労働情報No.859


たたかいの現場から
859号

有期でも黙示の更新で無期に  大日本印刷関連争議で高裁が判断

 非正規の解雇・雇止めをめぐって冷たい司法判断が横行するなか、東京高裁(三輪和雄裁判長)で胸がすくような判決が言い渡された。
 この裁判は、大日本印刷(DNP、北島義俊社長)の子会社DNPファインエレクトロニクスの工場(埼玉県久喜市)で半導体検査などの作業に従事してきた原告Nさんが、2009年1月末、契約上の雇い主である日本ユニ・デバイス(佐藤洋二郎社長)から解雇されたため、解雇撤回を求めていたもの。
 この解雇について判決は、Nさんが、雇用契約の期間が終わった後もひきつづいて働いていた事実(雇用契約の黙示の更新)に着目し、解雇時点では、Nさんは正社員と同じ「期間の定めのない雇用」になっていたと判断した。これは民法第629条1項(雇用の更新の推定等)にもとづくが、有期契約の紙≠ノ署名押印を取られた労働者に対する判決としては画期的だ。
 三輪裁判長はまた、整理解雇4要件にもとづき、「整理解雇は、労働者に責任のない事由により失職させるものであるから、使用者は……できる限りの解雇回避努力をすべき」と判示。新しい受注先が見つかったこと、短時間の面接での人選の実態などを具体的に認定し、ユニ社の控訴を棄却。一審のさいたま地裁と同様、Nさんのユニ社従業員としての地位を確認した。
 ところでNさんたちの就労形態は偽装請負であり、埼玉労働局がDNPファイン社らに是正を指導した経緯がある。この裁判とともに、Nさんの同僚だった橋場恒幸さんの解雇争議も支援する全印総連の大原つくる副委員長は、「ユニ社はもちろん、DNPも判決を真摯に受け止め、印刷業界を代表する企業としての社会的責任として早期解決を図るべきだ」と話している。

北健一(ジャーナリスト)

多民族・多文化共生社会へ  マーチ・イン・マーチ

 外国人労働者の春闘として、生活と権利のための外国人労働者一日行動をはじめて行った1993年から見れば、日本は確実に多民族・多文化社会に進み、世界90ヵ国の移住者が暮らすようになった。移住労働者の権利獲得は、運動を積み重ねてきたことによる小さな成果はあるものの、街の風景のようには劇的に変わらない。むしろ、外国人労働者が訴えてきた不安定雇用や法違反、労働安全の課題は、日本人労働者との共通課題となっている。だからマーチ・イン・マーチは、毎年、移住労働者が日本人労働者との連帯も訴えて、けんり春闘実行委員会とマーチ・イン・マーチ実行委員会が共催し、労働組合、市民団体の賛同を得て集会とデモを行う。
 今年は3月3日(日)、日比谷公園小音楽堂に実数200名余の労働者が集まった。コンサート集会を開催し、数寄屋橋を通って東京駅までデモ行進した。集会は、フィリピン人研修生の歌やエチオピア人労働者の民族舞踊などのパフォーマンスを交え、多民族・多文化共生社会を表現しながら彼らの抱えている問題を訴えるものだった。その模様は、インターネット中継で全国に発信した。
 マーチ・イン・マーチは労働組合の集会よりも民族の祭典のようで、それぞれの過酷な状況にもかかわらずステージではみんな生き生きとしている。ノリのよいエチオピアの曲調が日本の歌謡曲に似ているという新しい発見もある。実行委員に女性が多いのも特徴だ。
 ところで最近、外国人労働者の大量採用を発表する日本企業が増えているが、これらの企業の言う「グローバル化」は、「英語(しかも米語)公用語」を言うまでもなく画一的である。それが「多民族の多文化が生きる職場」とは正反対であることをマーチ・イン・マーチは示唆している。
 職場はすでに多国籍となっているのに、日本人労働者の関心と連帯がまだまだ足りないのも実情だ。

中島由美子(全国一般東京南部)

【速報】 本土でも始まったオスプレイ飛行訓練

 本土での訓練予定日前日、九州のイエロールートから四国のオレンジルートに急きょ変更された。
 3月6日午前8時前、米軍岩国基地に到着。9月の試験飛行の時には今津川河畔の道路は、マスコミ以外通行禁止になっていたが、警官は奥のパブリックアクセス道路前の広場で車をUターンさせていただけで、何とか車を道路際に置けた。すでにほとんどのマスコミは来ていた。
 当番を決めて行っているオスプレイ飛行の監視活動、この日の担当団体は「住民投票の成果を活かす会」。1時過ぎにオスプレイ3機が普天間を飛び立ったという情報が入った。2時半ごろ岩国着になるとカメラの準備をするも、何もおこらない。マスコミの人たちも訳が分からないようで、3時ぐらいになって、四国に先に行ったのかも知れないという声も出始めた。
 3時50分前に、顔見知りの地元記者がすぐ近くまでオスプレイ3機が来ていると言う。3時54分、東の空に3機の姿が見えた。ピースリンクや岩国の人たちは怒りのシュプレヒコールをあげた。全体状況が判らなかったが、夕方5時前のテレビ報道で四国に先に行ったと判った。あとは夜間飛行につきあうかどうか。明日も明後日も張り付く。

戸村良人(ヒロシマの今から過去を見て回る会)

日日刻刻  非正規の割合35・2%に(2・8〜25)

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