たたかいの現場から

936号

★安倍政権の労働政策にNO! ナショナルセンター超えて連携

 1日8時間などの労働法の労働時間規制から除外する労働者を作る「高度プロフェッショナル制度」(残業代ゼロ制度)導入や裁量労働制の拡大の労基法「改正」など安倍政権が進める労働政策に反対する集会が5月11日、東京・日比谷公園野外音楽堂で開かれた。
 参院選を前に安倍政権が最低賃金の引き上げや同一労働同一賃金の実現など甘口≠フ政策を掲げる中、「耳障りの良い政策は選挙の争点潰しだ」と訴えた。


 日比谷野音のステージには「安倍政権はもうイヤだ」のスローガンが掲げられた。
 集会は、日本労働弁護団を中心に、労働組合や市民グループなどが実行委員会を作り企画。実際に安倍政権は、労働者派遣法を改悪して雇用の流動化を進め、残業代ゼロ制度や解雇の金銭解決など「企業が世界一活動しやすい」規制緩和に突き進む姿を指摘する集会にした。


 集会には連合傘下の労組を始め全労連や全労協、中立などの労組、市民が参加した。ステージでも連合の安永貴夫副事務局長、全労連・井上久事務局長、全労協金沢寿議長、全国港湾松本耕三副委員長らがリレーで安倍政権に対峙する決意を語った。
 ナショナルセンターが組織の枠を越え、一つの集会であいさつするのは非常に珍しい。「同じ天を仰がず」と他のナショナルセンターとの共闘には距離を置く連合だが、労働弁護団がブリッジとなり同じ舞台に立った。
 政党も民進、共産、社民の野党各党が一同に介し、参院選への決意を表明しており、参院選へ向け風景が違ってきたことを印象付けた。


 早大の朝倉むつ子教授は「労働時間規制を緩和すれば長時間労働が増えるのは明白。長時間労働がはびこれば女性は活躍できない」と訴え、現政権の看板政策の矛盾を突いた。保育労働者も労働の現状をアピールした。
 集会には1800人(主催者発表)が参加。集会後は、最低賃金の引き上げを求める運動に取り組む若者グループのエキタスがサウンドデモを率いた。

 

東海林 智(team rodojoho)

 

★人間らしく暮らせる最賃に  院内集会で当事者が切実な訴え

 非正規労働者を数多く組織する個人加盟の労働組合などが17日、東京・永田町の衆院議員会館で、最低賃金の大幅引き上げを求める集会を開いた。
 集会には民進、共産、社民、生活の党など野党4党の議員も参加。それぞれが「格差と貧困が広がる中、最低賃金が中心的な課題だ」と夏の参院選挙で争点化するとの発言が相次いだ。


 集会は、下町ユニオンや首都圏青年ユニオン、全国一般全国協が作った「最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会」が企画した。最賃の引き上げが米国や欧州など世界的に取り組まれていることや貧困と格差の解消にキャンペーンを開始した。これまでにファストフード労働者の時給を1500円に引き上げる世界同時行動に連帯したアピール行動などを行ってきた。


 集会は「最低賃金をいますぐどこでも時給1千円に! 時給1500円をめざす」がスローガン。下町ユニオンの岡本哲文副委員長は「最賃の引き上げで190万人が、最賃プラス40円まで広げると510万人もの仲間が影響を受ける。生活の底上げに直結した問題だ」と引き上げの意義を訴えた。
 会場から、グループホームで介護の仕事をしている木下美智子さん(36)が「日勤と週1回の泊まり勤務をしているが月収は15万円。肉体的にも精神的にもきつい仕事をしているのにお金の不安は尽きない。時給が1500円になれば少しは安心した生活ができる」と切々に語った。
 非正規で郵便配達をしている男性は「職場は全員3、40代で非正規、そして全員独身だ。最賃が上がらないと賃金は上がらない」と大幅引き上げを主張した。
 全国一般東京東部メトロコマース支部の後呂良子委員長は「時給1070円で年収240万前後。生活は苦しい。1カ月にどれだけあれば安心に暮らせるか。最賃はそのことをよく考えて欲しい」と訴えた。
 集会は、安倍首相が選挙用に打ち出す甘い言葉≠打ち砕く現実を突きつけた。

 

(編集部)

 

★「メール」理由の教員免職は無効  高裁判決後も都教委に反省なし

 女子生徒へ送ったメール内容が不適切だ等を理由に、2014年7月14日、東京都教育委員会(都教委)が都立高校教員を懲戒免職した件で、東京高裁(綿引万里子裁判長)は免職処分を無効とした一審判決を支持し東京都(都教委)の控訴を棄却。都が上告しなかったため、懲戒処分を取り消す教員勝訴の判決が確定した。


 原告の教員は私の元同僚。不当な処分に対し、校長も含め職場の同僚達が支援し、職場でも法廷でも闘った。都教委は地裁でも高裁でも裁判所の和解勧告に応じず、本訴とは別手続きで出された処分の執行停止命令に対しても、研修命令を出して教員を研修所に閉じ込めた。


 今回の処分は、10.23通達にもとづく日の丸・君が代処分乱発で「何でもできる」と勘違いした都教委が作り出した「えん罪」だ。
 家庭の事情で苦しんでいた女子生徒を救ったほめられるべき教育実践なのに、一部分だけを切り取って問題視したのである。


 ことの発端は生徒の保護者による都教委への通報だが、その内容や背景、事実の詳細をきちんと事実確認することなく、当初から処分ありきだった。人事部職員課は違法な退職強要ばかりか、校長陳述書の偽造まで行った。
 都教委を追及すると逆切れし、職場への不当介入を連発した。学校教育法違反の土曜授業強制(これは職場の力で押し返した)、数学科教員は全員異動、気に入らない校長を「特命校長」にすることで事実上更迭――などである。


 懲戒免職処分取消し確定後も、再処分のための新たな事情聴取は直ちに行うが、その後1カ月は通常業務が許されず、「停職6カ月」の再処分を強行した。都教のメンツ以外、処分理由が見当たらない。
 違法な処分が行われた原因を解明し、都教委人事部職員課の責任者を処分しなければ学校現場の絶望的状態は変わらない。闘いはまだまだ続く。

 

井黒 豊(都立高校教員)

 

★もの言う店長、セブンが嫌悪  ユニオン副委員長の店が閉店

 本誌前号(934+5号)「時評自評」欄に執筆したコンビニ加盟店ユニオンの三井義文副委員長が経営してきたセブンイレブン佐倉表町店が、4月30日に閉店した(その後、本部直営で開店)。
 セブン-イレブン・ジャパン(本部)は三井さんに対し、三井さんが朝日新聞の取材に応じてコンビニ店長の長時間労働の実態を語ったことや、月末在庫、独自仕入れの処理などを「問題」と指摘し、謝罪と是正を要求。三井さんと本部側のやりとりの結果、「合意にもとづく閉店」が決まった。


 最後の営業日には、常連客や元アルバイトらが次々に店に訪れ、三井さんをねぎらった。作業に来た本部社員たちは、日付が変わるとブルーシートでガラス面を覆い尽くし、外から見えなくした店内で棚卸しなどの作業を進めた。
 本部は、岡山県労委で命じられたユニオンとの団交に応じないまま(中労委係争中)。三井さんは「オープンから9年かけても本部と理解しあえなかったのが残念です」と振り返った。コンビニ加盟店主の権利のため、三井さんはこれからも発言を続けていくという。

 

北 健一(team rodojoho)

 

★取材の自由への制約は「口実」?  秘密法訴訟で東京高裁が逃げの判断

 フリーのジャーナリストらが特定秘密保護法の違憲確認と施行差し止めを求めた裁判の控訴審判決が4月26日に東京高等裁判所で言い渡され、一審に続いて原告団の請求が棄却された。
 同裁判は、フリーランスの立場で活動するジャーナリスト、ルポライター、編集者、写真家、映画監督など43人(筆者も参加)が2014年3月28日に東京地方裁判所に提訴。市民から大きな関心を集めてきた。


 一審では原告団を代表して、警察問題に詳しいジャーナリストの寺澤有氏らが本人尋問で登壇。これまでならば自衛隊にとって都合の悪い情報でも公益を重んじて同氏に提供してくれていた内部協力者が、特定秘密保護法の施行後は情報提供を拒むようになっているなどの事実を、実体験をもとに証言した。
 だが昨年11月18日の一審判決では、「原告らの法的利益が侵害されているといえる程度に取材の困難がもたらされているとまでは認められない」として請求を棄却。同法の違憲/合憲性については判断を回避した。


 今回小林昭彦裁判長が下した二審判決もこの一審判決をなぞったもので、仮に特定秘密保護法のせいで取材が困難になったとしても、それは取材協力者が同法を「藉口(しゃこう)」、つまり口実に使っているに過ぎないと決めつけた。
 原告団は5月10日、最高裁に上告した。


 「国境なき記者団」が毎年発表している「報道の自由度ランキング」で、日本は2012年の時点で12位だったが、安倍政権の発足以後は毎年順位が低下し、4月に発表された今年の順位では72位にまで落ちた。
 無論その最大の要因は秘密保護法であり、現に自由な報道が行われる上で同法が妨げになっていることも間違いない。
 最高裁でのたたかいに向けて、引き続いての支援をお願いしたい。

 

古川 琢也(team rodojoho)

 

 

◎日日刻刻  勤労者の景気見通し悪化 (4.19〜5.10)

 

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