たたかいの現場から

930号

◎「首切りブログ」の社労士業務停止 過労死家族らの声 厚労省動かす

 愛知県内の社会保険労務士がブログで「社員をうつ病に罹患(りかん)させる方法」などとした文章を公開した問題で、厚生労働省は「継続的に不適切な内容をブログに掲載し発信した」として2月12日、この社労士を社労士業務停止3カ月の懲戒処分にした。
 厚労省による社労士の処分は、補助金の不正受給への関与や不正な雇用保険料支払いへの関与など法違反に対するものは行われてきたが、法を逸脱する情報の発信で処分が下されるのは初めてとなる。

 

 "ユニオンバスター"を名乗り、労組を敵視する社労士や"経営者の守護神"などと称し脱法行為を指南する社労士、弁護士らが「ブラック士業」と指摘されて久しいが、彼らの乱暴なやり方、もの言いにようやく釘が刺された格好だ。

 問題の文章は、愛知県社労士会に加入する社労士が昨年11月24日に自らのブログ「モンスター社員を解雇せよ すご腕社労士の首切りブログ」で公表した。ブログ名も挑発的だ。
 文章は質問に答える方式で、上司に逆らう社員を「モンスター社員」と規定し、うつ病にして追放する方法を書いた。
 就業規則に違反したら厳しく罰を与え、適切合法なパワハラを行うなど、うつ病に追い込む方法を具体的に教示。「万が一、本人が自殺したとしても、うつの原因と死亡の結果の因果関係を否定する証拠を作っておくことです」など、自殺に追い込んでも責任を逃れられるようアドバイスまでしている。
 この文章は連載「モンスター社員を解雇せよ」の中の1回だ。連載は43回(この文は40回目)で、他にも「うつ病の前歴を見抜くには」「モンスター社員に退職金を支給しない方法」「正しいパワハラの勧め」「効果的な精神的打撃の与え方」など、目を疑うような表題が並ぶ。

 

 厚労省は今回の文章を含め、この中の10回分を問題ありと判断、「継続的に不適切な内容を公表した」ことを重大な非行とし、処分理由にした。
 この社労士は処分決定前に私の取材に「モンスター社員を真人間にするために書いてきたが真意が伝わらず誤解を与えた」と説明。「どんな処分が出ても従う」と話した。
いずれにせよ、労働者の権利を不当に侵害する行為を助長するような文書を書き続けたことは間違いない。

 

 今回、社労士の処分が行われた背景には、全国過労死家族の会や日本労働弁護団などによる、厚労省に処分を求めた要請や、ネットでブログが炎上したことも大きく影響している。これらが、脱法的な行為を堂々と語るブラック士業を許さないとの動きにつながり、処分権限を持つ厚労省も無視できなくなったのだ。
 厚労省幹部は「表現の自由との兼ね合いもあり、処分するか迷った部分もあるが、法に逆行し不当な権利侵害を助長する動きを看過できないと判断した」と語る。
 決断させたのは、私たちの声と力である。

東海林 智(team rodojoho)

 

◎「内外タイムス」再建闘争10周年 労組主導で新聞発行続けた3年間

 首都圏を中心に展開していたスポーツ・レジャー紙「内外タイムス」を労組主導で発行継続させた2006年当時の闘いを振り返る記念集会「内外タイムス闘争10年目に団結と友情を確認する集会」(呼びかけ人代表:豊秀一・元新聞労連委員長)が14日午後、都内の出版労連会議室で行われた。
 有志らの呼びかけに全国から約40名が集結し、「新聞」を発行する意義を再考、団結を新たにした。

 

 集会では元新聞労連委員長で栃木新聞争議(1994〜95年)、岳南朝日新聞争議(94〜2002年)を主導した藤森研氏(専修大学教授)が「なぜ、労働争議を闘うのか」をテーマに講演。新聞争議は「生活」と「権利」を守ることに加えて「言論」を守るという意義があるのだということを示した。
 引き続いて行われたバネル討論はコーディネーターに元新聞労連中執の小平哲章氏を迎え、当時の新聞労連役員から嵯峨仁朗元委員長、佐藤雅之元書記長の両氏、内外タイムス労組執行部(当時)から渡辺高嗣、吉村研一の両氏が登壇した。


 嵯峨氏は「小さいところだから見逃す、手を貸さないというのは労働争議にとって敗北ではないか。寄って集(たか)って何とかしようという思いで立ち向かった。それを以て勝利としたい」と述べ、「我々がめざすのは"勝利"ではなく"敗北"しないこと。内外タイムス労組の勝利を確認するための集まりではなく、二度と敗北しないための誓いの場」であると総括した。

 参加者からは、闘いの軸となった「団結」とは何であるのか、が語られたほか、元内外タイムス労組組合員らから支援を受けた当時の思いと感謝の気持ちが伝えられた。
集会は、高橋一己元新聞労連書記長の閉会挨拶と団結ガンバローの唱和で締めくくられた。

 

 「内外タイムス」は戦後、台湾で発行された日本語紙「中華日報」が源流。政治・芸能・競馬・風俗を扱い読者層を広げ、夕刊紙としての地位を得ていた。
 09年8月に"終刊"し、新媒体に移行したが、同年11月、経営破たんした。

 

大津 昭浩(元新聞労連東京地連役員)

 

◎日日刻刻  厚労省「正社員転換プラン」 (1.22 〜2..8)

 

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