たたかいの現場から

929号

◎TPP批准阻止で手をつなぐ 東京・山形・大阪で国際シンポ

 TPP交渉は昨年10月5日に大筋合意が発表され、2月4日に12カ国政府による署名式がニュージーランド(NZ)で行われる。

 これを前に、TPP阻止の国際的なつながりを深めようと、「TPPに反対する人々の運動」は、NZ、マレーシア、韓国から活動家を招いて、1月30日に東京・田町交通ビルで、「つながれアジア! 葬れTPP! 国際シンポジウム」を開催し、約100人が参加した。


 マレーシアのジャーナリストで、第3世界ネットワークで政策・提言活動をするファウワズ・アブドゥル・アズィズさんは投資分野で「外国人投資家が過度に保護されている」ことや、マレーシアでの政府調達や国有企業に及ぼす影響を指摘。52の市民団体による反対運動の動きを報告した。


 韓国からは、ノ・ムヒョン元大統領の首席秘書官を務め、韓米FTAに反対して辞任後、韓米FTA反対運動を進めてきたチョン・テインさんが、TPPと韓米FTAの問題点を指摘。投資企業が国を訴えるISDS条項について、「ほとんど国家が負けている。北米自由貿易協定(NAFTA)でカナダやメキシコが莫大な支払いを余儀なくされ、韓国でも提訴が始まった」とし、「TPP批准の前にISDSの削除やサービス、保健医療分野の見直しを要求すべき」と呼びかけた。


 ニュージーランドの先住民族マオリの芸術家モアナ・マニアポトさんは、先住民の権利がTPPによって侵害されることを重視し、法廷闘争を報告。TPP交渉が秘密理に進められたことが法律違反との判決があったとし、「NZの国民の多くはTPPに反対している。署名式のある2月4日は大きな反対運動が行われる」と強調した。


 最後に「各国で批准阻止のたたかいに全力を上げるとともに、国境を越えてTPP成立阻止の包囲網をつくりだそう」とのアピールを採択した。
 国際シンポは1月31日に山形市、2月1日に大阪市でも開催された。

 

市村 忠文(TPPに反対する人々の運動)

 

◎来訪した天皇に争議解決「直訴」 比トヨタ労組、大統領府前で

 天皇・皇后が歓迎式典のためマラカニアン宮殿を訪問した1月27日、現地フィリピンでは、フィリピントヨタ労組TMPCWAが、首都マニラの大衆的交通手段であるジープニーを連ねて宮殿前の大通りに進出し、15年に及ぶ争議の最終的解決を求めるアピールと抗議の行動を展開した。


 生活のため各地に散っている組合員・家族を大動員して、補償を求める慰安婦の運動とも連携しながら、大きな封筒による天皇への直訴状≠ニ折り紙を掲げて、組合つぶしを強行して世界一にのし上がった多国籍企業トヨタによる大量解雇の解決なくして日比親善はありえないと、天皇と日比両国政府に平和的に協力を訴え、抗議を表明。
 フィリピントヨタ社の共同オーナーであるジョージ・ティー(GT)が支配するGTタワーとメトロバンク本店、日本大使館へのデモも展開された。


 TMPCWAは、解雇は団結権・団交権の侵害であるから適正な解決をせよとのILO勧告を2012年、13年につづき15年11月にも得ている。そして、これを無視しつづけるフィリピントヨタ社、日本のトヨタ本社、日比両国政府に対し解決を迫っている。

 

Oidon(フィリピントヨタ労組を支援する会)

 

非正規にも「雇用継続の期待権」 横浜地裁が郵政雇い止めを断罪

 1月19日13時10分、横浜地裁502号法廷。多くの傍聴者が見守る中、裁判官は、「主文、原告が被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する」と読み上げ、解雇無効が言い渡された。


 判決理由では、雇用継続については「期待する合理的理由がある」。雇い止めについては「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない」と断罪している。

 さらに、青葉郵便局(神奈川県横浜市)の上局である南関東支社の雇い止め回避が不十分であったことにも言及し、原告が裁判で主張してきたことが取れ入れられた、全面勝利の判決だ。


 2013年9月、青葉郵便局は、DOSS導入を口実に、組立期間雇用社員の組立作業の廃止を決め、組立期間雇用社員の雇用枠を十分に確保することもなく、10年以上も働いてきた清水組合員はじめ、22名の組立期間雇用社員の雇い止めを強行したことから始まった。
 組合(全国一般神奈川)は、雇止め回避のための団交を行ったが、青葉郵便局は「回答を控えさせていただく」を連発。不誠実な団交姿勢に終始した。これに対し組合は、地位確認(雇い止め無効)裁判を行うとともに、会社の団交姿勢は不誠実であり不当労働行為であるとして、神奈川県労委に救済申し立てを行っている。


 組合は勝利判決を受け、翌20日、原告とともに朝ビラ配布と団体交渉開催の申し入れを、青葉郵便局と南関東支社に行った。しかし会社は、地裁判決を真摯に受け止めることもなく22日に控訴、団体交渉にも応じない旨を書面で通告してきた。
 組合は、会社の控訴に対して強く抗議するとともに、高裁での闘いの準備を始めた。清水組合員が職場復帰するまで力強く闘う。今後ともご支援よろしくお願いします。

 

佐藤 修作(郵政産業労働者ユニオン)

 

職場内外の仲間が大きな力に ブルームバーグ争議が勝利解決

 米国通信社ブルームバーグ(BB)の記者が「能力不足」のレッテル貼りによる解雇撤回を求めてきた争議は、昨年11月、記者の勝利的和解が成立。2月2日、東京都内で解決報告会が開かれた。

 会社側が解雇を撤回し、退職条件について和解が成立した。記者の職場復帰は果たせなかったが、日本の雇用制度と労働法制に対する「挑戦」ともいえる大手外国通信社の目論見が大失敗に終わったことは大きな意味を持つ。


 5年余に及んだ闘争で際立つのは、記者が計3回の解雇無効判決をかちとったことだ。正確に言えば、かちとらざるを得なかったといえるだろう。それほどBBの一方的解雇への固執は異様だった。
 最初の不当解雇(2010年8月)は東京高裁が解雇無効とした判決が13年4月に確定する。だが、この直後の同年7月、会社は記者に対し「雇用関係不存在の確認」を求める訴訟を起こした。「『倉庫業務でなら復職させてやる』という会社の指示に従わなかったから予備的に解雇した」というのがその理由。記者は被告になってしまった。 
 そもそも、すでに解雇したはずの記者を「予備的に」でも解雇できるのか。誰もがそんな疑問を抱いたが、裁判所も前代未聞の主張を受け入れるわけがなく、東京地裁は15年5月、会社の訴えを棄却。最終的に控訴審で勝利的和解となった。


 この争議では記者が加入した新聞労連の新聞通信合同ユニオンが大きな役割を果たした。同ユニオンが結節点となり、BB争議はJALやIBM争議などに連帯を広げた。
 新聞業界ではいま、印刷部門に始まった別会社化が編集にも及び、職場のノンユニオン化が激しい。加盟単組のほとんどが組合員の労働条件の維持にのみ汲々となり、労働組合のない職場(別会社)を作られても組織化の動きは少ない。だが、職場に労働組合を作ることがどれほど重要か。勝利解決したBB争議から学ぶことは多い。

 

(編集部)

 

◎高浜原発3号機が再稼働 氷雨をついて現地で抗議

 川内原発1・2号機に続き、関西電力・高浜原発3号機が1月29日に再稼働した。

 この原発は昨年2月審査に合格したが、4月に福井地裁より差し止めの仮処分決定が出された。だが、昨年12月22日に福井県知事が同意、24日には安全神話復活のごとき理由で、仮処分決定が取り消された。

 こうした拙速稼動の背景には関電の電力自由化対策に加え、プルトニウムの核兵器転用疑惑隠しのため、MOX燃料を使用する高浜を先行させた政府の焦りも感じられる。

 また、30キロ圏にある京都府や、びわ湖汚染の影響を懸念する滋賀県とは同意権をめぐるしこりが残り、核廃棄物貯蔵問題やずさんな避難計画に住民の不安は高まっている。


 この関電や政府、司法が一体となった再稼働に対し、1月24日には高浜町で「若狭の原発を考える会」が主催するデモと全国集会が開催され、27日には大阪の関電本社前で「原子力発電に反対する福井県民会議」の呼びかけによる抗議集会が開かれた。
 再稼働当日は、高浜原発ゲート前で氷雨に打たれながら過剰警備ともいえる警察官による交通規制のもと、早朝から夕刻まで再稼働反対の抗議行動が続けられた。
 東京でも、内幸町の関電東京支社前に市民が集まって再稼働に怒りの声をぶつけた。

 

溝口 松男(本誌運営委員)

 

◎日日刻刻  給与は前年同月同水準 (1.5 〜22)

 

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