たたかいの現場から

943+4号

◎「先人の犠牲、無にするな」 安保法違憲(東京)訴訟始まる

 9月2日、457名の原告が東京地裁に提訴した安保法制違憲訴訟の第1回口頭弁論が103号法廷で開かれた。原告団や支援のメンバーは1時に地裁前で宣伝とミニ集会を開催し法廷へ。
 私は締め切り直前に抽選の列に並んだが、幸運にも傍聴券をゲット。バーの中には弁護団20名、原告30名が入り、傍聴席90席も満杯。裁判長は民事第一部合議第一係の後藤健氏。

 原告・被告の準備書面の陳述や書証を確認し、原告側の意見陳述に。
 被告の国側は一番若そうなメンバーが小さい声で「原告の陳述には反対」と主張したが、裁判長は「すでに決まっている」と陳述を認めた。
 寺井一弘弁護士を皮切りに5名の弁護士が、司法判断の必要性や司法の任務について述べ、続いて原告5名が意見陳述に立った。

 

 総がかり行動でおなじみの菱山南帆子さんは八王子大空襲を経験した祖母が「今は2度と戦争をしないという憲法ができたのよ」とうれしそうに話してくれたこと、自らのこれまでの活動を紹介し、「安保法制を認めることができない」と陳述。
 1945年3月10日の東京大空襲を生き延びた河合節子さんは、安保法制で70数年前の異常な日々の記憶を呼び覚まされたこと、「9条の平和な日本は、家族と自分の人生の犠牲と引き換えに手にした。先人の犠牲を無にすることは絶対止めて」と訴え。
 横須賀で長年活動する新倉裕史さんは米軍基地の町としてテロが現実問題であると述べた。
 他にも研究者の立場、ママの会の活動をする原告からの陳述もあった。裁判官にも少しは響いた様子が見えた。次回は12月2日10時半から103号法廷で。

 

 違憲訴訟はすでに東京、福島、高知、大阪、長崎、岡山、埼玉、長野、女性グループが提訴し、今月16日に広島、横浜の提訴が確定、その後も鹿児島、宮崎、大分、熊本、福岡、山口、京都、名古屋、群馬、栃木、山梨、茨木、新潟、仙台、札幌などで準備が進められている。

 

柚木 康子(女性グループ裁判原告)

 

◎平和と男女平等は不可分 女性106人も「安保法違憲」と提訴

 8月15日の午後1時過ぎ、私は92才の母と共に「安保法制違憲訴訟・女の会」の原告の一人として東京地裁前に駆けつけた。
 すでに原告団の女性たちや支援の仲間、弁護士など40余名が集まり、アピールとチラシ撒きの最中だった。全員で横断幕を掲げ入廷行進して地裁に入り、違憲訴訟の提訴手続きを行った。


 その後、司法記者クラブの記者会見でテレビ・新聞各社の取材を受け、原告106名・弁護士9名・支援48名の女性たちによる「安保法制違憲訴訟」の提訴を報告した。

 冒頭に中野麻美弁護士は「敗戦の日の今日は女性が解放された日、平和と男女平等は不可分、女性の権利が侵害されていることを訴えたい」と訴訟の概要を報告した。
 原告の朝倉泰子さんは「社会科の教員として憲法の大切さを教え、二度と教え子を戦場に送らない決意で働いてきた。子どもたちが戦争に巻き込まれるのは許せない」。
 同じく関千枝子さんは、「1945年8月6日、広島で多くの学友が原爆で死んだ。平和憲法が制定され『戦争で死ぬことはない』と誇りを持って生きてきたが、今回の安保法制定ですべて否定された」と提訴の思いを訴えた。

 

 この裁判の特徴は、女性たちがこれまで生き生活してきた中で、安保法制により一人ひとりが受けた具体的な被害や損害を訴えて事実を争うことだ。全国の安保法制違憲訴訟では9番目となる。
 若き日に浦和の陸軍で働いていた母は、原告の女性たちが頼もしく思えたと話していた。

 

中原 純子(女性グループ裁判原告)

 

◎府労委での和解「守る義務なし」? 理容業界団体、組合を不当提訴

 私たち大阪府理容生活衛生同業組合労働組合(以下、当労組)は現在2件の不当労働行為救済申立事件(現時点で併合事件となったので、以下、併合事件という)を大阪府労働委員会(府労委)に申し立てて使用者側と争っています。

 

 民事弾圧の経緯

 

 これに対し使用者である大阪府理容生活衛生同業組合(大理生)は、労組が両事件の中で請求している事項、すなわち過去の不当労働行為救済申立事件に於いて、府労委の関与和解で成立した和解協定書(2015年4月24日付)第1項(以下、協定書第1項という)の履行について、大理生は労組と委員長を相手取って、事実上その義務を負っていないとする債務不存在確認請求訴訟(以下、スラップ訴訟という)を、2016年7月19日付で大阪地方裁判所に提訴しました。


 この行為は正当な労働組合活動へのあからさまな妨害ですが、この弾圧に至るきっかけは府労委の使用者寄りの姿勢に関連があると言っても過言ではありません。

 

 大阪府労委の姿勢

 

 言うまでもないことですが、労組は協定書第1項について、和解期日の中で審査委員等から同項の説明を受け、それに納得した上で調印を行いました。
 しかし、その意味を併合事件の調査期日等の中で府労委に再確認しても、労使委員の見解が真逆であったり、審査委員が明言をさけるような態度を取っています。
 これを好機と捉えた大理生は、準備書面等で徹底的に同項を形骸化させる主張を行うとともに、労働条件の一方的な不利益変更を強行する等、不当労働行為を繰り返しました。 これに対して、当労組は府労委へ実効確保措置申立を行いましたが、認められませんでした。

 

 そして、その約ーカ月後に前述1のスラップ訴訟が提訴され、訴状の中で大理生は「使用者の行為が不当労働行為に該当する判断は一次的には労働委員会の権限であるが、その基本となるルールである労使間の権利義務の有無の決定は、法律問題として裁判所の権限である」と断言し事実上、労働委員会制度を否定してしまいました。

 

 労組からの反撃

 

 当労組としては、まず、この弾圧は労働運動全体にかけられた攻撃、また労働委員会制度への挑戦でもあると捉え全力で反撃していく事を表明しておきたいと思います。
 具体的には、このスラップ訴訟にひるまず、どれだけ形骸化したとしても、労働組合が拠るべき所は労働委員会なので、府労委へこの弾圧に対しての実効確保措置申立を行っていきます。
 また、同弾圧の不当性を社会にアピールしていくために、同訴訟の訴状等を労組サイト(http://oskunion.org/)にアップしました。今後の動向にご注目をよろしくお願いします。

 

白田 伸樹(大阪府理容生活衛生同業組合労働組合執行委員長)


◎セクハラ、パワハラなくせ タクシー団体の女性職員らスト

 個人タクシー協同組合の事務職員6人が9月5日、使用者からのセクハラやパワハラ、不当労働行為に抗議しストライキで立ち上がった。
 女性職員らは6月に全国一般東京東部労組の支部を結成。恫喝、一方的な降格や性的な発言による嫌がらせなどが横行する東京都個人タクシー協同組合新東京支部の職場を変えようと、声をあげた。

 

 5日、東部労組個人タクシー支部の組合員らは運転手を対象に開催する業務講習会で受付業務をすることになっていたが、ストライキに入った。現場が混乱する中、東部労組や地域共闘の仲間など80名が女性組合員らを支援した。

 勤続17年になる、個人タクシー協同組合新東京職員支部の中村未緒委員長は「スト前日はよく眠れなかった。今も胃が痛い」と緊張しつつ、「今までは我慢するしかなかった。ずっと一人じゃ闘えないと思っていたけれど、今回、労働組合に入って本当に良かったと思えるのは、みんながこんなに大勢集まってくれたこと。私たちのことを知らない人たちばかりなのに、みんな応援してくれるのは本当に心強い」と声を震わせた。

 書記長の加藤一美さんは講習会前でのスト決起集会を経て、労働組合の迫力に感動を語った。「私、吹っ切れた。とことんやります」と、決意を新たにした。

 

松本 千枝(team rodojoho)

 

◎日日刻刻  多様な働き方・柔軟な労働市場 (8.1〜8.25)

 

 退職のごあいさつ  浅井真由美

 9月末をもって、退職することとなりました。
 専従デビューが1995年2月。その数年前から編集にかかわり、エッセイや国労音威子府闘争団家族会を訪ねたルポ(92年夏)などを書いていたし、神奈川ネットワーク運動の共同代表だった86年新年の号には客人として登場しています。

 95年は、『労働情報』の発行主体を「労働情報編集委員会」から「協同センター・労働情報」に組織改変した年でした。
 当時の私は、怖いもの知らずで諸先輩方に対し喧喧諤諤の義論を吹っかけ、泣かされたこともありました。
 でも当時は国鉄闘争との絡みもあり、『労働情報』周辺でも協同組合運動や自主生産に興味を持つ人が多く、地域や生活の24時間総体をも対象化した広義の労働運動(=社会的労働運動?)が必要という雰囲気もありました。
 そんな経緯もあり、『戦後革新の半日陰』(清水慎三著)を胸躍らぜて読んだことも当時の思い出です。

 そのような中を無我夢中で走り続け、何とか形に残せたのが「沖縄」でしょうか。
 1996年1月の初訪沖以降、10年ほど途切れていた沖縄と『労働情報』との関係の紡ぎ直しに奔走。いつしか信頼をいただくようになり2011年、14年半に亘る由井晶子さんの連載を真喜志好一さんの協力により『沖縄アリは象に挑む』として刊行。今年8月には『希望の島・沖縄アリは象に挑むU』を刊行できました。

 「いまのひどい状況を止めるためにも、この本の活用を願って止みません」を、専従最後のメッセージとさせていただきます。
 新しい『労働情報』の飛躍を祈念いたします。

 

 

たたかいの現場から バックナンバー
たたかいの現場から 投稿について

「たたかいの現場から」の原稿を募集しています。各地での闘いの様子を原稿にしてお送りください。字数は800字前後でお願いします。

 

「た たかいの現場」投稿フォーム

 

協同センター・労働情報 〒112-0005 東京都文京区水道2-11-7三浦ビル2階 Tel:03-6912-0544 Fax:03-6912-0744