たたかいの現場から

925号

◎マイナンバー誤配での謝罪会見 ユニオン追及で「本人同席」阻止

 郵政ユニオンは10月22日付けの組合通達で「マイナンバーカードの配達は前例のない書留郵便の扱いに連日の超勤発令、週休の廃休、非番の買上げ、それに伴う連続出勤など、前例のない労働条件の悪化が予想されます」と指摘したが、それがまさに現実のものになった。

 全世帯への書留配達というとんでもない作業は、宛名印字の小ささも拍車をかけて集配労働者にすさまじいプレッシャーをもたらし、さらに印刷の遅れによる配達開始時期の大幅な遅れが年末期の業務と重なり、作業を一段と困難なものにしていった。


 そうした中で「誤配」問題が発生し、マスコミの非難が集中する事態となった。

 11月4日に日本郵便は社長名で「緊急事態宣言」を発表したが、その中身は「基本動作の徹底、呼称確認、正規取扱」と「誤配」の原因を社員個人の不注意、ミスとして押しつけるものだった。
 11月5日、都内のいくつかの局で「今後、誤配等が発生した場合は、本人を(記者会見に)同席させる」旨の周知が行われた。夜の本社交渉で組合は「記者会見への本人同席」が実際に起これば、組合として厳しく対応することを強く申し入れた。今から考えると、この日の交渉での強い「申入れ」がその後の事態のキーポイントになった。

 さらに組合は「本人同席」問題が、さいたま新都心局の過労自死(裁判で係争中)のひとつの原因となった「お立ち台」と同様に、社員を精神的に追い込み、個人責任に転嫁させるものであるとして9日、「緊急申入書」を提出した。その後、「本人同席」だけではなく、記者会見そのものも基本的に行わないことになった。


 郵政最大労組であるJP労組が個人責任を「容認」する中で、少数派であるユニオンのマイナンバーに関する方針は一点、「現場の労働者を守り抜くこと」。「誤配」で退職に追い込まれた期間雇用社員や、退職を考えた正社員もいる。ユニオンの体を張ったたたかいがまだまだ続く。

 

中村 知明(郵政ユニオン本部書記長)

 

◎早大非常勤講師争議が解決 「数の力」で無期転換へ道筋

 首都圏大学非常勤講師組合(東京公務公共一般労働組合加盟)と同組合分会の早稲田ユニオンは、11月18日に東京都労働委員会で和解協定を結んだ。
 この争議は2013年3月に、早稲田大学が新年度より全非常勤講師を5年の更新上限で雇い止めにし、かつ担当授業数を4コマに制限するという就業規則を一方的に作成したことから始まる。当組合の警告を無視して暴走する大学側に、労基法90条違反として刑事告発を行い、この闘いは全国の大学関係者の見守るところとなった。


 組合員数は1年で一気に1.5倍の450名に成長した。彼らの支援をバックに、組合はおよそ20数回に及ぶ団体交渉を続け、ついに今年11月、早大理事会は、14年3月までに雇用されていた全ての非常勤講師たちの5年上限を撤回し、2018年4月以降の無期転換権を認めた。
 これにより、早大で働く約3千人の非常勤講師たちが、5年以上勤務して無期雇用に転換する展望が開けた。特に劣悪な立場に置かれていた日本語非常勤インストラクターについては、すでに実施済みの5年雇止めを完全に撤回して70歳定年までの雇用を保証し、希望者は優先再雇用への対応も整備された。


 最大の勝因は、加入した組合員の数の力だった。全国各地で労契法の5年ルールをめぐる闘いがあるが、私たちの成果を生かし、ぜひ組合員を精力的に獲得しながら、頑張っていただきたい。

 

松村 比奈子(首都圏大学非常勤講師組合)

 

◎「近くて便利」の裏に搾取の連鎖  セブンーイレブンにブラック企業大賞

 過重労働やパワハラなど、労働者を不当に扱う企業に対し括弧(かっこ)付きの「表彰」をする「ブラック企業大賞」の授賞式が、11月29日、東京千代田区の会場で開催された。


 筆者も参加する主催団体「ブラック企業大賞実行委員会」は、10月27日に「セブンーイレブン・ジャパン」、「暁産業」(防災機器販売会社)、「ABCマート」(靴小売チェーン)、「フジオフードシステム」(飲食チェーン)、「明光ネットワークジャパン」(個別指導学習塾)、「引越社関東」(アリさんマークの引越社)の6社を今年のノミネート企業として発表。約1カ月間のウェブ投票と実行委員会の合議を経て、この日、各賞が発表された。


 ウェブ投票で終始独走し、1万1893票を獲得した引越社は、「ウェブ投票賞」と「アリ得ないで賞」の2冠を獲得。同社は引越荷物の破損などの損害を従業員に負わせ給与から天引きしていたほか、労働組合加入をきっかけとした不当な配置転換や懲戒解雇を行っていた。さらに人種差別的、部落差別的な採用基準を適用していた疑いも持たれており、一連の悪事の衝撃度では群を抜いていると評価された。
 2010年に当時19歳の男性社員をパワハラの末、自殺に追いやった暁産業には「特別賞」が、明光義塾には、学生アルバイトを酷使する代表的企業であるとして「ブラックバイト賞」が贈られた。


 最大の不名誉である「大賞」に選ばれたのは、コンビニチェーン最大手のセブンーイレブン。同社は、本部に一方的に有利なフランチャイズ契約を盾に加盟店主たちを永きにわたって事実上の労働者として搾取。それが、加盟店が従業員を搾取する負の連鎖構造を生み出しており、この根深さと影響の大きさは大賞にふさわしいと評価された。

 

古川 琢也(team rodojoho)

 

◎日日刻刻  勤労者世帯の実収入減 (11.12〜20)

 

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