たたかいの現場から

938号

◎これまでと違う「風景」どう影響? 最低賃金めぐる熱い夏始まる

 2016年度の最低賃金の目安を審議する厚生労働相の諮問機関「中央最低賃金審議会」(会長・仁田道夫東大名誉教授)の初会合が6月14日開かれ、 最賃を巡る熱い夏≠ェ始まった。

 あいさつした塩崎恭久厚労相は「最低賃金の引き上げで消費喚起を図り、生活水準の底上げを図ることが大事だ。1億総活躍プランで、年率3%(の引き 上げ)をめどとして、全国平均が1千円を目指すとした」と述べ、政府の決定に配意した審議を迫った。「中小企業、小規模事業者の生産性向上のための支 援、取引状況の改善を図る」と事業者にも配慮を示した。

 審議会は、具体的に最賃の目安を審議する小委員会を設置し、審議を始めた。小委員会は「自由な議論をするため」と今回も非公開に。7月末を目標に、 今年度の最賃額の目安額を作成。それを受けて各都道府県の地方最賃審議会が具体額を決め、10月には新たな最賃が適用される予定だ。

 最低賃金は、前年度が過去最大の18円の引き上げて全国平均798円となった。政府が要請する年3%の引き上げには、約24円の引き上げが求められ る。
 審議会方式を大胆に見直さなければ、最賃1千円の早期達成は難しい。連合の神津里季生会長も「最賃は、支払い能力ではなく、生計費で決めるなど決め 方を検討する必要がある」と認める。また、全労連は、7月に予定している定期大会で、賃金政策の中心に全国一律最賃の実現を掲げる予定だ。

 若者を中心とする運動の広がりも含め、これまでとは違う最賃を巡る風景が、今年の最賃にどう影響するのか、注目される。

 

東海林 智(team rodojoho)

 

◎ECC講師ら10都府県でスト  昇給獲得し、組合加入も相次ぐ

 ゼネラルユニオン最大の労組支部である英会話全国最大手「ECC」で、賃上げや社会保険の「春闘」が高揚中だ。
 ECCは、週29・5時間の契約で、社保逃れをしてきたが、ユニオンは永年の闘いで加入させてきた(本年10月から週20時間の加入基準も法制 化)。
 今回の賃上げ根拠は、この保険料本人負担や、消費税・物価上昇をカバーするベアでもあった(会社は別途、年数億円の保険料を負担)。

 昨年10月の府労委斡旋でのベアに納得せず、16春闘で1万2千円の賃上げを要求した。団交決裂後の4月23日、再三の全国共闘会議を経て、ついに 関西552・東海20・東京労組50名の常勤講師が終日ストに入った。
 全国10都府県の授業が停止し、その威力は決定的であった。ユニオンは、日本人スタッフや生徒を対象に、「スト説明・協力依頼」をも一斉送信し、理 解を求めた。

 当日は「ストの鎖」が大阪本社を包囲した。ついに会社側は、社保への全員加入を再確認したうえで、「月6千円昇給」と、日本人非常勤講師の時間給 アップ、関東手当の復活を回答してきた。まさに統一ストの勝利である。
 しかし、その後の団交で、配分をめぐって労使対立が生じ、かつ、約束済の「1万2千円要求への継続協議」の進展がみられないため、第3波の全国スト を、6月25日と7月2日に通告した。その間は団交も続くが、スト毎にユニオンへの加盟者が増えている。

山原 克二(ゼネラルユニオン)

製薬大手アストラゼネカにユニオン  結成大会前の団交で意気上がる

 6月10日、製薬メーカー「アストラゼネカ」で、労働組合「アストラゼネカユニオン」が56名の仲間によって結成された(東京管理職ユニオンの支 部)。

 アストラゼネカは、世界で5万人以上、日本で3千人以上の労働者を擁する製薬会社である。
 近年、製薬業界では、医薬情報担当者(MR)と呼ばれる営業マンたちが過酷なノルマを課せられ、リストラやパワハラに遭ってきた。アストラゼネカで も所長クラスに対するリストラが横行し、メンタル疾患に追い込まれる労働者も後を絶たない。

 こうした中、不当なリストラに巻き込まれ、原発事故直後の福島に配転された遠藤維大さんが東京管理職ユニオンに駆け込み、闘いが始まった。
 会社は、遠藤さんに対し、組合加入通知直後に退職勧奨するという不当労働行為に及んだ。私たちは遠藤さんとともに、団交・抗議行動・労働委員会・裁 判を闘い抜いて勝利。全国でパワハラ等のイジメにあっていた営業マンたちがこれに励まされて次々に組合加入し、56名での「アストラゼネカユニオン」 結成に至った。

 結成大会に先立ち、会社との団体交渉を組合事務所で開催。参加者のほとんどが、人生初団体交渉だった。団交前は緊張していたが、いざ始まると、会社 側の不誠実な対応に皆が怒りの声を上げた。
 団交後、意気上がる中、結成大会を開催し、遠藤さんを委員長に選出し、団結をかためた。
 仲間たちは、「会社から責められ辛い毎日だったが、組合に入ってすっかり元気になった」「勇気が必要だったが、組合加入をカミングアウトしたら上司 のいじめがパッタリ止まった」など明るく語りあった。

 組合結成の数日前にスイス人の社長が辞任するなど、激動の中での船出だが、多数派組合をめざし、頑張ります!

 

鈴木 剛(東京管理職ユニオン執行委員長)

 

◎日日刻刻  労働災害死傷者数増  (5.27〜6.10)

 

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