アジア@世界
喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
956号

★3.8国際女性デー  各地で「女性のいない日」

 3月8日の国際女性デーに「女性のいない1日」(女性の一斉ストライキ)の行動が計画され、50力国以上でさまざまな行動が展開された。


 米国では1月21日のウィメンズ・マーチを呼びかけたアンジェラ・デービスさんを始めとする8人の活動家が2月6日付で女性ストライキを呼びかける共同声明を発表した。この声明は次のように述べている。

 

 「1月21日のウィメンズ・マーチは新しい戦闘的なフェミニズム運動の新しい波の始まりを印した。しかし、それは何に焦点を当てるのか?私たちの観点では、トランプや彼の攻撃的な女性嫌悪、ホモセクシュアル嫌悪、人種差別の政策に反対するだけでは十分ではない。私たちは同時に、継続している新自由主義による社会的な制度や労働者の権利に対する攻撃に反撃する必要がある。・・・


 リーン・イン・フェミニズム(注)の類の企業フェミニズムは私たちのような大多数の人々、つまり、個人的なキャリアアップの機会がなく、性と生殖に関する権利と労働権を保障するような政策を通じてしか生活条件の改善が可能でない人々には届かない。フェミニズム運動の新しい波はこれらの問題を正面から取り上げなければならない。それは『99%』のためのフェミニズムでなければならない。・・・


 最初のステップとして、私たちは3月8日に男による暴力に反対し、性と生殖に関する権利を擁護するための国際的なストライキの実現を支援することを提案する。・・・これはリーン・イン・フェミニズムが無視してきた人たち、つまり労働市場の中の女性、社会的再生産と介護に関わっている女性、失業者、非正規雇用の労働者の要求と希望を可視化することを目的としている」。

(注)フェイスブックの最高執行責任者(COO)であるシェリル・サンドバーグが13年に出版した「リーン・インー女性、仕事、リーダーへの意欲」をモデルとするフェミニズム。

 

 この日、米国では、ノースカロライナ、バージニア、メリーランド等の州で、学校の女性教職員が一斉に休暇を取得したため、多くの学校が休業となった。
 「女性の権利のための運動は特権的な連中の運動だ」という非難に抗して、ファストフード店の労働者、小売チェーンの労働者も一斉時間休などの形で参加した。休暇を取るのがむずかしい家事労働者たちは、赤い作業服で就労することによって意志を表した。
 ワシントンDCでは有力な労働組合や労働団体が「女性労働者は決起する」という横断幕を掲げて労働省までデモを行った。


 アイルランドのダブリンでは、中絶を実質的に全面禁止する法律の撤回を求めるデモに数千人が参加し、市内の交通が麻痺した。
 オーストラリアでは千人余の保育士が午後3時20分からストライキに入ったため、数十の保育園が休業となった。このストライキは、ジェンダー問の賃金格差のために、女性は3時20分までの賃金しか受け取っていないことを象徴している。オーストラリアでは保育士の97%は女性であり、有資格であるにもかかわらず賃金水準は全産業平均の半分である。


 ロシアではプーチン大統領がロシアの女性の「美しさと活力」を称える声明を発表したが、7人の活動家がクレムリンの前で「男が蜘年にわたって権力を独占してきた。彼らを打倒しよう」という横断幕を広げて逮捕された。
 ナイロビ、ダカール、マニラや、レバノン、トルコのクルド人居住地域などでも厳しい状況の中で集会・デモが行われた。

 南米では女性への暴力の急増に対する抗議が大きなテーマとして取り上げられた。アルゼンチンのブエノスアイレスではナベやフライパンを叩く音を合図に、市内デモが行われ、この8年間に女性への殺人事件が78%増加していることに抗議の声を上げた。

 ブラジルでは60以上の都市で、女性に対する「構造的暴力」に抗議する1時間ストが行われた。また、MST(土地を持たない農業労働者運動)の女性たちが、汚職の罪で拘留中の実業家が所有する耕作放棄地を占拠した。

 

 ポーランドでは昨年10月に与党「法と正義」が中絶全面禁止法の制定を図ったが、女性たちを中心とした「黒服デモ」によって阻止された。この日も女性たちは「法と正義」の党本部前で集会を開いた。
 アイスランドでは、政府が、企業にジェンダーや民族に関わりなく同一賃金を支払っていることを証明することを義務付けることを発表した。

 

(英国「ガーディアン」2月6日付および3月8日付、米国「ザ・ネーション」3月8日付、「Zネット」3月9日付より)。

 

★米 国
  日産は組合を承認せよ! ミシシッピー州で大集会

 3月4日、ミシシッピー州カントンで、日産カントン工場(労働者数5千人)での13年に及ぶ組合結成のための闘争に連帯する集会が開かれ、約5千人が参加した。
カントンは州都ジャクソンビルの近郊にある人ロー万3千人余の都市で、住民の74%がアフリカ系米国人である。


 この日のデモは「マーチ・オン・ミシシッピー」として呼びかけられ、トランプの労働政策と対決するための全国的な闘いの一環としてUAW(全米自動車労組)を始めとする労働組合のほか、人権団体やコミュニティー団体が参加した。バーニー・サンダース上院議員が参加したこともあり、大きな注目を浴びた。

 ミシシッピー州だけでなく、ミズーリ、テキサス、ノースカロライナ、イリノイ、ペンシルベニア
州からもマイクロバスやバイクで多数の参加者があり、会場からーマイルにわたって道路が混雑した。


 2月には南カリフォルニァ州のボーイングの工場で機械工労組が組合承認投票で敗北している。会社側は組合結成を阻止するための広告に48万5千ドルを投入し、政治家たちは組合が勝利した場合に他の企業が同州への投資を取りやめると脅した。
 ルイジアナ州のGM工場で働いているジョン・W・ヒルさんは、「組合結成に反対する圧力はこれまで以上に強まっていると思う。76年に(GMで組合を結成した当時)はこれほどの反労働組合的感情はなかった」と語っている。


 UAWでは、この圧力をはね返すために地域のBLM(黒人の生存権)運動や、教会、環境団体、市民運動団体、NAACP(全米有色人種地位向上協会)などと協力して「日産における公正を求めるミシシッピi連合」を設立した。日産工場の労働者の80%以上がアフリカ系米国人であり、この運動は同州での1960年代(公民権運動)以来最大の運動を目指している。
 ゲストとして発言したサンダース議員は「この州で日産に勝つことができたら、あなた方は全米の労働者に大きな確信を与えるだろう。ここで巨大な多国籍企業に立ち向かうことができたなら全米の労働者が『われわれもできると』と言うだろう」と述べた。

 民主党は共和党に奪われた労働者の支持を取り戻すために、大統領選予備選挙におけるサンダース議員の政策の多くを取り入れており、トム・ペレス全国委員会委員長(元労働長官)はUAWへの連帯を表明している。


 世界の日産の43の工場のうち組合がないのはカントン工場とテネシー州の2つの工場の3つだけである。15年にNLRB(全米労働関係委員会)は日産と同社の系列の人材派遣会社による権利侵害(労働者に組合が結成されたら工場を閉鎖すると脅した)を告発した。14年3月にはUAWを支持するカルビン・ムーアさんが解雇されたが、俳優のダニー・グローバー、NAACPのコーネル・ウィリアム・ブルックス会長などの著名人が解雇に抗議する記者会見を開き、州の大学生が日産本社前で市民的不服従の行動を展開し、ブラジルの日産労組が連帯の行動を組織するなどの広範な運動によって、3カ月後に解雇が撤回されている。


 カルビン・ムーアさんさんは地域の支援が、仲間の労働者を説得する上でもカギとなると指摘し、「多くの労働者がUAWに対する考え方を変えた。このようなイベントは、特にテレ
ビで報道されれば、われわれの支持の拡大に大いに役に立つ」と語っている。

(「ワシントンポスト」3月4日付、英国「ガーディアン」3月5日付より)

 

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