたる事業の中で、市の住民の60%の需要しか満たすことができず、残りの人々は地下水に頼らざるを得ない。しかも地下水は涵養量の不足や建設工事のため水質が悪化しつづけている。


 州の弁護士は13日の審理の後、法廷外の和解の可能性に言及したが、和解の内容についてはまだ結論を持っていないと述べた。
 州は以前に、パリジャとの契約の打ち切りを和解案として提案したことがある。また、パリジャの株式の取得も検討している。KMMSAJはこの和解案を拒否して、両社との契約の打ち切りを主張してきた。
 KMMSAJの弁護士のアリフ・マウラナ氏は次のように語っている。

 「私たちの要求は、PAMジャヤと両社の契約を打ち切って、市の水道事業を特別州に引き渡すことである。特別州はPAMジャヤが代表してもよいが、その前にPAMジャヤの経営陣の刷新が必要である」。


 審理が行われている間、裁判所の外では数十人の市民がKMMSAJを支持して集会を開催。民営化に反対するネット署名には6400人の住民が署名した。

 

 

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