たたかいの現場から

922号

◎海外の日系自動車工場でスト頻発 現地の文化尊重しない経営が背景

 トヨタ自動車の組合つぶしと闘って14年目になる全造船関東地協フィリピントヨタ労組が、237名の組合員の不当解雇撤回と団体交渉を求めて愛知と東京両本社に要請した。10月末には東京本社が団交申し入れに対して回答予定。


 「現地の問題は現地で解決を」として本社の責任回避を続けてきた。しかし現地法人の経営上層部は日本人。
 現地法人でも愛知本社でも、「人を人として扱わない態度」だと9月下旬に来日したエド・クベロ委員長は怒りを込めて話す。
 愛知本社では担当課の社員が応対はするが、フィリピントヨタ労組の二人の話には相槌も打たないどころか、要請書に触れようともしないという。

 「一人の人間としてこの対応は普通では考えられない。本来、話し合いで解決できるはず。私たちはまだ望みは捨てていない。これからも労働者の命と生活のために、フィリピンや世界中でトヨタに対する運動を展開していく」とクベロ委員長は言う。


 フィリピントヨタ労組は、「トヨタよ、恥を知れ!」と銘打ったキャンペーンを続行中。フィリピンでは毎月抗議行動を展開している。ここでは、「労働者の人権を尊重している」と主張するトヨタをさらし、その主張通りに人権を優先した話し合いで解決するよう呼びかける。


 フィリピントヨタ社は、御用組合以外の組合が結成されてからこの間、237名のフィリピントヨタ労組員を解雇した。ILOから2年にわたって勧告を受けているにもかかわらず、多国籍大企業の猛威をふるい、フィリピン政府や地元警察をも味方につけてきた。交渉によって早期の争議解決に努めよとの比労働雇用省からの再三の要求をも無視し続けるトヨタに対し、比政府は公用車にトヨタ車を使用しないなどして圧力をかけている。


 海外で子会社や部品工場を展開する日系企業において、労働者が権利向上や労働条件改善のために経営から独立した組合を設立したことで、会社からの報復行為を受ける例はフィリピンだけではない。
 2010年、中国では広東省にあるホンダの部品工場・南海本田から山猫ストが飛び火した。これを機に組合リーダーが次々と民主的に選出されたが、会社からの報復行為は止まらない。
 2011年には、インドのスズキ工場で経営から独立した労組を求めて労働者が13日間ストを継続して生産ラインを止めた。
 今年の春には、インドネシアでも3千人以上の労働者が組合を結成したところ、勤続10年以上の組合幹部5人が停職処分にあった。
 中国の元労働組合幹部は、自国の企業文化を持ち込み現地労働者にそれを受け入れさせようとする日本企業と、現地の文化を尊重した上で労使関係を築こうと努力する欧州資本との違いが、日系企業でストが多発する理由のひとつではないか、と話す。

松元 千枝(team rodo-joho)

 

◎危険な原発川内2号機が再稼働 「必ず止める」ハンストで決意

 10月15日、午前10時30分に九州電力川内原発2号機の再稼働が実施された。
 この2号機は1号機と同じ出力89万キロワットの、運転から30年を超える老朽原発であり、しかも加圧水型のアキレス腱ともいえる蒸気発生器の細管445本に施栓して使用するという、危険極まりないものである。


 ストップ再稼働!3.11鹿児島集会実行委員会の呼びかけで集まった参加者たちは、同時刻に抗議の意思を1分間の沈黙行動で表し、緊迫したなかにも余裕の感じられる空気が漂っていた。
 今回の2号機再稼働に対しては、11日から15日までの再稼働不同意住民の会の呼びかけによるゲート前でのハンストと、鹿児島中央駅前広場で開催された「川内原発2号機再稼働を許さない!10.12全国集会」を、前段行動として取り組んだ。
 参加者からは、「原発を誘致した薩摩川内市は人口減少幅が大きい」「原発の周囲では環境破壊が進み、癌患者も目立つ」「交付金でハコモノを作るより避難グッズを各戸配布すべき」「来春からの電力自由化では九電の不買運動を」等など、原発非難の声は大きくなるばかりだ。


 政府や原子力ムラの焦りや不誠実な対応が、原発に反対する人々の自信につながっている。それは支援行動に参加した大学生の、「近いうちに必ず僕らが川内原発を逆包囲して原発を止めてみせる」との決意にも見て取ることができる。

 

溝口 松男(本誌運営委員・集会実行委)

 

 

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