アジア@世界             喜多幡 佳秀 訳(APWSL日本)
970号

★英 国
  労働組合がイスラエル・ボイコット運動

 公共サービス労組UNISONはパレスチナの労働組合と連帯して、イスラエルに対するBDS(ボイコット、投資引き上げ、経済制裁)運動を呼びかけている。

 3月30日から始まったパレスチナ・ガザ地区の平和的デモへのイスラエル軍の発砲で多数の犠牲者が出ている状況の中で、4月16~18日に開催されたスコットランドTUC(労働組合会議)の大会でもUNISONスコットランドの代表がBDS運動の取り組みの強化を訴えた。

 以下はUNISONスコットランドのウェブに掲載されたレポート(同18日付)の要約である。

 

 大会はイスラエルによる人権への攻撃を非難し、パレスチナ人民の公正を求める闘いへの支持を再確認し、スコットランドTUCのBDS運動への支持を確認した。
 代議員たちはイスラエルの軍事監獄に拘留されているパレスチナの子どもたちが被っている広範かつ執拗な人権侵害を中止させるために英国政府およびスコットランド州政府に圧力をかける行動を支持し、加盟組合にこの抗議活動に参加するよう呼びかけた。

 

 各地から集まった代議員たちは次々にイスラエルによるパレスチナ人民への残忍な抑圧、特に最近のガザにおける平和的デモへのイスラエル軍の発砲と殺裁を強く非難した。
 UNISONスコットランドの国際委員会のサム・マカートニー委員長はBDS支持の決議を支持し、「アパルトヘイト国家イスラエルはパレスチナ人の迫害と民族浄化の政策を継続しており、ガザではデモに参加するパレスチナ人に対する殺裁が続いている。パレスチナ人たちの苦境に対する関心を高めるためにBDSは一層重要になっている」と発言。

 「2018年はパレスチナのナクバ、つまりイスラエル建国の過程で75万人のパレスチナ人が家、村、土地から追放された大災禍の70周年である。パレスチナ人たちは1967年以来、ヨルダン川西岸とガザ地区の残忍な軍事占領に耐えてきた。私たちも『もうたくさんだ』と言おう」と結語した。

 

★アイルランド
  ダブリン市議会がイスラエル・ボイコット運動支持を決議

 ダブリン市議会は4月10日、パレスチナの運動団体が呼びかけるイスラエルによる不法占領を中止させるためのBDS運動を支持する決議を採択した。以下はアイルランド・パレスチナ連帯キャンペーン(IPSC)の声明の要約である。

 

 …この決議はまた、同市がヒューレットパッカード社および関連会社のDXCテクノロジー社とのすべての業務契約を解約することを求めている。両社はイスラエルがアパルトヘイト体制を維持し、入植者の安全を確保するために使用している軍事技術の多くを提供および運用している。さらに、市議会はアイルランド政府に対してイスラエル大使の追放を要求する決議も採択した。

 

 IPSCのファティン・アル・タミミ代表はこの決議を称賛して次のように述べている。

 「私はパレスチナ人として、そしてダブリン市民として、ダブリン市議会が自由と公正と平等を求めるパレスチナ人民の闘争に連帯する立場に立つことを決議したことを誇りに思います。…特に市議会がヒューレットパッカード社とDXCテクノロジー社をボイコット対象に選んだことを歓迎します。両社がパレスチナ人への暴力的な抑圧と違法な入植から利益を上げているからです」。
 タミミ代表は、決議案を提案したPBP(「利益よりも人々優先」)連合のジョン・リヨン市議をはじめ、イスラエル大使館からの執拗な介入をはね返して決議に賛成した議員たちに謝意を表明した。

 

 イスラエル大使館職員たちは市議会議長に決議の審議を行わないことを求める書簡を送るなど、アイルランドの民主主義への干渉を試みたが市議会議長は圧力に屈服することを拒否し、決議に賛成した。
 ナクバ70年を前に、また、ガザで抗議デモに対する発砲で多数の死者が出ているこの時期に、この決議が採択されたことは重要な意味がある。

 

(「パレスチナ・ニュース・ネットワーク」のウェブ4月10日付)

 

★タ イ
  不敬罪で服役中のソムヨットさん釈放

 不敬罪で服役中の労働運動活動家のソムヨット・プレクサカセムスクさんが4月30日早朝にバンコクのレマンド刑務所から釈放された。
 午前6時に青いポロシャツ姿で現れたソムヨットさん(56歳)は、出迎えた家族や支持者たちに笑顔を見せ、意気軒昂だった。
 彼は報道陣に対して、彼が服役中の2014年に起こったクーデターについて「社会と経済の後退をもたらした」と語った。
 彼はまた、「選挙は民主主義の一形態であり…私はそれを支持している。私は政府が選挙をこれ以上遅らせないことを望む。なぜならそれは経済にとって良くないからだ」と語った。

 

 ソムヨットさんは2011年に不敬罪容疑で逮捕され、2年後に懲役10年の判決を受けた。彼が編集していた政治雑誌「タクシンの声」に掲載された2つの論文のそれぞれについて5年である(不敬罪の刑期は1件につき最高15年)。

 この論文の中で彼は架空の王国について言及していたが、裁判所がこれを当時の国王ラマ9世(16年10月に死亡)への不敬とみなした。ほかに名誉棄損で1年の刑が加算され、合計11年の刑期だった。17年に最高裁は彼の刑期を短縮した。

 

 公判の中で彼は、問題とされた2つの論文は元政治家で現在亡命中のジャクラポブ・ペンカイル氏がペンネームで書いたものだと証言した。ジャクラポブ氏はこれらの論文の著者であるか否かを明らかにしていない。
 国際的な人権グループがソムヨットさんは「良心の囚人」であるとして、無条件の釈放を求めてきた。ソムヨットさんは釈放後、アムネスティーとILOに謝意を述べた。

 

(タイ「カオソッド」紙英語版、4月30日付)

 

★スウェーデン
  H&M株主総会で「生活賃金」の宣伝

 5月8日、ストックホルムで労働団体や消費者団体の活動家がH&Mの株主総会の出席者に対して、同社が「生活賃金」を導入することを求める宣伝活動を行った。
 H&Mは13年に、18年までに世界の85万人の労働者に公正な生活賃金が支払われるようになると発表した。この約束は実現するどころか、同社の経営方針で触れられなくなり、13年の発表さえウェブからは削除されてしまった。現在では「供給元企業における公正な賃金制度の導入」について言及されているだけである。

 

 反故にされた約束である生活賃金を株主総会の正式の議題とするという提案は取締役会によって拒否された。この約束がメディアや消費者の間での同社の評価を高めてきたという事実、および17年に26億ドルの利益を上げているという業績にもかかわらずである。
 クリーン・クローズ・キャンペーンはH&Mにおける賃金引き上げへの取り組みは目標が曖昧で、賃金データに不透明な点が多いと指摘している。同社が提供しているデータを基に評価した場合でも、労働者の賃金は生活賃金の数分の一でしかない。
 たとえば、カンボジアでは同社の発表によると労働者の平均賃金は月199米ドルであり、全国最低賃金を上回っているが、アジア最低賃金連合(AFWA)によると同国における生活賃金の基準額は475ドルである。
 インドネシアでは同社の発表による平均賃金は177ドルであり、AFWAに生活賃金の準額は422ドルである。バングラデシュではそれぞれ95ドルと448ドル、インドのバンガロールでは133ドルと335ドルである。

 

 5月1日に「ターン・アラウンドH&M(H&Mの向きを変えよう)」と銘打った国際的なキャンペーンが始まり、各国の労働組合や支援者が参加している。バンガロールではこの日、
現地の衣料労働組合の呼びかけで約1500人がデモに参加した。

 同労組のルクミニ・バデラプラ・プッタスワミ委員長は「われわれは公正な生活賃金について話す機会を与えられ、苦情申し立てのメカニズムや、委員会の選挙や、技能研修について聞かされてきたが、結果はゼロである。これはH&Mの倫理の欺隔性を明らかにしている」と語っている。
 H&Mは世界の1668の工場から製品を調達しており、雇用されている労働者は合計160万人である。

 

(クリーン・クローズ・キャンペーンのウェブより)

 

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