たたかいの現場から

953号

◎「命綱」の住宅支援、打ち切るな  原発事故避難者ら福島県と交渉

 福島県の内堀雅雄知事は2015年6月15日、避難指示準備区域以外から県外、県内に避難した1万2千世帯の住民と避難指示を解除した区域の住民に対し、3月31日を持って住宅支援を打ち切ると発表し、昨年11月から個別訪問で避難者への追い出し圧力を加
えている。


 避難指示の有無に限らず、これまで避難者の住民には「災害救助法」が適用され、住宅支援が無償提供されてきた。しかし内堀知事は「除染対策により生活環境が整った」とし、退去通告の攻撃を加速させている。
 こうした現状のもとで、「原発被害者団体連絡会」が結成され、内堀知事に対して、住宅支援撤回の凍結と延長を求めて福島県行政交渉を展開している。

 2月2日、第6回目の行政交渉が福島県内で開催され、40名の「ひだん連」と「さようなら原発1000万人アクション」実行委員会から鎌田慧代表世話人を始め10人が参加。県側からは、新島主幹、小林担当課長が出席した。
 交渉の冒頭、鎌田さんから福島県当局へ、「住宅無償支援継続の要請書」が手渡された。

 交渉では、昨年12月の面談で「『個別の問題について意見を聞き対応したい』と知事の回答があったが、何も回答が示されていない」「あと2カ月もなく『3月末』が近づいている」「避難者の多くは生活困窮で住宅支援があるから生き延びられる。支援打ち切りとなったら、われわれに死ねというのか」という、切実な声が発せられた。
 「自宅の土を測定したら8万ベクレルという放射能量測定値で、帰宅できる状態ではない」との現実も訴えられた。
 最後に「環境が整ったなどの判断はどこからでたのか。知事が交渉の場に出てきて、説明責任を果たせ」と県の姿勢を追及した。

 17春闘では、福島現地の運動に労働戦線もさらに強く連帯し、被災者への人権・生存権否定の住宅支援打ち切りを食い止めよう。

平澤 勝(全水道東水労)

 

◎「作業員の義侠心、東電が使い捨て」  福島原発被ばく労災訴訟始まる

 2015年10月、初めて被ばく労災の認定を受けた原告(本誌16年3月1日号に関連記事)が、東京電力と九州電力を相手取った損害賠償請求裁判の第1回口頭弁論が東京地裁で開かれた。


 原告は、11年から13年にかけ、東電福島第一原発の収束・廃炉作業や九電玄海原発の定期検査に従事した。その後、14年の正月に息切れや風邪のような症状で内科を受診し、急性骨髄性白血病を発症し苦難の闘病生活を強いられた。その後原告は、全国一般いわき自由労組と出会い、富岡労働基準監督署で初めての「被ばくによる疾病の労災
認定」をかちとった。

 しかし、労災認定が公表された際の、原発労働者を愚弄する東京電力のコメントや態度に原告は深く心を痛めた。東電らに自らの責任としっかり向き合うことを望む原告は、昨年11月22日、闘いの火蓋を切り、@ 原発事故の収束労働による白血病などの疾病発生を社会的に明らかにしよう、A 被ばく労働を強いた東京電力らに、民事責任を取らせよう、B 放射線被ばくに苦しむ多くの労働者が泣き寝入りすることなく労災認定と損害賠償を求めて立ち上がろう、と考え会社を提訴した。

 

 この日の弁論で原告は「北九州育ちの義侠心から、何とか事故を収束させたい一心で作業に当たった」「東電らはその作業員の思いに応えず、労働者を使い捨てにした」と訴えた。
 第2回弁論は4月27日11時、東京地裁で開かれる。

 

渡辺 啓二(全国一般労働組合全国協議会)

 

◎DHC丸抱えの「沖縄ヘイト番組」  民放労連2地連、東京MXに質問状

 東京都のローカル民放テレビ局・東京メトロポリタンテレビジョン(MX)が年明けに放送したトーク番組『ニュース女子』が、社会問題になっている。

 1月2日の放送で「沖縄・高江ヘリパッド問題」を取り上げた。しかしこの番組は、レポーターが「過激な反対派を取材」と言いながら、実際には現地・高江からはるか手前のトンネル前でレポート。ヘリパッド建設反対派の取材も一切していなかったり、反対派には「往復航空機代が5万円支給される」と言いながら、その航空機代の支給元である市民団体「のりこえねっと」には一切取材していなかったり、一方的に建設反対派を既めるものだった。

 この番組は化粧品メーカーDHCが、関連プロダクションのDHCシアターで制作し、放送局に放送してもらう「持ち込み番組」として制作・放送されている。

 番組の内容は、残念ながらネット上でよく見かける「沖縄ヘイト」ものだが、それが免許事業である地上波放送に載るとなると話は別だ。MXの放送基準にも「放送を通じてすべての人の人権を守り、人格を尊重する。……差別・偏見の解消に努め、あらゆる立場の弱者、少数者の意見に配慮する」とある。

 ミヤギテレビやサガテレビなど、この番組の放送を断った局も多いが、MXには断りにくい事情がある。DHCはMXの売上の15%〜20%を占める上得意だ。単に多額の広告費を拠出してもらっているだけでなく、DHCの代理店として他のメディアとDHCとの仲介業務も行っているという、特別な関係にある放送局なのだ。

 MXの本社前では抗議行動が毎週展開され、番組で中傷された「のりこえねっと」はBPO(放送倫理・番組向上機構)に提訴の手続きを取った。
 民放労連の関東地連と沖縄地連も両地連委員長の連名でMXに「『ニュース女子』の放送内容に関する質問状」を1月26日に送付し、回答を求めている。

 

岩崎 貞明(放送レポート編集長)

 

◎日日刻刻  60歳以降労働は経済的理由  (1.16〜27)

1月16日(月)

■厚生労働省の「労働災害発生状況」によると、12月末の死傷者数は10万5,770人で前年同期比1,159人(1.1%増)、死亡者数は841人で同44人(5.0%減)。

17日(火)

■厚生労働省の「長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した監督指導の結果」(2016年4月〜9月)によると、対象となった10,059事業場のうち6,659事業場(全体の66.2%)で労働基準法などの法令違反。
■経団連の「経営労働政策特別委員会報告一人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上」は、労働基準法等改正法案の早期成立などを強く要望。

■経団連の「2016年1〜6月実施分昇給・ベースアップ実施状況調査結果」によると、「昇給・ベアともに実施」の企業は55.4%、月例賃金引上げ額は6,812円(2.2%)。

19日(木)

■経済産業省の2016年「企業活動・基本調査」結果によると、1企業当たりの常時従業 者数は501人(前年度比2.5%増)。うちパートタイム従業者数は154人(同4.1%増)。
■第一生命経済研究所の「定年に関するアンケート調査」によると、60歳以降も働いている理由は、男性は「現在の生活を維持するため」など経済的理由が66.3%。女性も経済的理由の割合が59.5%。

 

20日(金)

■厚生労働省の2016年の「民間主要企業年末一時金妥結状況」(資本金10億円以上 かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業336社)によると、平均妥結額は83万609円(前年比0.02%増)。■厚生労働省と文部科学省の2016年度「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」によると、85.0%(前年同期比4.6ポイント増)・男子は83.1%(同4.1ポイント増)、女子は87.2%(同5.2ポイント増)。

■厚生労働省の2016年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・内定状況」によると、新卒者の就職内定率は87.0%(前年同期比1.2ポイント増)。男子は88.5%(同0.8ポイント増)、女子は84.7%(同1.5ポイント増)。

27日(金)

■厚生労働省の「介護給付費等実態調査月報」(11月審査分)によると、介護予防サービス受給者107万2,400人、介護サービス415万2,000人。受給者1人当たり費用額は、介護予防サービス3万5,500円、介護サービス18万9,500円。

 

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