たたかいの現場から

957号

◎大阪  YMCAによる書記長解雇に抗議

 2月下旬に、大阪YMCA労働組合の書記長に対して指名解雇を行った学校法人大阪YMCAに対し、3月17日、おおさかユニオンネットワークが主催する春闘総行動の一環として、抗議申し入れ行動を行った。


 組合は法人に対し申し入れに対応するように伝えたが、大通りに面した校舎前で抗議のシュプレヒコールを上げ続けても、担当者はいつまでたっても現れなかった。しびれを切らした申入団が、5階の本部事務局に出向いてもなお法人は対応を引き延ばし、ようやく出て来たと思ったら、「改めて団交を申し入れます」と回答するありさま。

 団交を申し入れられるのは労働組合だけであると教えても、その言葉を繰り返すのみであった。

 

 以前から、大阪YMCAは組合嫌悪の姿勢が色濃く、組合は、ここ5年間で3件の救済申し立てを行ってきた。
 2016年11月には、大阪府労委が大阪YMCAの不当労働行為を認定。組合窓口でもある書記長について、「大阪YMCAが組合窓口交代を要求し、交代しなければ窓口折衝を拒否する」との争点も救済された。他にも書記長は、在籍する通信制高校の人員削減による労働強化で交渉の中心となってきたが、11月下旬に業務繁忙期のため1日の休日出勤希望を申し出たことを機に、意向を無視され業務を取り上げられ、出勤時間を1時間短縮されるという、不可解な対応を受けた。
 その後の大阪YMCAは、通信制高校の財政難を理由に希望退職(教職員5名)の募集を開始。応募者が足りず書記長の指名解雇に至った。


 5名も離職したことにより現場は混乱。指名解雇の根拠となった財政資料も、監督機関である大阪府私学課への提出資料と異なる点があるなど、組合は人員削減の必要性自体に疑問を持っている。
 また、大阪YMCAは、府労委の命令を不服とし中労委に再審査を申し立てたが、指名解雇を問題視した中労委が、大阪YMCAに書記長の雇用継続を繰り返し強く働きかけるという、異例の展開となっている。

 ところが大阪YMCAは意に介さず、中労委の要請に対しては6月まで交渉を継続する旨を回答し、組合には「ご理解いただきたい」と述べて、書記長解雇は撤回する意思はない。

 

 再審査申し立てに際し大阪YMCAは「いかなる不当労働行為も存在しないことを主張します。中央労働委員会で、新たな判断がされるものと確信しております」と宣言している。果たしてこれが真実かどうか。組合が屈することなく活動を続ける限り、必ず明らかにされることだろう。

石原 めぐみ(大阪YMCA労働組合書記長)

 

◎大阪  「君が代」踏み絵に教員の再任用拒否

 3月17日、おおさかユニオンネットワーク総行動の一環として行われた対府教委行動のあと、「日の丸・君が代」強制反対・大阪ネット主催の集会に約70名が結集し、梅原さんの再任用不合格撤回を求める闘いの決意を固めた。


 2014年の府立校卒業式で、梅原さんは、卒業生の「君が代」強制反対の思いに応えて、「生徒には強制しない」との説明を要望。しかし校長は応じず、「国旗国歌に敬意を表明するのはマナー」と予行で言明。さらにその不当性を訴えた教員有志のビラ配布を府教委は「信用失墜行為」としたうえ、梅原さんを「君が代」不起立の戒告処分に。

 

 このことへの人権救済申し立てを受け、昨年の3月18日に大阪弁護士会は、1.国旗国歌条例は違憲・違法の疑い、処分は思想良心の自由の侵害 2.校長の対応は生徒への実質的強制 3.教職員の勤務時間外・学校外のビラ配布を制限しないこと等を勧告した。


 しかし、校長も府教委もこれに応じないばかりか、再びビラ配布をしないようにと「指導」。さらに、今年1月、校長は3月末の定年退職を前にした梅原さんを呼びだし、再任用に関連する質問として、「卒・入学式における国歌に対する起立斉唱の命令を含む上司の職務命令に従うか」について、「はい」か「いいえ」で答えよと迫った。
 梅原さんは「生徒の就職の面接でも、このような質問には答えないように指導しているので、答えることはできない」と回答。大阪ネットからも府教委への質問・要請とともに、府商工労働部に訴えた結果、「違反質問」との理由で府教委への改善要請も。

 しかし2月17日、梅原さんは、再任用不合格を告げられ、これに対して再三の要求書を提出し、説明・交渉を継続した。

 

 思想信条による差別選考であり、また2013年総務省通知(「年金との接続」「希望する職員は…再任用する」)にも反することを府教委前で連日情宣(総計5千枚配布)し、次々と多くの職員が受け取る状況が生まれた。

 また緊急署名はーカ月余りで連日、約30名が交渉に結集したが、府教委は説明不能となるも居直りのまま。今後もこの5年間の61名の不起立処分撤回と、再任用拒否を許さない闘いの継続を確認している。

 

山田 光一(「日の丸・君が代」強制反対・大阪ネット事務局長)

 

◎郵政  若い非正規前面に25局でスト決行

 郵政ユニオンは17春闘要求に対する会社回答に抗議と更なる回答の上積みを求めて3月23日、全国統一ストライキを決行した。

 日本郵政各社はこれまでの賃金交渉のなかで、来年度の厳しい経営環境を理由に2年連続ベアを見送るとともに、一時金も昨年と同額、期間雇用社員の均等待遇要求に対しても全く誠意ある回答を示さなかった。JP労組が3月16日当日に早々と妥結したことに対する怒りも合わせてのスト突入となった。

 

 今回のストは盛岡中央局、上尾局、練馬局、新東京局、浜松東局、京都西局、新大阪局、神戸中央局、灘局、広島東局、土佐山田局、福岡中央局、北九州局の13局が拠点となり、指名ストの12局合わせて25局で決行し、非正規組合員10名を含む62名の組合員が参加した。また、このストに連帯して北海道地本は札幌・厚別局では早朝集会、全国の職場ではスト突入ビラの宣伝行動をとりくんだ。
 中央本部は17春闘をたたかうにあたって、「一人が10歩、20歩前に出るのではなく、一人ひとりの組合員が半歩でも一歩でも前へ出る全員参加の春闘としていこう」と提案したが、3・23全国ストはそのことを実現したたたかいとなった。

 

 昨年、27歳の非正規組合員ひとりの参加だった盛岡支部は今年、3名の非正規組合員の参加でたたかわれた。1年間の地道なとりくみが結実した。本部は激励と心からの連帯の気持ちを込めて、労契法20条東日本裁判原告の浅川義喜中央執行委員を現地に派遣した。粉雪の舞う中で“熱い”ストライキを貫徹した。
 昨年、勤務途中からの職場内で「ただいまからストライキに突入します」とスト突入宣言を発し、3時間のストに突入した灘支部は今年も同じようにとりくみ、25歳の非正規組合員が参加した。集会後、地元JR六甲駅で宣伝行動も行い、そのとりくみは翌日の神戸新聞に写真付きで報道された。
 練馬支部では30歳の非正規組合員が勇気を持って参加した。次の日に職場でも「よくやったな。たいしたものだ」という声が寄せられた。

 

 たたかいの中で成長し、まだ数は少ないものの若い非正規の組合員がストを牽引する力になりつつある。手前味噌にはなるが、これが17春闘の最大の成果と言っても過言ではない。
 民営・分社化から10年目の17春闘。ストライキは郵政ユニオンの春闘の歴史そのものだ。

 

中村 知明(郵政産業労働者ユニオン中央本部書記長)

 

◎公務  改正2法案問う院内集会

 4月11日午後、参議院総務委員会で高市総務大臣が地方公務員法及び地方自治法改正法案の趣旨説明を行い、参議院先議で実質審議に入った。
 改正2法案では、これまでバラバラだった雇用(任用)根拠を「会計年度任用職員」として最長1年の任期で統一化、さらには勤務時間をフルとパートとに分け、フルには給料・手当、パートには報酬を支給、期末手当も条例で規定すれば支給できるとしている。
 「改正は不十分だが、期末手当が支給できるようになるのは改善の一歩なので、取りあえず賛成」という意見もあるが、「正規〜非正規フル〜非正規パート」という3層分断構造を固定化することになり、働き方改革で謳う「同一労働同一賃金」と比べても改善とはいえない。


 そこで、審議入りを前にした4月3日、参議院議員会館で院内集会を開催、議員、議員秘書(民進党、共産党、社民党)、報道関係者を含め60人が参加した。
 法案の総括的な問題点を指摘するとともに、メインには当事者や、自治体議員からも発言していただいた。

 現場からは「20年、30年にわたって実現してきた改善を大きく後退させられる」「特別職公務員が活用してきた労働基本権がはく奪される」という切実な訴えが続き、改正どころか「低位平準化」でしかないことが明らかにされた。
 報告、発言は以降の審議にも取り上げられるなど緊急の行動だったが実りある院内研究集会となった。

 

白石 孝(NPO法人官製ワーキングプア研究会)

 

◎新聞  新聞奨学生の労働条件改善を要求

 一人でも加入できる新聞労連加盟の新聞通信合同ユニオンでは、産経新聞社に対して新たに浮上した新聞奨学生問題を早期解決するよう、4月7日、都内の本社に要請した。

 都内大学の夜間部に入学するため札幌から上京したKさんは、2016年、新聞配達をする代わりに学費を貸与する新聞奨学生制度を利用した。

 ところが、労働時間は契約当初の3時間より超過する毎日。早く出勤する分には「ご褒美」として賃金が割増されていることはあっても、30分ごとの計算となっていた。平日昼間や週末の集金業務がかさなり、睡眠時間不足で学業に支障をきたすようになった。

 また、居住場所である販売店には屋内に監視カメラが設置され、学生の動きを監視・録画するなどプライバシーの侵害があった。


 合同ユニオンは販売店主と団交をはじめたものの、責任の所在は本社と子会社の産経開発にもあるとして2者に対して団交を要求していた。

 奨学生の労働条件は、基本部分は産経新聞子会社の産経開発が設定し、本社販売局が販売店を指導・統括している。にもかかわらず、2者はKさんとは直接雇用関係にないとして2度にわたって団交拒否していたため、都労委に不当労働行為救済を申し立てている。

 本社総務部、販売店を統括する販売管理部担当には、奨学金返済を分割にすること、奨学生の労働条件などについて合同ユニオンと今後も協議をつづけることなどを要請した。

 産経新聞は、以前にも奨学生の労働問題で合同ユニオンと都労委において和解しており、今後も繰り返されることがないよう訴えた。


 当該のKさんは、本社前行動で「職場での劣悪な労働条件や産経本社の責任逃れなど、学生の私からすると、大人としてどうなんだろうと、怒りを通り越してとても悲しい気持ちになった」とマイクで訴えた。

 

松元 千枝 (team rodojoho)

 

 

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