アジア@世界
喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
925号

★カナダ
  ケベック州の公共部門で波状スト

 ケベック州の公共部門労働者40万人が年金カットや賃上げ抑制などに反対して10月以降波状ストを続けている。労働組合は、交渉が進展しない場合12月9日に一斉ストライキに入ると宣言している。

 同州では12年に大学の授業料引き上げに反対する学生の闘い(「メイプルの春」)の中で自由党政権が選挙で敗北し、ケベック党が政権に就いた。しかし14年4月に行われた選挙で自由党が勝利して政権に復帰した。それ以降、フィリップ・クイヤール首相の下で、医療・教育予算の削減や住民サービスの切り捨てが進められてきた。
 以下は米国「レイバーノーツ」誌電子版に11月23日付で掲載されたレポートの要約である。

 

 ケベック州の公共部門労働組合の連合であり、ストライキを組織しているコモン・フロントは、教員、医療労働者、公務員を結集している。本誌はストライキ中の2人の教育労働者、ブノワ・ルノーさん(ガティノー市、成人教育)とフィリップ・ド・グロボアさん(ラヴァル市の大学進学前プログラム)にインタビューした。

 

 ―教員が今回の波状ストの先陣を切り、圧倒的多数がスト権に賛成しました。どんな問題に直面しているのですか?
ルノー:政府が(14年)12月に示した提案はあらゆる面での労働条件の引き下げを求めるものでした。労働時間の延長、定年の延長、クラスの定員の増加などです。すべての労働者が憤慨する内容でした。数十年にわたって交渉を通じて勝ち取ってきた小さな成果を取り上げようとしているかのようでした。だから反撃するしかなかったのです。

 ―教員だけでなく、ヒューマンチェーンには親たちも参加していましたね?
ド・グロボア:それは「私の公立学校を守ろう」という運動です。親と子と地域の住民たちが朝の7時半から8時まで、近くの学校に集まるのです。学校を取り囲むようにして輪を作り、手をつなぎます。それは学校は地域で大事にしなければならないことを表現する象徴的なジェスチャーで、約300の学校で行われています。これは教員たちが自分の労働条件だけのために闘っているとか、子どもたちの授業を奪っているという非難をはね返しています。

 

 ―政府はどのような方法で交渉にあたってきましたか?
ルノー:現実には、政府は財政上の目標について、交渉の余地は一切ないという態度です。彼らはゼロサム・ゲームを強制しようとしているのです。
ド・グロボア:それこそが、人々が運動に参加している理由です。政府は公共サービスと社会的権利の領域においてケベック州を際立たせてきたすべてのものを攻撃しようとしています。
 コモン・フロントは、これがゼロサム・ゲームであるという考え方と対抗してきました。10月中旬には企業に節税についての助言を提供している国際的なコンサルテーション会社、KPMGを封鎖し、一時的に占拠しました。
 コモン・フロントはこのような企業の助けによって企業の儲けがタックスヘイブンに流れているのであり、公共サービスのための財源がないというのは嘘だと主張しました。次の週には大手の証券会社、HSBCを封鎖しました。

 

 ―12月にゼネストが計画されています。これは他の州ではあまりないことです。政府がゼネスト阻止に動く可能性はありますか?
ド・グロボア:政府が今後5カ年にわたる労働条件を一方的に決定し、職場での抵抗を禁止する(高額の罰金を課す)特別法を制定する可能性があります。もしそのような特別法を制定するとすれば、組織化や動員が難しいクリスマス前後の時期を狙うかもしれません。

 ―独自でストライキ基金を集めようという動きがあると聞いています。これは特別法が制定されてもストライキを続けるということでしょうか。
ド・グロボア:予想は難しいですが、そのためには現時点で考えられているよりももっと大規模な準備が必要だと感じています。
 05年の時は特別法が制定された後は記者会見と裁判所への提訴以外何も行われませんでした。12年の学生のストライキは大きな勇気づけになりましたが、法律に反してストを組織するには、まだまだやらなければならないことがあります。

 


 

★ギリシャ
  シリザ政権下で初めてのスト

 11月12日、公共部門および民間部門の最大労組であるADEDYとGSEEが増税と「年金改革」に反対する24時間ストライキに入った。シリザ政権下で初めてのストライキである。


 シリザの労働政策部会は労働者に、「新自由主義とギリシャ内外の金融・政治センターからの脅迫に反対して」ストライキへの参加を呼びかけた。
 すべての公共サービスは停止し、公立病院は最低限のスタッフだけが業務に就いた。大部分の交通に影響がおよび、航空機はキャンセルされた。
 アテネのデモには3万人(警察発表では2万人)が参加した。一部では火炎瓶が投げられた。テッサロキニでも8千人がデモに参加した。
 GSEEは12月3日にもストライキを計画している。


 EU委員会・欧州中央銀行・IMF・欧州安定基金はギリシャへの新たな融資の実施にあたって、ギリシャ政府が約束した改革の実施状況について検討し、圧力を強化している。
11月に実施される予定の融資をめぐって、最大の焦点はローン返済不能による住宅立ち退き強制を可能にする措置である。シリザ政権はこれまで多くの不人気な改革を実施してきたが、問題解決のための政策の結果として何千人もの人々が住宅を失うことがあってはならないという観点から、この措置の導入を拒否している。

 また、不良債権の取り扱い(経営危機の銀行の立て直しのために重要な要素)をめぐってもギリシャ政府とトロイカの対立は続いている。

 一方、IMFのスポークパーソンは同日、ワシントンで、ギリシャに対する債権国は、同国に今年1月以降50万人の難民が来ていることによる負担を考慮すべきだと語った。

 

(「ロイター」11月9日付、「AP」同11日付などより)

 

 

 

 

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