アジア@世界
喜多幡 佳秀 &稲垣 豊 訳(APWSL日本)
916号

★ギリシャ:EUとメルケル独首相に非難殺到

 ギリシャの債務問題をめぐって、7月12〜13日にユーロ圏19ヵ国の首脳による会合(欧州サミット)が行われ、17時間に及ぶ交渉の末に、新たな「ギリシャ支援」計画が合意された。

 

 ギリシャ政府は、7月5日の国民投票で表明された政府への信任を背景に、債務の減額と返済条件の緩和を求めたが、ドイツ政府の強硬な姿勢によって阻止された。
 ドイツのショイブレ財務相やフィンランドのユハ・シビラ首相はギリシャにEU離脱を迫った。

 欧州サミットの合意の主要な点は次の通りである。


1.ギリシャの国有資産から500億ユーロを、ギリシャの銀行への資金注入のための基金に移転する。この基金はアテネに置かれる。ドイツ政府はこの基金をルクセンブルグに置くことに固執したが、ギリシャ政府は資産の国外への持ち出しに抵抗した。
2.ギリシャの銀行の倒産の回避と7〜8月の債務返済のための短期融資に関する交渉を開始する。
3.債務の再編に関する協議を開始する。ドイツ政府は返済期間の見直しには応じるが、元本の削減には応じないと明言している。
4.合意内容をギリシャ国会で承認した後に、ドイツ国会で採決する。ギリシャ国会は合意の実施のための法律を制定する(英国「ガーディアン」紙7月13日付)。

 

 ギリシャのチプラス首相は、富裕層に公正な負担を迫るラディカルな改革の実施を約束した。

 同首相は「この合意はギリシャが再び自律的な道を進むことを可能にする。…改革の実施は厳しい。しかし、われわれはここまで国外で激しく闘ってきた。これからは国内で既得権者たちと闘わなければならない」と述べた(同)。

 

 バルファキス前財務相の発言

 

 7月6日に突然辞任したバルファキス前財務相は、欧州サミットにおける合意について、自身のプログで次のように述べている(7月14日付)。

 

 「欧州サミットの宣言についての私の第一印象は、以下の通りだ。
 新しいベルサイユ条約がヨーロッパを排徊している。EUがヨーロッパ統合のプロジェクトをこれほどまでに根本的に損なうような決定を行ったことはかつてなかった…。
 昨日朝の欧州サミットの宣言はギリシャの降伏宣言を迫る文書のように読める。それはギリシャがユーロ・グループの家臣になることを確認する文書であることを意図している。それは経済とは何の関係もないものであり、ギリシャを現在の苦境から救出するための改革案とも無関係である。それは単に屈辱を与える政治の表現である。ユーロ・グループの要求のリストは良識と合理性からの決定的な離脱を表している…。

 

 メディアはこの降伏条件がギリシャ国会で承認されるかどうか、特に私のような国会議員が関連法案に賛成するかどうかに多大なエネルギーを費やしている。
 私はこれが最も重要な問題だとは考えない。決定的な問題は、このような条件の下でギリシャ経済は回復のチャンスがあるのかどうかである。もっとも心配なことは、われわれが完全に屈服した場合でさえ、それが終わりのない危機の一層の深化に導くということである。

 

 今回の欧州サミットはクーデターの頂点にほかならない。67年には外国勢力が戦車を使ってギリシャの民主主義を葬った。2015年には、外国勢力は戦車ではなくギリシャの銀行を使ってクーデターを企んだ。
 おそらく経済の面での主要な違いは、67年にはギリシャの公共資産はターゲットとされなかったが、今回はクーデターの背後にいる勢力は残っているすべての公共資産を引き渡すことを要求しているということである。われわれの返済不能で持続不可能な債務を返済するためにである」

 

 「これはクーデターだ」

 

 英国「ガーディアン」紙は7月13日付の社説で、欧州サミットの合意が「何も解決せず、多くの危険がある」と厳しく批判し、ドイツ、ギリシャを中心にヨーロッパ各国で高まっているメルケル独首相やショイブレ財務相に対する非難の声を紹介している。

 ユーロ・グループのリーダーたちがギリシャ金融支援の交換条件として提示した厳しい要求のリストは、ドイツ、特に強硬派のショイブレ財務相に対するソーシャル・メディアからの激しい非難を呼び起こしている。


 ツイッターでは『これはクーデターだ』というハッシュタグを付けた投稿が世界中で広がり、トレンドの第2位になっている。首相がギリシャのEU離脱に言及したことで物議を醸したフィンランドでも、このハッシュタグが注目されている。

 このハッシュタグに続けて、ドイツが主導するEUのギリシャ政府に対する要求を非難する怒りに満ちたコメントが書き込まれている。


 ノーベル賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマンが『ニューヨークタイムズ』紙の彼のプログでこの動きを紹介し、「これはクーデターだ、という流行のハッシュタグは全く正しい」と称賛したことで、この動きが一挙に注目されるようになった。クルーグマンは次のように述べている。

 「これ(EUの要求)は厳しい要求というレベルを超えて、純然たる復讐心に至っており、国家の主権の完全な破壊であり、救済のいかなる希望もない。これはギリシャにとって受け入れられない提案であることを意図していたのかもしれないが、そうであっても、EUという構想が実現しようとしていたすべてのことを裏切るグロテスクな提案である。」

 

 スペインのポデモスのパブロ・イグレシアス書記長もこのツイッターでの動きに加わり、ギリシャの人々への連帯を表明している。

 

 

★中 国:ユニクロ工場閉鎖に署名呼びかけ

 以下は、香港のNGO団体等による7月13日付けの呼びかけである。(一部省略。翻訳はAPWSL日本の稲垣豊さん)――

 

 ユニクロは最も急速にグローバルな展開を遂げているファッション・ブランドの一つです。わずか数年の問に中国の大都市や中堅都市で400近くもの店舗を展開したスピードは驚愕すべきものです。
 しかし残念なことに、ユニクロはアジア最大の知名度を持つファッション・チェーン・ブランドとして豊富な資源と人材を持っているにもかかわらず、企業の社会的責任に真摯に向き合おうとしていません。

 

 貴社のパートナー(委託生産)企業である利華成衣(集団)有限公司(リーバー社)は労働者の解雇補償金、未払いの社会保険料の追納を引き伸ばしながら生産設備を勝手に搬出し、それに抗議してストライキに入った労働者が弾圧を受けています。
 今年6月初め、リーバー社の工場の一つである深セン観欄鎮慶盛服務皮具廠(アルティガス社)では、工場を閉鎖すること及びその後の適切な配置転換計画について、労働者になんら正式の通知もないまま、勝手に生産設備を運び出し、6月9日には900余名の労働者のストライキを誘発しました。
 労働者は職場を守るために工場で寝泊りするなどして、すでに1ヵ月にわたってストライキが続いています。

 また、多くの労働者が働き始めて十年以上が経過していますが、慶盛廠では老齢年金保険にも加入していませんでした。……

 経営側は、労働者の切迫した訴えを無視するだけでなく、労働者と交渉は行ったなどという声明を発表し、世論を欺いています。
 しかし経営側のいう「交渉」とは労働者との個別の面談のことであり、これは労働者が求める対等な団体交渉とは全く違うものです。
 このようなひどい対応に対して、108名の労働者が6月29日には広東省陳情庁への陳情に赴くことになりました。酷暑の広州で露頭での野宿を続けながら陳情に回りましたが、ついには警察によって深センに追い返されてしまいました。


 ストライキに参加していた労働者の一人、呉偉花さんが6月に警察に拘留されてからーヵ月になり、最近になって警察は「公務執行妨害」の容疑で正式に逮捕手続きを行いました。
 慶盛廠を経営するリーバー社は問題を放置するだけでなく、7月8日には、職場を守るために工場に立てこもっていた労働者らに対して工場からすぐに立ち退かなければ、水と電気をストップして入り口を封鎖することを通知してきました。

 

 リーバー社はユニクロ商品の委託生産工場です。ストライキが発生してから、ユニクロは6月17日付の声明で、このストライキに注目し、「今後もすべての取引先工場について、人権の尊重と適切な労働環境の維持に向けた働きかけを行ってまいります」と述べています。
 しかし、今年1月にSACOM、レイバー・アクション・チャイナ、日本のヒューマン・ライツ・ナウの共同レポート「中国内ユニクロ下請け工場におる労働環境調査報告書」では、ユニクロの品質が良く値段も安いという仕組みは、労働者のさまざまな権利の犠牲のうえに成り立っていることが明らかになっています。

 

 私たちはリーバー社の最大の取引先であるユニクロおよび親会社であるファースト・リテーリングに対して、以下のことを求めます。


1.早急に経営側と労働者代表の対等な団体交渉が行われるよう促してください。
2.法的に保障されている解雇補償金および未払いの社会保険料などの支払いをすぐに確約させてください。
3.逮捕されている呉偉華さんの無罪釈放に協力してください。

 

 

 

アジア@世界 バックナンバー
協同センター・労働情報 〒112-0005 東京都文京区水道2-11-7三浦ビル2階 Tel:03-6912-0544 Fax:03-6912-0744